健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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0話 は人りは意外なきっかけ。

「くたばれ、この裏切り者!!」
「悪魔!!」
「鬼!!」

……それは今まで俺に浴びせられた罵声のほんの一部だ。
人に恨まれることはあれど、褒められたり称えられたりすることなどまずなかった。
何処をどう間違えたのか。
そんなことはどうでもいい。
考えるまでもないことだ。
そして罵声を言われ続けた俺は何者かによって殺された。
所謂暗殺と言うものだ。
不思議と俺は誰かを恨むと言う心はなかった。
逆に納得していた。
自分は殺されて当然だと。
それ相応の事をしてきたのだ。
最初は数字の計算利益が多い方を選択して、友を殺した。
他にも、人質となっている人を犯人と共に殺した事もあった。
一人が嫌で始めたことが、何時しか偽善者へとなっていた。
俺は行き先は地獄だと思いながら、意識を手放した。









しかし、世界は本当に残酷だ。

「初めましてじゃな。無銘の偉人よ」
「どういう事だ? これは」

俺の前にいるのは老人だった
しかし、その老人から放たれる威圧感は、数多の死闘を乗り越えた俺ですら震えるほどだった。

「そう睨まないでくれるかのう?」
「………」

俺は無言で目を閉じた。

「まずは自己紹介からじゃ。わしの名前はノヴァ………この世界を統治する三神だ」
「は?」

俺は思わず唖然としてしまった。
なぜなら、俺の目の前に突然神と名乗るものがいるのだ。

(頭でもおかしいのではないか?)

「失礼じゃな。わしはこれでもまだまだ現役じゃぞい」
「なッ!」

俺は自分の心の声が目の前ん老人に聞こえたことに驚きを隠せなかった。

「じゃから言ってるはずじゃ。わしはこの世界を統治する三神の創造の神じゃと」
「………オーケー、百歩譲ってあんたが神だとしよう。ここはどこだ? そしてなぜおれがここにいる?」

俺は、神と名乗る老人を問いただす。

「ここは世界の原点じゃ。ここにいれば色々な世界に干渉することが出来る。まあ、むやみやたらに外部世界と干渉するのは禁止されているからの実質的には不可能じゃが」

老人はそう言いながら一人笑っていた。

「して、なぜそなたがここにおるかじゃが……そなたは非常に運が良い」
「何が運が良いのだ?」

俺は一人で笑う老人に苛立ちを露わにしながら尋ねた。

「そなたは、この世界を統括する三神の一人、世界の意志として選ばれたのじゃよ!」
「は?」

俺は、目の前の人物のいう事が全く理解できなかった。

「じゃから、世界を統治する三神の、世界の意志として選ばれたのじゃ!」
「ちょっと待て、その世界の意志とは何だ? 第一俺は世界の意志とか神とかふさわしくはない」

俺は目の前にいる老人にそう告げた。

「知っておる。その上でそなたを選んだのだ。そなたの生き様は最悪なものだ、場合によっては地獄に落ちても不思議ではない。だが、そなたには反面教師として、同じ過ちをするものが出ぬように導くことも可能じゃろう」
「………なるほどな」

俺はようやく理解した。
もしこの世界に英雄と言う言葉が存在するなら、俺は反英雄だ。
そして、ここでは堕天使と言った所か。

「納得してもらえた様じゃな。では、世界の意志について説明するとしようかの」





こうして俺は、老人から世界の意志の役割、能力について長々と説明された。
要約すれば、俺の役割は管轄する世界が常に正常に動くように監視し、場合によっては現地に赴き対処するとの物だった。
そして俺には神術と言う力が与えられた。
ともあれ、これが俺と老人……ノヴァとの出会いでもあり、新たなる始まりの時だった。

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外伝 悲劇の報酬(後)

