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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

【案内板】

黄昏の部屋(別館)

当サイト、『黄昏の部屋(別館)』へようこそ。
こちらでは某小説投稿サイトで、私TRcrantが投稿していた小説を掲載しています。
読まれましたら拍手や感想などをして頂けると執筆意欲向上に繋がったりします。
(『その力の先にあるもの』と『IS(インフィニット・ストラトス)~破門されし者~』は、本館の方にて掲載されています。)

*注意*
本サイトの小説はすべて二次創作です。
そのため、突然の削除などが行われる可能性がございます。
二次創作が苦手な方は、ご覧になられないことをお勧めいたします。
拍手または感想等を募集しております。
拍手コメントでレスが不要な方は、拍手コメント時にその旨をコメントに明記してください。
明記されてない場合は、HN共々雑記にてコメント返しにて表記されますのでご注意ください。
注意事項はこちらをご覧ください。
他、明記されていない細かい注意点は本館と同じですので、そちらの方をご覧ください。

それでは、ごゆっくりとお楽しみください。

===更新履歴(最新の3日分のみ表示)====
・4月18日
『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』第42話を掲載しました。
雑記を掲載

・4月17日
『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』第41話を掲載しました。
雑記を掲載

・4月16日
『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』第40話を掲載しました。
雑記を掲載
=======
掲載作品一覧

魔法少女リリカルなのは~世界からの来客者~

魔法少女まどか☆マギカ~革命を促す者~

魔法少女リリカルなのは~目覚めた力~

魔法少女リリカルなのはstrikers~失った力~

DOG DAYS~誤召喚されし者~

ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~

魔法少女リリカルなのは~目覚めた力~RB

To Loveる~二つの人格を持つ者~

けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~

二人の神と欲望に駆られた人間たち

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PR

『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRcrantです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
今回よりオリジナルの話になります。
少々シリアル路線だったりもします。


それでは、これにて失礼します。

拍手[0回]

第42話 兆し

僕の前には長椅子に座っている唯と梓と澪の三人、そしてその後ろに立つ律とムギ。

「それじゃ……行くよ」

僕のその言葉に、唯と律にムギは興味津々に僕がこれからしようとすることを見守る。
そして澪と梓は緊張の面持ちで僕を見ていた。
そんな視線を受けながら、僕は肩に掛けてあるギターの弦を弾いた。
それが演奏を始める合図だった。










すべての切っ掛けは、ある日の放課後のこと。

「あ、私はリンゴタルト~」
「それじゃ、モンブラン!」
「なっ!? それは私が狙っていたのに!!」
「へっへ~ん、こういうのは早い者勝ちなのだよ。澪ちゅわ~ん」
「「…………」」

目の前で繰り広げれる醜い争いに、僕と対面の席に座る梓は言葉を失っていた。

「あれ、あずにゃんと浩君は食べないの?」
「い、いえ。それじゃ、バナナ味を」
「僕はチーズ味を」

お菓子程度で争う二人の姿に呆れていたとも言えず、僕たちは各自好きなケーキを取っていく。
今日のお菓子は、多種多様なケーキだった。

(まあ、チーズケーキを誰かが取ったら、僕もあんな風になるんだろうな)

僕にはチーズケーキ一つを巡って戦争をする自信があった。
それほど食べ物とは恐ろしい魔物なのだ。
梓の一件からしばらく経った。
二つの机を生徒会から許可をもらって、部室に運んだのはつい最近のこと。

『梓はどこに座る?』
『えっと、それじゃ……』

新たに二つほど机が増えたことで、梓にどこの席がいいかを尋ねる。
そして梓が選んだのは物置部屋側の壁とは反対の席……僕の対面の席だった。
ちなみに、山中先生の席は僕が座っていた物置部屋側の机の横の部分だった。
そんなこんなで、今日も今日とて雑談に花を咲かせる唯たち。

