健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第11話 改心

あれから一月が経った。
周りは色々と慌ただしく動いていた。
クリスマス・イブの日は師匠と母さんはみんなして家を出て行くし。
何か大変な事でも起こっているのかと不安に駆られたが、次の日の夜にはひょっこりと戻ってきた。
そしてまた特訓の毎日。
冬休みも終わり、またいつもの日常が繰り広げられる。
そんなある日の昼休みの事だった。










「真人、お昼食べるわよ!」
「はいはい」

この日もまたお昼をアリサに誘われた。

「何よ、私達と一緒にお昼を食べるのが嫌だって言うの!」
「別にそう言うわけではないんだけど」

俺はふと周囲を見渡す。
今日もまた阿久津の野郎が突っかかってくるのかと思うと気が滅入る。

「あー、なるほどね」

アリサも俺の様子で悟ったのか頷かれてしまった。

「おい、モブ」
「はぁ」

ほら来た。
思わずため息が漏れてしまった。

「話がある。付いて来い」
「あ、ああ」

たった一言だけ告げた阿久津は、ゆっくりと歩き出した。

「ちょっと待ちなよ」

阿久津の後をついて行こうとする俺を、アリサが止める。
俺はそれに首を横に数回振ることで答えると、再び阿久津の後をついていくのであった。










「ここならいいか」

屋上にたどり着くと、阿久津はそう呟いて唯一の出入り口であるドアを閉めて前に立ちふさがった。
これで逃げ道はなくなった。

「話というのは他でもない」
「………え?」

突然のことに、俺はそれしか口から出なかった。
いきなり阿久津が地面に膝をついたのだ。

「すまなかった!」

そしていきなりの土下座での謝罪。

「え、えっと……」

俺は何のことかが分からなく、どういえばいいのかが分からなかった。

「と、とりあえず、頭を上げて、ね」

俺はとりあえず阿久津を絶たせることにした。

「どうしていきなり」
「俺様、やっとわかったんだ」

俺の問いかけに、阿久津は静かに口を開いて。

「お前にあって、俺様に無い物の正体が」

それは俺すらも分からなかったであろうことだった。

「俺様に無かったのは信頼だったんだ。俺様はそれをあると勘違いしてた」
「………」
「気になって実験してみたんだ」
「実験?」

阿久津の言葉に引っかかり、俺は思わず聞いてしまった。

「ワザと怪我をして学校を休んだんだ」
「あー、なるほど」

怪我をしたという理由で、数日阿久津が休んでいたことを思い出した。

「それでなのは達が見舞いに来てくれるかなと思ってな。来てくれたら俺様の勘違い。来なかったら俺様の考えが正し
いということになる」
「そ、それで結果は?」

何だか失礼なような気がしながらも、俺は好奇心に負け尋ねた。

「来なかった」
「あ……ごめん」

予想はできていたが、実際聞くと罪悪感に駆られてしまい、謝った。

「いやいいんだ。俺様は自惚れてたんだ。これも俺様の罪償いだ」
「………」

そう口にする阿久津の言葉には、嘘偽りがなくそしてかっこよくも感じた。
俺よりも数倍も。

「きっと……きっと、みんなに信頼を得られるよ。確証はないけど、そんな気がする」
「お前……」

気づけばそんなことを口にしていた。
そんな俺の言葉に、阿久津は俺の顔を只見るだけだった。

「俺様は、阿久津正だ」
「え?」

突然俺に手を差し出しながら阿久津は自己紹介を始めたので、俺は思わず固まってしまった。

「お前も名乗れよ」
「あ、ああ。俺は山本真人」

俺は阿久津に言われるがまま名乗ると、手を差し出した。
そして、阿久津は俺の手を取った。

「よし、今日から俺様とお前は友達だ」
「は、はぁ」

阿久津から告げられた言葉に、俺はそれしか言えなかった。

「じゃあな。俺様はあいつらに謝らねえといけねえから、これで失礼するぜ」
「あ、ああ」

俺はただ茫然とその場に立ち尽くすしかなかった。
どうしていきなり阿久津はあんなことをしたのか。
それが俺にはまったく理解できなかった。
唯一分かることは。

(改心した……のか?)

