それは、俺が体験した正直話したくもない思い出だ。
しかし、これを話さなければ俺は前には進めない。
なので、今あの悲劇の事件を話そうと思う。
それはとっても暑い夏のある日。
俺とまどかにさやか、そして杏子にマミさんになぜかキュウベぇは暁美さんの家を訪ねていた。
「で、これはどういう事かしら?」
しかし当の本人は顔をしかめてこっちを睨んでいるが。
「ごめんね、ほむらちゃん」
「まあまあ、そう怒らない怒らない」
「心が狭いと思われるぞ」
そんな暁美さんに、まどか達が必死に宥める。
「………まあいいわ。大したおもてなしは出来ないけれど」
「大丈夫だって、おもてなし用の物はこっちで用意してるし」
そう言ってさやかが持ち上げたのは、本日の目玉商品だ。
「………何よそれ?」
「何って、ケーキに決まってんじゃん。あんたそんな事も知らねえのか?」
呆然とした表情を浮かべる暁美さんに、杏子が呆れた様子で問いかけた。
「そんなことは知ってるわ。どうしてケーキだけなのかと聞いてるのよ」
「それは、渉君へのお礼っていう事で……」
そう、実はこのケーキは前にまどかと取引をした際の報酬なのだ。
「それで、みんなも一緒にと言うことになって、ケーキが1ホールになったの」
いや、マミさん。
貴方最初これを2ホール買おうとしてませんでしたか?
「だって、渉君は神様だから1ほーるだと不満足ではと思って」
「心を読むな!!」
そんな俺達のやり取りを見ていた暁美さんがため息を一つ。
「外で騒がないで。中に入って頂戴」
「お邪魔します」
「お邪魔するよ」
「「「お邪魔します」」」
こうして俺達は暁美さんの家へとお邪魔した。
「全員お茶でいいわね?」
『大丈夫(です)!!』
暁美さんの問いかけに全員が答えた。
約一人が「紅茶の方が良かったのだけど」とつぶやいていた気がしたのだが、それは聞かなかったことにした。
「あ~暁美さん。お茶、一人分追加」
「どういうこと?」
俺の突然の追加要求に暁美さんが怪訝した様子で問いかけてきた。
「………こういう事だ」
「なるほどね」
俺の視線の先を辿った暁美さんが納得したようにつぶやいた。
俺の視線の先にあったのは………
「あれって……」
「魔女!?」
そう、魔女だった。
しかも可愛らしい人形のような姿をした。
ちなみに名前はシャルロッテだ。
何でもマミさんを救った時の魔女らしい。
「なんでここに魔女がいるんだよ!!」
「あ~、それはだな簡単に言うと、俺の使い魔のようなものになったからだと思う」
俺は頬を掻きながら説明した。
いや、そもそも使い魔と言う表記は正しいのか?
俺は神だぞ?
そりゃ確かに俺は堕天使だと自負はしているが。
「ほ、本当に何でもアリだな。お前は」
「あ、あははは」
そんな事を話していると、暁美さんが赤い顔をして戻ってきた。
「渉、神剣を貸してくれるかしら?」
「は? 別に構わないんだが、何に使う気だ?」
突然の神剣の要求に俺は問いかけながら神剣を具現化する。
「その……ケーキを切り分けるために」
「はぁ!? あんた包丁とかはないのかよ?!」
俺の驚いたような言葉に、暁美さんがこくんと頷く。
まさかの事態だ。
いや、普通はあるはずなんだが。
「暁美さん、つかぬ事を聞くが、あなたいつも何を食べてる?」
「え? 主に健康食品やサプリメント――――」
「それはいかん! 色々とダメだ!!」
暁美さんの答えに、俺は思わず叫んでいた。
「食事! それは神が与えた極上の時間!!! そんな最高の一時が健康食品なんてダメだ!! 暁美さんにはこの至福の時間を俺がみっちりと教える!!」
「わ、渉君。別人みたい」
俺の言葉を聞いている間、まどか達はそんな事を言っていたそうな。
「それじゃ、俺と暁美さんとでケーキを切り分けるから、他のみんなは食器の用意と化をお願い」
『分かった(よ)(わ)』
そして俺は全員に指示を出して、それぞれの役割を果たすためにリビングを離れた。
それからしばらくして、テーブルの上に目玉商品のケーキを置いといて、俺と暁美さんとで外の方に箱を捨てに
その時、ケーキの前に、一つの”影”があったそうな。
そして、俺達がリビングに戻った時、目の前に広がっていた光景は………
「ええええ!!?」
「な、な、なッ!!?」
「ケーキが」
「ない!?」
何もない”お皿”だった。
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