「どうしたの浩君?」
「いや、よくそんなに話す内容があるなと思って」

何も言わない僕を不審に思ったのか、首をかしげながら尋ねてくる唯に、僕は苦笑しながら答えた。
先ほどから、話声が尽きることが全くない。
いくら五人の人がいる(とはいえ、話をしているのは主に四人だが)からと言って、ここまで続くのはある意味すごいことだった。

「だって、毎日楽しいんだもん♪」

満面の笑みで応える唯。

「そうそう、ネタはいろいろあるだぜ。例えば澪の面白恥ずかしい過去とか」
「なっ!? それだけは絶対にダメっ!!」

律の言葉に必死に阻止しようと声を上げる澪。

「え~、私澪ちゃんのこと聞きたいなー」
「私も」

律の言葉に興味を持った唯とムギの二人が律の援護射撃に入る。

「だ、ダメと言ったらダメっ!!」
「あー、はいはい。冗談だから」

今にも掴み掛らんとする勢いの澪を止めるように両手を上げて宥めた。

「ちぇ~」
「聞いてみたかったのに」

そんな律に、不服そうな顔で頬を膨らませる唯と残念そうに言葉を漏らすムギ。

「だったら、浩介の恥ずかしい過去でも聞けばいいんじゃね?」
「あ、そうだね~♪」

そんな二人にかけられた、小悪魔のような笑みを浮かべた律の言葉に期限を治した唯が僕の方に向き直った。

「ということで、話してよ浩君」
「うん分かった。あれはそうだな今から……って誰が言うかっ!」

危ない、危うく本当に話すところだった。

「ぶーぶー」
「だったら自分の恥ずかしい過去でも話せばいいじゃないか」

再び頬を膨らませて膨れる唯に、僕はため息交じりにそう告げた。

「そうだね! それじゃあね………あ、そうだ。あれは―――「って、本当に話すな!」―――もう、浩君はわがままさんだね~」

適当に言ったことを真に受けて本当に話そうとする唯を止めた僕は、わがままなこと言う認識をされた。
……何だか無性に腹が立つのはどうしてだろう。

「それじゃあ、あずにゃんの恥ずかしい過去でも―――」
「絶対に嫌ですっ!」

即答で拒否をする梓も、すっかり軽音部に慣れてきたようだった。

「梓にとっての恥ずかしい過去って、ねこ耳を付けた時のような気がするのは僕の気のせいか?」
「だったら、今つければいいんだよ!」

そう言う言う唯の手にはどこから取り出したのか、ねこ耳があった。

「それは絶対に嫌です! 後、浩介先輩も蒸し返さないでください!」
「これは失礼」

梓から怒られた僕は、軽く謝った。
今日も軽音部は通常運航だった。

――――チク

「……?」

楽しげに談笑する唯たちを見ていた僕は、ふと胸の痛みを感じた。
それは体の問題ではないような気がした。
言うなれば、心の方だ。

「どうしたの、浩君?」
「いや、なんでもないよ」

再び唯から聞かれた僕は、そう答える。さっきのはただの気のせいだと結論付けて。
それはもしかしたら、兆しだったのかもしれない。










数日後の昼休み、僕と慶介は机をくっつけて向かい合うようにして昼食をとっていた。
ちなみに、これがいつもの昼休みの光景でもあった。
特に用がない限り、慶介と食べることが多いような気がする。
非常に不本意だが。

「今日はお弁当か~」
「文句でもあるのか?」

お弁当を広げて黙々と食べている僕は、慶介の言葉に睨みつけながら問いかける。

「いや、文句なんてないって。ただ、お恵みがほしいだけだから」

(完全にたかってるじゃないか)

何の惜しげもなく言える慶介の精神に、呆れを隠せなかった。

「別にいいぞ。今から頬るから、口でキャッチしろ」
「お、大道芸だなっ! 良いぜ、受けて立ってやる!」

僕の無茶な指示に、慶介はテンション高めに応じた。

「これを成功させれば女の子にもてるぞ~!」
「…………」

欲望ダダ漏れの慶介をしり目に、僕はから揚げを一つ箸でつかむ。

「ほれっ」
「よし来たぁ!!」

放り投げられた唐揚げは飛んでいく。
……対角線上に

「って、無茶だぁっ!!!」

対角線上に飛んでいく唐揚げを口でキャッチするには、斜めに飛んでいかなければいけないが、普通の人にその芸当は不可能。
他の手段としては、机の合間を縫って行くしかない。
とはいえ、全力で走りながら唐揚げの落下点を予測しなければいけないので、とてつもない難易度になるが。
さて、全速力で教室内を走る慶介。