それだけだった。

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第10話 予兆

それは本当に不思議な事だった。
この俺様がモブ程度の者に追い詰められたことでもあるが、もう一つある。

「さすがだ。だが次はそうはいか――」

俺様が本気を出そうとした瞬間、モブは今までのとは想像が出来ない速さで俺様に向かって迫ってきた。
俺様は返り討ちにしてやろうと思ったが、モブの狙いは違った。
俺様の真後ろだった。

「なッ!?」

俺様は正直驚いた。
相手が闇の書の守護騎士、ヴィータだということもだが、それ以前に気配を感じ取ることが出来なかったことだ。
この俺様は最強だ。
どんな奴にも気配を感じ取れたこの俺様がまさか不意打ちを許してしまうとは。

『お前が最強? 思い上がりも甚だしい』

ふとよぎるあの根暗の言葉。

(なるほど、そう言う事かよ)

俺様はようやくあの根暗の言っていた意味が分かった。

「テメェ、何者だ!」

俺様の後ろに立ちはだかったモブに、ヴィータが声を荒げる

「……」

モブはそれに答えない。
まさか気絶でもしてるのか?

「まあいい。テメェらのリンカーコア。貰っていく!」

(ヤレヤレ)

「しょうがねえな。この俺様も助けてやるぜ」

俺様は、モブの前に立つ。
うん、俺様かっこいい。

「小僧と同意見なのは癪だが、僕も応じよう」

根暗も俺様の横に立つ。

「行くぜ!」

そして俺様は一気に駆け出す。
俺様の攻撃の際に出来た隙を埋めるように、根暗は攻撃を放っていく。
そのために、ヴィータは攻撃に転じることができない。
まさしく俺様のワンサイドだ。

「覚えてろよ!」

そう言い放ってヴィータは逃げて行った。

「どうだモブ! これが俺様の実り――――」

そう言って振り返った時には、誰もいなかった。

「はっ! この俺様の強さに恐れをなして逃げたか」

俺様の言葉は、風に乗って消えて行く。

「帰るッか」

そして俺様はその場を後にするのであった。










その日、不思議な夢を見た。
それは俺様の……”俺”の昔。
昔の”俺”は、とても見にくかった。
引っ込み思案で、友人らしい友人など一人もいなかった。
――いや、作ろうとしなかったと言った方がいいだろう。
何せ、この俺様が逃げても逃げても話しかけてくる奴がいたのだから。
そしてその時の奴が、あのモブ野郎とよく似ていた。

『お前のような糞餓鬼に、人が集まって行くことの方が考えられないな』

ふと、昔言われた根暗の言葉が頭をよぎる。

(試してみよう)

そして俺様はある一大決心をした。
闇の書事件の最中ではあるが、この実験で俺様の今後は大きく変わるだろう。

(よぉし、こうなったらさっそく準備するぞ!!)

そして俺様は、実験の準備をするのであった。

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第9話 戦いと夢

~海鳴市 臨海公園~

「まだ来てないようだな」
「そのようだが、確実に近づいている」

今、俺達は見通しのいい場所に立っていた。
聞こえるのは静かな風とさざ波の音だけだ。
俺は何度も何度も深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
自分でもわかるほどに、俺は緊張していた。

「心配するな。この僕がついているのだ。いくらお前が弱くても、心配することはなに一つもないさ」
「そ、そうだね」

俺は応援しているのかわからない声をかけてくれる師匠に、にそう頷き返した。

「来るぞ」

(っ!!)

