健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第16話 昼休み

11月1日

もう流星町に来て2週間ぐらいは経った。
朝は旦那様たちの朝食を作り、学園のプリエでは料理を作ったりする。
昼休みの地獄はなんとか慣れてきた。

「うぅ、なんで私がこんなことを……あ、いらっしゃいませ。こちらのお席へどうぞ」

神楽も何だかんだ言いつつ、ウエイトレスをそつなくこなしていた。
そして今日も、いつも通りの一日が幕を開ける。

「あぁ、大森君」
「はい、何でしょうか?」

朝の連絡が終わり、各自準備に取り掛かっている中、僕は主任に呼び止められる。

「今日の10時から13時まではオフシフトで構わないよ」
「え? いいんですか?」

突然の休憩の連絡に、僕は嬉しさ半分不安が半分の心境で主任に尋ねた。

「構わないよ。いつも頑張っている君へのご褒美だよ」
「ありがとうございます」

僕は主任に頭を下げてお礼を言うと『さあ、早く支度をなさい』と言いながら去って行った。
そして僕も準備に取り掛かるのであった。










「それじゃ、休憩入ります」
「ゆっくりしてってね」
「ごゆっくりどうぞ」

主任に言われたオフシフトでもある十時、僕の呼びかけに、厨房にいたおばさんたちが口々に返してくれた。

「むぅ、浩ちゃんだけずるい」
「西田さん! てきぱきと動きなさい!」

神楽の恨み言とウエイトレスの先輩に当たる人の声を背中に受けながら、僕はプリエを後にするのであった。









「この辺りに来ると、静かになるんだな」

旧校舎の二階の廊下。
僕は休憩を取るべく静かな場所を探し求めていたらここにたどり着いた。
ちょうど生徒会室などがある校舎だ。
本当は図書館に行こうとしたが、あそこは逆に危険だ。
主に司書の人に怒られるという意味でだが。

「お、ここは鍵がかかってないな」

近くにあったドアに手を掛けるとすんなり開いたため、僕は中に入った。
そしてドアを閉める。
その部屋は奥の窓のそばにホワイトボードが置かれ、その左側には色々なファイルが敷き詰められている棚と、反対側にはポットの置かれたテーブル、その手前にはノートパソコンが置かれたテーブルがありさらに手前側にはソファーが置いてあった。

(どっかで見たような構図の部屋だけど、まあいいか)

疑問はあったが、今は眠気が勝っていたため、僕はソファーで横になると黒いマントを体に掛けて目を閉じた。
僕の意識は、すぐさま闇へと落ちて行った。


★ ★ ★ ★ ★ ★


浩介が眠りについた場所は、生徒会室。
生徒会の活動拠点の場所だ。
もしそのことを知っていれば、浩介はそこで仮眠をとるなどの事はしなかっただろう。
もっとも、知っていても浩介ならば平然と仮眠を取っていただろうが。
そして案の定、生徒会室に訪れる人物が現れた。
その人物は、黒いリボンでツインテールに結ばれた金髪の髪の女子学生だった。
腕には生徒会の腕章がつけられている。
その女子学生の名は聖沙・B・クリステレスだった。

「あれ? この人は……」

野菜スティックが入った容器を片手に入ってきた聖沙は、ソファーに横になっている浩介の顔を覗き込む。

「って、ここは生徒会室なのに、よく寝れるわよね」

あまりにも堂々と寝ている浩介に、聖沙は怒りを通り越して、呆れた表情でつぶやく。

「あの、起きてください。ここは生徒会室ですよ」
「すぅ……すぅ」

聖沙の呼びかけに浩介は起きるそぶりを見せなかった。

「………」

(きっと疲れてるのね。お姉さまの所で料理人をやってプリエの厨房で働いているんですものね)

無理矢理起こすのは川そうだと思った聖沙はいつも自分が座る椅子に、浩介を起こさないように静かに腰かける。
そして適当な資料を引っ張り出してそれに目を通しながら、野菜スティックを頬張る。
時々視線をソファーで規則正しい寝息を立てている浩介の方に向ける。

(本当に起きないわね)

そう心の中でつぶやく聖沙だが、その時浩介の様子が変化した。

「んぅ………」

どうやら眠りが浅くなっていたのか、紙の捲れる音に浩介は上半身を起こした。


★ ★ ★ ★ ★ ★


「んぅ………」

髪の捲れるような音に、僕は目を覚ました。

(人はいなかったはずだけど?)

