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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第9話 戦いと夢

~海鳴市 臨海公園~

「まだ来てないようだな」
「そのようだが、確実に近づいている」

今、俺達は見通しのいい場所に立っていた。
聞こえるのは静かな風とさざ波の音だけだ。
俺は何度も何度も深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
自分でもわかるほどに、俺は緊張していた。

「心配するな。この僕がついているのだ。いくらお前が弱くても、心配することはなに一つもないさ」
「そ、そうだね」

俺は応援しているのかわからない声をかけてくれる師匠に、にそう頷き返した。

「来るぞ」

(っ!!)

師匠の言葉に、俺は高鳴る鼓動を落ち着かせる。
気づけば手足が震えていた。

(大丈夫。俺なら出来る)

俺は自分にそう言い聞かせ、敵が来るのを待った。
たとえ自分が弱いとしても、自信を持っているか否かでは大きく違うというのを師匠との練習で学んだことの一つだった。

「ッ!」

俺は天空からいきなり降り注ぐ何かを、後ろに飛ぶことで避けた。
俺は前方を見てぞっとした。
俺が立っていた場所には一本の矢が突き刺さっていたのだ。
もし直撃していれば怪我では済まなかっただろう。
そして、攻撃に紛れるようにそいつは姿を現した。
相変わらず黒地のシャツに赤いマントを着込み、手には西洋風の剣という、異様な姿をした阿久津が。

「はっ! 今の攻撃を避けるとは、褒めてやろう」
「どうも」
「まあ、あんな見え見えの攻撃、避けて当然だがな」

師匠が小さな声でつぶやく。
それは俺に対して言ってるのだろうか?

「はっ! またお前か根暗」
「それはこちらのセリフだ。雑魚が」

すごい、顔を見合わせるや否や言葉の応酬が始まった。

「この俺様に二人掛かりとは、所詮は根暗だな。まあ、この俺様が強すぎるのが悪いんだがなッ! がはは」
「前にも言ったが、最強を名乗るのであれば500人の魔導師を30秒で倒せるようになってから言え」
「知らねえな」

呆れた表情を浮かべながら言う師匠の言葉に、阿久津は鼻を鳴らしながら返す。

「自分に都合の悪いことを忘れるのは人としてどうかと思うけど」

「なんか言ったか? モブ」

耳だけは良いようで、睨みつけられた。

「まあいい。今日はこの俺様がお前らにまとめて天罰を下してやるぜ」
「神様気取りか。ならば見せて貰おうか? お前の”天罰”とやらを」

師匠が言い切るのと同時に、周囲から音が消えた。
おそらくは俺の錯覚だろう。

「はぁ!」

最初に動き出したのは阿久津だった。
両手に小さなナイフのようなものを手にして、阿久津は俺に向かって突進してきた。
倒すならまずは俺からと思ったのだろう。
数日前の俺だったら、きっとこの一撃が決定打になっていたかもしれない。
でも

(回避をするときは、なるべく少ない動き!)

俺には師匠の教えが多少ではあるが蓄積されている。
それを使えば、凌ぐことはできる。
俺は横に移動することでやり過ごそうとするが、阿久津はそんな俺の行動が分かっていたのか俺の動きについて行くように進路を変えた。

「やぁ!」

俺は慌てて弓を構えると、矢を阿久津の手元に目掛けて射る。

「当たるか!」

その矢は、阿久津が簡単に回避してしまった。
でも、俺は動じない。

「ふん」
「なッ!」

後ろに回り込んでいた師匠によって、両手に会ったナイフが砕かれた。
不思議なのは、何も持っていない両手でどうやって砕いたのかという事だ。

「そこッ!」
「ぐっ!」

両手の武器が無くなった隙をついて師匠は俺の方に蹴り飛ばした。

「うわぁ!!」
「がふっ!?」

そのことに驚いた俺は無我夢中で手にしていた矢(魔力で生成したもの)を振りかぶった。
気づけば阿久津は大きく後ろの方に吹き飛ばされていた。

「グッジョブ」
「は、はあ」

無我夢中でやった事なので、あまり実感がなかったりする。

「お、俺様に一撃を食らわすとは……やるじゃねえ」

吹き飛ばされた方から阿久津が姿を現す。
赤いマントはぼろぼろに裂けていて、黒地のシャツには袈裟切りされたような裂け目が出来ていた。
それなのに怪我をしている様子じゃないのはなぜだろう?