師匠の言葉に、俺は高鳴る鼓動を落ち着かせる。
気づけば手足が震えていた。

(大丈夫。俺なら出来る)

俺は自分にそう言い聞かせ、敵が来るのを待った。
たとえ自分が弱いとしても、自信を持っているか否かでは大きく違うというのを師匠との練習で学んだことの一つだった。

「ッ!」

俺は天空からいきなり降り注ぐ何かを、後ろに飛ぶことで避けた。
俺は前方を見てぞっとした。
俺が立っていた場所には一本の矢が突き刺さっていたのだ。
もし直撃していれば怪我では済まなかっただろう。
そして、攻撃に紛れるようにそいつは姿を現した。
相変わらず黒地のシャツに赤いマントを着込み、手には西洋風の剣という、異様な姿をした阿久津が。

「はっ! 今の攻撃を避けるとは、褒めてやろう」
「どうも」
「まあ、あんな見え見えの攻撃、避けて当然だがな」

師匠が小さな声でつぶやく。
それは俺に対して言ってるのだろうか?

「はっ! またお前か根暗」
「それはこちらのセリフだ。雑魚が」

すごい、顔を見合わせるや否や言葉の応酬が始まった。

「この俺様に二人掛かりとは、所詮は根暗だな。まあ、この俺様が強すぎるのが悪いんだがなッ! がはは」
「前にも言ったが、最強を名乗るのであれば500人の魔導師を30秒で倒せるようになってから言え」
「知らねえな」

呆れた表情を浮かべながら言う師匠の言葉に、阿久津は鼻を鳴らしながら返す。

「自分に都合の悪いことを忘れるのは人としてどうかと思うけど」

「なんか言ったか? モブ」

耳だけは良いようで、睨みつけられた。

「まあいい。今日はこの俺様がお前らにまとめて天罰を下してやるぜ」
「神様気取りか。ならば見せて貰おうか? お前の”天罰”とやらを」

師匠が言い切るのと同時に、周囲から音が消えた。
おそらくは俺の錯覚だろう。

「はぁ!」

最初に動き出したのは阿久津だった。
両手に小さなナイフのようなものを手にして、阿久津は俺に向かって突進してきた。
倒すならまずは俺からと思ったのだろう。
数日前の俺だったら、きっとこの一撃が決定打になっていたかもしれない。
でも

(回避をするときは、なるべく少ない動き!)

俺には師匠の教えが多少ではあるが蓄積されている。
それを使えば、凌ぐことはできる。
俺は横に移動することでやり過ごそうとするが、阿久津はそんな俺の行動が分かっていたのか俺の動きについて行くように進路を変えた。

「やぁ!」

俺は慌てて弓を構えると、矢を阿久津の手元に目掛けて射る。

「当たるか!」

その矢は、阿久津が簡単に回避してしまった。
でも、俺は動じない。

「ふん」
「なッ!」

後ろに回り込んでいた師匠によって、両手に会ったナイフが砕かれた。
不思議なのは、何も持っていない両手でどうやって砕いたのかという事だ。

「そこッ!」
「ぐっ!」

両手の武器が無くなった隙をついて師匠は俺の方に蹴り飛ばした。

「うわぁ!!」
「がふっ!?」

そのことに驚いた俺は無我夢中で手にしていた矢(魔力で生成したもの)を振りかぶった。
気づけば阿久津は大きく後ろの方に吹き飛ばされていた。

「グッジョブ」
「は、はあ」

無我夢中でやった事なので、あまり実感がなかったりする。

「お、俺様に一撃を食らわすとは……やるじゃねえ」

吹き飛ばされた方から阿久津が姿を現す。
赤いマントはぼろぼろに裂けていて、黒地のシャツには袈裟切りされたような裂け目が出来ていた。
それなのに怪我をしている様子じゃないのはなぜだろう?

