「ええええ!!?」
「な、な、なッ!!?」
「ケーキが」
「ない!?」
俺達は、取り分けてお皿の上に置いたはずのケーキが無くなったお皿を見て驚いていた。
「一体誰が……」
「さやか、あんたじゃないのか?」
「何を言ってんのよ!! 私は今までカップを探していたよ!! 証人はまどかよ」
杏子の言葉に、さやかが反論する。
そしていきなり名前を言われたまどかは慌てながらも、頷いていた。
「だ、だったら杏子はどうなのよ! 杏子は前からお菓子とかを食べまくってたじゃない」
「あ、あたしはそこら辺を歩いていただけだ。途中で渉たちに会った」
さやかの言葉に杏子が反論する。
「ああ、確かに途中で見かけたな」
俺は少し前の事を思い返しながら頷いた。
外にごみを捨てに行こうとした時の事なので、よく覚えていた。
「だったらマミの野郎はどうなんだよ!! いつもは良い子ちゃんぶっているけど、本性がどうなのかは誰も知らねえだろ?!」
「そ、そんな……ひどい」
今日この言葉に、マミさんは明らかにショックを受けた様子でうずくまってしまった。
「おいおい、さすがに言い過ぎだよ」
「そう言う渉はどうなんだよ! ケーキ好きの渉だったらやりかねない」
慌てて仲裁に入った俺に疑惑の目が向けられた。
「おいおい。さすがに俺でも1ホールは食べないって」
「だとしたら………」
俺達が見たのはテーブルの上で鎮座しているキュウベぇだった。
「あんたか? あたし達のケーキをつまみ食いしたのは?」
「僕は知らないね。でも食物が無くなっただけでここまで騒ぐ君達が、わけわかんないよ」
キュウベぇはそう言うとテーブルから飛び降りた。
「そう言えば、魔女は見たよ」
「魔女? それって……」
キュウベぇの言葉にその場にいた全員の視線が二人に注がれる。
「わ、私は魔女じゃないよ!?」
「誰が魔女だ!!」
さやかと杏子だ。
「どうすりゃいいんだ? これ」
目の前でいがみ合う二人と、それを取り囲む氷点下の雰囲気に、俺が頭を抱えた時だった。
「ん?」
「どうしたの? 渉君」
俺の服を控えめに引っ張るものがいた。
「いや、シャルロッテが………」
『………』
俺の言葉に、全員がシャルロッテの方を見遣る。
「そう言えば、これって……」
「元々は魔女だったよな」
杏子はゆっくりとシャルロッテに近づくが、何かを感じ取ったのか後ずさりしていた。
「はいはい、お前らも怖がらせない。で、シャルロッテ。お前ここにあったケーキ食べた?」
俺は、二人を止めると、シャルロッテに優しく尋ねた。
するとシャルロッテは潔く頷いた。
「……」
それを見た全員が固まった。
(なんで気づかなかったんだ)
俺は頭を抱えた。
シャルロッテはお菓子などを好んでいた。
だとすれば、目の前にケーキがあればそれを食べる可能性はあった。
俺は頭を抱えながら、シャルロッテを体の中に戻した。
おそらく当分は外には出さないだろうなと思いながら。
「と言うことは、シャルロッテが犯人だけど、使い魔である以上渉も悪いことになるよね」
「………」
俺は嫌な予感がした。
「それじゃあ、渉君に責任を取ってもらうわね」
「……のオオオオオ!!!」
こうして、俺はなぜか同じケーキを2ホールも買わされた。
これが、俺が体験した悲劇の事件だった。
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