健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第33話 謝罪

「はぁ………はぁ……」

走っていた俺は、ようやく部隊長室前へと到着した。
俺は息を整えながらもう一度覚悟を決める。

(よし!)

俺はドアの横にあるブザーを鳴らす。

「八神部隊長、山本です」
「どうぞ」

はやての返事を聞いた俺は部隊長室に入る。

「真人君、どうしたの?」
「何の用や?」

部隊長室になのはやフェイト、はやてにシグナムさん達隊長、副隊長陣全員がいた。
どうやら、今日の事で話し合いをしていたようだった。
そんな事を考える余裕は俺にはなかったため、俺は一歩前に出ると土下座をした。

『え!?』
「申し訳ない!!」

俺の突然の行動に全員が驚いたような声を上げる。
だが、俺は土下座を続けた。

「ど、どうしたんや!?」
「俺、今までみんなを騙してた。………本当にすまない!」

突然の事に慌てるはやてに、俺は土下座したままだましていたことを告げた。

「と、とりあえず土下座はええから、頭あげてな」
「そ、そうだよ」

俺ははやてとなのは達によって頭を上げさせられた。










あれからしばらく時間が経ち、長い沈黙が部隊長室で続いていた。
その沈黙を断ち切ったのは、はやてだった。

「ほんで、さっきの騙していたと言うことについて説明してもらおか」
「………」

はやての直球の問いかけに、俺は一瞬逃げたくなったが、すぐにその考えを振り払い俺は答えた。

「俺がここに来た理由は、はやて達の考えている通りだ」
「つまり、本局からのスパイ………と言う事か?」

俺の答えに、はやては鋭い視線で俺を見ながら予測したことを答えた。

「ああ」

そのはやての推測を、俺は肯定した。

「向こうの指示は、この部隊のメンバーの調査と、どうして設立されたかの理由を調べよと言うものだった」
「なるほどな………」

俺の告白に、はやてはそう呟き、他のメンバーは無言で俺を見ていた。

「一ついいか?」

突然そう切り出したのは、シグナムさんだった。

「なぜいきなり私たちに本当のことを言う気になったのだ?」

シグナムさんの的を得た問いかけに、俺は正直に答えるべきかどうか迷った。
と言うのも、理由を言うのが恥ずかしいからだが。

「私も聞きたいかな、どうして突然本当のことを話すようになったのか」
「………」

(何も知らないが)当の本人からの要望に、俺は答えることにした。

「なのはの彼氏になったのに、俺はなのはや仲間を騙しているのに耐えられなくなった。それだけだ」
「あ、あぅ………」

案の定なのはは顔を真っ赤にして、はやては獲物を見つけたような目で俺となのはを見て、フェイトは『おめでとうなのは』と純粋な気持ちでお祝いを送っていた。
ちなみにシグナムは顔を赤らめて恥ずかしがっており、ヴィータはそっぽを向いていた。

