健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第7話 話と日常の終わり

「ん………」

次の日、俺はいつものように目を覚ました。

「って、また寝てるし」

横を見るとまた裸で寝ているララさんの姿があった。
彼女には羞恥心と言うものがないのだろうか?

(今なら、クーリング・オフができるチャンスなのではないか?)

無防備に眠っているララさんを見て、そんなことを考えてしまった。
だが、その考えをすぐに振り払った。

(それができなかったからこうなっているわけだし。それに)

今自分がやろうとしていることにものすごく抵抗を感じていた。

「あ、そういえば交換日記」

そこで俺は交換日記のことを思い出し、ララさんを起こさないようにベッドから出ると机の上に置かれた交換日記帳を開いた。
交換日記には、このどうしようもない状況をなんとかするべく突破口を聞いておいたのだ。

「………」

ノートを開いた俺は、そこに書かれている内容を見て愕然とした。

『美柑でもなくこの私に聞いたということは、非常に物事の通りをわきまえているとみる』

最初は称賛の言葉が綴られていた。
そしてその下の行にさらに続いていた。

『だったら分かるだろ? 竜介』

その文字の下にはやや大きめの文字で答えが書かれていた。

『諦めな』

と。

「ば、バッサリと切り捨てたな」

まあ何かをしてもらおうと考えていた俺に問題があるのは確かだが、もう少し言い方というものもあるだろう。

(そういえば、美柑のことを名前で書くようにしたんだ)

これまでは”あいつ”や”妹君”などだったが、今回はちゃんと名前が書いてあった。
どうやらいい方向に改善したようだ。
もっとも、それが今の状況に何の影響も与えないことは言うまでもないが。

「リュウスケー、おはよ~」
「うん、おはよう。そしてさっさと服を着てっ」

目をこすりながら上半身を起こすララさんに、僕は自然に挨拶をしながら服を着るように告げた。

「わかった。ペケ」
「はい、ララ様」

ララさんの言葉に応じたペケによっていつもの服装に変わった。

(本当にどうすればいいんだ)
残り時間はあと12時間ほど。
はたして、俺にクーリングオフをすることができるのだろうか?

(でも、やるしかないんだ)

そうでなければ俺の人生はとんでもないことになるかもしれないからだ。
いや、別に婚約が嫌なわけではないのだが。
だが、このまま成り行きでというのは後悔するような気がしたのだ。

「竜介~、ララさん。朝ご飯の支度が出来たよー!」
「ほーい。リュウスケも早く」
「あ、うん」

下のほうから聞こえてきた美柑の声に応えたララさんが俺にそう告げると、俺の腕をつかんで半ば強引に自室を後にするのであった。










(残り1時間)

夜。
夕食を終えた俺は、リビングのソファーの上に腰掛けながら時計を見ていた。
クーリングオフができるまでもう時間が残されていないのだ。
今、ララさんは食器を片付けている美柑の手伝い中だ。
ララさんはすっかり結城家に溶け込んでいた。
これはララさんがすごいのか、それとも美柑の心が広いのか。
恐らく両方だろう。

(もう、時間がない)

つまりは、今のうちに何とかする必要がある。
口で言うのは簡単だ。
相手に婚約解消を宣言すればいいのだから。
とはいえ、胸を揉みながらというのがそれを難しくしている。
それに何より……

『リュウスケはそんないい加減な人じゃないから』

少し前に言われたララさんの言葉が、手をこまねいている一番の理由だった。
もし、不意打ちにも近い形で胸を揉んで婚約解消をしたら、ララさんを裏切ることになる。
確かに俺は婚約を解消したい。
でも、それは誰かを裏切るような卑怯な真似をしてまでするべきことなのだろうか?

