健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第13話 正義と悪

3人称Side

翌日のとあるゲームセンター。
そこにあるダンスゲームをプレイする赤髪の少女……杏子がいた。
口にはお菓子を加えていた。
そのゲーム機に『プレイ中の飲食はご遠慮ください』と言う注意書きがあるにもかかわらず……。
そして淡々と軽々プレイしている彼女に、近づく人物がいた

「よう、今度は何さ」

後ろを振り向かずに杏子はプレイしながら後ろにいるであろう人物に用件を聞く。

「この街を、貴女に預けたい」

後ろにいた人物……ほむらの一言に、口にくわえていたお菓子がポキッと言う音を立てて折れた。

「どういう風の吹き回しよ」
「魔法少女には、貴女みたいな子が相応しいわ。美樹さやかでは務まらない」

杏子の言葉に、ほむらはそう答える

「ふん、元よりそのつもりだけどさ。そのさやかって奴、どうする? ほっときゃまた突っかかってくるよ」
「なるべく穏便に済ませたい。貴女は手を出さないで。私が対処する」

曲の方もひと段落つき、杏子はほむらの方へと振り向く。

「まだ肝心なところを聞いてない。あんた何者だ?」
「………」

杏子の問いかけに、ほむらは何も答えない。

「一体何が狙いなのさ」

再び始まった曲に合わせて、再び驚り始める。

「二週間後、この街にワルプルギスの夜が来る」

ほむらの言葉に、杏子の表情が険しくなる。

「なぜわかる?」
「それは秘密。ともかく、そいつさえ倒せたら、私はこの街を出て行く。あとは貴女の好きにすればいい」

優雅に髪を払いながら、答える。

「ふぅん……ワルプルギスの夜ね。確かに一人じゃ手強いが、二人がかりなら勝てるかもなぁ。食うかい?」

曲が終わり杏子はほむらの方に振り向くと、どこから取り出したのかお菓子の入った箱をほむらに差し出す。
それは、二人の間で”同盟”が結ばれた瞬間でもあった。

Side out





夕方、俺達は先日赤髪の少女と交戦した場所に来ていた。

「ダメだ。時間が経ち過ぎている。昨夜(ゆうべ)の使い魔を追う手がかりは無さそうだ」

あたりを調べていたキュウベぇがそう呟いた。

「そう……」

さやかは先ほどからずっと険しい表情をしていた。

「ねぇ、さやかちゃん。このまま魔女退治を続けてたら、また昨日の子と会うんじゃないの?」
「まあ、当然そうなるだろうね」

まどかの言葉に、さやかが答える。

「だったらさ、先にあの子ともう一度会って、ちゃんと話をしておくべきじゃないかな。でないと、またいきなり喧嘩の続きになっちゃうよ」

そのまどかの言葉に、さやかの表情が一変する。

「喧嘩ねえ。夕べのあれが、まどかにはただの喧嘩に見えたの?」
「……え?」

さやかの言葉に、まどかが声を上げた。

「あれはねえ、正真正銘、殺し合いだったよ。お互いナメてかかってたのは最初だけ。途中からは、アイツも私も本気で相手を終わらせようとしてた」
「そんなの……尚更ダメだよ」

確かにさやかの言うとおりだった。
途中からあの佐倉杏子と言う少女は、本気でさやかを殺そうとしていた。

「だから話し合えって? バカ言わないで。相手はグリーフシードの為に人間をえさにしようって奴なんだよ?どうやって折り合いつけろって言うの?」
「さやかちゃんは、魔女をやっつけるために魔法少女になったんでしょ? あの子は魔女じゃない、同じ魔法少女なんだよ。探せばきっと、仲良くする方法だってあると思うの。やり方は違っても、魔女を退治したいと思う気持ちは同じでしょ? 昨日の子も。あと、ほむらちゃんも」
「ッく!!」

まどかの”ほむらちゃん”と言う言葉に、さやかが反応した。

「マミさんだって、ほむらちゃんと喧嘩してなかったら―――――」
「そんなわけない!!」

まどかの言葉を、さやかが大声で叫んで遮った。

「まどかだって見てたでしょ? あの時あいつはマミさんがやられるのを待ってから魔女を倒しに来た。あいつはグリーフシード欲しさにマミさんを見殺しにしたんだ!」
「それ……違うよ」

まどかの言うとおりだ。
俺と暁美さんは馬鹿2号によって拘束させられていた。

「あの転校生も、昨日の杏子って奴と同類なんだ。自分の都合しか考えてない! 今なら分かるよ。マミさんだけが特別だったんだ。他の魔法少女なんて、あんな奴らばっかりなんだよ」
「そんな……」

(こいつ………)

俺はさやかがかわいそうな人間に見えた。
なぜかは分からないが。

「夕べ逃した使い魔は小物だったけど、それでも人を殺すんだよ? 次にあいつが狙うのは、まどかのパパやママかもしれない。たっくんかもしれないんだよ? それでもまどかは平気なの? ほっとこうとする奴を許せるの?」
「さやかちゃん……」
「私はね、ただ魔女と戦うだけじゃなくて、大切な人を守るためにこの力を望んだの。だから、もし魔女より悪い人間がいれば、私は戦うよ。例えそれが、魔法少女でも」

