健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第40話 新たな預言とうごめく闇

夕方、夕日が差し込む部隊長室のソファーにはやて、なのは、フェイトの三人が腰かけていた。

「今日、教会の方から最新の預言解釈がきた。やっぱり公開意見陳述会が狙われる可能性が高いそうや」
「うん……」

はやての言葉に、フェイトが頷いた。

「もちろん、警備もいつもよりうんと厳重になる。機動六課も全員でそれぞれ警備に当たってもらう、本当は前線丸ごとで警備させて貰えたらええんやけど、建物の中に入れるのは私三人になりそうや」
「まあ……私達三人が揃っていれば、大抵の事は何とかなるよ」

はやてにフェイトは安心させるように声を上げた。

「前線メンバーも大丈夫。しっかり鍛えてきてる。副隊長たちも、今までにない位万全だし」
「皆のデバイスリミッターも明日からはサードまで上げていくしね」

なのはに続いてフェイトがはやてに状況を言った。

「それと、新しい預言が出たそうや」
「新しい預言?」

はやての言葉に、フェイトたちははやてに聞き返した。

「何でも、【白銀と黒き翼の前に暗黒に落ちし者現れ、黒き翼は折れる】と言う内容だったらしいんや」
「どういう意味だろう……」

はやてが口にした預言の内容に首を傾げるなのはたち。

「ともかく、ここを押さえればこの事件は一気に好転していくと思う」
「きっと、大丈夫」

はやての予想に、なのはは窓の外を見ながら静かに呟いた。










一方、とある場所。
そこには一人の男性が立っていた。
その姿からは研究者だと言うことが伺える。
その人物こそが、広域次元犯罪者として指名手配されている男、ジェイル・スカリエッティだった。

「祭りの日は近いな。君たちも楽しみだろう」
「はぁ~、武装も完成したし、ドカンと一発暴れてみたいっすね」

スカリエッティの言葉に、横にいた短めの赤髪の少女……ウェンディが答える

「君たちは最善兵力の能力だ。存分に暴れられるぞ」
「だって……楽しみだね、ノーヴェ」
「別に。私は確かめてみたいだけだし。私たちの王様がどんな奴か、そいつがほんとに私達の上に立つのにふさわしいのかどうか」

ウェンディの言葉に、その横にいたノーヴェはぶっきらぼうに答える。

「まあ、よく分かんないけど、それってすぐに分かるんっすよね?」
「そうとも」

ウェンディの問いかけに答えながら、スカリエッティは台に手をかざす。
すると、その台から赤い光が発せられる。

「準備は整いつつある。一つ大きな花火を、打ち上げようじゃないか!」

その台にあったのは、大量のレリックだった。
そしてスカリエッティは笑い始める。
その笑いは狂気に満ちたものだった。

「楽しげだな、スカリエッティ」
「おや、君は―――ではないか!」

狂気に満ちた笑いを遮るようにして声を発したのは、黒装束に身を包み銀色の髪に赤い目をしたやや細身の男だった。

「こっちも準備は完了だ。お前に協力をするのだから、素晴らしいひと時を味わえるのであろう?」
「間違いなく、素晴らしい一時になる!」

男の問いかけにスカリエッティは答えると、再び狂気じみた笑い声をあげる。
それを男は冷ややかに見るのであった。





時空管理局 地上本部 公開意見陳述会まであと、7日

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第43話 約束/訪れた時

9月11日

公開意見陳述会を明日に控えた日の夜、俺達機動六課フォワード陣と隊長陣は、ロビーに集まっていた。

「と、いう訳で明日はいよいよ公開陳述会や。明日14時からの開会に備えて現場の警備はもう始まってる。なのは隊長とヴィータ副隊長、山本副隊長補佐とリィン曹長、フォワード四名はこれから出発、ナイトシフトで警備開始」

はやてからの説明と指示を受ける。
と言うより、俺って副隊長補佐だったのね。
今初めて知った。

【それ、隊員としてはどうかと思うぞ】
「みんな、ちゃんと仮眠とった?」
『はい!!』

執行人からの念話をよそに、フェイトの言葉にフォワード陣は元気よく返事をする。

「私とフェイト隊長、シグナム副隊長は明日の早朝に中央入りする。それまでの間、よろしくな」
『はい!』

はやての言葉に、俺達は返事をした。
そして俺達はヘリポートへと向かった。










「執行人、出てきて」
【了解】

一足早くヘリポートについた俺は、ヘリから少し離れたところで執行人にそう告げると、外に出た。
執行人は何時も俺の中で過ごすことが多い。
ちなみに彼曰くこれはユニゾンではないとのことだ。