「ええええ!!?」
「な、な、なッ!!?」
「ケーキが」
「ない!?」

俺達は、取り分けてお皿の上に置いたはずのケーキが無くなったお皿を見て驚いていた。

「一体誰が……」
「さやか、あんたじゃないのか?」
「何を言ってんのよ!! 私は今までカップを探していたよ!! 証人はまどかよ」

杏子の言葉に、さやかが反論する。
そしていきなり名前を言われたまどかは慌てながらも、頷いていた。

「だ、だったら杏子はどうなのよ! 杏子は前からお菓子とかを食べまくってたじゃない」
「あ、あたしはそこら辺を歩いていただけだ。途中で渉たちに会った」

さやかの言葉に杏子が反論する。

「ああ、確かに途中で見かけたな」

俺は少し前の事を思い返しながら頷いた。
外にごみを捨てに行こうとした時の事なので、よく覚えていた。

「だったらマミの野郎はどうなんだよ!! いつもは良い子ちゃんぶっているけど、本性がどうなのかは誰も知らねえだろ?!」
「そ、そんな……ひどい」

今日この言葉に、マミさんは明らかにショックを受けた様子でうずくまってしまった。

「おいおい、さすがに言い過ぎだよ」
「そう言う渉はどうなんだよ! ケーキ好きの渉だったらやりかねない」

慌てて仲裁に入った俺に疑惑の目が向けられた。

「おいおい。さすがに俺でも1ホールは食べないって」
「だとしたら………」

俺達が見たのはテーブルの上で鎮座しているキュウベぇだった。

「あんたか? あたし達のケーキをつまみ食いしたのは?」
「僕は知らないね。でも食物が無くなっただけでここまで騒ぐ君達が、わけわかんないよ」

キュウベぇはそう言うとテーブルから飛び降りた。

「そう言えば、魔女は見たよ」
「魔女? それって……」

キュウベぇの言葉にその場にいた全員の視線が二人に注がれる。

「わ、私は魔女じゃないよ!?」
「誰が魔女だ!!」

さやかと杏子だ。

「どうすりゃいいんだ? これ」

目の前でいがみ合う二人と、それを取り囲む氷点下の雰囲気に、俺が頭を抱えた時だった。

「ん?」
「どうしたの? 渉君」

俺の服を控えめに引っ張るものがいた。

「いや、シャルロッテが………」
『………』

俺の言葉に、全員がシャルロッテの方を見遣る。

「そう言えば、これって……」
「元々は魔女だったよな」

杏子はゆっくりとシャルロッテに近づくが、何かを感じ取ったのか後ずさりしていた。

「はいはい、お前らも怖がらせない。で、シャルロッテ。お前ここにあったケーキ食べた?」

俺は、二人を止めると、シャルロッテに優しく尋ねた。
するとシャルロッテは潔く頷いた。

「……」

それを見た全員が固まった。

(なんで気づかなかったんだ)

俺は頭を抱えた。
シャルロッテはお菓子などを好んでいた。
だとすれば、目の前にケーキがあればそれを食べる可能性はあった。
俺は頭を抱えながら、シャルロッテを体の中に戻した。
おそらく当分は外には出さないだろうなと思いながら。 

「と言うことは、シャルロッテが犯人だけど、使い魔である以上渉も悪いことになるよね」
「………」

俺は嫌な予感がした。

「それじゃあ、渉君に責任を取ってもらうわね」
「……のオオオオオ!!!」

こうして、俺はなぜか同じケーキを2ホールも買わされた。
これが、俺が体験した悲劇の事件だった。

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外伝 悲劇の報酬(前)

それは、俺が体験した正直話したくもない思い出だ。
しかし、これを話さなければ俺は前には進めない。
なので、今あの悲劇の事件を話そうと思う。










それはとっても暑い夏のある日。
俺とまどかにさやか、そして杏子にマミさんになぜかキュウベぇは暁美さんの家を訪ねていた。

「で、これはどういう事かしら?」

しかし当の本人は顔をしかめてこっちを睨んでいるが。

「ごめんね、ほむらちゃん」
「まあまあ、そう怒らない怒らない」
「心が狭いと思われるぞ」

そんな暁美さんに、まどか達が必死に宥める。

「………まあいいわ。大したおもてなしは出来ないけれど」
「大丈夫だって、おもてなし用の物はこっちで用意してるし」

そう言ってさやかが持ち上げたのは、本日の目玉商品だ。

「………何よそれ?」
「何って、ケーキに決まってんじゃん。あんたそんな事も知らねえのか?」

呆然とした表情を浮かべる暁美さんに、杏子が呆れた様子で問いかけた。

「そんなことは知ってるわ。どうしてケーキだけなのかと聞いてるのよ」
「それは、渉君へのお礼っていう事で……」

そう、実はこのケーキは前にまどかと取引をした際の報酬なのだ。

「それで、みんなも一緒にと言うことになって、ケーキが1ホールになったの」

いや、マミさん。
貴方最初これを2ホール買おうとしてませんでしたか?