さやかは、まどかにそう言い切ると、去って行った。
それを俺は追いかけた。





「さやか!」
「……何? 渉」

呼び止められたことに、不快感をあらわにしながら答えるさやか。

「これは、お前の友人として言わせてもらう。もし彼女を恨み、倒すのであれば、俺もその対象になるのか?」
「それは……」

俺の言葉に、さやかが言いよどむ。

「何だ?お前の理屈だと、俺も巴さんを見殺しにしたんだぞ?助けられる力もあるのにな」

さやかは先日の俺の戦いぶりを見ているはずだから、それは重々承知だろう。

「で、やるの? やらないの?」
「………なんで」

さやかが口を開いた。

「なんでマミさんを助けなかったの!?なんで見殺しに!!」
「なぜって?そんなの……俺は100人死にかける者がいれば100人全員を救うなんて言う愚かな思想は持っていない。それにこの世界はね、さやか。一人の人間を助けると関係ない人が一人死ぬことになるんだ」
「どうしてよ!!」

俺の言葉に、さやかが反論してくる。

「それが、世界のおきてだ。生きているものが多くなったら、地球はパンクだ。だから人を救えばその分誰かが不幸になり、やがては変わりに死んでいく。それをしてでも、さやかは巴さんを救ってほしかったか?」
「理不尽じゃない。なんであいつらだけ……」

さやかのこの言葉に、俺は甘いと思った。
世界は常に理不尽で、弱い奴から消していくものだ。

「どうでもいいことだ。それに、もし助けることが出来ても俺は馬鹿や愚か者、生きる価値のない奴は、見殺しにする。まあ生きる価値なしの場合はこっちから殺しに行くまでだけど」
「………」

俺の言葉に、さやかはものすごい形相で睨みつけると、俺に背を向けた。

「……さやか、お前は正義の味方になると言ったな?」

俺はさやかにそう問いかけた。

「そうよ。私はあんたとは違う」
「………やめておけ」

俺は一言そう告げた。

「え?」
「そのくだらない目的を捨てろと言ってるんだ」
「なんでよ!!」
「あのな、正義なんてものはこの世にはないんだ。船体ヒーローとか良い例だろ?家屋を壊しても、戦闘中だからと言う理由で周りはヒーロー扱いさ」

俺の嫌な予感はどうやら当たっていたらしい。
この世界には正義なんてものはない。
そもそも何が正義なのか、そういう定義が全くないのだ。

「もしそのまま突き進んだら、お前は無名の偉人のような目にあうぞ」
「……私はあんな奴のような馬鹿なことはしない。打算で友達を殺すなんてそれこそ生きる価値ないよ。もしなるとしても私はちゃんとした形で偉人になる」
「…………」

俺は、殴りかかりそうになる気持ちを落ち着かせた。

「そう。なら、無名の偉人のように、永遠に人々から蔑まれて遺骨を踏みつけられるような風にはならないことだね」

俺はそう言うとさやかに背を向けた。

「言っておくが。そのままで突き進めば、お前………世界から消されるぞ」
「え!?それはどういう――――――」

俺はいう事だけ言ってさやかの言葉を無視して歩いた。
強靭な力は、”世界”にとっては害でしかない。
そのような力を持つ者は、やがて世界から排除(ころ)されるのだ。
無名の偉人のように。

(どっかでこの胸のむかむかを晴らすか)

俺はそんな事を考えながら路地を抜けるのだった。










「そう、さやかさん。そんな事を」
「ああ。このままいくと心配だ」

自宅兼対策本部に戻った俺は、巴さんとティータイムを楽しんでいた。
巴さんの服装は私服なのだろうか、青を基調にしたジャケットに白と黒のスカートだった。

「ところで巴さ―――――」
「マミ」

俺の言葉を遮って巴さんがそう呟いた。

「私の事はマミで構わないわ。それが嫌なら私はあなたの事を渉様って呼んじゃうわよ?」
「………俺が様付けで呼ばれるの嫌だと知って言ってるだろ……マミさん」

俺の言葉に、マミさんは万弁の笑みで”合格ね”と返した。

「……ところでマミさん。ひとつ聞きたいことがある」
「何かしら?」

俺は一つだけ気になることを聞いた。

「なんでお前は俺のサポートをしてくれるのだ?確かにここから出るなと言ったのは俺だが、手伝えとは言ってない」
「……罪滅ぼし……かしらね」

マミさんはそう呟いた。

「私はあの二人を危険な目に合わせる世界へと、引きづり込もうとしていたわ。それにまさかソウルジェムがあんな意味を持っているなんて知らなかった……だから少しでもこうして罪滅ぼしをしたいのよ」
「………」

俺は何も言えなかった。
マミさんは涙を流していた。
そんな彼女に、俺は何て言えばいいんだ?
自業自得だと言うのか?
それは、あまりにもひどすぎだ。

「嘆く時間があるのなら、手を動かせ。調査を進めないとこっちにも時間がないんだ」
「……そうね」

俺の言葉に、マミさんはそう答えると、俺の横にあるモニターとにらめっこをしながらキーボードを打っていく。

(くそ!魔女のできる過程がなかなか見つからない)

俺は気になっていたことの一つでもある、魔女の誕生の秘密を調べていた。
なぜかは分からない。
だが、これが分かることが俺の目的を成し遂げられるカギになるのではないかと言う予感がしたのだ。
そんな時だった。

