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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第22話 覚悟

俺は大きなホールの階段のある場所で、外を見ていた。

「あれがワルプルギスの夜か。何ともまあ凄まじいものだ」

俺は一人でつぶやいていた。
他のみんなは外にいて貰っている。
それは、ある目的のためだ。

「………」

俺は左手を見る。
その手はかすかにではあるが、”薄く”なっていた。

「もう時間がない。せめて、この世界を……まどか達を救うことが出来るまでは、持ってほしいものだな」

俺は静かに呟いた。
俺自体が、この世界に留まれるほどの力が無くなり始めている証拠でもあった。
そんな時、足音がしたので、俺はそっと物陰に隠れた。
やってきたのは、まどかとキュウベぇだった。

「ほむらちゃんが一人でも勝てるっていうのは、ホント?」
「それを否定したとして、君は僕の言葉を信じるかい? 今更言葉にして説くまでもない。その目で見届けてあげるといい。ワルプルギスを前にして、暁美ほむらがどこまでやれるか」

まどかの言葉に、キュウベぇが答えた。

「どうしてそうまでして戦うの?」
「彼女がまだ、希望を求めているからさ。いざとなれば、この時間軸もまた無為にして、ほむらは戦い続けるだろう。何度でも性懲りもなく、この無意味な連鎖を繰り返すんだろうね。最早今の彼女にとって、立ち止まることと、諦めることは同義だ」

キュウベぇの言葉を聞いたまどかは悲しげな表情を浮かべていた。

「何もかもが無駄だった、と………決してまどかの運命を変えられないと確信したその瞬間に、暁美ほむらは絶望に負けて、グリーフシードへと変わるだろう。彼女自身も分かってるんだ、だから選択肢なんてない。勝ち目のあるなしにかかわらず、ほむらは戦うしかないんだよ」
「希望を持つ限り、救われないって言うの?」

キュウベぇにまどかは問いただす。

(どうあがいても報われない。それが運命だと言ってしまえば簡単に終わるだろうけど)

俺としては、それはかなり残酷でひどい言葉だと思った。

「そうさ。過去の全ての魔法少女たちと同じだよ。まどか、君だって一緒に視(み)ただろう?」
「うぅ……」

何を見たのかは分からない。
だが、まどかはそれを思い出したのか口元を押さえた。

「……でも、でも。でも!」

まどかは涙をぬぐいながらそう言うと、、階段を降りようとする。
しかし、それを止める者がいた。

「どこ行こうってんだ? オイ」
「ママ……私、友達を助けに行かないと」

それはまどかの母親だった。
目元が細まっていて、どことなく怖い雰囲気がした。

「消防署に任せろ。素人が動くな」
「私でなきゃダメなの!」

まどかがそう叫んだ瞬間、乾いた音が響いた。
まどかの母親がまどかを引っ叩いたのだ。

「テメェ一人のための命じゃねぇんだ! あのなぁ、そういう勝手やらかして、周りがどれだけ――」
「わかってる。私にもよくわかる。私だってママのことパパのこと、大好きだから。どんなに大切にしてもらってるか知ってるから。自分を粗末にしちゃいけないの、わかる。だから違うの。みんな大事で、絶対に守らなきゃいけないから。そのためにも、私今すぐ行かなきゃいけないところがあるの!」

母親の言葉を遮ってまどかはそう言い放つ。
その眼には、確実な決意がうかがえた。

「理由は説明できねぇってか。なら、アタシも連れていけ」
「ダメ。ママはパパやタツヤの傍にいて、二人を安心させてあげて」

まどかは首を振って拒否した。

「ママはさ、私がいい子に育ったって、言ってくれたよね。嘘もつかない、悪いこともしないって。今でもそう信じてくれる?私を正しいと思ってくれる?」

まどかの言葉に、思わず差し出しかけた手を引っ込めた。

「絶対に下手打ったりしないな? 誰かの嘘に踊らされてねぇな?」
「うん」

まどかの答えを聞いた母親は、まどかの背中を強めに押した。

「ありがとう、ママ」

そう言ってまどかは階段を下りて行った。

「………これでよかったんだよな?」
「ええ、完璧ですよ」

母親の言葉に、俺は姿を見せた。

「一体何が目的だ?」
「言ったじゃないですか。彼女の覚悟を見たい、と。それ以上は申し訳ないですが」
「いえないってことか」

僕は少し前に、この母親にまどかのやろうとしていることを話していたのだ。
その上で、彼女に協力をして貰ったのだ。
それが、さっきのやり取りだ。

「あれは私の本心だ。それよりも」
「ええ、分かってます。約束はしっかりと守らせてもらいます」

僕は協力をしてもらう代わりに、まどかの安全を守るようにと言う約束をしていたのだ。

「しかし、あんたは何者なんだ? 普通の中学生には到底見えない。それにこのことはおめえのご両親は知っているのか?」
「ふふ……俺はしがない占い師ですよ」

俺は笑顔で母親に答えた。

「俺には両親と言う概念は存在しませんしね。昔っからやれ戦だ、やれ暗殺だの毎日でしたからね」
「………」

俺はそう言うと、階段を下り始めた。

「俺は、行きますよ……ご安心ください。あなたの娘さんは必ず無事に戻れるようにしますから」

俺は心配そうな表情を浮かべる母親にそう告げた。
あれが、母親と言うものなのだろうか?