「どうした?」
「執行人に頼みたいことがある」

突然の俺の言葉に、執行人は首を傾げながら口を開く。

「言ってみろ」
「転生者が健司に手を出すかもしれない。だから健司の警護をしてほしい」

俺のお願いを聞いた執行人は、しばらく考え込んだ。

「分かった。他ならぬ真人いからの命だ。ありがたく拝命しよう」
「ありがとう」

俺のお礼に、執行人は”なんてことはない”と言いながら病院の方へ飛び立っていった。
そして俺も、ヘリの方に向かう。

「ん?」
「……?」

なのはと合流した俺がヘリに乗ろうとした時、後ろでなのはの声がしたので、振り返った。
そこには寮母のアイナさんに連れられたヴィヴィオの姿があった。
そのヴィヴィオは、不安げな様子でなのはを見ていた。

「あれ、ヴィヴィオ。どうしたの? ここは危ないよ」
「ごめんなさいね、なのは隊長、山本さん。どうしてもママの見送りするんだって……」

申し訳なさそうに謝る愛奈さんに、俺はなのはにつられるように屈んだ。

「もう、だめだよヴィヴィオ。アイナさんに我が儘言っちゃ」
「ごめんなさい……」

なのはは苦笑いしつつ、ヴィヴィオに注意した。

「なのはママ今夜はちょっとお外でお泊りだけど、明日の夜には、ちゃんと帰ってくるから」
「絶対………?」
「絶対に絶対」

なのははそう言うと、小指を突き立てた。

「いい子で待ってたら、ヴィヴィオの好きなキャラメルミルク作ってあげるから」
「うん」
「ママと約束ね」
「うん」

ヴィヴィオはなのはの小指に自身の小指をからめた。
それを俺達は静かに見ていた。










俺達は中央管理局地上本部へと到着した。
日付も12日となっていた。
表はかなり厳重な警戒態勢となっていた。
そして太陽が出始めたころ、俺となのはは本部の入り口の前に着くと、ついてきていたスバルとギンガの方に振り返る。

「さて、じゃあ、そろそろ私は中に入るよ」
「「はい!」」

なのはの言葉に、二人は返事をした。

「でね、内部警備の時、デバイスは持ち込めないそうだから、スバル、レイジングハートのこと、お願いしていい?」
「あ、はい!」

なのはの頼みにスバルは慌てて頷く。
警備なのにデバイス持ち込み禁止と言うのは、何とも矛盾を抱えていると思うのが正直な感想だ。。

「前線メンバーで、フェイト隊長達からも預かっておいてね?」
「はい!」

なのははスバルの返事を確認すると、中に入っていった。

「っと、俺も内部警備だから、クリエイトを預かってくれるか?」
「はい!」

俺は待機状態となっている水晶玉をスバルに手渡すと、中に入った。










あれからかなりの時間が経ち、お昼を回った。
俺は単独で地価の方を警備していたが、つい先ほど局員から差し出された軽食を食べていた。

(健司をあんなふうにした転生者……一体何が狙いなんだ?)

俺は食べながらふと考える。
普通、転生者には何らかの目的がある。
出なければ、行動など起こしはしないはずだ。

(まさか………な)

俺は頭の中に出てきた、最も最悪な一つの可能性を否定した。
その可能性は

――――――世界征服と言うものだった。










そして、開会してから約4時間後、午後6時を回った時だった。
突然の揺れと爆音が響き渡ったのは。

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第30話 狂気と危機

「あはははは!! どうしたどうした!」

地下の方で未だに続くのは、一方的な攻撃だった。
絶え間なく放たれ続ける無限の剣が、反撃を許そうとしない。

「くっそ、何なんだよ、あいつは!!」

アギトが思いっきりぼやく。

「ね、ねえ、あれ止めなくてもいいの?」
「あんた、あの中に飛び込む勇気ある?」

物陰に隠れていた新人の一人、スバルがティアナに聞くが、ティアナの問いかけに詰まった。
目の前には常に放たれ続ける剣。
貫かれれば怪我では済まない。
つまりは………。