「それはお前が魔力ダメージのみを与える”非殺傷”にしているからだろう」
「非殺傷?」

俺の心を読んだのか、師匠は俺の疑問に答えてくれた。

「非殺傷設定にしている限り、人を殺すことはできない。とはいえ、ダメージが与えられるのは変わりはないが」

おそらく俺はこの設定を解除することは一生ないだろうと、心の中で頷いた。

「だがそれもここまでだ。見せてやるよ、この俺様の本気をな!」

阿久津は目を血走らせながら叫ぶその手には、砕かれたはずのナイフがあった。

「あれが阿久津の恐ろしさ。武器を壊しても何度も何度もああやって具現化させやがる」

イタチごっこだと言いながら、師匠は剣の形をしたそれを構える。

鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎむけつにしてばんじゃく)

呪文のようなものを呟きながら、真横にナイフを投げるように捨てる。

「飛べ!」
「え? うわッ?!」

怒鳴る師匠は、固まる俺の襟首を掴むと持ち上げる。
それと同時に俺が立っていた場所をナイフが通過していく。
何とも恐ろしい。

「って、こっちに向かって来てるけど!?」
「そういう時は……」

師匠は俺を上空に振り飛ばす。
何だか遊園地のアトラクション以上の恐怖感がある。

「ウインド・ミラティス」

微かではあるが呪文を紡ぐ、師匠の声が聞こえた。

「ちっ!」

さらには聞こえるはずがない阿久津の舌打ちの声さえも聞こえてくる。
そして、俺はゆっくりと地面に降りて行く。

「さすがだ。だが次はそうはいか――」

(っ!?)

阿久津が言いかけた瞬間、俺の脳裏に突然ある光景が走る。
それはまるでモノクロ映画のように、ノイズが走っているものであった。
阿久津の後ろから現れた”何者か”に体を貫かれる阿久津の姿があった。
そして漆黒の球体が現れ、それが光の筋となって後方に向かっていく。

「ッ!?」

ノイズの走っていた映像はそこで終わり、気づけば俺は弓を構えていた。
違うのは俺の対峙している相手が阿久津ではなく見知らぬ赤っぽい髪の少女である位だろう。

「ちっ!」

目の前の少女は俺を睨みつけながら舌打ちをする。

(あ……)

今気づいたが、彼女の手には小ぶりのハンマーのようなものが握られていた。
そして彼女から漂う阿久津や師匠と少しばかり似ている”オーラ”が、彼女も魔法使いであることを伺わせていた。

「テメェ、何者だ!」

そして目の前に立つ少女は、俺にそう声を荒げる。

「……」

俺はそれに答えない。
いや、答えることが出来なかったというのが正確だろう。

「まあいい。テメェらのリンカーコア。貰っていく!」

(リンカーなんとかって、何だ?)

少女の口から出た聞きなれない言葉に首をかしげるが、彼女が敵であることだけは分かった。
俺は手にする弓を力強く握りしめる。

「え?」

そんな俺の前に立ちはだかる人物がいた。

「しょうがねえな。この俺様も助けてやるぜ」

それはつい先ほどまで対峙していた阿久津だった。

「小僧と同意見なのは癪だが、僕も応じよう」

そして師匠もそれに続いた。
その後、二人の活躍で謎の少女は捨て台詞を吐いて去って行くのであった。
それが、俺にとっての初戦の顛末であった。

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