(やっぱり分からないな)

俺はそんな自分に苦笑いを浮かべた。

「もう、あなたとは二度と会うことはないでしょう。なので、失礼ながら一つだけ忠告を」

俺はそこで区切ると、母親と向き合った。

「子どもと言うのはたとえ思春期を超えても子供のまま。20歳までは最低でも娘さんの道しるべでいることだ。でなければ、俺のような殺人鬼になってしまう」

俺はそう告げて、今度こそはと階段を下る。

「では、よいペアレンツライフを」

俺はそう言って階段から飛び降り、走って外に向かった。

『まどかを見つけたよ。今、ワルプルギスの方向に走ってる。キュウベぇと一緒に』
『了解。そのまま姿を消した状態で尾行を続行だ』

外で待機していたさやかから連絡が入った。
そう、全員にはまどかの尾行と言う役割があったのだ。
そして俺はまどかの元へと向かった。










「まどか!!」
「渉君!?」

俺が射ることに驚いたまどかは目を見開きながら俺を見る。
だが、その足はいまだに止まることを知らない。

『どうやら、覚悟はできたようだな』
『うん』

俺のテレパシーにまどかは頷いて答えた。

『だったらその命、少しの間、俺に預けてはくれないか?』
『え?!』

俺の言葉に、まどかは驚いた様子で俺を見た。

『何も魔法少女になるのがキュウベぇと契約をしなければいけないのではない。俺ならば、魂を分断することも、まどかが消えることもない。まあ、願い事はかなわないけど』
『渉君って一体……』
『どうするの? このままキュウベぇと契約して消えるのと、俺と契約して願い事はかなわないだろうが消えはしない方を選ぶのとどちらを選ぶ』

俺はまどかに有無を言わせずに、選択肢を突き付けた。
まどかはしばらく考え込みそして、決意が出たのか俺の方を見た。

『渉君、信じていいんだよね?』
『当り前だ。俺は人の命に関わる様な嘘は利口者には付かないさ』

まどかの問いかけに、俺は笑いながら答えた。
まあ、これが馬鹿だったら保証はしかねるが。

『それじゃ、渉君お願い』
『了解。その選択はのちに、正しいと思うはずだ』

そうこうしているうちに、暁美さんの元へとたどり着いた。
彼女は足ががれきに挟まれ、頭からは血が流れていた。

「……!?」

まどかがしゃがみこんで、暁美さんの手を握ると暁美さんは突然目を開けてまどかを見た。

「もういい。もういいんだよ、ほむらちゃん」
「まどか……?」

暁美さんは俺とキュウベぇの顔を見て目を見開いた。

「まどか……まさか!?」
「ほむらちゃん、ごめんね。私、魔法少女になる」

そしてまどかは、暁美さんにそう告げたのであった。

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第21話 憎みし者

俺は暁美さんの家の中にいた。
もちろん無断だ。

「で、どうする気だ?」
「ッ!? あなた、一体どこから。それに前に銃で」

驚いた様子でこっちを見てくる暁美さん。

「全く、いくら俺が不死身だからと言っても獣は勘弁してもらいたいものだ。あれ痛いんだぞ?」
「あなた、一体何者なの?」

暁美さんが俺に問いかけてくる。

「俺はこの世界の運命を定める役割を持っている、世界を統括せし三神の一人、世界の意志さ」
「………どういうこと?」

俺の言葉に、暁美さんが首を傾げた。

「簡単に言ってしまえばこの世界で生きている人たちの運命のように世界自体の運命を操作すると言う意味だ」
「つまり、あなたがこの世界の行方を操作していると考えて間違いないのね?」

暁美さんの言葉に、俺は頷いた。
その瞬間だった。
突然銃声が響き渡った。

「危ないな。さっきも言ったが、それかなり痛いんだぞ?」

俺は暁美さんの背後に高速で移動していた。
すると、再び銃声が鳴り響いた。
また俺に向かって打ったのだ。

「さっきから鬱陶しい!! 滅!」
「きゃ!?」

今度ばかしは頭に来たので、銃を破壊した。

「ったく、なんで世界の意志だと告げて撃たれなくちゃならないんだよ」
「あなたが、諸悪の根源だからよ」
「ほぅ? 言ってくれるな。この事態を引き起こしたのは、俺ではなくインキュベーターだ。まあ、あれも世界から作られたものだから、まわりまわって俺が悪くなるんだがな」

俺の言葉に暁美さんが俺の胸に掴みかかってきた。

「あなたの性で! あなたの性でまどかは何回も死んでるのよ!!」
「ふん!!」

俺は胸を掴みかかる暁美さんを思いっきり払いのけた。

「甘ったれるな小娘! すべてを俺のせいにするな。確かにこの世界で起きた事項は俺に責任がある。だがな! この世界を安定化させるにはそう言うかわいそうな奴がいないといけないんだ。この世界はな、全員が全員平等じゃねえんだよ」

俺は、そこまで叫ぶと彼女に背を向けた。

「ここまで悪化させて、まだ何とかなると思ってるその甘さ加減が笑える。お前が何度も何度も時間を戻したことによって、まどかはこの世界自体となり俺には手に負えなくなってしまった。それを引き起こしたのがどこの誰か、そしてそれを考えても俺を殺せるのであれば、好きにすると言い」