「ずべしっ!?」

だが、何かに引っかかったのか盛大にこけた。

(ま、無理だとは思ってたけどね)

僕は心の中でつぶやきながらお弁当箱のふたを手にする。
そして椅子の上に立ち上がった僕は、そのまま対角線上にとんだ。
空中で一回転をしながら現在落下中の唐揚げを蓋の中に入れた僕は、そのまま何もない場所に着地した。

『おぉ~』

僕の芸当によってか、それとも慶介の惨めな行いによってかは知らないが注目を集めていたようでクラス中から拍手が送られた。

「すっご~い。サーカスみたいだったわ」
「うんうん。思わず見惚れちゃったよ~」
「ど、どうも」

次々と浴びせられる歓声に、僕は恥ずかしさのあまり視線を逸らした。

「結局、うまい思いをするのはお前か」

盛大にこけた慶介から恨めしそうな声を掛けられた。





「それにしても、浩介の親って料理上手だよな」
「いきなりなんだ?」

先ほど放り投げた唐揚げを頬張りながら慶介はそんなことを言ってきた。

「この唐揚げとてもうまいぜ!」
「残念だが、それは僕の自作だ」

称賛の声を上げる慶介に、僕は本当のことを告げる。

「は? なんで自分で作ってるんだよ?」
「そんなの、家に親がいないからに決まってるだろ」

信じられないとばかりに訊いてくる慶介に、呆れながらウインナーを口にする。

「あ……悪い」
「勘違いするな。親はちゃんといるぞ。別居してるけど」

そんな僕の言葉に勘違いしたのか、罰が悪そうに謝る慶介に、口の中の食べ物を飲み込んでから口にした。

「は? どうして別居なんかしてるんだよ」
「ちょっとしたことで家出をしたから」
「家出って……それじゃ、生活費とかはどうしてるんだよ?」

僕の口にした理由(当然嘘だが)に信じられないと言わんばかりに下世話なことを聞いてくる慶介。

「親から仕送りでもらってる。数か月に一回の間隔で実家に帰ることを条件にだけど」

僕は嘘の説明をしながら海苔ごはんを口に入れる。
実際はすべて僕のポケットマネーで生活している。

「へぇ~、いろいろ大変なんだな」
「それはお互い様だ」

慶介も明るくするために、演技をしていたりするのだから。
まあ、本心が4割というのがかなり気にはなるが。

「だな」

そして僕たちは黙々と昼食を食べていく。
この時はあの時に感じた胸の痛みはなかった。










「あの、浩介先輩」
「ん? どうかしたか、あずにゃん?」

放課後、部室でいつものように話に花を咲かせていると、梓が突然何かを思い出した様子で話しかけてきた。

「前から聞こうと思ってることがあるんですけど。その、間違っていたらごめんなさい」
「な、何かな梓? 改まって」

梓の様子から、僕は呼び方を元に戻して先を促した。
気づけば、他の皆も話をやめて梓の答えを待っていた。

「その、浩介先輩って……」

そこまで言うと、言いづらそうに視線をさまよわせたが、すぐに僕の方を見つめてきた。

「DKさん………ですか?」
「……っ」

梓の言葉に、表情を変えないように気分を落ち着かせる。

「で、DKって……」
「H&Pのメインボーカル兼リードギターの人です」

澪が目を見開かせて声を漏らすと、分からないと思ったのか梓が説明をした。

「藪から棒に、何を言ってるんだ梓?」
「すみません。この間DKさんとお話しする機会があったんです」
「な、何ぃーッ!?」

梓の言葉に一番の衝撃を受けていたのは澪だった。
それはもう椅子を吹き飛ばすような勢いで立ち上がるほどに。

「ど、どうしたんですか澪先輩?」
「あー、澪はDKのファンみたいでな」

突然の澪の変化に、驚きを隠せない梓の問いかけに律は苦笑しながら答えた。

「う、うらやましい。私だって一回も話したことがないのに」

(しょっちゅう話していることを知ったら、どうなるんだろう)

