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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第36話 設立の理由

「どうするんだ? これ」
「……どうしよう」

病院から戻ったは良いのだが、部屋を後にしようとした途端に、俺となのはに足にしがみついて泣き始めたのだ。
フォワード陣なら何とかなるかなと思ったが、それもダメでどうしようかと困り果てていた時、部屋にフェイトとはやてが入ってきた。

「八神部隊長」
「フェイトさん」

スバルとエリオが反応する中、はやての表情は笑っていた。

「いや~、エース・オブ・エースにも勝てへん相手はいるんやね~」
(そんなこと言ってないでこの状況を何とかしてくれ)
【フェイトちゃん、はやてちゃん、あの……助けて?】

笑顔でしみじみと言うはやてと、その横にいるフェイトに俺の心の声を代弁するように、なのはが助けを求めた。

「スバル、キャロ。とりあえず落ちつこか? 離れて休め」
「あ、はい」

泣き叫ぶヴィヴィオにどうすればいいかと戸惑っていた二人ははやての指示に従って数歩下がった。
そんな中、フェイトがウサギのぬいぐるみを片手にヴィヴィオのそばに近づくとしゃがんで目線を合わせた。

「こんにちは~」
「……ふぇ?」

ぬいぐるみを掲げながらフェイトが呟くと、今まで泣いていたのが嘘のように泣き止んだ。

「この子は、あなたのお友達?」
「ヴィヴィオ、こちらフェイトさん。なのはさんの大事なお友達」

なのはの紹介に、フェイトは優しく微笑んだ

「ヴィヴィオ、どうしたの?」
【取りあえず病院から連れてきたんだけど、離れてくれないの】
【懐かれちゃったのかな?】

ウサギのぬいぐるみを操りながら器用になのはに念話で答えるフェイト。

【それでフォワード人に相手してもらおうと思ったんだけど……】
【すいません……】
【良いよ、任せて】

なのはの言葉に、フォワード陣が肩を落とすのを見て、フェイトは柔らかい表情を浮かべながらなのはに言った。

「ね、ヴィヴィオはなのはさんと真人さんと、一緒にいたいの?」
「……うん」

フェイトの問いかけに、ヴィヴィオはしがみついたまま頷いた。

「そっか。でもなのはさん、大事なご用でお出かけしなきゃいけないのに、ヴィヴィオがわがまま言うから困っちゃってるよ? この子も、ほら」
「……うぇ」

ウサギのぬいぐるみを操ると、ヴィヴィオが顔をゆがめた。

「ヴィヴィオは、なのはさんを困らせたいわけじゃないんだよね?」
「……うん」

今にも泣きだしそうなヴィヴィオに、フェイトは静かに語りかける。

【な、何かフェイトさん達人的なオーラが】

それを見ていたスバル達は、念話で驚いた様子で話していた。

【フェイトさん、まだ小っちゃい甥っ子さんと姪っ子さんがいますし……】
【使い魔さんも育ててますし】
【あぁ! それに小っちゃいころのあんた達も知ってるわけだしね】