「ほぅ、なのはちゃんも中々やるね~」
「うぅ~………真人君の馬鹿」

はやてのからかうような言葉に、なのはは顔を赤くしながら俺に言ってきた。

「いやいやいや! なのはだって聞きたいって言ったでしょうが!!」
「それでもだよ!」
「はいはい、そこまでや。まだ私の話が終わっとらんで」

はやての一声で俺となのはの言い合いは終わった。

「ほんで、真人君は今もそれを続けておるんか?」
「いや、ホテル・アグスタ以降はしてない」

はやての問いかけに、俺は正直に答えた。
アグスタの任務報告からは、俺はスパイ活動をやめたのだ。

「そんなのウソに決まってる!!」
「いや、本当や。もし報告をしていたら今頃機動六課(ここ)はただではすんではいないはずや」

ヴィータの言葉に、はやては冷静に反した。

「本当にすまなかった。まさかここの部隊長がはやて達とは知らなかったんだ」
「それだったら仕方ないの……かな?」

俺の謝罪にフェイトが首を傾げた。
仕方がなかった………では済まされないだろうな。
はやて達の感情で言うと。

「さて、真人君をどないしようかな」
「今後、この部隊の諜報活動はしないと誓う。だから信じて……とは言えないけどせめて許してほしい。この通りだ」

俺はもう一度はやて達に頭を下げた。
そしてはやての答えを待つ。
この時ほど時間の流れが遅くなったのは初めてだ。

「まあ、ええやろ。その代り……」

はやてはそこまで言うとにやりと微笑んだ。
その表情を見て嫌な予感がした。

「私の言う事を、何でも一つだけ聞くのが条件や」
「………分かった」

俺は嫌な予感を感じつつも、頷いた。
まあ、元々俺には拒否権はないが。

「だったら、せやな……にゅふふ」

はやては突然笑い出した。

「せやったら、真人君は今ここでなのはちゃんとキスをするんや!」
「ふぇええええ!?」

はやての言葉に、なのはが大きな声を上げて驚く。

「な、なななな何を言ってるのはやてちゃん!?」
「これも罰や。観念せえや」

慌てふためくなのはに、はやては肩に手を置いて切なげに告げた。
だが、そのはやての表情は全く正反対の意味が読み取れた。

「なのは」
「なに? ……んむ!?」

俺は振り返ったなのはに不意打ちでキスをした。

「ん……ちゅ」

しばらくそれを続けて俺はゆっくりと離れた。

「あ………ぁ………ぁ」

なのはは放心状態だった。

「いや~これは面白………いい物を見せてもろうたわ」
「あ、あれがキスなんだ……」
「な、なんとふしだらなんだ!!」

はやてはものすごく良い笑顔で、フェイトは顔を真っ赤にして両手で目を隠していたが、ちらりちらりと見ていた。
シグナムは顔を赤くして今にも飛び掛からんとしていたが。

「真人君と、はやてちゃんの………」

我に返ったのか、なのはは俯いて両手を震わせていた。

「ばかぁ~!!!!」
「「ぎゃあああああ!!」」

この後、俺とはやてはなのはによって地獄を見せられることとなった。
その時の事を一言で言うのであれば………そう、まるで魔王のような恐ろしさだった。

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第38話 出向と模擬戦

地上本部の臨時査察が行われてから、数日経ったある日の朝。

「さて、今日の朝練の前に、一つ連絡事項です」

朝練の前にフォワード陣が集合した際に切り出されたのが、その一言だった。

「陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が、しばらく六課へ出向となります」

なのはの紹介を受けて、青髪の女性が一歩前に出た。

「はい、108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」
『よろしくお願いします!』

ナカジマさんの自己紹介に、俺達は敬礼をして答えた。

「それから、もう一人」

今度はフェイトの言葉に緑色の眼鏡をかけた女性が一歩前に出た。

「どうもー」

軽い感じで女性が答えた。

「十年前から、うちの隊長陣のデバイスを見て来てくださっている、本局技術部の精密技術官」
「マリエル・アテンザです」

フェイトの紹介に続いて、女性……アテンザさんが敬礼をしながら自己紹介をした。

「地上でのご用事があるとのことで、しばらく六課に滞在していただく事になった」
「デバイスの整備を、見てくれたりするそうですので……」

シグナムさんとシャーリーさんが説明をした。

「気軽に声を掛けてね!」

それを受けて、アテンザさんは笑顔で新人たちに言った。

『はい!』
「おし、紹介が済んだことで、さっそく今日も朝練始めるか!」
『はい!』

一通り自己紹介が終わったのを見計らったヴィータが、一歩前に出て口を開いた。










その後、なのはの提案でスバルとナカジマさんの模擬戦が行われた。
結果はスバルの負け。
だが、そこまでのスバルの動きは前より一段と良くなったと言うのが、なのはの話。

「じゃ、皆集合」
『はい!』

なのはの一声でフォワード陣は再び集合を掛けられた。

「せっかくだからギンガも入れたチーム戦、やってみようか? フォワードチーム五人対、前線隊長五人チーム!」
「………え?」

なのはの言葉に、ナカジマさんが目を丸くして固まっていた。

「いや、あのね、ギン姉。これ、時々やるの」
「隊長たち、かなり本気で潰しに来ますので……」
「まずは地形や幻術を駆使してなんとか逃げ回って……」
「どんな手を使っても、決まった攻撃をいれることができれば、撃墜になります」

スバル、エリオ、ティアナ、キャロが、固まっているナカジマさんに順々に説明していく。

「ギンガはスバルと同じくデバイス攻撃ね。左ナックルか蹴り」
「……はい!」
「いや、ちょっと待って、何気に俺まで入れられて――――」
「じゃあ やってみようか!」