俺は、そこでいったん言葉を区切った。

「まあ、せいぜいもがくと良い。だがな、運命は変えることはできない。それだけは覚えておけ」

俺はそう告げると、暁美さんの家を後にした。
気分は最悪なままだが。

(ワルプルギスの夜まであと数日。俺も準備をしなければな)

俺はそう思いながら、拠点地へと戻るのであった。





ほむらSide

私は、とても混乱していた。
小野渉、彼が世界の意志だということに。
そして、彼自身がまどかを死の運命に導いた張本人。
絶対に許せない。
でも、私は心のどこかで感じていたのだ。
彼自身には何の責任はないと言うことに。
彼はただ単に世界を安定化させようとしていただけだったのだから。
でも、それでも私は彼の事が許せない。

(絶対にまどかだけでも助けてみせる!! たとえ私が朽ち果てたとしても、必ず)

私はそう決心した。















それから数日後、ワルプルギスの夜が来て、私は一人で戦いましたが、倒すことが出来ず時間を戻せば、まどかがさらに因縁が強くなってしまう事を思い出した私は、どうしようもできないことに絶望して泣いていた。
そんな私の手をそっと誰かが包み込んでくれた。
それは、まどかだった。

「……!?」
「もういい。もういいんだよ、ほむらちゃん」
「まどか……?」

私は嫌な予感がしてまどかの名前を呼んだ。
まどかはそっと立ち上がってワルプルギスの夜を見ている。
その横にはキュウベぇと、彼の姿があった。

「まどか……まさか!?」

私はそれが、何を意味しているのかがすぐに分かった。

「ほむらちゃん、ごめんね。私、魔法少女になる」

そして、まどかは私にそう言った。
それは、私が一番恐れていたことだった。

Side out

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第20話 正体

俺は今マミさんと言い争っていた。

「本当にやる気なのね?」
「くどい。やると言ったらやる」

僕は今目の前にいる赤い髪の少女……佐倉杏子と、さやかが横たわっていた。
俺がやるのは、マミさんにやったのと同じ因果律操作だ。

「でも、因果律操作何て二人同時にやったら渉君の体に負担が―――」
「平気だ。この程度で潰れるほど、俺は軟には出来てはいない」
「……それならいいのだけど」

マミさんの心配はもっともだ。
因果律の操作にはかなりの集中力と負担が生じる。
それを二人分もやるとなれば、かなりの負担が生じるだろう。
だが、俺はそっち方面に特化した存在だ。
そう簡単に潰れるのであれば、俺は消えた方がいい。

「では始めるか……コネクト」

そして俺は因果律操作を開始した。










因果律操作を終わらせた俺は、二人の目が覚めるのを待っていた。

「……ん」
「目覚めたか? 佐倉杏子」

ようやく目を開けた彼女に、俺は声をかけた。

「あんたの魔法少女のシステムは僕の手で消して置いた。まあ、魔法は使えるが魔力が無くなったら普通の少女に戻る」
「あんた、一体……」

佐倉杏子の表情が驚きに満ちていた。
それもそのはずだ。
このようなことは普通は出来ない。

「あんたの疑問はそこにいる愚か者が目覚めてからにしよう」
「は? って、さやか!?」

訳が分からないと言った表情をした佐倉杏子は、俺の視線を辿って思わず声を上げた。

「お、おい! さやかは」
「ああ、大丈夫だ。少しすれば目が覚めると思うぞ、佐倉杏子よ」

俺は安心させるように微笑みながら答えた。
実をいえば彼女への処置がかなり難しかった。
体とのリンクの切れた魂を、もう一度体とリンクさせて、それを戻して因果を消去したりとかなり手間がかかった。

「いや、あたしのことは杏子でいい」
「なら、俺の事も渉と呼ぶといい」

とまあ、そんな感じで話していた時だった。

「う……」
「さやか!」

突然うめき声をあげたさやかの元に駆けよる杏子。

「ここは何処? 私は何で……」
「ここは俺の家。お前はこの俺が生き返らせた」

何が何だかわからない様子のさやかに、俺は淡々と答えた。

「わ、渉……」
「お前の魔法少女のシステムは消去しておいた。今は魔法少女の力が残ってはいるが、それも魔力が無くなれば普通の少女に戻る」

俺は、さやかの方を見ずに淡々と説明した。

「だから、お前は出ていくなり何なり好きにしろ」
「わ、渉、何もそこまで」

俺は止めようとする杏子を無視して言葉をつづけた。

「人の話もろくに聞かず、手を差し伸べたにもかかわらずにそれを払いのけ、終いには友人を傷つけて殺そうとした奴を俺が許すとでも思ったか?」
「そ、それは……」

俺の言葉に押し黙る杏子。

「本当にごめん。謝って許されることじゃないのは分かってる。でも、私にも渉の手伝いをさせて欲しい」
「罪滅ぼしか?」
「そうかもしれない。でも、何もしないっていうのも何だか嫌なんだ」