「だって、渉君は神様だから1ほーるだと不満足ではと思って」
「心を読むな!!」

そんな俺達のやり取りを見ていた暁美さんがため息を一つ。

「外で騒がないで。中に入って頂戴」
「お邪魔します」
「お邪魔するよ」
「「「お邪魔します」」」

こうして俺達は暁美さんの家へとお邪魔した。










「全員お茶でいいわね?」
『大丈夫(です)!!』

暁美さんの問いかけに全員が答えた。
約一人が「紅茶の方が良かったのだけど」とつぶやいていた気がしたのだが、それは聞かなかったことにした。

「あ~暁美さん。お茶、一人分追加」
「どういうこと?」

俺の突然の追加要求に暁美さんが怪訝した様子で問いかけてきた。

「………こういう事だ」
「なるほどね」

俺の視線の先を辿った暁美さんが納得したようにつぶやいた。
俺の視線の先にあったのは………

「あれって……」
「魔女!?」

そう、魔女だった。
しかも可愛らしい人形のような姿をした。
ちなみに名前はシャルロッテだ。
何でもマミさんを救った時の魔女らしい。

「なんでここに魔女がいるんだよ!!」
「あ~、それはだな簡単に言うと、俺の使い魔のようなものになったからだと思う」

俺は頬を掻きながら説明した。
いや、そもそも使い魔と言う表記は正しいのか?
俺は神だぞ?
そりゃ確かに俺は堕天使だと自負はしているが。

「ほ、本当に何でもアリだな。お前は」
「あ、あははは」

そんな事を話していると、暁美さんが赤い顔をして戻ってきた。

「渉、神剣を貸してくれるかしら?」
「は? 別に構わないんだが、何に使う気だ?」

突然の神剣の要求に俺は問いかけながら神剣を具現化する。

「その……ケーキを切り分けるために」
「はぁ!? あんた包丁とかはないのかよ?!」

俺の驚いたような言葉に、暁美さんがこくんと頷く。
まさかの事態だ。
いや、普通はあるはずなんだが。

「暁美さん、つかぬ事を聞くが、あなたいつも何を食べてる?」
「え? 主に健康食品やサプリメント――――」
「それはいかん! 色々とダメだ!!」

暁美さんの答えに、俺は思わず叫んでいた。

「食事! それは神が与えた極上の時間!!! そんな最高の一時が健康食品なんてダメだ!! 暁美さんにはこの至福の時間を俺がみっちりと教える!!」
「わ、渉君。別人みたい」

俺の言葉を聞いている間、まどか達はそんな事を言っていたそうな。

「それじゃ、俺と暁美さんとでケーキを切り分けるから、他のみんなは食器の用意と化をお願い」
『分かった(よ)(わ)』

そして俺は全員に指示を出して、それぞれの役割を果たすためにリビングを離れた。
それからしばらくして、テーブルの上に目玉商品のケーキを置いといて、俺と暁美さんとで外の方に箱を捨てに
その時、ケーキの前に、一つの”影”があったそうな。










そして、俺達がリビングに戻った時、目の前に広がっていた光景は………

「ええええ!!?」
「な、な、なッ!!?」
「ケーキが」
「ない!?」

何もない”お皿”だった。

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後書き&今後のことについて

改めて、初めての方は、初めまして。
それ以外の方はご無沙汰しております。
駄文の執筆者、TRです。

この度は、本作『魔法少女まどか☆マギカ~革命を促す者~』を読んで頂きありがとうございました。
これにて本作は完結となります。
とは言ったものの、いまだに不完全燃焼と言う心残りがあります。
ですので、この場を借りてもう少しだけ続かせて頂こうと思います。

これより先は外伝や、幕間などの本篇では書くことのできなかった話を書いていこうと思います。
サブタイトルに『外伝』と言う明記がされていた場合は、一種のネタであり、本篇とは全く関係のない話です。
続いて『XX.5話』などと言った話数が記されている場合は、諸事情により本篇で書くことの出来なかった話となります。

本篇は完結しましたが、まだまだ幕間のほうは続いていく予定です。
また、最後まで見てくださるといいことがあるカモ?