俺の問いかけを遮るようにして、模擬戦は始められた。

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第28話 緊急事態

緊急連絡を受けた俺達は急いで指定された場所へと向かった。
たまたま近かったこともあり、フェイトたちと同時に到着することが出来た。

「……うん、バイタルは安定してるわね。危険な反応もないし、心配ないわ」

一通り検査をしたシャマルさんの結果に一同がほっと安心した様子だった。

「ごめんね皆。お休みの最中だったのに……」
「いえ」
「大丈夫です」

フェイトの謝罪に、エリオとキャロは笑顔で返事をした。

「ケースと女の子はこのままヘリで護送するから、みんなはこっちで現場調査ね」
『はい!』

なのはの指示にフォワードメンバーは返事をすると、駆け出して行った。

「執行人は、念のために新人たちのフォローをして」
「了解だ」

俺は執行人に指示を出した。
何が起こるかは分からないのだ。
下と上とに戦力を入れなければいけない。

「あ、それとだ」
「何だ?」

俺はその場を離れようとする執行人に声をかけた。

「マスター権限で状況A以上の際の能力解放を許可。水門を3段階開放、時間は5時間」
「……心得た、マスター」

俺の言葉に、執行人はいつもとは声色を変えて返事をすると、そのまま去って行った。

「よし、俺は上に行くか」
『ガジェット来ました! 地下水路に数機ずつのグループが少数! 16……20! 海上方面12機単位が5グループ!』

(どうやら来たようだな)

俺はそう呟くと背中に付けたステッキを手に持つとバリアジャケットを展開して、背中にステッキを上空にいるであろうフェイトとなのはの方へと向かった。

(そうだ。ついでにもう一フレーズ)

【執行人。マスター、山本真人の名の元、任務を与える。任務は敵(ガジェット)の完全消滅。徹底的に叩きのめせ!!】
【了解!】

俺の追加指令に、執行人はそれだけ答えた。

『なのは隊長とフェイト隊長、山本二等空佐は北西部に向かって貰ってええか? 山本二等空佐はヘリの警護とガジェットの破壊で、ちょい大変やどうけど、頼めるか?』

危なかった。
執行人との念話で危うく大事な事を聞き逃すところだった。

「任せて。少しは役に立たないと罰が当たるってところだ」

そして、俺はガジェットのいる方へと向かった。










「アクセルジュート!!」
「ブレイクイヤー・マルチショット!!」

なのはの誘導弾と、俺の矢がガジェットを次々に破壊していく。
今のでちょうど3グループ目だ

(快調だ)

俺はその感覚に酔いしれていた。
そしてふと気になった事を聞いてみた。

「そう言えば、健司はどうしたんだ?」
「ああ、健司だったら、はやて部隊長が大量の仕事を押し付けてるから、出動は無理だと思うよ」

俺の問いかけにガジェットを破壊しながら答えるフェイト。
と言うより、本当にかわいそうだな。

「ん? あれって増援か?」

そんな中、異変が起きた。
突然ガジェットの編隊が現れたのだ。
それは、さらに事態を深刻な状態に進めて行った。


★ ★ ★ ★ ★ ★


地下へと向かいやってきたガジェットを撃破していった僕達はレリックの入ったケースを見つけた。
だが、そこに突然襲撃者が現れた。
相手は子供。
だが、気は抜けない。

「ふっ!」

僕は右手に魔力を込めて、少女に肉厚する。
そして、一気に拳を振りかざそうとした時だった。

「がはぁ!?」
「執行人さん!!」

僕は、突然の攻撃によって吹き飛ばされた。
元々僕はバリアジャケットなどと言うものは着ていない
自衛手段は神性典か防御魔法のみ。
つまり、他の魔導師には大したことがない威力の魔法弾でも、僕にとっては瀕死レベルの物だ。

「執行人さん!!」

そんな誰かの声を聞きながら

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第24話 過去(後篇)

退院して数日が立った。
周りが真っ暗なのと、足が動かないことから管理局の隊員の人が宿舎の方へと連れて行ってくれた。
その道中、俺は色々な事を隊員から聞いた。
まず、なのはは教導官として滞りなく働いていること、そして俺は『エース・オブ・エースを身を挺して守った騎士』と評価されたことと、階級が二等空佐に上がった。
後、健司が俺の部下でもありデバイスマスターのアリスと婚約をしたこと。
最後のはかなり驚きだったが、それ以上に驚きだったのは、俺の評価だ。
まさか階級を上げられるとは、思ってもいなかったのだ。

「レジアス中将、山本二等空佐をお連れしました」
「入りたまえ」

中からレジアスさんの声がする。
そして俺は隊員の人に車いすを押される。

「お前は外で待っていろ」
「はっ!」

レジアスさんの指示に、隊員はそう答えると去って行った。

「さて、まずは無事退院できたようだな。おめでとう」
「あ、ありがとうございます」

俺はレジアスさんの言葉に、内心で首を傾げながらお礼を言った。

「山本二等空佐の後遺症については聞いている。そこでお前さんには二つの道がある」

レジアスさんはそう言って俺に残された道を告げた。

「まず一つは、その状態でこの部隊に残り、働いてもらう。次にここをやめて静かに暮らすことだ」
「………」
「山本二等空佐には今回の一件で、支援金を出すとのことだ」

俺が何も言わないのを無視して、レジアスさんは淡々と言って行く。

(管理局をやめる……か)