俺はさやかの方を見た。
さやかの目には決意がうかがえた。

「許しはしないが、勝手にしろ。言葉ではなく行動でそれを証明するんだな」

俺はそう言うと、二人をリビングへと案内した。

「さあ、適当に座って」
「わ、分かった」
「にしても、何もないよね」

周りを見渡しながらさやかが呟く。

「置く必要がないだけだ。お~い、紅茶二人分よろしく」
「分かったわ」

俺の声に、マミさんが呆れながら答えた。

「あれ? 今の声って……」

声を聴いたことのあるさやかが、驚いた様子で俺を見た。

「おそらくさやかの考えている奴で、正しいと思うぞ」

そう説明した時、三人分の紅茶をトレイに乗せたマミさんが来た。

「お待たせ」
「ま、マミさん!!?」

さやかが驚きのあまりに席を思いっきり立ちあがった。

「久しぶりね、美樹さん」
「な、何でマミさんがここに?」

さやかが疑問に思うのも当然だろう。
何せ、マミさんは公では死んだことになっているのだから。

「それは渉君によって助けてもらったからよ」
「わ、渉が!?」

こっちを驚いた風に見るさやか。

「だったらあんた達を助けたのは、どこの誰なんだよ」

俺は呆れながら答えた。

「でも、渉って一体……」
「そうだな。まずはそこから話そう。何せお前たちはこの俺の仲間でもあるのだしな」

俺はそう告げると、席を立った。

「俺は、この世界を統括する三神の一人、主に世界の因果律を調節し世界を安定にさせる役割を持つ、世界の意志だ!」
「「………」」

俺の名乗りを聞いた二人は口を開けて固まっていた。

「「えぇ~!!!!!?」」

そして思いっきり叫んだ。

「わ、渉がその、神様!?」
「し、信じらねない」

二人とも驚きのあまりに、混乱しているようだ。

「ほらほら、二人とも落ち着きなさい」
「わ、悪い」
「すみません」

そんな二人を落ち着かせるあたり、本当にマミさんはカリスマ性がある。

「マミさんを助けたのも、この俺の意志としての力を使ったまでだ」
「でも、マミさんは魔女に食べられたはずじゃ」
「それは俺が見せた幻術……つまりは幻だ」

さやかの言葉に、俺はそう答えた。

「なんで、そんな事を」
「俺の目的の遂行に、正体がばれる訳にもいかなかったからな。」
「あんたの目的ってなんだ?」

杏子が俺に疑問を投げかける。

「そこを含めて全員に話していくんだ」

俺はそう言うと、ホワイトボードを引っ張りりだした。

「ところで、渉が使ってた気法って本当にそう呼ぶの?」
「それは否。正しくは神が使う魔法のようなものだから、神術だ」

俺の答えを聞いた二人が呆然としていたが、俺は咳払いをして事情説明を始めた。

「俺がここに来た理由。それはこの世界で不可思議な時間経過を確認したことによる」
「不可思議な時間経過?」
「簡単に言えば、ある一定の期間で時間軸が戻されてまた進みだしているんだ」

さやかの疑問に、俺は分かりやすく説明しながら答えた。

「そして、この時間経過異常を起こしているとみられるのが……」

俺はボードに暁美さんの写真を張った。

「彼女だ」
「転校生!?」
「そう言えば、こいつは時間操作をする魔法少女だって言ってたな」

杏子が思い出したようにつぶやく。

「彼女は、何らかの条件がそろった場合に自ら、もしくは自動的に時間回帰……以後はリセットと呼称する。それを起こしているとみられる」
「その条件って何なのかってわかってるの?」
「ああ。鹿目まどかだ」

俺はさやかの問いかけに答えた。

「まどかが!?」
「彼女は、まどかが魔法少女になるとリセットされるようになっている。それがこの不可思議な時間経過の原因だったんだ」
「そして渉が、その原因の究明にやってきたっていうわけか」

杏子がまとめるように言った。

「そう。そして色々と見ていくうちに、このリセットの裏に隠されたことが分かってきた」
「それが魔法少女と言う存在の秘密の事よ。私達は、それを解決することがこのリセット現象を止める方法だと考えて動いていたのよ」
「と言うことは、まどかが魔法少女にならなければいいってわけだね」
「いや、そうとも言い切れない」

さやかの言葉を、俺は否定した。

「な、何で?」
「それは、杏子の言うワルプルギスの夜と言う魔女の存在だ。これはざっと調べてみた限りだが、普通の魔女より因果を大量に保有している。このレベルまで行けば普通の魔法少女……暁美さんでも叶う相手ではない」
「と言うことは、必然的にまどかが魔法少女になって倒さなければいけなくなるってわけ?」

さやかの言葉に、俺は無言で頷いた。

「なんとかなんねえのか?」
「どうにもならないな。因果律を見る限りではまどかが魔法少女にならなければ、この世界は滅びると言う結果も出ている」
「そんな……」
「しかし、どうしてそんなことが」

杏子が俺に疑問を投げかけてきたので、俺は一枚の紙を二人の前に差し出した。

「これは?」
「それはこの世界の因果情報だ」
「何が書いてあるかさっぱり分かんないんだが」

杏子がそれを見て呻っていた。

「まあ、普通はそうだ。俺はそこからこの世界の成り立ちや現状などを読み取るというわけなのだが、このAとBを見てほしい」
「?? 別におかしなところはないようにも見えるけど」
「AとBのこの部分が同じだろ」

俺はそう言いながら赤ペンでその部分を囲った。
二人はなるほどと頷きながらそれを見ていた。

「その部分は、世界全般での因果律形成の経過を出されている所だ。上がこの世界自体の、下が鹿目まどかの因果律情報だ」
「嘘でしょ!?」
「全くそっくりだな」

俺の言葉を聞いた二人が驚いた様子で文字を読み直す。
そう、文字の配置から何からがすべて同じなのだ。

「これをまとめると、彼女はこの”世界”そのものになっているんだ」
「でも、それってかなりまずいだろ」
「もちろんだ。このままいけば魔法少女になったとたんに、世界から排除される」