(こうなったら……)

「ララさん」
「何? リュウスケ」

だからこそ、俺は一世一代の大勝負に出る決意を胸に、ララさんに声をかけた。

「ちょっと話したいことがある。ついてきて」
「話したいこと? うん、わかったよ」

俺の誘いに、ララさんは何ら疑問を持った様子もなく答えると、最後のお皿だったのかそれを美柑に手渡してこちらのほうに駆け寄ってきた。
そして俺たちはそのまま自宅を後にするのであった。










俺が出した結論、それは直接真正面からララさんに話すことだった。
卑怯な手は使わずにちゃんと話したうえで婚約を解消する、
これが、今俺が考えている中で一番最善の策のような気がした。
まあ、そのあとにどのようなことが起こるかまでは予想ができないけれど。

(もし本当に地球消滅になったらどうしよう)

そんな不安に駆られるが、だからと言ってここで尻込みするわけにはいかない。

(よし、俺はやるっ。婚約解消を)

俺は自分に気合を入れる。
そうこうしているうちに近くの土手にたどり着いた俺は、そこに腰を落ち着かせる。

「ララさんもどうぞ」
「それじゃあ」

俺の促す言葉に、ララさんは静かに俺の隣に腰掛けた。
だが、そこで静寂が俺たちを包み込んだ。
俺が本題に入ればいいだけだが、それを口にすることを躊躇していた。

いざ本題を切り出そうとすると、口が凍り付いたかのように動かなくなってしまうのだ。
「婚約の件だけど」

そんな中、ようやっと紡ぎ出せたのはその一言だった。
だが、きっかけさえ作れば後は簡単なものだ。
俺はこの場の流れに任せることにした。

「嬉しかったよ」
「え?」

そんな俺の作戦も、ララさんの一言で止められてしまった。

「第一公女っていうのもなんだか窮屈なんだよね。お見合いとか会食とか、お父様がこう言ったとかって。誰も私の話を聞こうともしなくて」
「………」

どこか悲しげでそれでいてつらそうな表情を浮かべながら口にした言葉は、聞いているだけでも胸が締め付けられるような内容だった。

「だから、家出したんだ」

それが、家出の理由だった
理由を知った俺は、少しではあるが家出をしたくなる彼女の気持ちがわかったような気がした。
それが何故かはわからないが

「でもリュウスケは違った。突然現れた私の話を聞いてくれて、私を守ってくれた。だから、ありがとう」
「……」

柔らかい笑みを向けられた俺は、それ以上彼女の顔を見ていることができなかったため顔を逸らし川のほうへと視線を向ける。
水面には夜空がうつっていて、それを見ているだけでなぜか心が落ち着くような感じがした。

「それで、リュウスケの話って何?」
「それは……」

改めてララさんに切り出された俺は、肝心の本題を言えずにいた。
簡単なことだ。
ただ婚約を破棄することを告げればいい、それだけのはず。
なのに、どうして俺は何も言えないのだろうか?

(理由なんてわかってる)

それは俺の気持ち。
彼女との婚約を破棄すればララさんが悲しむことになる。
でも、俺には片思いの相手がいる。
二つの相反する思いが先の言葉を言うことを憚っていたのだ。
それを打ち破ったのは、けたたましく鳴り響くアラーム音だった。
音源は、ここに来る際に持ってきておいた時計だった。
これが意味することはただ一つ。

(お、終わった……)

婚約解消のクーリングオフ期間が終了したというとだった。
ふと体から力が抜けた俺はそのまま草むらに倒れた

「リュウスケ? 大丈夫? リュウスケー」

ララさんに呼びかけられるものの、俺はただただ苦笑するしかなかった。
これが、婚約解消作戦の顛末だった。










「婿殿とララ様の婚約を祝して、ばんざーい!」
「……」

作戦失敗という散々な結果に終わった翌朝、学園に向かおうと玄関を開けて表に出た瞬間に開けられたのが先ほどの声だったりもする。
ザスティンさんやボディーガードと思わしき屈強な人(宇宙人だけど)が数人程、玄関から門までの通路のわきに並んで両腕を上げて喜びの声を上げていた。

「お願いですから、声の大きさを落として。近所迷惑だから」

家の前に人がいなかったのが不幸中の幸いだった。

(だから昨日や一昨日はやらなかったんだ)

そんなどうでもいい謎が解決したところで

「リュウスケ~! またあとでねー」

と、ララさんの元気な声が後ろのほうから聞こえてきた。

(後でって何?)