『まどか、まどか!急いで、さやかが危ない!!ついてきて!』

テレパシーでキュウベぇの言葉が聞こえてきた。

「……マミさんはそこで待機。俺がいく」
「分かったわ。気を付けてね」

俺はマミさんの言葉に、片手をあげるとそのまま家を飛び出した。





「まどか!」
「わ、渉君!?」

まどかが俺がどうしてここにいるの?と言いたげな表情をしていた。

「キュウベぇのテレパシーが聞こえたんだ。キュウベぇ、早く行った方がいいか?」
「もちろんだよ。一刻を争う事態だよ!」

俺の問いかけに、キュウベぇはそう答えた。

「まどか、最初に謝っておく。すまない」

俺はそう言うとまどかのそばで膝をつくと、片腕をまどかの膝にのせもう片方の腕をまどかの上半身に乗せるようにして抱き上げた。

「え?何が……って、えぇ!?」
「声を出すな! 舌をかむぞ!!」
「う、うん」

なぜかまどかの顔が赤い。
だが、今はそれよりも早く駆けつけることだけだ。

「リミットブレイク・ブート1!」

俺は封じられた力を開放した。

「しっかり掴まれよ!」
「え?……きゃああああ!!!?」

俺はまどかに声をかけ全速力で走った。
その速さは、そばを走る車と同じぐらいの速さだ。

『まどか、さやかが話を聞きそうにない時の対処法を教える』
『た、たた……対処法?』

何だか、落ち着きがないまどかをよそに、俺は説明を続けた。

『さやかのソウルジェムを、さやかの体からできるだけ離すんだ』
『離すだけでいいの?』
『そう。そうすれば、さやかの動きを止めることが出来る。でも、それはかなり危険な行為だ。一歩間違えればさやかの命まで危うくなる。やるのならちゃんと考えて』
『わ、分かった』

俺の忠告に、まどかは頷いた。
俺は、この時知らなかった。
この助言が、まどかにあんな行動をとらせるなんて。





まどかSide

私は、渉君にお姫様抱っこをされながら、さやかちゃんがいるところに向かっていました。

(あうう~、頭が真っ白になりそう)

こんな時に、そんな事を考えている自分が、とても恥ずかしくていやでした。

(でもどうしよう。もしさやかちゃんが話を聞いてくれなかったら)

私は渉君の出した提案について考えていました。
一歩でも間違えれば、さやかちゃんを危険な目に合わせてしまう。
でも……

『本当に他にどうしようもないほどどん詰まりになったら、いっそ、思い切って間違えちゃうのも手なんだよ』

ママの言葉が頭をよぎりました。

(そうだね。たまには、思い切って間違えよう。さやかちゃんも謝ってくれれば許してくれるはず……たぶん)

私は心の中でそう決心しました。

「着いたぞ」
「あ……」

到着したのか、渉君が私を地面に降ろしました。
ちょっと残念だと思う私がここにいました。
そして、私の目の前には、さやかちゃんと昨日の魔法少女が向かい合って立っていました。
そんな二人の所に、私は走って行くのでした。
自分の決意が、どうなるのかも知らないで。

Side out

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第12.5話 「それでも、お前は奇跡を望むのか?」

それは、シャルロッテの魔女が現れる数日前の事

「ここか……」

俺、小野 渉は病院のある一室の前にいた。
そこにいる人物の名前は『上条 恭介』
簡単に言えば見舞いだ。

(どんな奴だろう?)

俺が見舞いに来た理由は、さやかの契約の理由にもなる人物を見るためだ。

コンコン

「はい」

ドアをノックすると、中から返事が聞こえたので、俺はドアを開けた。

「失礼します」
「誰だい?君は」

ベッドで上半身を起こしている青年がこっちを見てそう聞いてくる。

「初めまして、上条 恭介。小野 渉だ」
「君が渉君か。初めまして、君の事はさやかからよく聞かされているよ。それと僕の事は恭介で構わないよ」
「だったら、俺も渉でいい」

まずは互いに自己紹介を済ませた。
俺はパイプいすに腰掛けた。
さやかが何を言っているのかが気になったが、それは置いておくことにして、本題に入ることにした。

「ふ~ん。君が”元”天才バイオリストか」
「………君は僕をいじめるつもりかい?」

恭介が目を細めて睨みつけてきた。

「別に。いじめている気はないさ。ただ事実確認をしたまでだ」
「………」
「なあ、恭介。もし生きている中でたった一つの奇跡が起こせるとしたら、君は何を望む?」
「そうだね……もう一度バイオリンを弾くこと……かな」

俺はその答えを聞いて、彼の人となりが分かった。

「バイオリンが好きなんだな」
「そうだね」
「そう言った面での才能は、とても素晴らしいと思う。でも、その奇跡を起こしたら一生死ぬまで、死と隣り合わせの戦いをしなければいけないとしたら、その奇跡を望めるか?」
「……」

俺の問いかけに、恭介は何も答えない。

「奇跡には、代償もあるという事を覚えておいた方がいいな」
「代償?」
「そう。例えば、恭介が遅刻しそうで走っている時に、路地裏から車が来たとしよう。でも、君は幸運にも車にひかれることはなかった……まさに奇跡だよね、これ」
「そうだね」