杏子の言葉に、俺はそう答えた。

「なんとかなんないのか?」
「悪いが、こればかりはどうしようもない」

俺は首を振った。
世界自体になった彼女に、俺が手を出すことは難しいのだ。
もし手を出せば、世界が狂う可能性もあるからだ。

「ねえ、こうなった原因がもしあの転校生だったら、渉がまどかと契約して魔法少女にしたらどうかな?」
「ナイスアイデアだ!! それならいけるな。では、こうしよう」

俺は頭の中に浮かんだ計画を全員に話した。

「それって、あの転校生が完全に駒になるけど……」
「まあちょうどいいだろ。守るためとはいえ世界のバランスを崩したんだから、少しくらいは利用しないと気が済まない」

俺の一言に、二人が苦笑いを浮かべた。

「さあ、ワルプルギスの夜が来るまで休むように。それと二人はそれまで外出は禁止」
「ちょっと! なんでさ?!」
「二人は行方不明扱いだ。それが外にふわっと出られて見つかったら大問題になるからだ。悪いがそれだけは理解してくれ」

俺の言葉に、二人はあまり納得していなさそうであったが、奥の方に入って行った。
それを見た俺は、外に玄関へと向かった。

「どこに行くのかしら?」
「暁美さんの所だ。協力する意思があるのかを確認しに行く」
「気を付けてね」

俺はマミさんの言葉に片手をあげて答えると、そのまま外に出た。
そして俺は、暁美ほむらの家へと向かった。

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第19話 解き放たれた力の断片

杏子Side

そいつを最初見た時は、ちょっとだけ恐ろしいやつに見えた。
二度目に会ったときは………事実を隠していたことに怒りを覚えた。
三回目に会ったときは、そいつに恐怖を抱いた。
あたしのような存在がまるで小さな米粒のような……狩られる立場であるような錯覚を感じた。
そして今あたしの目の前にいるあいつは………今までのあいつとは違った。
姿遺体が変わっていたのだ。
それは制服のような服装から白い袴のような姿に変わり、手には真剣とやらが握られていた。
髪の色も黒から銀色に変わり、そいつから醸し出されるオーラは、まるで………天使のようなものだった。

Side out










俺は第3段階の封印を解除した。
そのため、今の俺の姿はかなり変わっている。
おそらくだが、今の姿は俺の本当の姿の一歩手前状態だろう。

(さて、どういうプランで行くか)

俺は必死に考えた。
今目の前にいる人魚のような魔女からさやかの魂を取り戻さなければいけない。
だとすれば、出来る事は一つだ。

(あの魔女から魂を抜き取る……しかないか)

言葉でいうのは簡単だが、実際にやると、かなりきつい。
何せやり方が問題なのだ。
相手の魂がある場所を突き止め、そこを的確に腕でつかんで分離する。
魂の場所を突き止めるのはそれほど難しくはないが、相手の攻撃をかわしながら探すのは骨が折れる。

(まあ、やるっきゃないか)

「来い! このくそ野郎!!」

俺は吉宗と正宗を構えて、魔女を挑発する。

「■■■!!」

すると、それに反応したのか、魔女は再び車輪のようなものを出してきた。

「盾よ、我らを守れ」

俺はそう呟き神剣を、目の前で交差させるようにして構える。
そして、一斉に放たれた車輪は俺へと放たれ命中するが、俺と佐倉杏子へのダメージはなかった。

(力の封印を解いただけでもまったく違う。これなら負ける気がしない)

俺はようやく取り戻した本来の力に感動していた。
まだまだ75%だが、それでもたいていの魔女は俺の敵ではない。

「さぁ、さっきの仕返し、だ!!」

俺は二本の剣を魔女に向けて投げつける。

「■■■!!」

二本の剣は魔女の横に突き刺さり、魔女はその動きを止めた。
これは簡単に言えば影止めにあたる。
相手の動きを少しの間だけ止めることが可能だ。

「行くぞ」

俺は魔女の背後へと回り込み、魔女に向けて手を掲げる。
今からやるのは、魂のある場所を探し出す工程だ。
これは数十秒あれば事足りる。
意識を集中する中、俺は小さな青い光を感じた。

(見つけた!!)