ぶつぶつとつぶやく澪に、僕は心の中でつぶやいた。
どうやら僕にはまだ余裕があるようだ。

「は、話を戻しますね。その時に、DKさんが言ってたんです。『さすがは親の影響で小4からギターをやっているだけある』と」
「別に普通だと思うけど? ねえ、律ちゃん隊員」

梓の言葉を聞いていた唯がいつになくまじめな様子で律に同意を求める。
そんな律も頷いて答えた。

「でも、私が親の影響で小4からギターをやっていることは、軽音部の皆さんにしか言ってないんです」
「それって、手紙で書いたとかじゃないのか?」

考え込んでいた澪が梓に問いかける。

(手紙に書いてあったっけ?)

僕は心の中で思い起こしてみるが、そのような文面に心当たりはなかった。

「探してみたんですけど、全く書いてませんでした」
「それは確かに、おかしいわね」

顎に手を当てて思案顔のムギが呟いた。

(というより、よくとっておいたよね)

梓の場合は数年前からファンレターが来ている。
その数は優に100を超えているはずだ。
それを取っておく彼女の執念がすごかった。

(それにしても、かなりまずいことになった)

あの時は手紙に書いておいたということに解釈するだろうとたかを括っていてさほど気にも留めていなかったが、まさかここにきて裏目に出るとは。

「それに、浩介先輩の演奏の方法がDKさんと同じなんです」

そして、演奏面からも指摘が入った。

「浩介先輩。先輩がDKさん、なんですか?」
「それは……」

もはや万事休す。
何を言っても誤魔化せないと悟った僕は、覚悟を決めた。

「実はな、梓」

そんな中、助け舟を出したのは意外にも律だった。

「浩介ってDKの知り合いらしくてな、よくギターを教えてもらっているんだってさ」
「そ、そうなんですか?」

律が言ったのは前に僕が説明した内容と同じものだった。

「そうだよ」

梓に僕は、渋々頷く演技をしながら答えた。

「ごめんね、つい練習の合間の雑談で梓のことを話しちゃったから、言いだしづらくて」
「そうだったんですか」

取ってつけたような理由に、梓はすんなりと納得してくれた。

「本当に申し訳なかった」
「そ、そんな謝るほどのことでもないです。まあ、ちょっとうらやましかったりしますけど」

席を立って謝る僕に、慌てながら話す梓だったが、最後の方のは絶対に本音だと思う。

「というより、律知ってたんなら言ってよ」
「あはは、ごめんごめん。追い詰められていく浩介の表情が面白くてつい♪」

僕の非難の声に、律は笑いながら相槌を打った。

「まったく、律はしょうがないんだから」
「そう言ってる澪も知ってたよな?」
「うっ!?」

ため息交じり呆れた様子で言った澪に律はにやりとほくそ笑みながら指摘した。

(どっちもどっちだ)

僕は心の中でそうつぶやいた。

「でも、DKさんにギターのコーチをしてもらえるなんて羨ましいです」
「だったら、浩介にでも頼んでもらうようにお願いしたらどうだ?」
「そうだね! ついでに私も教えてもらっちゃおう~」

梓の言葉に、律と唯が相槌を打つ。

――――――チク

(……まただ)

二人の会話を聞いていると、再びあの痛みが走った。

「あれ、どうかしたの?」
「ちょっとお手洗いに」

席を立った僕にムギが尋ねてきたので、僕はあたりさわりのない理由を告げて部室を後にした。

「……オープラ」

部室を出た突き当りのドアに手をかけ、周囲に誰もいないのを確認してから魔法で鍵を開けた。
そこは屋上に続くドアだった。
外に出た瞬間に、心地よい風が僕を包み込んだ。
僕はゆっくりと前に足を進める。

(慶介とのやり取りと、軽音部でのやり取りの時の違いって……なんだ?)

