「さてと、クラナガンまで来たけどどこに行く?」
「うーん、そうだね。あそこなんてどうかな?」
そう言ってなのはが指さしたのは、どこでも見かける服屋だった。
「そうだね、俺もちょうど私腹を何着か買おうかなと思ってたんだし、行くか」
「うん♪」
嬉しそうに返事をするなのはと共に、服屋へと向かった。
「ありがとうございました」
俺は服を2,3着買った。
この服屋は料金が安いことが魅力的な事の一つだ。
「そう言えばなのははどこに行った?」
俺はいつの間にかいなくなっていたなのはを探す。
彼女は程なくして見つかった。
可愛らしい服が並ぶところで、なのはは二つの服を見て悩んでいた。
「うーん、こっちもいいし。でもこっちも捨てられないし……」
ものすごく真剣に悩んでいる。
俺が真横にいる事にも気づいていないのだから。
「真人君、これを着たら喜んでくれるかな?」
「その喜ぶと言うの分からないが似合うとは思うぞ」
「きゃあ!?」
俺はなのはの呟きに答えると、小さく悲鳴を上げながら飛び退いた。
そんな彼女のリアクションに驚きつつも、俺はなのはに軽く謝った。
「な、何でもないからね! なんでもないよ!?」
なのはは取り乱した様子で二回も同じことを言うと、表に出て行った。
「………」
俺はなのはが見ていた二着の服を見る。
両方ともジャケットだが、片方は青、もう片方は薄いピンクで、可愛らしい模様が描かれているものだった。
そして俺は少しばかり考えたのち、その二着を手に取った。
「……む~」
「だから悪かったってば」
服やを後にしてから、なのははずっと機嫌が悪かった。
どうやら驚かされたことがかなりいやだったらしい。
「お詫びのしるしに、はい」
「……何、これ?」
なのはは俺が手渡した袋の中身を、不思議そうに見た。
「こ、これって……」
「さっきなのはが買おうか買わないか悩んでいた奴だよ」
俺はあの後、二着の服を購入したのだ。
「い、いいの?」
「良いって、良いって。はやて曰くこれは”デート”何だから。男を見せないといけないだろ」
俺は軽い感じで言うが、デートと言う言葉を言うためにはやてをダシに使った。
後でばれたら報復が待っていそうで怖い。
「………あのね、真人君」
「何だ?」
改まって話し出したなのはに、俺は静かに答えた。
「この間、真人君私に、その……す、好きだって言ってくれたでしょ? でも、私答えを言ってなかったよね」
「………」
俺はなのはの言葉に、動揺を隠すので精一杯だった。
「私は……その……」
俺はこの時ほど緊張したことはなかった。
それほど緊張して、俺はなのはの答えを待った。
「真人君の事が、好きです」
「………」
そして俺は嬉しいはずなのに、声も出なかった。
「俺も、なのはの事が好きだ」
そうだと思えば自然にそんな言葉が、口を継いで出てきた。
それから、俺となのはの間で会話が無くなった。
「そ、そう言えば。こうしてのんびり過ごしたことなんて今までなかったよな?」
「そ、そうだね」
しかし、この会話もそれで終わった。
俺の出し方が悪かったのかもしれない。
「つ、次の所に行くか」
「う、うん。そうだね――――きゃ!?」
俺が慌ててベンチを立ちあがったのに続いて、なのはもベンチを立ち上がろうとする。
だが、お忘れかもしれないがなのはは運動音痴だ。
そのせいなのか、もしくは緊張していたのかは分からないが、足が引っ掛かったのかよろめいた。
「あ、危ない!」
そして、俺はそんななのはの体を支えることで、事なきを得たが、今度は別の意味でピンチを迎えることになった。
「あぅ………」
なのはが顔を赤らめるのも無理はない。
何せ、今の俺達の体勢は抱き合うような形になっているからだ。
「真人君」
「な、なのは?」
なのはは甘えるような声色で、俺の名前を呼ぶ。
「………」
そして目を閉じた。
それが何を意味しているのかは、いくら俺でも理解できた。
幸い、このあたりは人通りが少なかった。
なので、俺はなのはの体を掴み、顔を近づける。
それはいわゆる”キス”と言うものだった。
そしてあと少しで唇が合わさると言った所で。
『こちらライトニング4! 緊急事態につき、現場状況を報告します!』
「のわぁ!?」
「きゃ!?」
突然全体通信でモニターが開いたので、俺となのはは目にもとまらぬ速さで離れた。
『F23路地裏にて、レリックと思しきケースを発見! ケースを持っていたらしき小さな女の子が一人!』
『女の子は意識不明です! 指示をお願いします!』
モニターには、エリオとキャロに抱えられている金色の髪をした少女が写っていた。
「………行くか」
「………うん、そうだね」
どうやら、俺達の休日は終了の様だった。
何とも言い難い雰囲気を残して。
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