とある休日、俺は駅前である人物と待ち合わせをしていた。
「ごめん、待った?」
「いんや、ちっとも待ってないぞ」
その人物とは暁美ほむらだ。
彼女とは少し前までは色々と敵対していたが、今ではこうして和解している。
そんな彼女は、いつもの姿からは想像もできないおしゃれな服を着ていた。
「それじゃ、行くか」
「う、うん」
暁美さんはなぜか顔を赤くしながら俺の腕に抱き着く。
(恥ずかしいのならやらなきゃいいのに)
心の中ではそう思っても口には出さない。
そして、俺達は目的地のショッピングセンターへと向かった。
「そ、それで今日は何を買うのかしら?」
「何って、前に説明しただろ? 包丁とか鍋とかそう言うのを買うって」
俺はこの間の惨状を思い出した。
前に家に尋ねた時包丁やら鍋などが全くなかったのだ。
それは色々な意味でまずいとのことで、今日のこれを設けたのだ。
「鍋はこれとこれでいいかな?」
「そ、そうね」
「包丁とか、どれがいい?」
「渉が選んで頂戴」
先ほどからだが、彼女は受け答えが適当な気がする。
まさかとは思うが、料理に興味がないのだろうか?
「家事ぐらいできないと、良いお嫁さんになれないぞ~」
「ッ!!?」
俺のボヤキが聞こえたのか、暁美さんが固まった。
(あ、怒らせたかな?)
俺は少々嫌な予感がして逃げの姿勢に入った。
「渉!」
「は、はい!!」
突然俺の名前が呼ばれたので、俺は直立不動で返事をした。
「料理の本もお願い」
「へ?」
暁美さんの言葉に、俺は固まった。
「これで終わりだな」
「そ、そうね」
ショッピングを終えた俺と暁美さんは、喫茶店で一息ついていた。
「それにしても、よくそんなに買うよな」
俺は暁美さんの横にある袋を凝視しながら呟いた。
袋の中には料理本総勢25冊が入っていた。
ちなみにこれらの購入代金は会計の際に洗脳してお金を支払ったように思い込ませているので、実質的出費は0だ。
このお店は良いことがあるだろう。
……たぶんではあるが。
「それにしても、暁美さんが料理に興味を持つなんて意外だったな」
「………ほむら」
俺の言葉に、暁美さんは不服そうな表情をしながら呟く。
「はい?」
「私の事はほむらでいいわ。私だって渉って呼んでるんだから」
暁美さん……もといほむらの提案に俺は乗ることにした。
もとより、さん付けで呼ぶのがちょっと嫌だっただけだが。
「……分かったよ、ほむら」
「………」
名前で呼ぶと顔を赤くするほむら。
と言うより、恥ずかしいのなら言わなきゃいいのに……。
「それじゃ、そろそろ帰るか」
「そ、そうね。そうしましょう」
そして、俺達は喫茶店を後にした。
ほむらを家まで送って行く途中、突然彼女が声をかけた。
「ね、ねえ、渉」
「ん? どうした」
俺はほむらに用件を尋ねた。
「その、私が料理を作ったら………私の料理を食べてくれる?」
「あ、ああ、もちろんだ」
ほむらが上目づかいでこっちを見ながら聞いてきたので、若干ドモリながら頷いて答えた。
こうして、俺とほむらのお使いは終わったのだった。
おまけ 悪魔のXXX
「はい、渉」
「…………なにこれ?」
とある日の昼休み。
ほむらが突然俺の机に置いた物体を俺は間違って欲しいと思いながら聞いた。
「お弁当よ。渉のために作ってきたの」
「そ、そうか。あ、ありがとうな」
俺の目の前にあるのは、ここでいうのもあれな奇妙な緑と赤の物体だった。
(と言うよりこれは食べられるのか!?)
匂いも食べ物ではないと告げているが。
「さあ、食べて」
「あ、ああ。いただきます」
俺は周りの友人たちが逃げていくのを恨めしく見ながら、料理を口にした。
「おやおや、何のようじゃ?」
「あの料理は……テロだ」
「ほ、ほ、ほ。好かれるのも大変じゃの~」
なぜか世界の原点にいるノヴァとそんな話をしたような気がした。
この日、ほむらの料理=兵器と言う図式が俺達の中で形成されたのは言うまでもない。
ちなみにその後、孤軍奮闘するほむらは完成するたびに、俺に試食をさせてくれた。
そのおかげで俺はもう150回ほど端にかけている。
しかし料理の腕はちっとも上がらないのはなぜだろう?
その答えは………
「今日は隠し味にハイ○ーションを……」
彼女しか知らない。
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