「それはお前が魔力ダメージのみを与える”非殺傷”にしているからだろう」
「非殺傷?」

俺の心を読んだのか、師匠は俺の疑問に答えてくれた。

「非殺傷設定にしている限り、人を殺すことはできない。とはいえ、ダメージが与えられるのは変わりはないが」

おそらく俺はこの設定を解除することは一生ないだろうと、心の中で頷いた。

「だがそれもここまでだ。見せてやるよ、この俺様の本気をな!」

阿久津は目を血走らせながら叫ぶその手には、砕かれたはずのナイフがあった。

「あれが阿久津の恐ろしさ。武器を壊しても何度も何度もああやって具現化させやがる」

イタチごっこだと言いながら、師匠は剣の形をしたそれを構える。

鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎむけつにしてばんじゃく)

呪文のようなものを呟きながら、真横にナイフを投げるように捨てる。

「飛べ!」
「え? うわッ?!」

怒鳴る師匠は、固まる俺の襟首を掴むと持ち上げる。
それと同時に俺が立っていた場所をナイフが通過していく。
何とも恐ろしい。

「って、こっちに向かって来てるけど!?」
「そういう時は……」

師匠は俺を上空に振り飛ばす。
何だか遊園地のアトラクション以上の恐怖感がある。

「ウインド・ミラティス」

微かではあるが呪文を紡ぐ、師匠の声が聞こえた。

「ちっ!」

さらには聞こえるはずがない阿久津の舌打ちの声さえも聞こえてくる。
そして、俺はゆっくりと地面に降りて行く。

「さすがだ。だが次はそうはいか――」

(っ!?)

阿久津が言いかけた瞬間、俺の脳裏に突然ある光景が走る。
それはまるでモノクロ映画のように、ノイズが走っているものであった。
阿久津の後ろから現れた”何者か”に体を貫かれる阿久津の姿があった。
そして漆黒の球体が現れ、それが光の筋となって後方に向かっていく。

「ッ!?」

ノイズの走っていた映像はそこで終わり、気づけば俺は弓を構えていた。
違うのは俺の対峙している相手が阿久津ではなく見知らぬ赤っぽい髪の少女である位だろう。

「ちっ!」

目の前の少女は俺を睨みつけながら舌打ちをする。

(あ……)

今気づいたが、彼女の手には小ぶりのハンマーのようなものが握られていた。
そして彼女から漂う阿久津や師匠と少しばかり似ている”オーラ”が、彼女も魔法使いであることを伺わせていた。

「テメェ、何者だ!」

そして目の前に立つ少女は、俺にそう声を荒げる。

「……」

俺はそれに答えない。
いや、答えることが出来なかったというのが正確だろう。

「まあいい。テメェらのリンカーコア。貰っていく!」

(リンカーなんとかって、何だ?)

少女の口から出た聞きなれない言葉に首をかしげるが、彼女が敵であることだけは分かった。
俺は手にする弓を力強く握りしめる。

「え?」

そんな俺の前に立ちはだかる人物がいた。

「しょうがねえな。この俺様も助けてやるぜ」

それはつい先ほどまで対峙していた阿久津だった。

「小僧と同意見なのは癪だが、僕も応じよう」

そして師匠もそれに続いた。
その後、二人の活躍で謎の少女は捨て台詞を吐いて去って行くのであった。
それが、俺にとっての初戦の顛末であった。

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第8話 特訓=地獄?

「それでは今日も、魔法の特訓を始める」
「は、はい!」

師匠の言葉に、俺はたじろぎながらも応えた。
特訓は今日で二日目。
先日の特訓は色々な意味で地獄だった。
内容はごくごく単純で、大量の魔法弾をただひたすら回避し続けるという物だ。
内容だけなら簡単そうに見えるが師匠は意地の悪い魔法弾を大量に放つ。
直線にしか動かない魔法弾。
複雑な軌道を描く魔法弾。
俺を追尾し続ける魔法弾。
同じ場所を進んだりもどったりする魔法弾など様々だ。
それを防御魔法は一切使わずに身体強化魔法、或いは飛行魔法で3時間回避し続けるのだ。