そんな疑問を抱きながらも、時間を確認しようと時計を探す。

「起きたんですね」
「ん?」

突然かけられた声に、僕はその声のした方へと顔を向けた。
そこには椅子に腰かけて野菜スティックのようなものを手にしている金色の髪の女子学生だった。

「ここは生徒会室ですけど、何か用事でも?」
「生徒会室?」

女子学生の言葉に僕の中にあった疑問が解けた。
一度僕はここを訪れていた。
理事長に言われて差し入れを持って行ったときにだ。

「あの」
「あぁ、悪い。用はない。ただ仮眠を取ろうと思っただけだ」

いつまでも応えない僕を不審に思ったのかおずおずと女子学生が声をかけてきたので、僕は単刀直入に答えた。

「はい? でも、プリエにも仮眠室はありますよね?」
「勿論ある。それと、僕には敬語は不要だ。敬語を使うほどでもないからいつも話している風に話して」

女子学生の問いかけに答えつつ、僕は女子学生にそうお願いをした。
敬語を使われると、なんとなく居心地が悪くなるからだ。

「分かりました……じゃなくて、わかったわ」
「仮眠室にいても外が賑やかすぎて眠れない」
「な、なるほど……」

僕の言葉に、女子学生は困ったような表情で相槌を打つ。

「ここなら近くに理事長室があるから、相当な馬鹿ではない限り騒ぐようなものは来ないかと思ったんだが、生徒会室だったとは」
「あなた、一度ここに来たことがあるはずよ」

女子学生に言われて、ふと記憶をたどってみた。

「ああ、確かにそうだった」
「……忘れてたのね」
「忘れてはいない。ただ思い出せなかっただけだ」

女子学生のジト目に僕は反論する。

「人はそれを忘れていたというのよ」
「確かに」
「ふふふ」

女子学生の言葉に頷くと、クスクスと女子学生は笑った。

「ところで」
「何かしら?」

僕は今まで気になっていたことを女子学生に聞くことにした。

「昼食は、野菜スティックだけか?」
「え? そうよ」

一瞬呆けた女子学生は、頷いた。

「極端な食事制限ダイエットは、体に悪いぞ」
「なッ!?」

僕の指摘に、女子学生が声を上ずらせた。

「バランスのいい食事制限の方が無理のないダイエットが出来る」
「か、勝手にダイエットって決めつけないでッ!」

僕の言葉に女子学生が反論する。

「だったら……趣味か? 食事を制限して自分を虐げる」
「違うわよ!」

さっきよりも強い否定の声が帰ってきた。

「オーケー、理由は聞かないようにしよう」
「わ、分かればいいのよ」

素直に認めればいいのにと思いながら、僕は折れることにした。

「ところで、今何時かわかるか?」
「えっと、13時10分前よ」

どうやら話し込んでいたら頃合いの時間になったようだ。

「それじゃ、休憩時間が終わるから僕はお暇するとしよう」

僕はそう呟いてソファーから立ち上がると、出入り口のドアまで歩いていく。

「そうだ」
「何かしら?」

僕の呟きに、女子学生が首を傾げる。

「バランスのいい昼食を今度持っていく」
「え?」
「だから、バランスのいい昼食を持っていくと言ったんだ」

固まっている女子学生に、僕はもう一度言い直した。

「別に、恩を着せようという物じゃない。ただここを勝手に使ったペナルティーだ」
「い、いいわよ。貴方に悪いし」

変なところで謙虚だなと思いつつ、僕はさらに食い下がる。

「今のままの食生活を続けたら体調を崩す。バランスのとれた食事がどういったものか、見た方が分かりやすいだろ。まあ、僕のエゴだが」
「………分かったわ。お願いするわね」

今度は女子学生が折れた。

「了解。次に昼休みに休憩が取れる日程は、分かり次第、リアさんに伝言を頼む」
「お、お姉さまに!?」

僕の言葉に、女子学生は複雑な表情をした。

「安心しろ。リアさんには詳しくは話さない。ただ単に、休憩が合う日だけを伝える」
「そ、それならいいのだけど」

やはり、あまり人には知られたくないようだ。
まあ、当然だろうけど。

「それじゃ」
「ちょっと待って」

今度は僕が呼び止められた。

「貴方の名前、聞かせてくれるかしら? 私は聖沙・B・クリステレスよ」
「僕の名前は、浩介。大森浩介。それじゃ」

時間がないことから、僕はクリストさんに一礼すると生徒会室を後にした。

(さて、午後もしっかり頑張りますか)

僕はそう気合を入れながら、プリエへと向かうのであった。

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