ティアナの言葉に、エリオとキャロが顔を赤くして縮こまった。
どうやら相当恥ずかしかったらしい。

「だから真人さんと一緒に、いい子で待ってよう? ね?」

そう言うとフェイトはぬいぐるみをヴィヴィオに渡す。

「……うん」
「ありがとね、ヴィヴィオ。ちょっとお出かけしてくるだけだから」

俺となのはの足から手を離したヴィヴィオに、なのはは優しく言うと顔を上げて俺の方を見た。

「真人君、ヴィヴィオの事、お願いね?」
「ああ、分かった」

なのはのお願いに、俺は反射的に答えた。
おかしいと気付いたのは、なのは達が部屋を後にした時だった。

「って! どうして俺がここに残ることになってるんだ!!」

問いかけたい人物がいない方向に、俺はそう叫んだ。
こうして、俺が今からやるべきことが決まったのであった。










そして、はやて達が聖王協会に行っている間、俺はと言えば……

「はい、上り」
「………なぜだ、なぜなんだ」

俺は、凄まじい敗北感に苛まれて理た。
俺は、ヴィヴィオにエリオとキャロの四人で、トランプ遊びをしていた。
だが……

「パパ、またビリだよ」
「ちくしょう!!」

ヴィヴィオの止めに、俺は叫ばざるを得なかった。
ちなみにヴィヴィーが俺の事をパパと呼ぶようになった。
最初はやめさせようとしたが、上目づかいでしかも涙を浮かべられたら頷くしかない。
決してロリコンなどではない!!
それはさておき、俺はすでにトランプ遊びで10連敗していた。

(そう言えば、俺ってトランプ駄目だったっけ)

俺は昔を思い返した。
今の今までトランプ系の遊びで勝ったことなど一度もなかった。
良くてビリの一歩手前だ。
クリスマス会でトランプ系のゲームをした時は、ビリになって罰ゲームをやらせられたのは、いい思い出だ。
まあ、完全に悪乗りしていたのは、アリサとはやてに健司に執行人だが。

