「くたばれ、この裏切り者!!」
「悪魔!!」
「鬼!!」
……それは今まで俺に浴びせられた罵声のほんの一部だ。
人に恨まれることはあれど、褒められたり称えられたりすることなどまずなかった。
何処をどう間違えたのか。
そんなことはどうでもいい。
考えるまでもないことだ。
そして罵声を言われ続けた俺は何者かによって殺された。
所謂暗殺と言うものだ。
不思議と俺は誰かを恨むと言う心はなかった。
逆に納得していた。
自分は殺されて当然だと。
それ相応の事をしてきたのだ。
最初は数字の計算利益が多い方を選択して、友を殺した。
他にも、人質となっている人を犯人と共に殺した事もあった。
一人が嫌で始めたことが、何時しか偽善者へとなっていた。
俺は行き先は地獄だと思いながら、意識を手放した。
しかし、世界は本当に残酷だ。
「初めましてじゃな。無銘の偉人よ」
「どういう事だ? これは」
俺の前にいるのは老人だった
しかし、その老人から放たれる威圧感は、数多の死闘を乗り越えた俺ですら震えるほどだった。
「そう睨まないでくれるかのう?」
「………」
俺は無言で目を閉じた。
「まずは自己紹介からじゃ。わしの名前はノヴァ………この世界を統治する三神だ」
「は?」
俺は思わず唖然としてしまった。
なぜなら、俺の目の前に突然神と名乗るものがいるのだ。
(頭でもおかしいのではないか?)
「失礼じゃな。わしはこれでもまだまだ現役じゃぞい」
「なッ!」
俺は自分の心の声が目の前ん老人に聞こえたことに驚きを隠せなかった。
「じゃから言ってるはずじゃ。わしはこの世界を統治する三神の創造の神じゃと」
「………オーケー、百歩譲ってあんたが神だとしよう。ここはどこだ? そしてなぜおれがここにいる?」
俺は、神と名乗る老人を問いただす。
「ここは世界の原点じゃ。ここにいれば色々な世界に干渉することが出来る。まあ、むやみやたらに外部世界と干渉するのは禁止されているからの実質的には不可能じゃが」
老人はそう言いながら一人笑っていた。
「して、なぜそなたがここにおるかじゃが……そなたは非常に運が良い」
「何が運が良いのだ?」
俺は一人で笑う老人に苛立ちを露わにしながら尋ねた。
「そなたは、この世界を統括する三神の一人、世界の意志として選ばれたのじゃよ!」
「は?」
俺は、目の前の人物のいう事が全く理解できなかった。
「じゃから、世界を統治する三神の、世界の意志として選ばれたのじゃ!」
「ちょっと待て、その世界の意志とは何だ? 第一俺は世界の意志とか神とかふさわしくはない」
俺は目の前にいる老人にそう告げた。
「知っておる。その上でそなたを選んだのだ。そなたの生き様は最悪なものだ、場合によっては地獄に落ちても不思議ではない。だが、そなたには反面教師として、同じ過ちをするものが出ぬように導くことも可能じゃろう」
「………なるほどな」
俺はようやく理解した。
もしこの世界に英雄と言う言葉が存在するなら、俺は反英雄だ。
そして、ここでは堕天使と言った所か。
「納得してもらえた様じゃな。では、世界の意志について説明するとしようかの」
こうして俺は、老人から世界の意志の役割、能力について長々と説明された。
要約すれば、俺の役割は管轄する世界が常に正常に動くように監視し、場合によっては現地に赴き対処するとの物だった。
そして俺には神術と言う力が与えられた。
ともあれ、これが俺と老人……ノヴァとの出会いでもあり、新たなる始まりの時だった。
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