あの襲撃から2日経った。
もう、二日、やっと二日だ。
僕は、病室のお見舞いに来た人用のパイプいすに腰掛けていた。
「………」
僕の視線の先には、マスクのようなものをして眠っている真人の姿があった。
「くッ!!」
僕は無意識に両手を、力強く握りしめていた。
僕の胸にあるのは、マスターである真人をまた(・・)守ることのできなかった悔しさだ。
あの日、健司の病室警護をしていた僕は、マスターリンクで、真人の身におきた異変を感じたのだ。
その後急いで捜索した結果、血を流して倒れている真人を見つけ、病院に運んだ。
かなり危険な状態ではあったが、発見が早かったこと等があり一命をとい止めた。
だが、いつ目が覚めるかは分からないと言うのが医者の話だ。
(申し訳ない、真人)
僕は心の中で謝った。
あの日、僕が頭を使えばよかったのだ。
真人の指示に待ったをかけ、予想をし直せばこういった事態は防げたかもしれない。
(詭弁だな)
僕は自分の予想をそう罵った。
もしものときは、この僕が自分の手で動くしかない。
僕は世界最強と言う名だけで、転生者殺しと言う力は持っていない。
もし相手が、100回殺しても死なない能力を持っていたら、僕は倒せるのだろうか?
「ん?」
その時、病室のドアが誰かにノックされた。
魔力反応からして高町だろう。
「失礼します。あ、執行人さん」
中に入ってきた高町は、僕を見つけると”来てたんですか”と言い、僕の横に立つ。
彼女もまた、僕以上の被害者だ。
最愛の人が意識不明の重体なのだから。
それでも泣かなければ、僕を責めたりもしない。
「高町」
「何ですか?」
それが、とても歯がゆくて、つい言ってしまった。
「お前はどうしてそう平然としていられるんだ?」
「………」
「お前の一番好きな恋人がこうなったんだぞ? なんでそんな風にケロッとしていられるんだ? なんで僕を責めないんだ!」
それが、きっかけだった。
「……い」
肩を震わせて、小さな声で何かを言い出す。
「しょうがないじゃない!!」
「ッ!!」
突然の大声に、僕は息をのんだ。
「悲しいよ、ヴィヴィオはさらわれて、真人君までこうなって、とても悲しいよ!! 今すぐこんなことをした人の所に突撃してやり返したいよ!!」
「………」
それは、彼女の心からの本当の叫びだった。
「でも……でも、真人君はそんな事を望んでいない。だから真人君が目を覚ました時に笑顔で『お帰り』って言うんだって……そう思ってるんだよ」
「………そうか、悪かった」
僕は目を閉じて高町に謝った。
ある意味、僕以上に彼のそばにいる人物として、ふさわしいかもしれない。
僕はいつでも自分の事しか見れていない。
人の気持ちにまで目を向けられないのだ。
それは元々の事だから、と自分に言い聞かせていたが。
あるいは、僕は一番弱いのかもしれない。
「高町」
「何……ですか?」
未だに涙声の彼女に、僕は静かに告げた。
「絶対に、解決させよう。この事件を」
「………はい!」
その誓いだけが、今の僕にできる最大限の事だった。
そうやって、時間は流れて行った。
そして、この事件は佳境を迎えようとしていた。
[0回]
PR