【それじゃ仮想空間シュミレーションをする。目を閉じていつものようにして接続しろ】

俺は師匠に言われるがまま、目を閉じて集中する。
師匠の姿を頭に思い浮かべる。
師匠曰く、それだけで十分だとの事。
次の瞬間、光が走る。
そして俺はゆっくりと目を開けた。
そこはさっきまでの俺の部屋ではなく、一面砂漠の空間だった。
最初ここに来た時は、かなり驚いたものだ。
何でも、ここは仮想空間と言うもので、師匠が作り出した架空世界らしい。

「さて、それじゃまずはいつものシュート練習から始める。昨日のタイムより縮ませろ。目標撃破タイムは30秒だ」

師匠は鬼軍曹を彷彿とさせるような口調で告げる。
ちなみに、魔法理論を叩き込まれた初日にやった際は、1分30秒かかった。

「では、スタート!」

師匠の合図と同時に目の前に複数の円盤が現れたかと思うと、こっちに攻撃してきた。
数は5個。
昨日と同じ数だった。

「はっ、よっ、とッ!?!」

俺はそれを何とか避けていく。

「よく避けれてるな。しかし避けてばかりではきりがないぞ。攻撃して打ち落とせ」
「はいっ!!」

俺は避けつつも攻撃の機会を伺う。

(よし今だ!!)

「貫け閃光! ライトフレイヤー!!」

俺は先日師匠からもらった弓形態の魔導媒体を使い、円盤に向けて5本の矢を射た。

「よし! 命中」

その後一気に2個も破壊でき、俺は思わずガッツポーズをした。

「ほぅ、5発の矢を一瞬で放つとは素晴らしい……だが命中率が悪い。ロックをしっかりしろ」
「はい!」

師匠のアドバイスを聞きながら、俺は再び矢を射る。
気持ちの良い音を立てながら、最後の一発ですべての円盤を撃破できた。

「よし、ミッションクリアだ」
「ふぅ~~!!!」

俺は師匠の言葉を聞いて、地面にへたり込んだ。

「何だ? もうへばってるのか?」

そんな俺の様子を見て、師匠は呆れと優しさを含んだ言葉をかけてきた。

「当たり前です。さすがに疲れる!」
「まあ、今日は5発の矢を放つという新技の成功と言うことで、大目に見てやろう」

師匠はそう告げると、何かを呟く。
その瞬間、一面砂漠だけしかない世界が変わり、俺のよく知る自分の部屋に戻る。

「お疲れ様。どうだ? 二日目の特訓を終えて」
「かなり疲れた。……けど、なんだか強くなれたような気がする」

少なくとも、魔法と言うものには慣れたはずだ。
その実感をさっきの訓練で感じたのだ。

「そうか、それはいいことだ。しかしそれで自惚れるな。まだまだ上があるし、そこで止まっていたらいずれはやられるぞ」

俺は師匠の忠告をしっかりと覚えておくことにした。
まだ俺は阿久津以下だというのは確かだ。
ならば更なる特訓あるのみだ。

「分かりました。教官」
「………まあいいだろう。明日からはもう少し訓練の趣旨を変えよう。どんな物になるかはやる時のお楽しみだ」

おどけるように答える俺に目を閉じて師匠は明日の特訓について話し出す。
絶対に照れ隠しだ。

「お前、今いらぬことを考え――っ!」
「っ!?」

師匠顔をしかめて俺を追求しようとした瞬間、世界が切り取られるような不思議な感触がした。

「結界か!」

師匠の言葉に俺はすぐに立ち上がった。

「ここでの戦闘は非常にまずい。見通しのいい場所に向かうぞ」
「はい!!」

俺は師匠の。指示に頷くことで答える

「相手はあの小僧だ。弱いが、今のお前には十分脅威にもなるから気を付けろ」
「はい」

どうやらこの結界を形成したのは阿久津のようだ。
俺はしっかりと返事をする。

「よし。では出陣だ!!」

そして俺達は、向ってくる敵を倒すべく外に出るのであった。

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第6話 出会い

それはほんの半年ほど前の事だった。

「はぁ。帰りが遅くなっちゃった」

その日、クラスの用事で学校に遅くまで(とは言え夕方5時ごろまでだが)残っていたため、自宅へと歩いて帰っていた。

(何時もの道を通っていたら夜になっちゃうな)