俺の例えに恭介がそう相槌を打つ。

「でも、この奇跡は”時間”を代償にしている。だから、君は遅刻してしまった」

それが、俺の答えだった。

「どんな奇跡にも、代償は存在する。それは、一歩間違えれば死へと導くものさ」

奇跡の代償、それはとても重くそして切ないものだ。

「それでも、お前は奇跡を望むのか?」
「………」

俺の問いかけに、恭介は何も答えない。
だが、必死に考えている様子がうかがえた。
そんな彼をしり目に、俺はパイプいすから立ち上がった。

「それじゃ、僕はこれで失礼するよ」
「あ、ごめんね、大したおもてなしが出来なくて」
「いや、こっちも変な話をして悪かった」

恭介が謝ってきたので、俺もそう謝り返すと、そのまま出口の方へ歩いていく。

「あ、そうだ」

俺は、出る寸前に言いたいことを思い出したので、振り返った。

「もし、恭介の指が動かせるようになって、コンクールかなんかに出れたら、見に行ってあげる」
「ありがとう」
「それじゃ」

それが俺と恭介が交わした、”約束”であった。

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第12話 悲劇の真実

時間はあの日へと戻る。
巴さんに縛られた俺は、それを解除して魔女のいる場所へと向かった。
そこで俺が見たのは……

「ティロ・フィナーレ!!」

彼女の十八番でもある『ティロ・フィナーレ』を放った巴さんだった。

(よし、戻ったら文句でも言ってやる)

俺はその様子を見てそう考えていた。
だが、巴さんが打ち抜いた魔女から大きな生命体が現れて、それが一気に巴さんの目前に迫った。

「なっ!!?」

そしてその生命体は、口を大きく開いて巴さんを飲み込もうとしていた。
巴さん自身もその事態に対処できていなかった。
俺は慌てて巴さんの方へと掛けて行った。

カキン!!

巴さんの前に移動できた俺は、二本の神剣を交差させながら、簡易式の盾を形成する。

「渉………君」
「すみません。ちょっと下がっててください」

俺は驚いた感じの声を上げる巴さんに、そう告げた。

「おいデカ物。お前の相手は俺だ」

俺は目の前にいる魔女(?)を人差し指を立てて挑発する。
そのおかげかは分からないが、目の前の魔女の攻撃対象はこっちに変わったようだった。

「炎天の輝きよ、かの者を守る盾となれ」

俺は念のために巴さんの周辺に結界を作る。
ついでに結界内の声がこっちに聞こえないようにする。
集中力を削がれたら大変だからだ。
さて、今何とかしなければいけないのは、俺の前にいる魔女だ。
突然俺を食べようとしていた。
だが、俺は素早く移動する。
そのために何もないところにがぶり付き、空振りに終わった。

「遅いぞ、デカ物。そんなんでは俺を食べることなんてできねえぜ!」

俺は再び魔女を挑発する。
魔女はそれにやけになってこちらにがぶり付いてくる。
それを俺は俊足で避ける。
そしてまた魔女ががぶり付こうとする。
その繰り返しをする中、俺はあるものを探していた。

(この魔女は本体じゃない。本体はどこだ)

避けながら『真実照らし出し眼』で周囲を見る。

(あった!!)

俺はやや離れた椅子のような場所にある人形のようなものを見つけた。
それから、最も高い魔力のようなものを感知した。
俺はその人形の元へと、テーブルのようなものを伝って誘導していく。
そして最後に避けた時、俺は飛び上がりながら椅子のような所に置かれていたぬいぐるみを素手でつかんだ。
人形が俺に向けて口を開ける。
どうやらこれが本体のようだ。
おそらくだが、これごと倒さなければきりがない。

「そんなに食べたいなら」

俺は右手に本体のぬいぐるみと正宗を持った。

「これでも食え!!!」

それを口を開けていたデカ物に向けて投げ込んだ。
それを飲み込んで、満足そうな表情をする魔女に俺は若干引いが、俺は止めを刺す。

「爆ぜろ! 爆斬剣!」

俺は一言そう叫んだ。
その瞬間、魔女は爆発して消滅した。
地面に正宗が突き刺さった。

「あっけないものだったな」

俺はその剣を抜きながら呟いた。
それと同時に、巴さんの周囲に張った結界を解除する。

「渉君。あなたは一体―――――」
「ごめんなさい。時間がないので………我、輪廻を断ち切る者なり」

俺は両手に持つ吉宗と正宗を頭上に掲げる。

「輪廻断ち切りし光の輪!」

俺はそれを思いっきり振り下ろした。

「あぐ!」

巴さんはそのまま糸が切れた人形のように、地面に倒れた。
俺にはもう一仕事があった。

「あ、あぁ……」
「渉、あんた………」

まどかを魔法少女にしないでほしいと勝手に解釈した俺が、やるべきことが。
俺は、信じられないものを見ているようなまなざしの二人に向けて片手を掲げた。

「眠りの中で、負の夢を見よ。挫折導き負の誘い」

俺の力で、まどかとさやか、ついでにこの場にはいない暁美さん達の記憶を封じながら夢を見せた。
巴さんがあのまま魔女に食い殺されるという負の夢を。
細かいことは知らないが、これでまどかは魔法少女になることはないだろう。
俺は地面に倒れた巴さんを抱えて、その場を後にした。