俺はそれを考えようとしたがやめた。

「なら答えは決まってます。ここに残って微力ではありますが働かせていただきます」
「……理由を、聞かせて貰おうか」

俺の答えに予想が出来ていたのだろうか、レジアスさんは俺に理由を促した。

「ここをやめると言うことはこれから逃げると言うことになるんです。俺は逃げるのはもうやめたんです。なので、レジアスさんが迷惑でなければ、ここで働かせてください!」

俺はそう言うと、頭を下げた。
たぶん下がっているだろう。
俺は昔、色々な事から逃げていた。
そしてこの魔法の力を手に入れ、俺は今度こそ逃げずに立ち向かう。
そう思えばこの事故は、俺にとっての試練なのかもしれない。
それに……

「さすがは儂の見込んだ男だ。儂の答えはとうに決まっておる。これからもよろしく頼むぞ」
「はい!」

俺はレジアスさんの言葉に力強く頷いた。
その後、俺はしばらくの間は休養するように言われ宿舎でリハビリも兼ねて休んでいた。
そんな時だった、俺に朗報が飛び込んだのは










「山本さん、いますか?」
「その声はアリスか? ああ、いるぞ」

突然訪ねてきたアリスに、俺は中に入るように促した。

「失礼します」
「……邪魔する」

どうやらアリスだけではなく健司も一緒の様だ。

「実はね、山本さんの為にあるアイテムを持ってきたんです!」
「アイテム?」

俺はアリスの嬉しそうにはずんでいる言葉に、首を傾げながら聞き返した。

「そう、なんと私の手にあるステッキを持てば、歩けるようになるのです!」
「……はい?」

俺は思わずすっとんきょな声で聴き返してしまった。

「だから、これを持てれば歩けるようになるんだよ!」

そしてアリスももう一度説明をしていた。
それを数回繰り返した時、ようやく俺は理解することが出来た。

「さあ、山本さんの右側に置いたステッキを手にしてみて」
「こ、こうか?」

俺は、アリスに言われるがままにステッキを手にした。

「それで、足を動かしてみて」
「………う、動いた!!!」

俺はいつものように足を動かしてみると、何と足が動くようになっていたのだ。
そして、俺はベッドの上に立ち上がった。
この時の喜びは今でも忘れることが出来ない。

「ね、すごいでしょ? ちなみに手に持っているものを離すと……」
「離すと……って、うわ!?」

俺は手に持っているものを離した瞬間、そのまま崩れ落ちた。

「また元に戻るから気を付けてね」
「……それを早く言ってくれ」

幸い立っていたのがベッドの上だからよかったものの、これがもし固い地面だったら……。
その後、アリスは手にしているものの原理の説明をしていた。
それは俺にはよく分からなかったが、どうやら体の筋肉に魔力を通してその力でやっているらしい。
俺はそこで一つの仮説が成り立った。
目が見えないのや、下半身が動かないのは、脳からの信号を受け取れないからではないかと。
なので、俺は魔力回路を利用して障害を一時的にではあるが、解消できるのではないかと思った。

【執行人、俺の考えたことはできるか?】

俺は緊急時の為の護衛で、中にいる執行人に問いかけた。

【可能だが、これをやリ過ぎればもっと悪くなるぞ。これは体の構造を強引に捻じ曲げる物だからな。それでもやるのか?】
【ああ、頼む。俺は逃げないと誓ったんだ】

執行人の言葉に、俺はそう言い返した。
執行人はしばらくの間無言であったが、ため息をついた。

【分かった。では、これからそのための術式を組む。半年ばかりは掛かる、レジアスのおじさんにはその旨を伝えておけ】
【了解】

それがすべての始まりだった。
それから半年後、俺は魔力を通せば視力が戻るようになった。
執行人から、使うのは1日10時間と念押しされた。
そしてバリアジャケットを展開した際に、手にあるステッキの形をした装置を背中に装着することで、俺は戦えることもできるようになったのだ。