屋上から望める景色にも目を止めずに、僕は心の中で問いかける。
そして思い出してみた。
慶介の時にあって、軽音部の時にはない物を。

「……………あぁ、そうか」

考えてみれば簡単に見つかった。
慶介の時にあって軽音部の時にはない物。
軽音部の時にあって、慶介の時にはない物の正体。

「僕って……」

それはきっと

「孤独だったんだ」

一種の疎外感のようなものなのかもしれない。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRcrantです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
今回は、ある人物のファンから石を投げられそうな気がしてなりません(汗)
それはともかく、次話から落ち次なるの話となります。
どのような話になるのかはその時までのお楽しみということで。


それでは、これにて失礼します。

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第41話 答え

ライブハウスでの一件から数日が経った。

(困ったな)

僕はあることに頭を悩ませていた。

「はぁ」
「おいおい、何ため息なんかついてテンション下げてんだよ!」

思わずため息をついていると、慶介から激が飛んだ。

「そう言うお前は馬鹿みたいにテンションが高いな。そんなにいいことでもあるのか?」
「今日は体育だぞ! 女子のキャッきゃうふふを見れるチャンスだ―――ぐばぁ!?」

とりあえずバカなことを言う慶介の顔面を蹴る飛ばすことで黙らせた。
どうせ、すぐに

「痛ってえな。最近力つけてないか?」

このように回復するのだから。

「うるさい。能天気なお前には想像もできない悩みがあるんだよ」
「その悩みって、この間言っていた新入部員の子がらみか?」

言葉を吐き捨てて、ジャージに着替えるべく男子トイレに向かおうとその場を後にしようとする僕の背中に、真剣な声色の慶介の言葉が掛けられた。
ちなみに、男子の更衣室は今現在も設けられていないため、増設された男子トイレが臨時の更衣室と化している。
これが、元女子高の現実だ。
僕は慶介の問いかけに、頷いて答える。

「辞めるのか?」
「いや、分からない。今はその可能性が高いことくらいしか」

慶介の問いかけに、僕は首を横に振りながら現状の考えを告げた。

「そうやって、何でもかんでも諦めるのは良くないと思うけどな。信じれば救われるっていうじゃないか」

慶介からの指摘に、僕は何も答えられなかった。

「俺のようなバカだって、受かってるって信じて受かってたわけだし」
「確かにそうかもな。出なければお前がここにいることなどありえないしな」
「あの、自分で言っておいてあれだけど、頷かれると地味にきついっす」

慶介の言葉に説得力を感じた僕が頷くと、慶介から落ち込んだ様子の声が返ってきた。

「ありがと。慶介の意見、参考にさせてもらうよ」
「そうか? それならよかった」

僕は慶介に”後で”と告げると、今度こそ教室を後にする。

(それでも、このままで放置するのは非常によろしくないな)

僕は心の中でつぶやくと、進行方向を変えた。
場所は、梓のクラスの教室だ。










梓のクラスの教室前まで来た僕は、教室内から死角になる場所で教室から出てくる生徒が来るのを待った。

「あれ、浩介さん?」
「ん?」

そんな僕によく知る人物から声が掛けられた。
見れば、そこには憂の姿があった。

「こんなところで会うとは奇遇だね」
「あれ? お姉ちゃんから聞いていませんか? 私、ここのクラスなんです」

そう言って指で指示したのは、僕が立っている教室だった。

「そうだったんだ。まったく知らなかった」

最近は唯たちの話を聞き流している状態だったため、もしかしたら聞き逃していたのかもしれない。

「あの、何か用ですか?」
「ああ、実は僕の名前を伏せて梓を呼んでもらいたいんだ」

運よく憂に会えたため、僕は梓を呼び出してもらうように頼んだ。

「別にかまいませんけど、どうして浩介さんの名前を隠すんですか?」
「ちょっと部活関係でいろいろあってね。名前を言うと逃げられそうだから」

我ながら、もっとましなことを言えないのかと思うが、これ以外の言い方は僕は持ち合わせていなかった。

「わかりました。ちょっと待っていてくださいね」

(詳しい事情を聴かずに引き受けてくれるなんて、本当にできた妹だ)