「さて、どうしましょうかね? この馬鹿2号」

俺はソファーに横たえた、制服姿の巴さんを見ながらそう呟いた。
利口者に差し出す手はあっても、馬鹿に差し出す手はない。
これは俺の持論だ。

「………ま、彼女には助けてもらった借りがあるし、助けちゃいますか」

俺はそう決心すると、術式の準備をした。
それはものの数分で完了した。

「さて………コンタクト」

俺は巴さんの前に手を掲げると、彼女の因果に接続した。
これで、因果と言うのは彼女の運命のようなものだ。
これをいじくれば彼女の死ぬ時期を伸ばしたり縮めたりすることが出来る。
もちろん、そんなことはよっぽどのことがない限りはしないが。
これが俺の持つ最強の能力だ。

「………接続が悪い」

俺の頭の中に入り込んでくる情報は、なぜかノイズが入り混じっていた。
もちろん普通はこんなことはない。

「……彼女は死んでいないはずだから、魂はあるはずだ。なのになんでこんなにノイズが」

因果は彼女の魂にあるので、魂事態に接続することによって、俺は因果を見ることが出来るのだが、なぜかできないのだ。

「………まさか」

俺の視線の先にあるのは、彼女のソウルジェム。

「……コンタクト」

俺は試しにソウルジェムに手を掲げて因果に接続を試みた。

「………出来たよ」

今度はノイズなしでクリアな因果情報が頭に流れ込んできた。

(こいつ、もしかして………)

俺は頭に浮かんだ考えを頭の片隅に追いやった。
今やるべきことは、彼女の因果を調べることだ。
死にかけたということは、彼女の運命はもう終わっているはずだ

(やっぱり止まってるな。……やっちゃいけないけど、因果情報の拡大で彼女の死の時期を遅めるか)

因果情報の拡大は寿命を延ばすことになるので、やってはいけない禁術だ。
やれば、俺も何かしらのペナルティーが科せられることになるが、それを無視して俺は因果情報の拡大処理をした。

(代償は魔法少女でもやめて貰うことだな)

俺はペナルティーを軽くするために、代償を取る。
ついでに、魔法少女をやめさせるのは簡単だ。
因果情報から削除すればいいのだから。

「因果情報の削除完了。後はクローズ」

俺は接続を閉じた。

「………やっぱりあのソウルジェムは」

俺は目の前に浮かび上がる黄色の球体を見ながら、確証を得た。

「彼女の魂そのもの。そして、あいつがやったのは、魂を抜き取ることか」

俺はこの時、魔法少女の正体と絶対的な弱点が少しだけ見えたような気がした。

「まあ、この魂を肉体に括り付けないと」

俺は小さくため息をつきながら巴さんに魂を戻す。
彼女を助ける術式を終えた時、もう深夜の3時だった。
俺は、巴さんに毛布を掛けると、玄関先で寝た。










「う……ん」

次の日の夜。
体中にこびりついた化学薬品の液体によるダメージを回復させている時、眠っていた巴さんが目を覚ました。

「起きましたか? 馬鹿2号の巴さん?」
「馬鹿2号ってどういう意味かしら?」
「そのままの意味です。出来る事をする努力もしない人や、同じ過ちを繰り返す人の事です」

早速険悪な雰囲気になってしまった。

「ところで、ここはどこかしら?」
「俺の家です」
「………なんで助けてくれたのかしら?」

しれっと言う俺に、呆れたような視線を送った巴さんは、そう聞いてきた。

「最初に会った時に助けてもらった借りがありましたからね。借りを作られたまま死なれると、こっちも居心地が悪いもので」

助けてもらったお礼はちゃんとするのが俺の流儀だ。

「一度しか説明しないので、よく聞いてください。あなたの魂の具現化であるソウルジェムを消滅させて、魂をあなたの体に戻しました。あと因果の方もいじくって死の運命を変えましたので」

俺はいちいち説明するのがめんどくさいので、やったことを一遍に言った。

「そういえば、ソウルジェムが見当たらないわ」

巴さんが辺りを見渡しながら呟くと、俺の方を睨んできた。

「ソウルジェムが魂の具現化ってどういう事かしら?」
「おそらくですが、キュウベぇと契約した際に、魂を抜かれたのでしょう。それが形となったのがソウルジェムです」
「………嘘を言っている様子ではないようね」

完全に信じてはいないが納得はしたようだ。

「俺はあなたの運命の情報が詰まったもの……因果に接続して、魔法少女の力を消去し、死の時期を遅らせました」
「………」

俺の説明に、巴さんは俺を信じられないものを見るような目で見た。

「あなた一体何者なの?」
「そうですね……いいでしょう、お話ししましょう。俺の正体と目的を」

そして俺は巴さんに、自分の正体と目的を話した。

「なるほどね……にわかに信じられないけど、目の前で見せられてはね」

俺の話を聞き終わった巴さんは、俺の話を信じてくれたようだった。

「信じるも信じないもあなた次第です。それよりも、今後に関してです」

俺は話題を変えた。
ここからが問題だ。

「とりあえず、あなたはまどか達の中では死んだことになっています。なので、ここから出ることは控えてもらいたいんです」
「………それも、あなたの目的のためかしら?」
「一概にそうだとは言い切れません。あなたがいなくなったことによって、状況が動くかもしれませんので。理解していただけましたか?」

巴さんに俺は、そう答えることしかできなかった。
彼女が死んでいるということが、今後にどのような変化をもたらすかがいまだに不明なのだ。

「そうね……渉様のお言葉にに従わらせてもらいます」
「様付けはやめてください。今(・)の俺はあなたの後輩ですので」

もとより、俺は様付けで呼ばれるのに慣れていない。

「それでは、悪いんだけど、私の部屋から着替えとか持ってきて貰えるかしら?タンスの中にしまってあるはず。あと出来れば中身を見ないで」
「………了解しました」

俺はそう答えるしかできなかった。
つまりはタンスごと持ってこいと言う事か?