おそらく外伝や幕間の数は10にも行かない可能性がありますが、完結までのしばらくの間読んで頂けると幸いです。

それでは改めまして、本作を読んで頂き本当にありがとうございました!!

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エピローグ その後……

ワルプルギスの夜と終焉の魔女を倒してからもう二か月が経とうとしていました。
結局あの日の事はすべてスーパー何とかと言う、異常気象と言う事で伝えられました。
かなりの被害が出ていたみたいですが、一月もすればほとんどの建物が元に戻っていたので奇跡と言われていました。
そして今日もまた、私たちの一日が始まろうとしていました。

「おっはよう!」
「おはようさやかちゃん」
「おはようございます。美樹さん」
「おはよう」

待ち合わせの場所に遅れてきたさやかちゃんが、駆け足でこっちに走ってきます。
それに返事をするのは私と仁美ちゃん、そしてほむらちゃんです。

「ごっめーん。遅れちゃった」
「あなた、また暑いからって言うんじゃないわよね?」

両手を合わせて謝るさやかちゃんにほむらちゃんが冷たく、呆れた様子で言いました。

「だって、熱いものは熱いんだもん。私は熱いのが苦手なの」
「それは私達も同じよ。この暑い中で待たされる身にもなって」
「なにをー!」

喧嘩に発展しそうだったので、私たちは急いで二人の言い争いを止めました。

「二人ともストップ!」
「喧嘩はいけませんわ!」

私達が遮ると、二人は若干睨み合って離れました。
この二人、本当に相性が悪いです。
この間も些細なことで言い争いになって、喧嘩へと発展したことがありました。

「それにしても、明日から夏休みかぁ」
「遊ぶのは構わないけど、夏休みの宿題が終わらないからって私たちに助けを求めるようなことだけはしないでよね」

あ、また二人の間に火花が。

「わ、分かってるわよ!」
「ならいいのだけど」

こう見えても二人は、仲はいいのです。
よく喧嘩はしたりしますけど……

「そうだ、夏休みになったらみんなであそこに行かない?」
「……そうだね。かれこれ一月も行ってないからね」
「あまり放っておくと罰が当たるかもね。主に美樹さんに」

ほむらちゃんの言葉に、さやかちゃんが「なんであたし!?」と叫びます。
仁美ちゃんは意味が分かっていない様子でした。










「あら、まどかさんに美樹さん。それと暁美さん。おはようございます」
「「おはようございますマミさん」」
「………おはようございます。巴さん」

学園前でマミさん達と会いました。

「おはようございます、巴先輩」

仁美ちゃんは私たちつながりで、マミさんと知り合いになりました。

「うん。おはよう仁美さん」

マミさんの後ろにもう一人の人影がありました。

「ほら、あなたも挨拶をしなさい」
「わ、分かってるよ」

マミさんの言葉に、悪態をついて一歩前に出てきたのは、杏子ちゃんでした。

「おはよう、まどかにさやか、暁美さんに仁美」
「うん、おはよう杏子ちゃん」
「「おはよう杏子」」
「おはようございます。佐倉さん」

杏子ちゃんのあいさつに、私たちも返しました。

「そうだ、今日の放課後皆さんでどこかに行きませんか?」
「はい!」
「私も今日は用事がなかったので、行きまーす」
「まどかが行くなら私も」
「あたしも行く」

全員が賛成の意見を出す中、仁美ちゃんが申し訳なさそうに手を上げました。

「ごめんなさい。私、今日はお稽古が」
「あ、良いのよ。気にしないで」

こうして今日は仁美ちゃん以外の全員で、寄り道をすることになりました。










終業式が終わって、私たちは一面が雑草で生い茂る空き地に来ていました。

「ここに来るのも、何か月ぶりかしらね」
「約一月ほどだったと思いますよ」

マミさんの言葉に、さやかちゃんが答えます。
実はここ、渉君が住んでいた家があった場所なのです。

「結局、今どうしてるのかしらね? 彼」
「もしかしたら、また人助けでもしてんじゃない?」
「私もそう思います」