「お前、まだ弱いのか?」
「仕方がないだろ! 仕方が!!」

執行人がいきなり横に出てきても、俺は動じない。

「よっ! なんだ、楽しそうじゃないか……ん? これはトランプか………お前、まさかまた連敗か?」
「ああ、そうだ! 文句あるのかこの野郎!!」

火に油を注ぐように部屋に入ってきた健司に俺は半場やけくそで叫んだ。

「お、落ち着いてください!」

それを必死に止めるエリオとキャロ………何だか俺が惨めになってきた。

「む、この子が、話題の少女か。こんにちは」

健司は俺の横にいるヴィヴィオに目を付けるとしゃがみこんで挨拶をする。
対するヴィヴィオはなぜか俺の背後に隠れた。

「怖がられてるな。始めまして、よろしくね」

執行人も笑顔で挨拶をする。
そんな中、ヴィヴィオは俺の服を引っ張った。

「どうしたんだい? ヴィヴィオ」
「パパ……この人たち、怖い」
「「ぐさぁ!?」」

ヴィヴィオの言葉に二人は、酷く傷ついた様子で地面に項垂れた

「お、俺が……怖い?」
「この僕が………」

二人はあまりの衝撃に、ヴィヴィオが俺の事を”パパ”と呼んでいたことにも気づいていない。

「あはは、子供にはわかるようだな。二人が同じだってこと」
「「こんな奴(変態)と一緒にするな!!」」

ここぞとばかりの俺の反撃に、二人は声をそろえて反論した。
ちなみに、変態と言ったのは執行人だ。

「って、誰が変態じゃい!!」
「お前以外にどこにいる!!」

二人は、醜い争いを始めてしまった。

「あーはいはい。喧嘩は表でやって頂戴」
「っく! 執行人、こうなったら決闘だ!!」
「上等!!」

呆れ半分の俺の言葉に、健司は執行人を引き連れて出て行った。

『………はぁ~』

その場にいた俺達はため息をつくことしかできなかった。

「……?」

ただ一人、首を傾げているものもいたが。
そして、俺達はトランプゲームを続行するのであった。










………結局この日、俺の敗北数は15回となり、総敗数が100回となったと言うのを、ここに書き記しておこう。

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第42話 見えた敵

「何だって!?」

部隊長室に突然呼ばれた俺は、はやてからの知らせに、俺は耳を疑った。

「せやから、健司君が違法魔導師にやられたんや!」

そう、任務に行った健司が違法魔導師に敗れたという知らせだった。

「それで、健司の容態は?」
「今病院で手術を受けておるらしいんやけど、今はどうなってんのかが分からへん」

俺の問いかけに、はやては首を横に振りながら答えた。

「はやて、病院に行ってきていいか?」
「勿論や」

俺ははやての許可を取り、部隊長室を後にしようとした。

「ちょい待ち」
「何ですか?」

俺は引きとめたはやてに用件を尋ねた。

「健司君の容態、分かったら早く私達にも伝えてな」
「勿論」

はやてのお願いに、そう答え、俺は健司が手術を受けているであろう病院に向かった。










病院に到着した俺は、ベンチに腰かけている長い青髪の女性……アリスを見つけた。

「アリス!」
「真人さん!!」

俺が来たことが分かったアリスは俺に抱き着いていた。

「健司さんが……グスッ……健司さんがぁ!」

涙ぐみながら、悲しげに叫ぶアリスの背中を静かにさすった。
健司には悪いが、後で事情を話せば許してくれるだろう。
なのはは………SLBを覚悟したほうが良いかもしれない。
そんな事を考えていると、手術室と思われる扉が開き、中からはベッドのようなものに横たわる健司が出てきた。

「健司!!」
「健司さん!!」

俺とアリスは目を閉じている健司の元に、近寄って名前を呼びかけた。
口元にはマスクのようなものがつけられ、腕には点滴がつけられていた。

「時空管理局執務官、山本です。何があったかをお教え願えますか?」
「はい、それではこちらへどうぞ」

俺はすぐに気持ちを切り替え、身分を示すIDを医者に提示して事情を聴くことにした。
医者の後を追い、俺は歩き出した。
その際、アリスには健司に付き添うように伝えておいた。










「井上さんですが、心臓の近くを剣で一突きにされている姿で発見されました」
「ッ!!」

モニターに表示されたのは、健司の搬送時に調べられた医療データだった。
その中のレントゲン画像には、健司の体を貫く剣が写っていた。

「幸い、急所を外れていたことと、発見や処置が早かったことが幸いして命だけはとい止めましたが、正直言ってどうなるかは私達にもわかりません。2,3日が山です」
「………わざわざありがとうございました」

俺に出来たのは、お礼を言う事だけだった。
それから後、どうしたのかは自分でもわからない。
気づいた時には、辺りは真っ暗になっていた。
感覚から場所は自室の様だ。
視力はなくなったのだろうか?
そう思った時、眩しいほどの光に照らされた。

「ようやく自分を取り戻したか」

呆れた様子で声を上げたのは、執行人だった。
どうやら、俺が正気を取り戻すまで待っていたようだった。

「なのは達が心配していたぞ。お前の様子がおかしいとな」
「………」
「まあ、そのあたりはこの僕がうまく言っておいたから安心しろ」

執行人が、感謝しろと言わんばかりに言うが、俺は何も言えなかった。

「で、いつまで黙りこくっているつもりだ。そのままじゃ健司を襲った野郎の話が出来ないじゃないか」
「ッ!? 犯人を知ってるのか!?」

執行人の言葉に、俺は胸ぐらをつかんで問いかけた。

「だぁ!!! 落ち着かんか馬鹿者!!」

それを執行人は、鬱陶しげに振りほどいた。

「………悪い」
「はぁ……始めるぞ?」

落ち着いた俺を見た執行人は、ため息交じりに話を始めた。

「健司の体を調べたところ、転生者反応があった」
「健司は転生者だ。反応があってもおかしくないだろ」

執行人の報告に、俺は反論した。
転生者反応とは、転生者が発する特有の魔力反応の事だ。
健司は転生者なのだから、あってもおかしくはない。

「それは、魔力回路や、肉体の話だ。健司の場合はそれが臓器にあった。これがどういう意味か分かるか?」
「……転生者による何らかの魔法を、体の中で発動させた」

執行人の言葉から導き出されたのは、それだった。
身体強化魔法ではなく、物理的に体の中で発動させたのだ。
通常自分の魔力は、魔力回路に異常がない限り自分の体の中……内臓にまであふれることはない。
医者から見せてもらった魔力回路の診断データからは、どこにも異常は見られなかった。