軽くお辞儀をしながら中に入っていく憂に僕は、そんな感想を抱いていた。
それから待つこと数十秒。
ターゲットでもある梓が教室から姿を現した。

「あずにゃん」
「っ!?」

呼び出した人物を見つけるためか、僕に背を向けてあたりをきょろきょろと見回しているところに声を掛けると、その体が大きく震えた。

「その様子だと、病気ではないようだな」
「え?」

僕の言葉が意外だったのか、梓はこっちの方に振り返った。

「ここ数日部室に来なかったから、病気でもしたのかと思ったが、元気そうで安心した」
「べ、別に病気なんかじゃ」

ばつが悪そうに僕と視線を合わせようとしない梓の様子に、僕は苦笑しながらも言葉を続けた。

「どうして来なくなったのか、その理由は聞かないし、そのことで怒るつもりもない」
「それじゃ、何をしにここへ?」

梓から視線を外しながら言うと、尤もな疑問を投げかけられたため僕は再び視線を彼女に戻した。

「ちょっとしたアドバイスをね」

そう言って、僕は言葉を区切った。

「あずにゃんは軽音部をやめるのか? それとも続けるのか?」
「………」

僕の問いかけに、梓は何も答えなかった。

「急がなくてもいいから、しっかりと考えて自分自身で答えを決めること。決めたらいつでもいいから部室に来い。そこで梓の答えを聞かせてもらう」
「でも……」

僕の提案に、梓は難色を示した。
梓の気持ちもわからなくはない。
先輩たちの前で退部をすることを告げるというのは、僕が想像するよりも過酷なことなのかもしれない。
それでも、けじめというのは何事も必要なのだ。

「もちろん、無理やり引き止めさせたり罵声などを浴びさせないよう努力をすることを約束しよう。当然だが、その後偶然顔を合わせた時も自然と接することができるようにすることもね」

こればかりは他人の心なので、難しいが唯たちは根はいい人だ。
きっと僕の頼みを聞き入れてくれるはずだ。

「ただし、自分の口にした答えには責任を持つこと。一度自分で決めたことを撤回することも他者のせいには許さない。おそらく僕が罵声の一つでも浴びせるだろうけど」
「…………」

僕の言葉に、梓は真剣な面持ちで聞いていた。

「僕はどちらを選んでもらっても構わない。まあ、本音を言えばやめてほしくはないけどね。ようやく訪れた待望の新入部員という理由もあるけど、中野梓という存在は、軽音部のメンバーにとっていい意味で刺激を与える可能性があるからね」
「そうでしょうか?」

即答にも近い形で聞きかえされた僕は、思わず苦笑してしまった。

「まあ、梓にはこのまま続ける自由もありし、辞める自由もある。存分にどちらかの権利を使うといい。それじゃ」

僕は言うことだけ言ってそのままその場を後にした。

「え、あの? 浩介先輩?」

後ろで困惑した様子で声を掛けてくる梓に、僕は片手を上げて応じる。
僕は後ろを振り向くことはなかった。





その日の放課後、僕はいつものように部室へと向かう。

「あら、高月君」
「ん? 真鍋さん」

階段を上がろうとしたところで、誰かに呼び止められた僕が振り返るとそこには数枚程度の紙を手にした真鍋さんが立っていた。

「これから部活?」
「まあ、そんなところ」

真鍋さんの問いかけに、僕は頷きながら答える。

「それで、どうなの?」
「何が?」
「新入部員よ。続けていけそう?」

真鍋さんの言葉の意味するところが分からずに首をかしげている僕に、真鍋さんは分かりやすく説明してくれた。
だが、まず出てきたのは素朴な疑問だった。

「どうして、貴女が知ってる?」
「唯が言ってたのよ。『あずにゃんが部室に来ない』ってね」

疑問に答えた真鍋さんに、僕は軽く驚いた。
尤も、その驚きは”あずにゃん”と何の躊躇もなく口にしたことだったが。

「無理だろうな。おそらく、次に来るときは”退部届”を持参してくると思う」
「そう」

僕の推測に、真鍋さんは一言だけ呟いた。

「高月君は、彼女に続けてほしいと思っていないの?」
「そりゃ、もちろん思っているに決まってる。だが、辞めたいと言っている人に無理に居続けてもらうというのはお互いの為にならない」