マミさんの呟きに、杏子ちゃんが答え、それに私も賛同します。

「彼のおかげで、私達は生きていることが出来た」
「渉君のおかげで、この街は元に戻ることが出来た」
「英雄……ね」

私の言葉は、風に乗って消えていきます。
あの後、さやかちゃんが戻ると、さやかちゃんの両親は、涙を流して喜んでいました。
そしてマミさんが復興した後に学校に行くと、全員が驚いていたそうです。
二人とも考えていた言い訳を言って、納得させたようでした。
そして、杏子ちゃんにもいいことが起きたのです。
復興した後、彼女の親戚の人が来て、杏子ちゃんを娘として引き取りたいと言われたらしいのです。
なので、今杏子ちゃんは親戚の人の家で暮らしています。
でも、いちばん変わってしまったのは渉君です。
学校に行って、出席確認の時に、渉君の名前が呼ばれませんでした。
その後もまるで彼がいなかったように進んで行ったのです。
仁美ちゃんにそれとなく渉君の事を聞くと、

「小野 渉さん……ですか? ごめんなさい、その人の事はよく知りませんわ」

と帰ってきた。
覚えているのは、魔法少女だった私達だけのようです。
まるで存在自体がもとからなかったことになってしまったのです。
そして、渉君自身の事も少しですが分かりました。









ある日の図書館で、私は無名の偉人について調べていました。
幸い、調べるキーワードはいくつかありました。
古代ヨーロッパ時代。
それが渉君自身で口にした言葉でした。
なので、歴史書を手分けして読んでいました。

「みんな、これって渉君だよね?」

そんな時、私はようやくその項目を見つけました。

「どれどれ……ってほんとだ、あいつにそっくり」
「おいおい、ウソだろ」

みんなが、挿絵を見て驚いています。
その挿絵には銃のようなものを構えている青年が写っていましたが、どことなく渉君にそっくりでした。
その本には、こう記されていました。

『数多の悪を挫いてきた無名の英雄。XX年に暗殺で死す』

たったそれだけでした。
渉君の事が乗っていたのは、わずか二行だけでした。

「こ、これって見滝原市の地図じゃないか!?」
『死後、異国の日本の地に埋没』と言う文面と共に掲載されていた地形図は、確かに見滝原市の地形と似ていました。
「行ってみる?」

誰かが呟いた言葉に、全員が無言で頷きました。
その後地形図をコピーしてそれを頼りに歩き回ることに時間。
ようやくたどり着いたのは……草が生い茂る空き地だったのです。

「ここって……」
「渉の家があった場所だよ」

その言葉に、私たちは驚きを隠せませんでした。
渉君の遺骨はここのどこかに埋められているのでしょう。

「あれ、何かしら?」

そんな時、マミさんが何かを見つけたのか雑草の中に入って行きました。

「な、何かあるのかよそこに」

杏子ちゃんの言葉を聞かないで、マミさんは雑草を押しのけるとそこにあったのは石碑でした。

「これって………」
「うん、そうよ。渉君の石碑よ」

その石碑はぼろぼろになっていて見ていてとても悲しくなりました。
私達はその石碑の前で手を合わせました。










「さて、そろそろ帰りましょう」
「………そうだね」
「もう夕方だしな」

マミさんの言葉に、全員が頷いた。

『渉(君)、ありがとう!』

私達は一緒に石碑の前でお辞儀をしながらお礼を言いました。

『お礼を言うのもいいが、早く帰れよ』

その瞬間、風に乗って渉君の声が聞こえたような気がしました。

「…………ふふ」
「あはは」

私達は顔を見合わせて笑うと、また来ると心に誓って言われた通りに早く帰ることにしました。
















歴史上に名前を残さなかった偉人。
例え歴史にも、人々の記憶にも残らなかったとしても、私たちはずっと覚えていると思います。
私達を導いて、助けてくれて町を守ってくれた英雄………小野 渉と言う少年の事を。
私達は絶対に忘れません。


Fin.

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