「つまり、第3者による攻撃」
「そう、そしてそれを行った人物は……」

俺と執行人の中で、元まった答えは一つだった。

「「転生者だ!!」」





公開意見陳述会まで、後5日

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第43話 約束/訪れた時

9月11日

公開意見陳述会を明日に控えた日の夜、俺達機動六課フォワード陣と隊長陣は、ロビーに集まっていた。

「と、いう訳で明日はいよいよ公開陳述会や。明日14時からの開会に備えて現場の警備はもう始まってる。なのは隊長とヴィータ副隊長、山本副隊長補佐とリィン曹長、フォワード四名はこれから出発、ナイトシフトで警備開始」

はやてからの説明と指示を受ける。
と言うより、俺って副隊長補佐だったのね。
今初めて知った。

【それ、隊員としてはどうかと思うぞ】
「みんな、ちゃんと仮眠とった?」
『はい!!』

執行人からの念話をよそに、フェイトの言葉にフォワード陣は元気よく返事をする。

「私とフェイト隊長、シグナム副隊長は明日の早朝に中央入りする。それまでの間、よろしくな」
『はい!』

はやての言葉に、俺達は返事をした。
そして俺達はヘリポートへと向かった。










「執行人、出てきて」
【了解】

一足早くヘリポートについた俺は、ヘリから少し離れたところで執行人にそう告げると、外に出た。
執行人は何時も俺の中で過ごすことが多い。
ちなみに彼曰くこれはユニゾンではないとのことだ。

「どうした?」
「執行人に頼みたいことがある」

突然の俺の言葉に、執行人は首を傾げながら口を開く。

「言ってみろ」
「転生者が健司に手を出すかもしれない。だから健司の警護をしてほしい」

俺のお願いを聞いた執行人は、しばらく考え込んだ。

「分かった。他ならぬ真人いからの命だ。ありがたく拝命しよう」
「ありがとう」

俺のお礼に、執行人は”なんてことはない”と言いながら病院の方へ飛び立っていった。
そして俺も、ヘリの方に向かう。

「ん?」
「……?」

なのはと合流した俺がヘリに乗ろうとした時、後ろでなのはの声がしたので、振り返った。
そこには寮母のアイナさんに連れられたヴィヴィオの姿があった。
そのヴィヴィオは、不安げな様子でなのはを見ていた。

「あれ、ヴィヴィオ。どうしたの? ここは危ないよ」
「ごめんなさいね、なのは隊長、山本さん。どうしてもママの見送りするんだって……」

申し訳なさそうに謝る愛奈さんに、俺はなのはにつられるように屈んだ。

「もう、だめだよヴィヴィオ。アイナさんに我が儘言っちゃ」
「ごめんなさい……」

なのはは苦笑いしつつ、ヴィヴィオに注意した。

「なのはママ今夜はちょっとお外でお泊りだけど、明日の夜には、ちゃんと帰ってくるから」
「絶対………?」
「絶対に絶対」

なのははそう言うと、小指を突き立てた。

「いい子で待ってたら、ヴィヴィオの好きなキャラメルミルク作ってあげるから」
「うん」
「ママと約束ね」
「うん」

ヴィヴィオはなのはの小指に自身の小指をからめた。
それを俺達は静かに見ていた。










俺達は中央管理局地上本部へと到着した。
日付も12日となっていた。
表はかなり厳重な警戒態勢となっていた。
そして太陽が出始めたころ、俺となのはは本部の入り口の前に着くと、ついてきていたスバルとギンガの方に振り返る。

「さて、じゃあ、そろそろ私は中に入るよ」
「「はい!」」

なのはの言葉に、二人は返事をした。

「でね、内部警備の時、デバイスは持ち込めないそうだから、スバル、レイジングハートのこと、お願いしていい?」
「あ、はい!」

なのはの頼みにスバルは慌てて頷く。
警備なのにデバイス持ち込み禁止と言うのは、何とも矛盾を抱えていると思うのが正直な感想だ。。

「前線メンバーで、フェイト隊長達からも預かっておいてね?」
「はい!」

なのははスバルの返事を確認すると、中に入っていった。

「っと、俺も内部警備だから、クリエイトを預かってくれるか?」
「はい!」

俺は待機状態となっている水晶玉をスバルに手渡すと、中に入った。










あれからかなりの時間が経ち、お昼を回った。
俺は単独で地価の方を警備していたが、つい先ほど局員から差し出された軽食を食べていた。

(健司をあんなふうにした転生者……一体何が狙いなんだ?)