それが魔女の……さやかの魂であることはすぐに分かった。

「貫い、て!!」

俺は魔女の魂がある部分に手を突っ込んだ。
今魂は露出状態にあるため、俺のような存在であれば、誰でも魂に触れることが出来る。

「掴まえた!!」

そして俺はそれを一気に抜き取ると、手の中にはさやかの魂があった。
それを俺はビンの中に入れるとふたをして、茫然としている佐倉杏子に投げつけた。

「うわっと!?」
「それを持っていてくれ!何かとがさばるから」
「わ、分かった」

俺の言葉に、彼女はそう答えると、大切そうにビンを持った。

「さて……」
「■■■■!!!!」

影止めの効果が消えたのか、目の前の魔女の抜け殻が叫ぶ。

「もう魂は抜いたから、攻撃は出来ないがいて貰っても困るしな」

俺はそう言いながら、神剣を自分の元へと呼び戻す。

「だから、とっとと消えろ」

俺は後ろを見る。

「おい、僕のそばに来い。じゃないと死ぬぞ」
「わ、分かった」

俺の言葉に、佐倉杏子は慌てながら頷くと走って俺のそばまで来た。
俺はそれを確認して、初めての大技を使うことにした。

「大地侵しし愚か者へ捧げる裁きの言葉………」

俺の言葉に呼応して、神剣に光がともる。
それは純粋な力、エネルギーだ。

「愚か者に捧げる救いの手は無し………未来永劫の地獄へと落ちろ」

そして俺は神剣を地面に振り下ろした。

「最終審判、レクリエム!!」

その瞬間、膨大なエネルギーは一気に牙を向け魔女諸共、結界内で大爆発した。
その数秒後、魔女がいなくなったためか、はたまた結界を破壊したからかは分からないが、結界は消滅し、俺達はもといた建設現場に立っていた。

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第18話 美樹さやか救出作戦

突然走り出したまどかを追いかけた俺は、西洋風の建物が建つ場所に来ていた。
俺達の前に立っていたのは、佐倉杏子だった。

「あの……話って?」
「美樹さやか。助けたいと思わない?」

佐倉杏子の言葉に、まどかの表情が明るくなった。

「あっ……助けられる……の?」
「助けられないとしたら、放っとくか?」
「う……」

杏子の言葉に、まどかの表情が一気に暗くなる。
そんなまどかの様子に佐倉杏子は表情を柔らかくした。

「妙な訊き方しちゃったね。ばかと思うかもしれないけど、あたしはね。本当に助けられないのかどうか、それを確かめるまで、諦めたくない」

佐倉杏子の目には絶対に諦めないと言った意志が感じ取れた。

「あいつは魔女になっちまったけど、友達の声ぐらいは覚えてるかもしれない。呼びかけたら、人間だった頃の記憶を取り戻すかもしれない。それができるとしたら、たぶんあんただ」
「うまくいくかな?」

佐倉杏子の提案に、まどかが不安げに聞いた。

「わかんねぇよそんなの」

佐倉杏子の答えに、まどかの表情が再び曇るが、それを見て彼女は静かに笑った。

「わかんないからやるんだよ。もしかして、あの魔女を真っ二つにしてやったらさ、中からグリーフシードの代わりに、さやかのソウルジェムがポロッと落ちてくるとかさ。そういうもんじゃん? 最後に愛と勇気が勝つストーリー、ってのは」

彼女の言葉に、俺達は何も答えられない。
もとより、そのような事を考えたこともなかった。

「アタシだって、考えてみたらそういうのに憧れて魔法少女になったんだよね。すっかり忘れてたけど、さやかはそれを思い出させてくれた」

横を見れば、まどかの表情は真剣そのものだった。

「付き合いきれねぇってんなら、無理強いはしない。結構、危ない橋を渡るわけだしね。あたしも、絶対何があっても守ってやる、なんて約束はできねぇし」

佐倉杏子の忠告にまどかは首を横に振ると、一歩前に出た。

「ううん、手伝う。手伝わせてほしい」

そしてまどかは佐倉杏子に片手を差し出した。

「私、鹿目まどか」
「ったくもう、調子狂うよな、ほんと」
「え?」

まどかの行動に柔らかく微笑む。

「佐倉杏子だ。よろしくね」

そう言ってまどかの手にお菓子『うんまい棒』を渡した

「う……うん」

それを受け取ったまどかはそれを呆然と見ていた。

「で、あんたは来るのか?」

表情を少しきつくして俺の事を睨みながら聞いてきた。

「当り前だ。よくよく考えればまだ殴り足りなかったからな。生き返らせて土下座して謝らせたら、その後はイチゴのケーキを大量に買ってもらうんだ!!」
「………」

いや、自分でもわかっているからそんな憐れむような目で、俺を見ないでくれ。

「本当調子狂うよな」

そう言うと佐倉杏子はもう一本『うんまい棒』を俺に差し出してきた。

「食うかい?」
「………頂きます」

僕はそれを有難くいただくことにした。
………これ、どうやって食べるんだ?

「それじゃ、行くぞ」
「了解」
「うん!」

そして、俺達は美樹さやかを生き返らせるべく、歩き出すのだった。










あたりがオレンジ色のカーテンに包まれている中、俺達は陸橋の下を歩いていた。

「ほむらちゃんも、手伝ってくれないかな?」
「あいつはそういうタマじゃないよ」

ソウルジェムを片手で持ちながら歩く、佐倉杏子はそう答えた。
なぜかその手にはお団子があった。
しかも2つも。

「友達じゃないの?」
「違うね。まあ利害の一致っていうか。お互い一人じゃ倒せない奴と戦うためにつるんでるだけさ」

団子を食べながら佐倉杏子は、答えた。

「あと何日かしたら、この街にワルプルギスの夜が来る」
「ワルプルギス?」

彼女の告げた単語に、まどかが聞いた。

「超弩級の大物魔女だ。あたしもあいつも、たぶん一人じゃ倒せない。だから共同戦線っていうか、まあ要するにそういう仲なのさ」

彼女の説明が正しければ、ワルプルギスの夜と言う魔女は、かなりの強敵らしい。
そして魔女は元が魔法少女だった人物だとすれば……

(これは、調べた方がいいな)

