健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第45話 眠りし者、後悔する者

あの襲撃から2日経った。
もう、二日、やっと二日だ。
僕は、病室のお見舞いに来た人用のパイプいすに腰掛けていた。

「………」

僕の視線の先には、マスクのようなものをして眠っている真人の姿があった。

「くッ!!」

僕は無意識に両手を、力強く握りしめていた。
僕の胸にあるのは、マスターである真人をまた(・・)守ることのできなかった悔しさだ。
あの日、健司の病室警護をしていた僕は、マスターリンクで、真人の身におきた異変を感じたのだ。
その後急いで捜索した結果、血を流して倒れている真人を見つけ、病院に運んだ。
かなり危険な状態ではあったが、発見が早かったこと等があり一命をとい止めた。
だが、いつ目が覚めるかは分からないと言うのが医者の話だ。

(申し訳ない、真人)

僕は心の中で謝った。
あの日、僕が頭を使えばよかったのだ。
真人の指示に待ったをかけ、予想をし直せばこういった事態は防げたかもしれない。

(詭弁だな)

僕は自分の予想をそう罵った。
もしものときは、この僕が自分の手で動くしかない。
僕は世界最強と言う名だけで、転生者殺しと言う力は持っていない。
もし相手が、100回殺しても死なない能力を持っていたら、僕は倒せるのだろうか?

「ん?」

その時、病室のドアが誰かにノックされた。
魔力反応からして高町だろう。

「失礼します。あ、執行人さん」

中に入ってきた高町は、僕を見つけると”来てたんですか”と言い、僕の横に立つ。
彼女もまた、僕以上の被害者だ。
最愛の人が意識不明の重体なのだから。
それでも泣かなければ、僕を責めたりもしない。

「高町」
「何ですか?」

それが、とても歯がゆくて、つい言ってしまった。

「お前はどうしてそう平然としていられるんだ?」
「………」
「お前の一番好きな恋人がこうなったんだぞ? なんでそんな風にケロッとしていられるんだ? なんで僕を責めないんだ!」

それが、きっかけだった。

「……い」

肩を震わせて、小さな声で何かを言い出す。

「しょうがないじゃない!!」
「ッ!!」

突然の大声に、僕は息をのんだ。

「悲しいよ、ヴィヴィオはさらわれて、真人君までこうなって、とても悲しいよ!! 今すぐこんなことをした人の所に突撃してやり返したいよ!!」
「………」

それは、彼女の心からの本当の叫びだった。

「でも……でも、真人君はそんな事を望んでいない。だから真人君が目を覚ました時に笑顔で『お帰り』って言うんだって……そう思ってるんだよ」
「………そうか、悪かった」

僕は目を閉じて高町に謝った。
ある意味、僕以上に彼のそばにいる人物として、ふさわしいかもしれない。
僕はいつでも自分の事しか見れていない。
人の気持ちにまで目を向けられないのだ。
それは元々の事だから、と自分に言い聞かせていたが。
あるいは、僕は一番弱いのかもしれない。

「高町」
「何……ですか?」

未だに涙声の彼女に、僕は静かに告げた。

「絶対に、解決させよう。この事件を」
「………はい!」

その誓いだけが、今の僕にできる最大限の事だった。
そうやって、時間は流れて行った。
そして、この事件は佳境を迎えようとしていた。

拍手[0回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カウンター

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

最新CM

[03/25 イヴァ]
[01/14 イヴァ]
[10/07 NONAME]
[10/06 ペンネーム不詳。場合によっては明かします。]
[08/28 TR]

ブログ内検索

バーコード

コガネモチ

P R