「ないです!」

そういう事であった。
そんな時であった。
突然の爆音とともに、天井の一部が崩れた。

「捕えよ、凍てつく足枷!フリーレン・フェッツェルン!」

その中から現れたリインにより、アギトとルーテシアは捕えられた。

「ぶっ飛べー!!」

さらに巨大化したハンマーで、ヴィータはガリューを吹き飛ばした。

「ところで、何だこの状況は?」
「え、えっとですね………」

スバルは慌てて事情説明をした。
それを聞き終えたヴィータは、大暴れした人物を睨みつける。

「対象ロスト。気配を感じない」

睨みつけられている執行人はどこ吹く風とばかりに、そう呟いていた。

「何?」

しかし執行人の言葉に、ヴィータは表情を険しくすると、自分が吹っ飛ばしたガリューがいると思われる穴の開いた壁へと向かった。

「……ちっ」
「こっちもです……逃げられた、ですね」

誰もいないことに気付いたヴィータは舌打ちをし、二人が逃げたことを知ったり院は悔しげにつぶやくと自分の掛けていた魔法を止めた。
そこには地面に穴が開いているだけで、二人の姿はどこにもなかった。
そんな時、突然地震が起こった。

「なんだ!?」
「大型召喚の気配があります………多分、それが原因で」

エリオに寄り掛かりながら立ち上がったキャロが、今起きている現象の理由を言った。

「ひとまず脱出だ! スバル!」
「はい! ウイングロード!!」

スバルによってウイングロードが展開された。

「スバルとギンガが先頭で行け! あたしは最後に行く!」
「「はい!」」

ヴィータの指示を聞いた二人は脱出を始める。
そんな中、ティアナはキャロにある指示を出す。
それをよそに執行人も脱出を始める。










執行人の性格、それは自由気ままに尽きる。
マスターである真人から指示がなければ何もしない。
するのは必要最低限の事だけからも、よく分かることだ。
つまりは、新人たちがルーテシアたちを掴まえる間、彼は誰にも見えないように彼女たちの近くに立っていた。