ほぼ愚痴にも近い言葉だったが、夜になれば親が心配する。

(そうだ! 友達が教えてくれた近道を使おう!)

前に友人が教えてくれた近道の存在を思い出した俺は、足早に歩く。










少し歩いたところにあるけもの道へとつながるわき道に入って行った。
そこを通れば、暗くなる前には家につくはずだ。
そう思って中に入った俺だったが……

(ちょっと怖いな、ここは)

まるで何かが出てきそうな雰囲気が漂うその道に、俺は若干怖くなっていた。
道全体が薄暗いからなのと、時より聞こえるカラスの鳴き声が恐怖心に拍車をかけて行く。

(早く抜けよう!)

そう決めて歩く足を速めようとした時だった。

「ん?」

突然発した光に俺は足を止めると、光ったと思われる場所―地面だが―にしゃがみ込んで見つめた。
そこにあったのは、青色のひし形の石だった。

「何だ? これ」

俺はその不思議な石を手にして立ち上がると、まじまじと観察する。
それは普通の石にも見えた。
だが、どうしてだろうか?
この石にとてつもない力を感じるのは。
その感覚を知っている。
俺ではないオレ・・・・・・・が。
俺は恐る恐るその石に手を伸ばす。
手にとっても特にこれと言って何も感じない。

(何だろう)

「ッ!?」

目の前にある宝石にも見えなくない石をまじまじと見つめていると、何かが首に当てられた。

「動かないでください」

掛けられるのは低く冷たい声。
俺は従うしかなかった。

「その石を渡してください」

続いて投げかけられた要求は、俺の手にする石を渡せという物だった。

「渡してくれるのなら危害は加えません」

なぜこの声の人物はこの石が欲しいのだろうか?
そんな疑問が脳裏をよぎる。
でも、この石を渡しさえすれば、俺は無事に家に帰ってこれるだろう。
俺は従うことにした。
だが、天はつくづく残酷な物だ。

「沈黙は拒否と受け取ります。力づくで奪わせていただきます」

その声がするのと同時に、俺は駆けだした。
本能が告げている。
この人は危険だと。

「なッ!?」
「逃げても無駄です」

目にも留まらぬ速さで俺の行く手を遮る。
金色の髪に赤い目、手には黒い斧のような杖。
紛れもなく”危険人物”だ。

「フォトンランサー・ファイアー!」
「ッ!?」

突如放たれた金色の弾はただの威嚇だったのか、かろうじて避けることが出来た。

「………フォトンランサー・ファイアー!」

だが、間髪入れずに今度は数十個の弾を放ってくる。
俺はそこから先の記憶がない。
気が付いたら、家の玄関ドアの前で呆然と立ちつくしていた。
どうやって俺はそこまでたどり着いたのか、そして右手に握りしめていた石はどうしたのか。
色々な疑問が残る中、俺はそれを夢だったことにした。










そんなこんなで、今近くにその子がいるのだ。
でも、きっともう敵じゃないのかもしれない
確証はないけど、俺は心のどこかでそう思うことにした。

【さて、そろそろ魔法講義も終わるとしよう】

どうやら師匠の講義も終わりのようだ。
俺は師匠に念話でお礼を言う。

「さあ、教室に戻るわよ!」

それとほぼ同時に、アリサは大きな声でそう告げる。
そして俺達は教室へと戻るのであった。
その間、テスタロッサさんからの視線を感じながら。

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