俺は終焉の魔女に向けて大剣で切り付ける。
「はぁ!!」
しかし、魔女には傷一つもない。
「なら!! 全てを滅す……断罪!」
俺は剣に霊力を乗せて、力の限り魔女を切りつける。
そのあまりに高い威力に、煙が立ち込めた。
(これでどうだ!!)
「………」
しかし、煙が晴れそこにあったのは傷一つない魔女の姿だった。
その魔女はさっきから攻撃をしない。
それがさらに不気味さを増していた。
何か目的があって隠しているのか、それとも攻撃できる手段がないのか。
おそらくは後者だろう。
だが、あまり悠長にはしていられない。
世界が崩壊するまで時間がないのだ。
残り時間は10分。
それまでに片を付けなければいけない。
しかも、このままでは俺の方が自滅をすることにもなりかねない。
(もっと高威力の大技……決めてみるか)
俺はそう考えると、大技を使うために詠唱を試みた。
「我は槍。すべてを貫く強固なる力。その力の前にすべては無力に等しくある」
俺の詠唱に合わせて剣の形が姿を変え、弓の形になった。
そして霊力で生成された矢を引く。
「全てを滅せ! 暴食の竜よ!」
そして俺は、矢を射た。
俺から放たれた矢はまっすぐ終焉の魔女へと向かって行く。
やがて、けたたましい音と光が俺達を襲った。
そのあまりにもすごい音に、俺は目を閉じる。
(やつにはちゃんと当たった。あの技を食らったものは二度とその姿を維持することが出来ないと言う、神界で恐れられている大技だ。これで終わったな)
俺の勝利の決意はさることながら、光が晴れたのを感じた俺はゆっくりと目を開ける。
しかしそこにあったのは、少々傷がついた魔女の姿だった。
「そんな……馬鹿な」
それを見た瞬間、俺の目の前の景色は一気に暗くなった。
(これだけ頑張ったんだ。もう、諦めても良いよな?)
俺が心の中でそう思いかけていた時だった。
『おはようございます』
『まどかおそーい』
俺の頭の中に、いつの日かのさやか達との会話が聞こえてきた。
『ほぅ? だったら渉にでも書いて貰ったら?』
『え、えぇ!?』
(あの時は、まさかこんなことになるなんて、思いもよらなかったよな)
俺は心の中で、そう呟く。
そんな時、俺の頭に新たな声が響き渡る。
『頑張って渉君!』
『負けんじゃないよ!』
『頑張れ~』
まどかや杏子達の応援が聞こえる。
それは前に聞いたものではない。
今、実際(リアル)に言われている言葉なのだ。
(全く、俺も変わった奴と仲間になったもんだ)
俺は心の中で笑いながら呟くと、目の前が明るくなった。
気づけば、俺は地面に倒れていた。
「立って! 渉~!!」
「立ちなさい! 出ないと許さないわよ!」
そして聞こえてきたのは、全員の言葉。
(そうだよ、俺はまだ……)
「負けてない!!」
俺の言葉に、反動するように剣が光り輝いた。
「我は歌おう。この世にあるものをすべて滅する歌を」
自然と口から出てくる言葉。
だが、その言葉に呼応して霊力が剣に集中する。
「さあ、奏でよう。全てを滅するレクリエムを!!」
そして、俺は魔女に肉厚すると、思いっきり切りつけた。
その瞬間、爆音を響かせながら、魔女は消滅していった。
それは実にあっけない終りであった。
「やった!! 勝ったよ!」
「さ、さすがね」
「ホントに無敵なんだな、神って」
まどかの喜ぶ声に、若干声が引きつっているマミさんに半分呆れている杏子の声が聞こえた。
「………そうだ。みんな一緒にホールに行かない?さやかちゃんもお母さんが心配してたから」
「そ、そうだね」
さやかが頷くと、それぞれが魔女のいた場所を去ろうとする。
「………」
「どうしたの渉君?」
いつまでも動こうとしない俺を不審に思ってか、まどかが俺に声をかけてきた。
だが、俺には彼女の言葉に答えることはできなかった。
なぜなら……。
「え?」
誰の物かもわからない声が聞こえた。
「あ、あなた……体が」
「す、透けてるぞ!?」
俺は、もう終わったのだから。
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