俺は再びできた課題に内心でため息をついた。
やがてしばらく歩くと、建築現場にたどり着いた。

「ここだな」

佐倉杏子は建築現場前でつぶやくと、扉を強引に開けて中に入って行く。

「ホントにさやかちゃんかな?他の魔女だったりしないかな?」
「魔力のパターンが昨日と一緒だ。間違いなくあいつだよ」

まどかの不安げな問いかけに、佐倉杏子が答えた。

「今更違う魔女だって言われたら、そっちの方が驚きだよ」

俺は思わずそうツッコんた。
そして少し進んで、行き止まりの場所で立ち止まると、佐倉杏子は魔法少女に変身した。
それと同時に手に持っていた二本の団子の棒を地面に投げつけた。
よく見れば、そこにはハートマークで『Love me do』と書かれていた。
直訳すれば『私を愛して』だろうか。
確かにさやかの物だ。

「さて、改めて訊くけど、本当に覚悟はいいんだね?」
「何かもう、慣れっこだし。私、いつも後ろから付いてくばっかりで。役に立ったこと一度もないけど。でもお願い、連れて行って」

佐倉杏子の最終通告のようなものに、まどかは自分の事を卑下しながら答えた。

「俺もだ。乗りかかった船、こんなところで引き返す何て男じゃないし」
「ほんと変な奴だな、あんた達」

ふと柔らかく微笑み、彼女は手に持つ槍で空間を一閃した。
そして結界は開かれた。










結界内は、まるでどこかの路地裏の様な煉瓦の壁の通路だった。
壁にはチラシが張ってあり、それはまるでコンサートのお知らせの、チラシのようなものであった。

「ねぇ、杏子ちゃん」
「うん?」

緊張の面持ちで歩いていると、まどかが口を開いた。

「誰かにばっかり戦わせて、自分で何もしない私って、やっぱり、卑怯なのかな」
「まどか……」

まどかの言葉は、おそらくさやかのあの一言によるものだろう。
彼女に掛ける言葉が思いつかない自分を、俺は呪った。

「何であんたが魔法少女になるわけさ?」
「何でって……」

佐倉杏子に聞き返された言葉に、答えられないまどかに彼女は歩くのをやめると後ろに振り向いた。

「なめんなよ。この仕事はね、誰にだって務まるもんじゃない」
「でも―――」

佐倉杏子の言葉にまどかは言い返そうとするが、それを遮って彼女は言葉をつづけた。

「毎日美味いもん食って、幸せ家族に囲まれて、そんな何不自由ない暮らしをしてる奴がさ、ただの気まぐれで魔法少女になろうとするんなら、そんなのあたしが許さない。いの一番にぶっ潰してやるさ。命を危険に晒すってのはな、そうするしか他に仕方ない奴だけがやることさ。そうじゃない奴が首を突っ込むのはただのお遊びだ。おふざけだ」

彼女の言葉には、かなりの重みがあった。

「そうなのかな」
「あんただっていつかは、否が応でも命懸けで戦わなきゃならない時が来るかもしれない。その時になって考えればいいんだよ」

まだ納得していないまどかに、佐倉杏子はそう言い聞かせるように言った。

「なあ、まどか。俺はな、強者には守る責務があって、弱者には守られる権利があると思うんだ」
「守られる……権利?」

俺は自分でも信じられないほどやさしい声でまどかに語りかけた。

「強い力を得てしまえば、それは己を命を失う危険な場所へと導くカギとなってしまう。だから死ぬ覚悟を持っていないのであれば、弱者のままでよい」
「……渉君は、その……」

俺の言葉にまどかは言いずらそうにしていた。

「俺の場合は生まれた時から前者だった。だから、お前が羨ましいぐらいだ」
「渉君……」

そして再び俺達は歩き出した。
目の前には大きな扉。
それを開けた。
すると、くぐもった音楽が聞こえてきた。

「うわぁ……気持ち悪」

地面は赤いカーペット、壁には今までの映像が映し出されていた。
さやかが剣を振るい使い魔を倒す場面、俺と佐倉杏子とが退治して戦う場面。
それが異様に俺への不快感を高めていた。

「杏子ちゃんはどうして……あっ」

まどかが佐倉杏子に何かを聞こうとした瞬間、突然扉が閉じられ、周りに映し出されていた映像も消えた。

「気づかれた、来るぞ!」

彼女がそう叫んだ瞬間、俺達はどんどん進んでいきそして光に包まれた。
光の先にはバイオリンの演奏者と、指揮者の姿と、まるでコンサート会場であった。
そして中央には人魚姫を模した魔女がいた。
こっちの方を見て左右に振れていた。

「いいな、打ち合わせ通りに」

驚きのあまりに地面に座り込んでいたまどかに声をかけた。

「う……うん」

佐倉杏子の言葉に、まどかは頷くと立ち上がった。

「さやかちゃん。私だよ。まどかだよ。ね、聞こえる?私の声がわかる?」

まどかの言葉に帰ってきたのは魔女が出した、大きな車輪だった。

「怯むな。呼び続けろ」

佐倉杏子がまどかの前に出ると、まどかを守るように赤い網状の壁を形成し、槍を手にした。
そして俺も神剣を取り出して構える。

「さやかちゃん。やめて。お願い、思い出して。こんなこと、さやかちゃんだって嫌だったはずだよ。さやかちゃん、正義の味方になるんでしょ? ねえお願い、元のさやかちゃんに戻って!」