俺は食べながらふと考える。
普通、転生者には何らかの目的がある。
出なければ、行動など起こしはしないはずだ。

(まさか………な)

俺は頭の中に出てきた、最も最悪な一つの可能性を否定した。
その可能性は

――――――世界征服と言うものだった。










そして、開会してから約4時間後、午後6時を回った時だった。
突然の揺れと爆音が響き渡ったのは。

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第38話 出向と模擬戦

地上本部の臨時査察が行われてから、数日経ったある日の朝。

「さて、今日の朝練の前に、一つ連絡事項です」

朝練の前にフォワード陣が集合した際に切り出されたのが、その一言だった。

「陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が、しばらく六課へ出向となります」

なのはの紹介を受けて、青髪の女性が一歩前に出た。

「はい、108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」
『よろしくお願いします!』

ナカジマさんの自己紹介に、俺達は敬礼をして答えた。

「それから、もう一人」

今度はフェイトの言葉に緑色の眼鏡をかけた女性が一歩前に出た。

「どうもー」

軽い感じで女性が答えた。

「十年前から、うちの隊長陣のデバイスを見て来てくださっている、本局技術部の精密技術官」
「マリエル・アテンザです」

フェイトの紹介に続いて、女性……アテンザさんが敬礼をしながら自己紹介をした。

「地上でのご用事があるとのことで、しばらく六課に滞在していただく事になった」
「デバイスの整備を、見てくれたりするそうですので……」

シグナムさんとシャーリーさんが説明をした。

「気軽に声を掛けてね!」

それを受けて、アテンザさんは笑顔で新人たちに言った。

『はい!』
「おし、紹介が済んだことで、さっそく今日も朝練始めるか!」
『はい!』

一通り自己紹介が終わったのを見計らったヴィータが、一歩前に出て口を開いた。










その後、なのはの提案でスバルとナカジマさんの模擬戦が行われた。
結果はスバルの負け。
だが、そこまでのスバルの動きは前より一段と良くなったと言うのが、なのはの話。

「じゃ、皆集合」
『はい!』

なのはの一声でフォワード陣は再び集合を掛けられた。

「せっかくだからギンガも入れたチーム戦、やってみようか? フォワードチーム五人対、前線隊長五人チーム!」
「………え?」

なのはの言葉に、ナカジマさんが目を丸くして固まっていた。

「いや、あのね、ギン姉。これ、時々やるの」
「隊長たち、かなり本気で潰しに来ますので……」
「まずは地形や幻術を駆使してなんとか逃げ回って……」
「どんな手を使っても、決まった攻撃をいれることができれば、撃墜になります」

スバル、エリオ、ティアナ、キャロが、固まっているナカジマさんに順々に説明していく。

「ギンガはスバルと同じくデバイス攻撃ね。左ナックルか蹴り」
「……はい!」
「いや、ちょっと待って、何気に俺まで入れられて――――」
「じゃあ やってみようか!」

俺の問いかけを遮るようにして、模擬戦は始められた。

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第34話 臨時査察と選んだ道

突然起こった戦いと、謝罪の翌朝。

「ん……」

俺はいつものように”暗闇”の中で目覚めた。
だが外から聞こえる小鳥のさえずりが、今が朝であることを告げていた。

「着替えるか」

俺はベッドの横にあるステッキを手にして立ち上がると、手探りで服をしまってある棚の方に向かう。
ここに来てからもうかなりの日数が経ったこともあり、この部屋の構造は手に取るようにわかるようになった。
服も次の日に着る物を左端に掛けておけばいいだけの話なので、特に問題はない。
そして、俺は制服に着替えるのであった。










