9月11日
公開意見陳述会を明日に控えた日の夜、俺達機動六課フォワード陣と隊長陣は、ロビーに集まっていた。
「と、いう訳で明日はいよいよ公開陳述会や。明日14時からの開会に備えて現場の警備はもう始まってる。なのは隊長とヴィータ副隊長、山本副隊長補佐とリィン曹長、フォワード四名はこれから出発、ナイトシフトで警備開始」
はやてからの説明と指示を受ける。
と言うより、俺って副隊長補佐だったのね。
今初めて知った。
【それ、隊員としてはどうかと思うぞ】
「みんな、ちゃんと仮眠とった?」
『はい!!』
執行人からの念話をよそに、フェイトの言葉にフォワード陣は元気よく返事をする。
「私とフェイト隊長、シグナム副隊長は明日の早朝に中央入りする。それまでの間、よろしくな」
『はい!』
はやての言葉に、俺達は返事をした。
そして俺達はヘリポートへと向かった。
「執行人、出てきて」
【了解】
一足早くヘリポートについた俺は、ヘリから少し離れたところで執行人にそう告げると、外に出た。
執行人は何時も俺の中で過ごすことが多い。
ちなみに彼曰くこれはユニゾンではないとのことだ。
「どうした?」
「執行人に頼みたいことがある」
突然の俺の言葉に、執行人は首を傾げながら口を開く。
「言ってみろ」
「転生者が健司に手を出すかもしれない。だから健司の警護をしてほしい」
俺のお願いを聞いた執行人は、しばらく考え込んだ。
「分かった。他ならぬ真人いからの命だ。ありがたく拝命しよう」
「ありがとう」
俺のお礼に、執行人は”なんてことはない”と言いながら病院の方へ飛び立っていった。
そして俺も、ヘリの方に向かう。
「ん?」
「……?」
なのはと合流した俺がヘリに乗ろうとした時、後ろでなのはの声がしたので、振り返った。
そこには寮母のアイナさんに連れられたヴィヴィオの姿があった。
そのヴィヴィオは、不安げな様子でなのはを見ていた。
「あれ、ヴィヴィオ。どうしたの? ここは危ないよ」
「ごめんなさいね、なのは隊長、山本さん。どうしてもママの見送りするんだって……」
申し訳なさそうに謝る愛奈さんに、俺はなのはにつられるように屈んだ。
「もう、だめだよヴィヴィオ。アイナさんに我が儘言っちゃ」
「ごめんなさい……」
なのはは苦笑いしつつ、ヴィヴィオに注意した。
「なのはママ今夜はちょっとお外でお泊りだけど、明日の夜には、ちゃんと帰ってくるから」
「絶対………?」
「絶対に絶対」
なのははそう言うと、小指を突き立てた。
「いい子で待ってたら、ヴィヴィオの好きなキャラメルミルク作ってあげるから」
「うん」
「ママと約束ね」
「うん」
ヴィヴィオはなのはの小指に自身の小指をからめた。
それを俺達は静かに見ていた。
俺達は中央管理局地上本部へと到着した。
日付も12日となっていた。
表はかなり厳重な警戒態勢となっていた。
そして太陽が出始めたころ、俺となのはは本部の入り口の前に着くと、ついてきていたスバルとギンガの方に振り返る。
「さて、じゃあ、そろそろ私は中に入るよ」
「「はい!」」
なのはの言葉に、二人は返事をした。
「でね、内部警備の時、デバイスは持ち込めないそうだから、スバル、レイジングハートのこと、お願いしていい?」
「あ、はい!」
なのはの頼みにスバルは慌てて頷く。
警備なのにデバイス持ち込み禁止と言うのは、何とも矛盾を抱えていると思うのが正直な感想だ。。
「前線メンバーで、フェイト隊長達からも預かっておいてね?」
「はい!」
なのははスバルの返事を確認すると、中に入っていった。
「っと、俺も内部警備だから、クリエイトを預かってくれるか?」
「はい!」
俺は待機状態となっている水晶玉をスバルに手渡すと、中に入った。
あれからかなりの時間が経ち、お昼を回った。
俺は単独で地価の方を警備していたが、つい先ほど局員から差し出された軽食を食べていた。
(健司をあんなふうにした転生者……一体何が狙いなんだ?)
俺は食べながらふと考える。
普通、転生者には何らかの目的がある。
出なければ、行動など起こしはしないはずだ。
(まさか………な)
俺は頭の中に出てきた、最も最悪な一つの可能性を否定した。
その可能性は
――――――世界征服と言うものだった。
そして、開会してから約4時間後、午後6時を回った時だった。
突然の揺れと爆音が響き渡ったのは。
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