「それでは、山本二等空佐、任務に出動します!!」

そして、俺は任務に出動した。





俺のもう一つの成せば(逃げては)ならぬことそれは……
――なのはに前に出来なかった告白をすること――であった。

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第27話 休日と答え

「さてと、クラナガンまで来たけどどこに行く?」
「うーん、そうだね。あそこなんてどうかな?」

そう言ってなのはが指さしたのは、どこでも見かける服屋だった。

「そうだね、俺もちょうど私腹を何着か買おうかなと思ってたんだし、行くか」
「うん♪」

嬉しそうに返事をするなのはと共に、服屋へと向かった。










「ありがとうございました」

俺は服を2,3着買った。
この服屋は料金が安いことが魅力的な事の一つだ。

「そう言えばなのははどこに行った?」

俺はいつの間にかいなくなっていたなのはを探す。
彼女は程なくして見つかった。
可愛らしい服が並ぶところで、なのはは二つの服を見て悩んでいた。

「うーん、こっちもいいし。でもこっちも捨てられないし……」

ものすごく真剣に悩んでいる。
俺が真横にいる事にも気づいていないのだから。

「真人君、これを着たら喜んでくれるかな?」
「その喜ぶと言うの分からないが似合うとは思うぞ」
「きゃあ!?」

俺はなのはの呟きに答えると、小さく悲鳴を上げながら飛び退いた。
そんな彼女のリアクションに驚きつつも、俺はなのはに軽く謝った。

「な、何でもないからね! なんでもないよ!?」

なのはは取り乱した様子で二回も同じことを言うと、表に出て行った。

「………」

俺はなのはが見ていた二着の服を見る。
両方ともジャケットだが、片方は青、もう片方は薄いピンクで、可愛らしい模様が描かれているものだった。
そして俺は少しばかり考えたのち、その二着を手に取った。










「……む~」
「だから悪かったってば」

服やを後にしてから、なのははずっと機嫌が悪かった。
どうやら驚かされたことがかなりいやだったらしい。

「お詫びのしるしに、はい」
「……何、これ?」

なのはは俺が手渡した袋の中身を、不思議そうに見た。

「こ、これって……」
「さっきなのはが買おうか買わないか悩んでいた奴だよ」

俺はあの後、二着の服を購入したのだ。

「い、いいの?」
「良いって、良いって。はやて曰くこれは”デート”何だから。男を見せないといけないだろ」

俺は軽い感じで言うが、デートと言う言葉を言うためにはやてをダシに使った。
後でばれたら報復が待っていそうで怖い。

「………あのね、真人君」
「何だ?」

改まって話し出したなのはに、俺は静かに答えた。

「この間、真人君私に、その……す、好きだって言ってくれたでしょ? でも、私答えを言ってなかったよね」
「………」

俺はなのはの言葉に、動揺を隠すので精一杯だった。

「私は……その……」

俺はこの時ほど緊張したことはなかった。
それほど緊張して、俺はなのはの答えを待った。

「真人君の事が、好きです」
「………」

そして俺は嬉しいはずなのに、声も出なかった。

「俺も、なのはの事が好きだ」

そうだと思えば自然にそんな言葉が、口を継いで出てきた。
それから、俺となのはの間で会話が無くなった。

「そ、そう言えば。こうしてのんびり過ごしたことなんて今までなかったよな?」
「そ、そうだね」

しかし、この会話もそれで終わった。
俺の出し方が悪かったのかもしれない。

「つ、次の所に行くか」
「う、うん。そうだね――――きゃ!?」

俺が慌ててベンチを立ちあがったのに続いて、なのはもベンチを立ち上がろうとする。
だが、お忘れかもしれないがなのはは運動音痴だ。
そのせいなのか、もしくは緊張していたのかは分からないが、足が引っ掛かったのかよろめいた。

「あ、危ない!」

そして、俺はそんななのはの体を支えることで、事なきを得たが、今度は別の意味でピンチを迎えることになった。

「あぅ………」

なのはが顔を赤らめるのも無理はない。
何せ、今の俺達の体勢は抱き合うような形になっているからだ。

「真人君」
「な、なのは?」

なのはは甘えるような声色で、俺の名前を呼ぶ。

「………」

そして目を閉じた。
それが何を意味しているのかは、いくら俺でも理解できた。
幸い、このあたりは人通りが少なかった。
なので、俺はなのはの体を掴み、顔を近づける。
それはいわゆる”キス”と言うものだった。
そしてあと少しで唇が合わさると言った所で。

『こちらライトニング4! 緊急事態につき、現場状況を報告します!』
「のわぁ!?」
「きゃ!?」

突然全体通信でモニターが開いたので、俺となのはは目にもとまらぬ速さで離れた。

『F23路地裏にて、レリックと思しきケースを発見! ケースを持っていたらしき小さな女の子が一人!』
『女の子は意識不明です! 指示をお願いします!』

モニターには、エリオとキャロに抱えられている金色の髪をした少女が写っていた。

「………行くか」
「………うん、そうだね」

どうやら、俺達の休日は終了の様だった。
何とも言い難い雰囲気を残して。

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