「後、あなたには特権で魔法少女になって戦うことが出来ます。ただし1回だけなので、使いどころを考えてください」

俺は彼女にそう言うと、着替えを取りに彼女のマンションに向かった。
ちなみにタンスは俺の力で、移動させました。
戦いのとき以外で力を行使するのは、これが初めてだ。










そして現在。

「それで結局、あれの原因は分かったのかしら」

俺の目的を果たすために、協力してもらっている巴さんが尋ねてきた。

「はい。確証はまだですが一名思い当たる人物が」

俺はそう言って空中に一人の少女の顔写真を表示させる。
それを見た巴さんの表情が険しくなる。

「やっぱり彼女なのね」
「はい。世界の原初物質(プリマテリアル)の不安定化をもたらした、諸悪の根源である可能性が高い最重要候補人物……」

俺もその少女を見る。
絶望をしているようなマイナスオーラを醸し出す少女。

「――――暁美 ほむら」

暁美さんを。

(お前が俺の”敵”なのか?)

俺は心の中でそう問いかける。
その問いかけに、答えは返ってこなかった。

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第11話 夕暮れ時に現れる者(後)

「誰だテメェ!!」
「人に名を尋ねるのであれば、まずは自らが名乗れ。………そんな事を両親からは習わなかったのかな?」
「………ッ!!」

俺の言葉に少女が俺を睨みつけてくる。

「テメェ、喧嘩売ってんのか!」
「いや別に。あんたの意見は至極正しいさ。俺は正義のために~とかいう奴の事が嫌いでな、どちらかと言えばお前の意見におおむね賛成だ」
「渉! あんた何を――」
「お前は黙ってろ!」

俺は反論してきたさやかの言葉を遮る。

「でもな、巻き込まれる者の身にもなれ」
「はぁ?」

俺の言葉に、何が何だかわからないような表情をする少女。

「迷惑だ」

俺はそう告げた。

「だからさ、とっとと消えてくれるか? 俺とて、少女を傷つけるのは気が進まないから」
「それは、あたしがあんたに負けるとでも言いたいのか?」

俺の言葉に少女が目を細めた。

「そうかもしれないな。と言うより、あんた賢そうだから、撤退してくれることを希望する」
「上等だ!!!」

少女はそう叫ぶと俺から距離を取る。
するとこっちに向かって攻めてきた。

「やれやれ、物わかりの悪いものだこと」

俺は呆れながら少女に背を向ける。

「炎天の輝きよ、かの者を守る盾となれ!」

俺は前に使った結界をさやかに展開する。

「よそ見するなんて、ずいぶん余裕そうだね!」

もうかなり背後に迫って来ているのが分かった俺は、その場から離れる。

「っち!」

俺は反転して少女の方を見やる。

「ほら、来いよ。遊んでやる」

俺がそう挑発すると、少女は槍を楔状にしてこちらに向けて振り撒く。

「っと! っほ! はぁ!」

俺はそれを手に持つ二本の剣で弾く。

「なんあんだよ、そのでたらめな剣は!」
「それをあんたに言われたくはない」

槍が楔状になる武器を持つようなものには特に。

(しかし、このままでは不利だ)

俺は頭の中で冷静に考える。
今は何とか戦歴で誤魔化しているが、威力は向こうが上だ。
喰らってしまえば跡が無くなる。
ここは、とにかく攻める!!

「はぁ!!」
「かかったね!」

俺は少女の言葉で気付いた。
だが、その時はすでに遅い。
俺の体には楔が巻き付きそして……

「がはッ!!」

俺は壁に思いっきり叩きつけられていた。
言っておくが、ダメージはちゃんと入っている。
と言うか、背中が痛い。

「ゲホッ! ゴホ!!」

なんとか動けるが、痛みで体の動きが鈍ってしまった。

「ほらほら! さっきまでの余裕はどうしたんだい!?」
「ぐう!!?」

そのため、一気にこっちが不利になる。
いつか必ずやられる。

(”あれ”を使うしかないか)

「なかなかやるな」
「そう言ってられんのも今の内だよ」

向こうも余裕が出てきたのか、ご丁寧に笑みまで浮かべてやがる。

「それをそのまま返す」

俺の言葉に少女の顔から笑みが消えた。

「ちょっと本気を出す」

俺はそう宣言した。

(今ここで使えるのはリミットブレイク・ブート2までそれ以上使えばまどか達に正体がばれる!!)