ララさんの言葉に、無性に嫌な予感を感じながら、俺は彩南学園へと向かうのであった。





この時、俺はまだ知らなかった。
今までの日常は、もうすでに終わっているということを。
それがわかるのは数十分後の教室で

「ヤッホー、リュウスケ~! 私も来ちゃったよー!」

と、爛漫な笑みを浮かべながらそう言い放った時だった。

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新作『涼風のメルト~土地神を補佐する者~』掲載

こんばんは、TRcrantです。

本日、満を持して新作を掲載いたしました。
原作は『涼風のメルト』
そのタイトルが『涼風のメルト~土地神を補佐する者~』です。
既に構成やヒロイン案は出来上がっており、あとはそれを文にするだけです。
ちなみに、原作沿い(一部オリジナル展開有)になる予定ですので、楽しみにしていただけると幸いです。

さて、拍手コメントへの返信を行いたいと思います。
『『ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~』のヒロイン希望アンケート投票 星空 凛に投票します』

名無しさん、拍手コメント&投票ありがとうございます。

星空凛への投票を確認しました。
今後も私共々よろしくお願いいたします。


それでは、これにて失礼します。

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涼風のメルト~土地神を補佐する者~

涼風のメルト~土地神を補佐する者~

あらすじ

伝承と現代が密接に交差する御代街。
そこには土地神と精霊に加えて土地神を補佐する者がいると言われている。
これはそんな土地神を補佐する者の物語である。

これはそんな魔法が使えない魔法使いである少年の物語である。
*不定期更新ですが、よろしくお願いします。
また、感想やアドバイス等がありましたら、何なりとどうぞ。



プロローグ

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プロローグ

青い空に白い雲というどこにでもある場所だが、ところどころに建っている古風な社の建物がそこが普通の場所ではないことを物語っていた。
そこは神界と呼ばれている場所だった。
そんな人が住む世界とは異なった、ゆっくりとした時間の流れを刻む神界と呼ばれる場所の中で、選ばれたものしか入ることができない場所があった。
そこはくらいにして最高神とも呼べる存在がいる場所であり、世界の原点とも言われている。
そんな世界の原点でもある社は、神界に建てられている社よりも広く大きな建物となっていた。
そこには三人の男女が暮らしていた。
その社内の最も奥に設けられた一室にそのうちの一人の老人の姿があった。
老人はただただ静かに床に座り込んでいるだけだったが、そこにふすまが開く音を立てて訪問者が現れたことを部屋の主に伝える。

「失礼する」
「来たか」

静かに投げかけられた声に老人はゆっくりとした動きで立ち上がった。

「突然呼び出して悪いの」
「いえ。で、一体何の用ですか?」

短めの黒髪にやや丸みを帯びた目元は温厚そうに感じるものだ。
そんな青年の服装は黒のズボンに黒の上着という黒づくめという異様さを醸し出していた。

「実はな、神獣が一体先ほど外科医のほうに逃げ出したようなんじゃ」
「神獣ですか……それだと早めに回収したほうがいいですね」

ノヴァとばれた男性の話に、青年は表情を変えることなく相づちを打った。

「そうじゃな。ということで、よろしく頼むぞ」
「は?」

感情を表に出すことなく淡々と相づちを打っていた青年が初めて感情をあらわにした。
その感情は、予想外のことに驚いているといったものだったが。

「だから、今回の神獣の捕獲はおぬしらで行ってもらいたいのじゃよ」
「なぜ私が?」
「下界への任務は競争率が高いのは知っておるじゃろ?」

ノヴァの問いかけに、青年は無言で頷いた。
神界では、下界で発生した問題への対処を行う任務などを受注しない限り、下界にわたることはできない。
そして神界にいる者の大半は、この下界に対してあこがれのようなものを持っており競争率が非常に高いのだ。

「中には任務に行ったきり帰ってこない者もいるとか」
「それを防ぐべく、おぬしが監視役となって同行してもらいたいのじゃ」

ノヴァのその言葉に、ようやく糸を悟ったのか、青年は静かにため息を漏らした。

「分かりました。では、その同行するものの場所に向かいますので、合流ポイントを――「その必要はない、もう来ておる」――は?」

ノヴァの相槌に、青年は再び目を見開かせて固まった。

「入ってきなさい。~~~~~~~~や」
「はい」

ノヴァが青年が入ってきたふすまとは違う方のふすまに向けて声をかけると、しっかりとした返事とともに、ふすまが静かに開かれた。
そして姿を現したのは、肩や袖口の部分が紫色、胸元は黒くにお腹の部分は赤いリボン全体的に薄ピンク色の服に身をまとい、両腕の部分は白地に橋の二か所が紫色の羽衣のようなものを身に着けている長めの銀色の髪を後ろの方に一か所に縛った顔立ちのいい美少女だった。
その表情は、どことなく緊張に満ちている物であった。