「ここまでです!」

そんな中、リインによって二人はバインドで縛られた。

「子供を虐めてるみてーでいい気はしねぇが、市街地での危険魔法使用に公務執行妨害、その他諸々で逮捕する」

ヴィータは複雑な表情で二人にそう告げた。
そして事情聴取を始める。

「………」

そんなやり取りがあるにもかかわらず、執行人は全く関係ない場所を見ている。
………いや、睨みつけているの方が正しい。

「逮捕は良いけど……大事なヘリは……放っておいていいの?」
『っ!?』
「む?」

ルーテシアから呟かれた言葉に、執行人を除く全員が息をのんだ。
執行人は目を閉じた。

「あなたはまた……護れないかもね」
「っ!?」

『砲撃ヘリに直撃………そんなはずはない! ジャミングがひどすぎて状況確認できません』

通信で伝えられた絶望的な知らせに、全員が呆然としていた。

「てめぇ!!」
「副隊長、落ち着いて!」

怒り心頭でルーテシアの方を掴むヴィータに、スバルが落ち着くように促す。

「うるせえ! おい、仲間がいんのか!? どこにいる!? 言え!」
「エリオ君、足元に何か!」

そんな時、エリオの足元に指のようなものが出ているのに気付いたギンガが大きな声で叫び警告を出す。

「え? ……うわあ!?」
「いただき」

エリオが足元を見たのと同時に、青髪の少女、セインが飛び出し箱を奪う。

「くそ!」

ティアナの魔力弾も地面に潜ってしまった彼女には効かず、全員がその場所へと向かった。
その隙を突かれ、ルーテシアはセインに抱きかかえられて地面に潜った。

「くっ! ……ちくしょぉおお!」

最悪な状況に、ヴィータは地面にうずくまって叫んだ。

「ヘリは……ヘリは無事か!?」

そして、ヴィータははっと気が付きヘリの安否を聞いた。

『今確認中です』

通信で帰ってきた言葉に、ヴィータは焦りながら待つ。
そして………

『確認取れました、ヘリは………』

ロングアーチによってヘリの安否が告げられた。

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第42話 見えた敵

「何だって!?」

部隊長室に突然呼ばれた俺は、はやてからの知らせに、俺は耳を疑った。

「せやから、健司君が違法魔導師にやられたんや!」

そう、任務に行った健司が違法魔導師に敗れたという知らせだった。

「それで、健司の容態は?」
「今病院で手術を受けておるらしいんやけど、今はどうなってんのかが分からへん」

俺の問いかけに、はやては首を横に振りながら答えた。

「はやて、病院に行ってきていいか?」
「勿論や」

俺ははやての許可を取り、部隊長室を後にしようとした。

「ちょい待ち」
「何ですか?」

俺は引きとめたはやてに用件を尋ねた。

「健司君の容態、分かったら早く私達にも伝えてな」
「勿論」

はやてのお願いに、そう答え、俺は健司が手術を受けているであろう病院に向かった。










病院に到着した俺は、ベンチに腰かけている長い青髪の女性……アリスを見つけた。

「アリス!」
「真人さん!!」

俺が来たことが分かったアリスは俺に抱き着いていた。

「健司さんが……グスッ……健司さんがぁ!」

涙ぐみながら、悲しげに叫ぶアリスの背中を静かにさすった。
健司には悪いが、後で事情を話せば許してくれるだろう。
なのはは………SLBを覚悟したほうが良いかもしれない。
そんな事を考えていると、手術室と思われる扉が開き、中からはベッドのようなものに横たわる健司が出てきた。

「健司!!」
「健司さん!!」

俺とアリスは目を閉じている健司の元に、近寄って名前を呼びかけた。
口元にはマスクのようなものがつけられ、腕には点滴がつけられていた。

「時空管理局執務官、山本です。何があったかをお教え願えますか?」
「はい、それではこちらへどうぞ」

俺はすぐに気持ちを切り替え、身分を示すIDを医者に提示して事情を聴くことにした。
医者の後を追い、俺は歩き出した。
その際、アリスには健司に付き添うように伝えておいた。










「井上さんですが、心臓の近くを剣で一突きにされている姿で発見されました」
「ッ!!」

モニターに表示されたのは、健司の搬送時に調べられた医療データだった。
その中のレントゲン画像には、健司の体を貫く剣が写っていた。

「幸い、急所を外れていたことと、発見や処置が早かったことが幸いして命だけはとい止めましたが、正直言ってどうなるかは私達にもわかりません。2,3日が山です」
「………わざわざありがとうございました」

俺に出来たのは、お礼を言う事だけだった。
それから後、どうしたのかは自分でもわからない。
気づいた時には、辺りは真っ暗になっていた。
感覚から場所は自室の様だ。
視力はなくなったのだろうか?
そう思った時、眩しいほどの光に照らされた。

「ようやく自分を取り戻したか」

呆れた様子で声を上げたのは、執行人だった。
どうやら、俺が正気を取り戻すまで待っていたようだった。

「なのは達が心配していたぞ。お前の様子がおかしいとな」
「………」
「まあ、そのあたりはこの僕がうまく言っておいたから安心しろ」

執行人が、感謝しろと言わんばかりに言うが、俺は何も言えなかった。

「で、いつまで黙りこくっているつもりだ。そのままじゃ健司を襲った野郎の話が出来ないじゃないか」
「ッ!? 犯人を知ってるのか!?」

執行人の言葉に、俺は胸ぐらをつかんで問いかけた。

「だぁ!!! 落ち着かんか馬鹿者!!」

それを執行人は、鬱陶しげに振りほどいた。

「………悪い」
「はぁ……始めるぞ?」

落ち着いた俺を見た執行人は、ため息交じりに話を始めた。

「健司の体を調べたところ、転生者反応があった」
「健司は転生者だ。反応があってもおかしくないだろ」

執行人の報告に、俺は反論した。
転生者反応とは、転生者が発する特有の魔力反応の事だ。
健司は転生者なのだから、あってもおかしくはない。

「それは、魔力回路や、肉体の話だ。健司の場合はそれが臓器にあった。これがどういう意味か分かるか?」
「……転生者による何らかの魔法を、体の中で発動させた」

執行人の言葉から導き出されたのは、それだった。
身体強化魔法ではなく、物理的に体の中で発動させたのだ。
通常自分の魔力は、魔力回路に異常がない限り自分の体の中……内臓にまであふれることはない。
医者から見せてもらった魔力回路の診断データからは、どこにも異常は見られなかった。

「つまり、第3者による攻撃」
「そう、そしてそれを行った人物は……」

俺と執行人の中で、元まった答えは一つだった。

「「転生者だ!!」」





公開意見陳述会まで、後5日

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第44話 折れる翼

「はぁ……はぁ!!」

俺は急いでいた。
突然襲った地震。
それが襲撃だと言う事を悟った俺は、即座に合流地点へと向かっていた。
だが、そこに立ちはだかったのは、大量のガジェット。

(いくらなんでも侵入が早すぎる!!)

俺は心の中で愚痴をこぼしながら、ガジェットを蹴散らして進んでいく。
先ず俺がするべきなのは、スバルからクリエイトを受け取ることだ。
それをしなければ、万全な体制で戦うことなどまず不可能。

(スバルの魔力反応は……ここだ!!)