「通信………誰からだ?」

着替え終えて少しした時、誰かから通信が掛かってきたことを告げるアラームが鳴った。
さすがに目が見えない状態で通信相手が分かるほど、俺はエスパーではないため目に魔力を通して視界を回復させた。
そしてすぐさま相手を確認する。

「オーリスさんから?」

俺はいよいよかと思い通信に出た。

【おはようございます、山本ニ等空佐】
「おはようございます、オーリスさん」

俺はいつものように挨拶を返す。
オーリスさんの表情はいつもと同じだった。
……いや、少しばかり怒りが見える。

「ご用件は何でしょうか?」
【現在、そちら機動六課への査察の準備をしています。近い内に臨時査察に向かいます】

オーリスさんの用件に、俺は一瞬何のことだったのかが理解できなかった。

「な!? なぜ臨時査察を! それでは自分を派遣したのに、意味がありません!!」
【貴方からの報告がないからです。報告がなければ派遣してないも同じ。貴方の任務不履行については後程じっくりと尋ねさせていただきます。それでは】

俺の意見に、オーリスさんは静かにそう答えるとお辞儀をして通信を切った。

(これはまずいことになったな)

俺はそう思うや否や、すぐに自室を後にした。
向かうのは部隊長室だ。










「はやて!」
「うわ!? どうしたんや、朝っぱらから」

突然部隊長室に入った俺に、はやては驚いた様子で用件を尋ねてくる。

「落ち着いて聞いてくれ。地上本部の方で、ここの臨時査察をする動きが出ている」
「それはほんまなんか!?」

俺の言葉に、はやては驚いた様子で席を立ちあがりながら聞き返した。
それに俺は頷くことで答えた。

「いつやるかは分からないけど、対策は立てておいた方がいい」
「分かった……ありがとな」

俺の意見に、はやては頷くとお礼を言ってきた。

「それでは、これで」

俺ははやてに一礼し、部隊長室を後にした。

(もうこれで後戻りはできない)

はやてに情報を渡した時点で、もう俺には退路はない。
だが、もう後悔しないと誓ったんだ。
だから、俺は選んだ道を歩き続ける。
そんな覚悟を胸に歩いていた時、目の前の通路をシグナムさんとなのはが通りすぎるのが見えた。

「なのは、シグナムさん」
「あ、真人君」
「山本か、どうした?」

俺の声に気付いた二人が俺の方に振り返った。
なのはは柔らかい笑みを、シグナムはいつもの表情だった。

「二人とも、どこへ?」
「私達は昨日保護した女の子の様子を見に病院に行く所」

俺の問いかけに、なのはが答えた。

「あの、俺も一緒に行っていいか?」

昨日保護した女の子の事が少し気になっていた俺は、二人にそう聞いた。

「うん、良いよ。良いですよね? シグナムさん」
「ああ、私は構わない」

こうして、俺達は病院へと向かうことになったのであった。










「すみません、シグナムさん。車出して貰ちゃって」
「何、車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスター・シャッハがいらっしゃる。私が仲介した方がいいだろう」

病院に向かう中、なのはの謝罪に シグナムは早期にするなと言う様子で答えた。
俺もなのはも車の免許は取っていない。
俺の場合は目が不自由なのと下半身不随のため、取得資格もないのだが………まあ、それは関係ないからおいておこう。

「しかし……検査が済んで何かしらの白黒がついたとして、あの子はどうなるのだろうな?」
「あー………当面は六課で預かるしかないと思いますね」

先ほどとは違いやや真剣そうな雰囲気でのシグナムの問いかけに、なのはが答えた。

「受け入れ先を探すにしても、長期の安全確認が取れてからでないと……」
「何だか難しいな」

俺は思わずそう呟いてしまった。
そんな時、突然通信が入った。

「騎士シグナム! 聖王教会、シャッハ・ヌエラです!」
「どうされました?」

画面に映し出された紫色の短髪の女性……シャッハさんに、シグナムは用件を尋ねる。

「すいません、こちらの不手際がありまして、検査の間にあの子が姿を消してしまいました」

それは俺達に緊急事態を告げる物であった。

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