「紹介しようこの子が、今回お主の相棒になる子じゃ」
「初めまして、私は~~~~~~と申します」

少女は立ち上がりながらノヴァの紹介に、礼儀正しくお辞儀をしながら名前を告げた。
だが。その名前を聞き取ることはできなかった。

「どういうつもりだ。ここには私たちの担当に関係ない者は立ち入らせてはいけないはずだ」
「今回は特例ということで、私が彼女を招き入れたのじゃ」

青年の咎めるような視線に対して、ノヴァは気にも留めていない様子で疑問に答えた。

「自己紹介は不要だ。この程度の任務すぐに終わる。すぐに終わるのだから名前など知らなくても問題はない。とっとと行くぞ」
「ぅ……」

青年の冷たい口調に、肩を縮まらせる少女をよそに、青年は足早に部屋を去って行った。

「すまぬの。あやつも本当は優しい心を持ってはおるんじゃが、色々と複雑での。大変じゃとは思うが、やつのことをよろしく頼むぞ」
「は、はい!」

苦笑しながら声をかけるノヴァに、少女は緊張の面持ちのまま頷いて答えた。

「何をしている! さっさと行くぞっ」
「ご、ごめんなさい~~!」

外のほうから飛んできた青年のどなり声に、少女は慌てながらその場を後にした。

「やれやれ」

その様子を見ながら、ノヴァは肩を竦めて苦笑するしかなかった。

「よろしかったんですか?」

そんなノヴァに声をかけたのは、同じく短めの銀色の髪をした少女が姿を現した。

「神楽か」
「あのような簡単な任務で最高神の一柱を同行させるなんて前代未聞です」

神楽と呼ばれた少女の苦言に、ノヴァの表情から笑みが消え真剣な面持ちへと変わった。

「私にはある壮大な計画があるんじゃよ」
「壮大な計画?」

ノヴァの口から出た田安吾に、神楽は顔をしかめる。

「それはじゃな……」

その表情を見ていたノヴァから、計画が語られるのであった。










「あんた、下界に行くのは初めてだったな」
「は、はい」

同じころ、神界から下界に向かうためのゲートがある場所に二人は向っていた。
少女は終始緊張の面持ちで青年の横を歩いていた。

「あんたは実に運がいい。私はそこそこの腕利きだと自負している。大抵の問題であれば容易に解決できるだろう。だから、今回の任務をとっとと済ませて下界巡りでもしようではないか」
「え?」

少女は青年が告げた言葉の内容に耳を疑った。
先ほどまでの言い分と全く違っていたからだ。

「改めてご挨拶をしよう。私の名は高ノ月浩之介ノ命という。親しい者は私を浩介と呼んでいる。よろしく」
「は、はい。よろしくお願いします」

名前を告げるとともに差し出された手を、少女は恐る恐る取ると握手を交わした。

「先ほどは失礼した。あいつの前で大はしゃぎでもすればこの話すらご破算になるかもしれなかったからな」
「あ……」

その時少女の目には浩介の目が好奇心に満ちたようなものに見えた。
だからこそ、緊張を解くには十分だったのかもしれない。
そこでふと浩介は立ち止まった
そこが下界と神界をつなぐゲートの場所だったのだ。

「あ、そうだ。向こうで滞りなくやっていくのに重要なことがもう一つ」

白銀の光に包まれる中、青年は少女に声をかける。

「敬語ではなくため口でいい。変に気を使う必要はないんだ」

その言葉とともに、二人の姿は神界から消えた。
それが後々すさまじい物語の始まりとなることを知らずに。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRcrantです。

本日『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。

今夜で連続投稿も終了となりますが、いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
今回は魔法要素があったりあれな話もあったりと、色々な要素を兼ね揃えた内容となっております。
次回で修学旅行編も中盤に差し掛かっていきますので、楽しみにしていただけると幸いです。


それでは、これにて失礼します。

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