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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第34話 臨時査察と選んだ道

突然起こった戦いと、謝罪の翌朝。

「ん……」

俺はいつものように”暗闇”の中で目覚めた。
だが外から聞こえる小鳥のさえずりが、今が朝であることを告げていた。

「着替えるか」

俺はベッドの横にあるステッキを手にして立ち上がると、手探りで服をしまってある棚の方に向かう。
ここに来てからもうかなりの日数が経ったこともあり、この部屋の構造は手に取るようにわかるようになった。
服も次の日に着る物を左端に掛けておけばいいだけの話なので、特に問題はない。
そして、俺は制服に着替えるのであった。










「通信………誰からだ?」

着替え終えて少しした時、誰かから通信が掛かってきたことを告げるアラームが鳴った。
さすがに目が見えない状態で通信相手が分かるほど、俺はエスパーではないため目に魔力を通して視界を回復させた。
そしてすぐさま相手を確認する。

「オーリスさんから?」

俺はいよいよかと思い通信に出た。

【おはようございます、山本ニ等空佐】
「おはようございます、オーリスさん」

俺はいつものように挨拶を返す。
オーリスさんの表情はいつもと同じだった。
……いや、少しばかり怒りが見える。

「ご用件は何でしょうか?」
【現在、そちら機動六課への査察の準備をしています。近い内に臨時査察に向かいます】

オーリスさんの用件に、俺は一瞬何のことだったのかが理解できなかった。

「な!? なぜ臨時査察を! それでは自分を派遣したのに、意味がありません!!」
【貴方からの報告がないからです。報告がなければ派遣してないも同じ。貴方の任務不履行については後程じっくりと尋ねさせていただきます。それでは】

俺の意見に、オーリスさんは静かにそう答えるとお辞儀をして通信を切った。

(これはまずいことになったな)

俺はそう思うや否や、すぐに自室を後にした。
向かうのは部隊長室だ。










「はやて!」
「うわ!? どうしたんや、朝っぱらから」

突然部隊長室に入った俺に、はやては驚いた様子で用件を尋ねてくる。

「落ち着いて聞いてくれ。地上本部の方で、ここの臨時査察をする動きが出ている」
「それはほんまなんか!?」

俺の言葉に、はやては驚いた様子で席を立ちあがりながら聞き返した。
それに俺は頷くことで答えた。

「いつやるかは分からないけど、対策は立てておいた方がいい」
「分かった……ありがとな」

俺の意見に、はやては頷くとお礼を言ってきた。

「それでは、これで」

俺ははやてに一礼し、部隊長室を後にした。

(もうこれで後戻りはできない)

はやてに情報を渡した時点で、もう俺には退路はない。
だが、もう後悔しないと誓ったんだ。
だから、俺は選んだ道を歩き続ける。
そんな覚悟を胸に歩いていた時、目の前の通路をシグナムさんとなのはが通りすぎるのが見えた。

「なのは、シグナムさん」
「あ、真人君」
「山本か、どうした?」

俺の声に気付いた二人が俺の方に振り返った。
なのはは柔らかい笑みを、シグナムはいつもの表情だった。

「二人とも、どこへ?」
「私達は昨日保護した女の子の様子を見に病院に行く所」

俺の問いかけに、なのはが答えた。

「あの、俺も一緒に行っていいか?」

昨日保護した女の子の事が少し気になっていた俺は、二人にそう聞いた。

「うん、良いよ。良いですよね? シグナムさん」
「ああ、私は構わない」

こうして、俺達は病院へと向かうことになったのであった。










「すみません、シグナムさん。車出して貰ちゃって」
「何、車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスター・シャッハがいらっしゃる。私が仲介した方がいいだろう」

病院に向かう中、なのはの謝罪に シグナムは早期にするなと言う様子で答えた。
俺もなのはも車の免許は取っていない。
俺の場合は目が不自由なのと下半身不随のため、取得資格もないのだが………まあ、それは関係ないからおいておこう。

「しかし……検査が済んで何かしらの白黒がついたとして、あの子はどうなるのだろうな?」
「あー………当面は六課で預かるしかないと思いますね」

先ほどとは違いやや真剣そうな雰囲気でのシグナムの問いかけに、なのはが答えた。

「受け入れ先を探すにしても、長期の安全確認が取れてからでないと……」
「何だか難しいな」

俺は思わずそう呟いてしまった。
そんな時、突然通信が入った。

「騎士シグナム! 聖王教会、シャッハ・ヌエラです!」
「どうされました?」

画面に映し出された紫色の短髪の女性……シャッハさんに、シグナムは用件を尋ねる。

「すいません、こちらの不手際がありまして、検査の間にあの子が姿を消してしまいました」

それは俺達に緊急事態を告げる物であった。

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