俺は、スバルの魔力反応を探すため、分かれ道の箇所で魔力反応を探し出しながら進んでいた。
その為、襲撃が始まってから既に2,30分は感覚では経っているはず。
そのことが、俺をさらに焦らせる。

「見つけた!」

最後の分かれ道で、より鮮明なスバルの魔力反応を感じた俺は、分かれ道の箇所を左に曲がり全速力で走った。
その先で見たのは、地面に広がる赤い液体と………

「返してよ………ギン姉を返してよぅ!!」

地面に四つん這いになって、誰もいない場所に向けて叫ぶスバルの姿だった。

「スバル! 大丈夫か!!」
「真人………さん」

俺の声に気付いたスバルは、こっちを見た。

「ギン姉が………ギン姉が!!」

スバルのその言葉だけで、何があったのかが理解できた。
おそらくナカジマさんは、何者かによってさらわれたのだろう。
目的は分からない。
考える時間もない。
俺のやるべきことはただ一つだけだ。

「スバル、クリエイトを」
「え?」
「クリエイトだ。俺がスバルのお姉さんを助け出す!」

スバルのお姉さんを、取り戻すことだ。

「本当………ですか?」

スバルの問いかけに、俺は頷いた。

「お願い……ギン姉を助けて」
「分かった。だから、そこで待っててくれ!!」

俺はクリエイトを受け取りながらスバルにそう告げると、すぐに起動させて転移魔法で表に出た。
中はAMFが高い。
だからこそ、それほど高くない表に出れれば、後は相手の魔力反応を追うだけだ。

「クリエイト、ナカジマさんの魔力反応を探しだして!」
『了解………出ました!! ここから北北西の方向で確認。現在移動中!!』

クリエイトの報告を聞いた俺は、即座に空へと飛びあがると、北北西の方向に向かって飛んで行った。










「このあたりのはずだが………見つけた!!」

北北西の方向を飛んでいた俺は、ボードのようなものに乗っている二人の人物を見つけた
そこに向かって俺は急降下すると、牽制用の魔法弾を数発放った。

「何!?」

銀色の髪に、をしている少女の背後に回ると、剣状のクリエイトを首筋に突き付けた。

「こいつが傷つけられたくなければ、ギンガ・ナカジマを解放しろ!!」
「チンクを人質にするなんて、卑怯ッス!!」

赤い髪の少女が非難してくる。
確かに、俺のやっていることは、どこぞの犯罪者と同じことだ。
だが、そもそも向こうが仕掛けてきたことなのだ。
これくらいはやって罰は当たらないだろう。
………処分はあるが。

「生憎とこっちには話し合いとかをしている時間はない。失礼だがこういう手段を取らせて貰った。さあ、早くしろ」
「分かったッスよ」

ピンク色の髪の少女は、仲間が人質に取られたことで、渋々と言った様子で歩き出した。

(よしッ!!)

俺が心の中でガッツポーズをとった時だった。

「ぐッ!?」

突然、俺は背後から何者かに殴リ飛ばされた。

「隙あり♪」

背中の痛みを堪え、背後を見ると、そこには水色の髪をした少女がいた。
どうやら、彼女の仕業らしい。
しかし、一体どうやって俺の背後を?
そして、俺は思い出した。

(地面から……出てきた?)

エリオを不意打ちのごとく襲撃し、さらには少女を奪い返した人物。
執行人が言っていたのは彼女の事だったのだ。

(これで、振り出しか)

「よくもチンク姉を!」

目の前にいる赤い髪をした少女は、殺気立った様子で、俺を見ていた。
見れば彼女やチンクと呼ばれた、銀色の髪に眼帯のようなものをしている少女は少なからずダメージを負っている。
おそらくは、スバルやフォワード陣のおかげだろう。
ならば、勝率も少しは高くなる。

「それだったら、徹底的に、やってやろうじゃないか!!」

そして、俺は瞬時に攻撃に転じた。

「刃呪縛!!」

俺は、少女たちに向けて複数の魔力刃を放つ。
しかし、それを少女たちは難なく躱した。
だが、やはり赤い髪の少女と、チンクと呼ばれた少女の動きは、ダメージを負っているためかどこかおかしかった。