車輪が俺達に放たれる。
佐倉杏子は槍を使って跳ね飛ばしたりして、俺は剣を横に一閃して車輪を粉砕する。
しかしそれに、対応できなくなるのも時間の問題だ。
力を封じている状態では、今ので精いっぱいだ。

(リミット・ブレイク………使うか)

俺は頭の中で判断を迷っていた。
あまりこれを使うと、後々面倒なことになるからだ。

「聞き分けがねぇにも、程があるぜ、さやか!」

そんな時、佐倉杏子の声が聞こえてきた。
その次の瞬間、大量の車輪が現れ、それが一気に俺達の方に放たれた。

「ッ!!!」

俺は剣を交差させて防御の体勢を取った。

「杏子ちゃん!? 渉君!?」
「心配、ご無用!!」
「大丈夫、この程度、屁でもねぇ。あんたは呼び続けろ、さやかを」

俺と佐倉杏子はそう力強くまどかに言った。
彼女はともかく、俺の方はちょっとやばい。
さっきので片足をやられた。
これで機動力は大幅に下がってしまった。

「やめて! もうやめて! さやかちゃん! 私たちに気づいて!」

再び現れた車輪を躱したり切り裂いたりするが、さっきのダメージが尾を引いているため、何回も喰らっている。
そしてさらに機動力が下がりまた攻撃を食らうという悪循環だ。
さっきから聞こえるのは佐倉杏子の苦痛の悲鳴と、まどかの泣き声だけだった。

「ッぐ!!」

そして、とうとう痛みで動けなくなった俺はものすごい速さで放たれた車輪をもろに食らい、どこかの壁に叩きつかれた。
意識こそ奪われなくても、体が思うように動かない。
どうやら今ので背骨もやられたらしい。

「さやかちゃん……おねがいだから……」

なんとか歩けるくらいにまではダメージが回復した時、まどかの苦しげな声が聞こえたので、前を見ると魔女の大きな手で握りつぶされようとしているまどかの姿があった。

「さやかっ!!」

すぐに助けに行こうとすると、佐倉杏子が槍を振りかざして腕を切り落としていた。

「あんた、信じてるって言ってたじゃないか! この力で、人を幸せにできるって」

彼女の大きな声が聞こえた。
その次の瞬間、魔女が手にしていた剣を地面に一閃した。
それによって地面が崩れ、俺達は落ちて行った。

「頼むよ神様、こんな人生だったんだ。せめて一度ぐらい、幸せな夢を見させて」

そんな時、佐倉杏子の声が聞こえた。
地面に降り立つと、気絶しているまどかを抱きかかえている暁美さんの姿があった。
そんな時、槍が落ちる音が回りに響いた。

「……よう」
「杏子。貴女……」

佐倉杏子の言葉に、暁美さんが弱々しく答えた。
彼女はどうやら先ほどの攻撃を食らってしまったらしい。

「その子を頼む。アタシのバカに付き合わせちまった」
「あ……」

佐倉杏子の言葉に、暁美さんが立ち上がろうとした瞬間彼女の前に先ほどの壁が現れた。

「足手まといを連れたまま戦わない主義だろ?いいんだよ、それが正解さ」

佐倉杏子の言葉に、暁美さんの表情が一瞬揺らいだ。

「ただ一つだけ、守りたいものを最後まで守り通せばいい。ハハハ、何だかなぁ。あたしだって今までずっとそうしてきたはずだったのに」

悲しく笑って彼女は髪を結んでいるリボンを解いた。
そして出てきた何かをつかむと、それを両手で包み込んだ。

「行きな。こいつはあたしが引き受ける」

そう告げた瞬間、けたたましい魔力が溢れらすのが分かった。
そして大きな槍が地面から大量に生えてくる。
それを見た暁美さんはまどかを引き連れてその場を走り去る。
さて、今俺がどこにいるのかをいよう。
佐倉杏子から少し離れた横にいるのだ。
彼女は全く気付いたいない。
だが、今ほど好都合なことはない。
そして俺は、宙に浮かぶ槍に乗っている佐倉杏子に話し掛けた。

「さっきの願い事は、本心か?」
「なっ!? あんた、なんでここに!!」

佐倉杏子は、俺がいることに驚いた表情をしながら、聞いてくる。
それを無視して俺は、もう一度彼女に問いかけた。

「もう一度聞く。さっきの願いはお前の本心なのか?」
「………当り前だ。こんな結末はあたしも嫌なんだよ」

彼女の答えに、俺はほくそ笑んでいるかもしれない。
それほど嬉しいのだ。

「なら、その願い、この俺が叶えてあげる」
「えっ?」

佐倉杏子が目を見開いて俺を見た。

「覚えておくといいぜ。神様っちゅうのはな、常に利口者の味方なんだぜ?」

俺はそう言うと、神剣を佐倉杏子に向けて掲げた

「輝け! 力を断ち切りし炎天の光!!」

俺の言葉と同時に、神剣から彼女に向けて白銀の光が放たれる。

「なッ!?」

俺の放った光に触れた瞬間、彼女のすべての魔法が停止し、地面へと落下したが俺の能力によって彼女の落下速度は落としておいた。

「さて、とっとと片付けよう。早く傷を治さないといけないしな」

俺は軽く準備運動をしながら、目の前にいる魔女を睨みつける。

「行くぞ………リミットブレイク・ブート3!!!」

そして、俺は封印を解除した。

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