さて、突然だが、俺は今おそらく一番のなぞに遭遇している。
「………あの」
「何かしら? 渉君」
俺の言葉に首を傾げるマミさん。
「なぜにあなたは俺の腕を掴んでいるんですか?」
「なぜって掴みたいからよ? 暁美さんだけデートに誘って私をのけ者なんてないよね?」
なぜだろう?
マミさんの万弁の笑みが一番恐ろしく感じるのは。
(きっと俺の心が穢れてるからだ! きっとそう)
「それで、どこに行くんですか?」
「渉君にももう少し紅茶の魅力を知ってもらうためにティーショップよ」
俺の疑問に、マミさんはそう答えてくれた。
だが、俺紅茶は嫌いではない。
どちらかと言えば好きな方だ。
俺は静かに彼女に引っ張られるがまま、ティーショップへと向かうのであった。
「何を買うんですか?」
「そうね……まずはティーカップを2,3個。後は紅茶の葉っぱね」
ティーショップに到着した俺達は、紅茶の道具を選んでいた。
そう言えば俺の家には、こういったものが一切なかったようにも思える。
まあ、あの時にはそんな必要性なんかもなかったしな
「渉君、これとこれ、どっちがいいかしら?」
「えっと……これで」
俺は目の前に差し出された缶を見て、適当に選んだ。
ちなみにこの時の会計も、前のように洗脳で払ったように思わせることにした。
マミさんが非常に申し訳なさそうに店員さんを見ていた。
きっと何かいいことがあるよ、たぶん。
(俺も、何かバイトとやらを始めてみるか)
そんな事を思いながら俺達は帰路についた。
「今日はありがとうございました」
「ううん、気にしないでいいのよ。私は渉君とお出かけをしたかっただけなんだから」
その時のマミさんの笑顔は、前のような恐ろしさもなく、只々光り輝いていたのがとても印象深かった。
おまけ マミさんの地獄レッスン
さて、紅茶の道具を勝手からと言うもの、俺にはある地獄までもが付いて来ていた。
そう、マミさんの紅茶の入れ方講座だ。
一見すると非常にいいことに見えるかもしれないが。
「った!!」
「そこが違うのよ。良い? 紅茶と言うのはこうするのよ!」
スパルタなのだ。
今叩いたのはハエ叩きという道具だ。
しかもこれ、地味に痛い。
「ちょっと、渉君、聞いてるの!?」
「聞いてます!!」
例にもよってまどか達は全員が逃げていく始末だ。
「渉君!!!」
「うぎゃああ!!」
この地獄のようなレッスンは2週間にも及んだ。
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