だからこそ、梓にはどちらを選んでも構わないと言っているのだ。

「あなた、色々と損するタイプって言われるでしょ?」
「はは、正解。でもまあ、それでいい方向に向かうのであれば、構わないんだけど」

真鍋さんの鋭い指摘に、苦笑しながら相槌を打つと階段を上りきった。
そこは部室と生徒会室の分かれ道だった。

「それじゃ、また」
「会えたらね」

真鍋さんと別れの挨拶をした僕はさらに階段をのぼり部室へと向かうのであった。

(信じた者は救われる……ねえ)

慶介に言われた言葉がふと頭をよぎった。

(世の中には、信じただけではどうしようもないことだってあるんだよ)

ここにはいないやつに、僕は心の中で反論するのであった。










僕が梓に軽くアドバイスをしてからさらに数日が経った放課後のこと。

「あずにゃん、最近来ないね」
「来ないのかもしれないな」

ここ最近珍しく(かなり失礼だけど)毎日練習をしていた僕たちだったが、唯の口にした一言で、全員が手を止めてしまった。

「いや、来るんじゃない?」
「そうかな?」

僕の口にした予想の言葉に、唯は浮かない表情で聞いてきた。

(その時に『退部届』と書かれた封筒を持っているかもしれないけれど)

あまりにも酷いのでその予想だけは口にはできなかった。
そんな時、部室のドアが開く音が聞こえた。
ドアの方に視線を向けると、そこには梓の姿があった。

(やっぱり、そういうことか)

背中に自身の相棒でもあるギターケースがないのを見た僕は、梓の答えが何なのかを知ってしまった。

「最近どうして来なかったんだよ、梓? 毎日練習していたんだぞ」
「あずにゃーん!」

来なかった理由を問いただす律をしり目に、唯が梓に抱きついた。
だが、当の本人の表情は暗いままだった。

「どうした?」
「ま、まさか辞める……とか?」

表情がすぐれない梓に気づいた澪が尋ね、律が不安に満ちた表情で梓に問いかけた。

「そ、それだけは勘弁して下せえ」
「分からなくなって」

唯の言葉に、梓が体を震わせながらポツリポツリと口を開いた。

「どうして新歓ライブで、ヒック……皆さんの演奏で感動したのか、グス……しばらく一緒にやっていれば、グス……分かると思って……ヒック、でも全然わからなくて」
「あずにゃん……」

嗚咽交じりに紡がれたのは、梓の心からの叫びだった。
だが、言われてみれば、入部動機は”新歓ライブの演奏を聴いて感動したから”という類のものだった。
梓が、二か月も続けてきた本当の理由。
そんなもの、考えればすぐにでも思いついたはずだ。

(そんなことにも気付けなかったなんて……その結果こうして後輩を泣かせている………僕の方がどうしようもないバカだったんだ)

梓のその姿に、僕は気づかずに何もすることのできない自分に対して罪悪感に駆られていた。
そんな中、僕の方に視線を感じた。
見れば、唯たちが僕の方を見ていた。
その視線は”何か言ってやって”と告げているようにも思えた。

(……)

僕は無言で頷いて梓の方に向き合った。

『あなた、色々と損するタイプって言われるでしょ?』

真鍋さんに言われた言葉を思い出した。
確かに僕は損をするタイプだ。
だって、今だって非難されるようなことを言おうとしているのだから。

(でも、それでいいんだ)