「はッ!!」
「っと!?」

考え込んでいた隙を狙って、チンクと呼ばれた少女が数本のナイフをこっちに向けて投げてきた。
俺はそれをすべて躱した。
だが……

「IS発動、ランブルデトネイター!」

その呟きと同時に、背中に衝撃波が襲ってきた。
おそらく、避けたナイフが爆発したのだろう。

「でやああああ!!」

爆発の衝撃波を受け、体勢が崩れた隙を狙い、赤い髪の少女が攻撃を仕掛けてきた。

「ッく!! シールプロテクション!!」

それを何とか防御障壁を展開することで防ぐ。

「リフレクション!!」
「ッぐ!?」

反射の付加をかけ、少女の攻撃を、そのまま跳ね返した俺はピンク色の少女から放たれる誘導弾を躱しつつ、次の手を打とうとした。

「ッ!?」

しかし、俺はなぜか地面に倒れていた。

(直撃したのか?)

俺はそう考えながら、立ち上がろうとするが、立ち上がれない。
いや、足に力が入らないのだ。

(まさか!!)

俺は、いやな予感がして背中にあるはずの、ステッキを手にする。

(やっぱり)

俺が見たのは、煙を上げ時たま火花を散らしているステッキだった。
おそらく、先ほどの爆発の衝撃で、限界までかけていた付加に耐えられなくなり壊れたのだろう。

「地面に倒れたっスね」
「よく分からんが、止めを刺した方がいいだろう。私がやろう」

少女たちの会話が聞こえた。
今の俺では、立ち上がることもできない。
万事休すか?

『諦めるな。諦めたらそこですべては終わる。惨めでも足掻け、元々人は惨めな生き物なのだからな』

執行人の言葉が頭をよぎった。
そうだ、まだ魔力がある。

「うおおおお!!!」

俺は上半身に力を入れると、その場を離れ上空の方へと避難した。

「っとと!!」

下半身の力が入らないため、バランスがとりずらいが、これで急場はしのげる。

「しぶといッスね~」
「悪いな。あきらめが悪いのが俺の悪い癖だからな」

何故かそう言える余裕があった。

(そうだ。俺がやるべきことは、彼女たちを倒すことじゃない。仲間を取り戻すことだ!!)

幸い、俺にはその魔法がある。

「だから、こうさせてもらうよ!!」
「なッ!? バインド?!」
「何時の間に……だが、こんなもの!!」

俺は少女たちにバインドをかける。
速度を優先したため、かなり脆く子供の力だけで簡単に外れるほどの強度しかない。
だが、それでも俺には十分だった。

「天命が告ぐ、眠りを知らぬ民よ、眠りたまえ。スレイン・ヴェネレイア!!!」

弓状のクリエイトを構え、魔力で生成した矢を引く。
目標は、少女たちから離れた場所だ。
そして、それを射た。

「はん! どこを狙って―――――」

誰かがそう言ったが、その声は聞こえなかった。
なぜなら、矢が突き刺さった場所の周辺が眩い光に覆われたのだから。
そして、光が消えると、そこには地面に倒れ伏している少女たちの姿があった。

(間一髪だったな)

光を浴びた者達を一瞬にして眠らせるあの技は、執行人と健司と考えた技だ。
まさか、ここでその効力を発揮するとは思ってもいなかった。

「取りあえず、ナカジマさんを――――」
「へぇ、君があの”転生者殺し”か~」

ナカジマさんの魔力反応がするケースへと向かおうとした俺の声を遮るように、俺の真後ろから男の声がした。
それと同時に放たれるのは、殺気だ!

(まずいっ!!)

俺は慌ててその場を離れようとした。
だが………

「ッがは!!?」

体の左胸辺りに、焼き付けるような痛みが走った。
俺は、痛みをこらえながら、下を見るとそこには俺の平に胸を貫く、一本の黒い剣があった。

「おや、急所がそれたか。さすがは転生者殺し。あいつよりは見ごたえがあるな」
「あい……つ?」

男の言葉から、それが健司だと言うことはすぐに分かった。

「だが、それもここまで。散!!」
「ッ!!!?」

男の声がした瞬間、俺を言葉には言い表せないほどの痛みが走った。
おそらくは、俺に突き刺さっていた剣が、爆発したのだろう。
そして今俺は、地面に横たわっているのであろうか?

「これで、もう邪魔者はいない。これで、我が悲願が成し遂げられる!! ふははははは!!!」

男の狂ったような声がどんどん遠ざかっていく。
目の前も真っ暗になって行きかけている。

(スバル……すまない)

俺は、約束を成し遂げられなかったスバルに心の中でそう謝罪の言葉を上げ、意識を手放した。

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