俺の切り札は、俺の封じられた”力”を開放するものだ。
段階的にはブート1,2,3そして真名解放の4段階だ。
ブート3以降になると姿自体が変わってしまうため、ここでは使えない。
よって……

「リミットブレイク・ブート1!」

俺は1段階力を開放した。
それと同時に、ものすごい力が湧いてきた。

「なっ!?」

少女が、その力が分かるのか驚きの声を上げる。

「あんた、一体何者だ?」
「さあな。………第2ラウンドと行きましょうか!!!」

俺はそう告げて一気に少女の元に駆ける。

「っく!」

俺の剣を弾くが、その勢いについて行けないのか、数回通っている。

「さっきまでの調子はどうした!!!」

俺は少女にそう声をかける。

「炎天の輝きよ、わが剣に続け!!!」

俺はそう唱え、正宗を少女に向けて一振りする。
俺の剣は槍で防がれるが……

「っぐぅ!?」
「なぜだ!? 防いでるはずだ」

信じられないものを見るような目でこっちを見る。

(これだ。この感じだよ。俺の求めていた戦場は!!)

俺はその感触に酔いしれていた。
それが俺の間違いだった。

「最後に言う。とっとと失せろ。これ以上はその身の安全を保障しかねる」
「なめんじゃない!!」

威勢よく少女は俺の最終通告を無視した。
なので俺はあれをやることにした。

「炎天の輝きよ。すべては我が内に。人に理解されない剣よ、我が前に浮かび上がれ。その剣は敗北を知らぬ勝利へと導く剣」

俺は上空に大量の白い剣を召喚した。

「なっ!!」
「降り注げ! レインソード!!」

俺は少女に向けて片腕を振り下ろした。
それが合図となり上空に浮かび上がる剣が、一気に少女へと降り注ぐ。

「その必要はないわ」

そんな時、暁美さんの声がしたかと思うと、降り注ぐ剣の動きが止まった。
まるで時間が止まっているみたいに。

(これが、あいつの魔法か!?)

俺は暁美さんの魔法に一瞬ぞっとした。
だが、そのような魔法は、俺には一切効果がなかった。
次の瞬間、ものすごい轟音と共に、誰もいない地面に剣が突き刺さった。
俺はそれを慌てて止めた。

「ほむらちゃん……?」
「なっ!?」

突然のことに、少女は驚きを隠せなかった。
少女は俺よりもかなり離された場所に移動されてたのだ。

「何しやがったテメェ!……なっ!?」

少女は暁美さんの立っていた方へと、槍の先端を向けるが時間を止めて彼女の背後に移動していた。

「そうか、アンタが噂のイレギュラーってやつか。妙な技を使いやがる」

どうやら少女は彼女の事を知っているようだった。

「くっ! 邪魔するな!」

いつの間にか俺の結界をうち破っていたさやかが、少女に向けて走り出すが、これまた時間を止めて移動してきた暁美さんの手刀で気絶させられた。

「さやかちゃん!?」

その瞬間、俺とまどかを隔てていた壁が消えて、まどかがさやかの元に駆けよる。

「大丈夫、気絶しているだけだ」
「早く行きなさい。佐倉杏子」
「な……どこかで会ったか?」

佐倉杏子と言う名前に目の前の少女が反応した。
どうやら、それが彼女の名前らしい。

「さあ、どうかしら」
「手札がまるで見えないとあっちゃね。今日のところは降りさせてもらうよ」

しばらくにらみ合いが続いたかと思うと佐倉杏子はそう告げた。

「賢明ね」

そして佐倉杏子は壁伝いに飛んで行った。

「終わった……の?」
「一体何度忠告させるの。どこまで貴女は愚かなの。貴女は関わり合いを持つべきじゃないと、もう散々言って聞かせたわよね?」

初めて暁美さんがまどかに向けて怒りをぶつけた。

「私は……」
「愚か者が相手なら、私は手段を選ばない」

暁美さんはそう言って俺達の前から去って行こうとするが、俺は彼女のやや前方に向かって、上空に浮かんでいる残り数本の剣を放った。

「愚か者はお前だ。俺達はただ、友人を助けたにすぎん。それともお前は友を見殺しにでもしろと言うのか?」
「……別にそうでもないわ。ただやるのならあなただけにして。彼女を巻き込まないで」

暁美さんはそう答えた。
俺に背を向けているので、その表情をうかがい知ることはできない。

「それ、次言ったら今度こそただでは済まさない。俺とまどかは大事な友達を見捨てる何て真似はできないんでな」
「………」

暁美さんは何も答えずに、去って行った。











「ふぅ……」

俺は自宅のリビングにあるソファーで一息つく。

「お疲れのようね」
「ああ疲れてる。馬鹿を相手にするのもかなり気がめいるし体力を使う」

テーブルに紅茶を置きながら、話しかけてきた人物に、俺は皮肉を込めてそう返す。

「……それは私への嫌味かしら?」
「もちろんですよ。馬鹿2号」

俺はその人物のジト目を気にせずに頷いて答えた。

「2号って……それじゃ、1号は誰かしら?」
「俺だよ」

馬鹿2号の問いかけにそう答えた。

「………その考え、変える気は――ない――即答なのね」

苦笑いを浮かべながら言うが、こればかりは仕方がない。
俺こそが真の愚か者にして偽善者だ。
だからこそ……

「絶対に俺のような愚か者や偽善者とかは出しませんよ」
「渉君……」

その人物―――落ち着いた雰囲気を醸し出し、金色の髪で両サイドを髪止めで括り、毛先はパーマをかけているかのように、くるくると渦巻いている少女―――は悲しげな表情で俺を見た。