それが、僕の役目なのだから。

「あんた、馬鹿じゃないの?」
「ッ!」
「浩介!」

僕の冷たい一言に、梓の肩が大きく震え、澪から罵声が浴びせられた。

「音楽の感じ方……受け取り方は、十人の人がいれば十通りある。だから、音楽の解釈に”答え”など存在しない」

尤も、作曲者が解釈について話しているのならば、それが答えになるが。

「僕たちは”中野梓”ではない。だから、その理由について答えを導くことは不可能だ。答えを導き出すのはあくまでも”中野梓”自信なのだから」
「何もそんな言い方をしなくても――「ただし」――」

律の非難の声を遮るように、僕はうつむかせている梓に言葉を続けた。

「梓が答えに導く助け程度のことなら、僕たちにでもできる……いや、僕たちにしかできない。そうでしょ? 部長」
「え? ………そうだな」

突然話を振られた律はしばらく沈黙すると、僕の言わんとすることを察したのか頷いた。

「それじゃ、梓のために演奏をするか。その時の気持ちの理由が分かるようにするためにさ」

律の呼びかけに、全員が応じた。
それぞれの楽器を構えると、律のフィルから始まった。
その曲名は『私の恋はホッチキス』。
先ほど完成したバッキングパート(僕が命名)入りのものだった。
でも、僕は演奏には加わらない。

(自分でまいた種は自分で回収しないとね)

要は自分に対してのフォローのようなものだ。

「梓、君はこの前どうして外バンをしないのかと僕たちに訊いたよね?」
「は、はい」

なるべく演奏を聴く梓の邪魔にならないように声のボリュームを落として問いかける。

「あの時の理由もあるけど、一番多いのは”皆と演奏をしていることが、とても楽しいから”なのかもしれない」
「え?」

僕の答えが意外だったのか、梓は無言で先を促してくる。

「それはもしかしたら他の皆もそうなのかもしれない……たぶん」
「たぶんじゃなくてそうなんだよ。私もみんなと演奏をすることが好きだからだだと思う」
「ッ!?」

断言することができずに、しりすぼみになっている僕の言葉に続くように話してくれたのは澪だった。
その言葉に、梓の目が大きく見開かれた。
まるで、何かを思い出したかのように。
気づけば、演奏は終わっていた。

「さあ、一緒に演奏しよう。梓」

澪と共に僕も自分のポジションに移動して、梓の答えを待った。

「………はい! 私、やっぱり先輩方と一緒に演奏がしたいですっ!」

それは、僕が心の中で望んでいた答えだった。

「良かったぁ~!」
「まあ、これからもお茶を飲んだり話をしたりとかをすると思うけど。それも軽音部には必要な時間なんだと思う」

梓が軽音部を続けることに対する喜びのあまりに、梓に再び抱き着く唯を見ながら言葉を続けた。
きっとその表情は苦笑に満ちているかもしれない。

「納得しているところ悪いけど、あの様子で説得力はあると思う?」
「え?」

僕の言葉に、視線を僕が指し示している方向に向けた澪が固まった。
そこには……

「燃え尽きた」
「もう当分演奏はしたくない」

長椅子に突っ伏すように座る唯と律の姿だった。

「本当ですか?」
「……たぶん」

その光景を見た梓も不安になったのか、澪に問いかけるが返ってきたのは説得力皆無の言葉だった。
結局、その後はいつも通りの軽音部の姿となった。
だが、梓の表情は前のように曇ることはなかった。

(いい方向に流れてくれてよかった)

僕は昔からすべてを破滅に導く存在だと言われてきた。
簡単に言えば、僕が行動を起こせば、そのすべてが逆効果になってしまうのだ。

「浩介君、お茶が入りましたよ」
「あ、うん。今行く!」

でも、今回だけはそうならなかったようで、僕はほっと胸をなでおろしながら、ムギの呼びかけに応じるとテーブルの方に向かのであった。

(生徒会に机の追加を頼まないとね)

今まで二の次にしていた机の数を増やすことを頼むと心の中で決めながら。
だが、僕はまだ気づいていなかった。
それから日も経たないうちに、僕が軽音部を空中分解させかねない出来事の、台風の目になるということを。

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