「お前が気にするべきではないさ。俺は俺の役割を全うするだけさ」

俺はそこで一区切りつけ、紅茶を一口飲んで目の前にいる人物を見る。

「そうだろ?………巴 マミ」

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第11話 夕暮れ時に現れる者(後)

「誰だテメェ!!」
「人に名を尋ねるのであれば、まずは自らが名乗れ。………そんな事を両親からは習わなかったのかな?」
「………ッ!!」

俺の言葉に少女が俺を睨みつけてくる。

「テメェ、喧嘩売ってんのか!」
「いや別に。あんたの意見は至極正しいさ。俺は正義のために~とかいう奴の事が嫌いでな、どちらかと言えばお前の意見におおむね賛成だ」
「渉! あんた何を――」
「お前は黙ってろ!」

俺は反論してきたさやかの言葉を遮る。

「でもな、巻き込まれる者の身にもなれ」
「はぁ?」

俺の言葉に、何が何だかわからないような表情をする少女。

「迷惑だ」

俺はそう告げた。

「だからさ、とっとと消えてくれるか? 俺とて、少女を傷つけるのは気が進まないから」
「それは、あたしがあんたに負けるとでも言いたいのか?」

俺の言葉に少女が目を細めた。

「そうかもしれないな。と言うより、あんた賢そうだから、撤退してくれることを希望する」
「上等だ!!!」

少女はそう叫ぶと俺から距離を取る。
するとこっちに向かって攻めてきた。

「やれやれ、物わかりの悪いものだこと」

俺は呆れながら少女に背を向ける。

「炎天の輝きよ、かの者を守る盾となれ!」

俺は前に使った結界をさやかに展開する。

「よそ見するなんて、ずいぶん余裕そうだね!」

もうかなり背後に迫って来ているのが分かった俺は、その場から離れる。

「っち!」

俺は反転して少女の方を見やる。

「ほら、来いよ。遊んでやる」

俺がそう挑発すると、少女は槍を楔状にしてこちらに向けて振り撒く。

「っと! っほ! はぁ!」

俺はそれを手に持つ二本の剣で弾く。

「なんあんだよ、そのでたらめな剣は!」
「それをあんたに言われたくはない」

槍が楔状になる武器を持つようなものには特に。

(しかし、このままでは不利だ)

俺は頭の中で冷静に考える。
今は何とか戦歴で誤魔化しているが、威力は向こうが上だ。
喰らってしまえば跡が無くなる。
ここは、とにかく攻める!!

「はぁ!!」
「かかったね!」

俺は少女の言葉で気付いた。
だが、その時はすでに遅い。
俺の体には楔が巻き付きそして……

「がはッ!!」

俺は壁に思いっきり叩きつけられていた。
言っておくが、ダメージはちゃんと入っている。
と言うか、背中が痛い。

「ゲホッ! ゴホ!!」

なんとか動けるが、痛みで体の動きが鈍ってしまった。

「ほらほら! さっきまでの余裕はどうしたんだい!?」
「ぐう!!?」

そのため、一気にこっちが不利になる。
いつか必ずやられる。

(”あれ”を使うしかないか)

「なかなかやるな」
「そう言ってられんのも今の内だよ」

向こうも余裕が出てきたのか、ご丁寧に笑みまで浮かべてやがる。

「それをそのまま返す」

俺の言葉に少女の顔から笑みが消えた。

「ちょっと本気を出す」

俺はそう宣言した。

(今ここで使えるのはリミットブレイク・ブート2までそれ以上使えばまどか達に正体がばれる!!)

俺の切り札は、俺の封じられた”力”を開放するものだ。
段階的にはブート1,2,3そして真名解放の4段階だ。
ブート3以降になると姿自体が変わってしまうため、ここでは使えない。
よって……

「リミットブレイク・ブート1!」

俺は1段階力を開放した。
それと同時に、ものすごい力が湧いてきた。

「なっ!?」

少女が、その力が分かるのか驚きの声を上げる。

「あんた、一体何者だ?」
「さあな。………第2ラウンドと行きましょうか!!!」

俺はそう告げて一気に少女の元に駆ける。

「っく!」

俺の剣を弾くが、その勢いについて行けないのか、数回通っている。

「さっきまでの調子はどうした!!!」

俺は少女にそう声をかける。

「炎天の輝きよ、わが剣に続け!!!」

俺はそう唱え、正宗を少女に向けて一振りする。
俺の剣は槍で防がれるが……

「っぐぅ!?」
「なぜだ!? 防いでるはずだ」

信じられないものを見るような目でこっちを見る。

(これだ。この感じだよ。俺の求めていた戦場は!!)

俺はその感触に酔いしれていた。
それが俺の間違いだった。

「最後に言う。とっとと失せろ。これ以上はその身の安全を保障しかねる」
「なめんじゃない!!」

威勢よく少女は俺の最終通告を無視した。
なので俺はあれをやることにした。

「炎天の輝きよ。すべては我が内に。人に理解されない剣よ、我が前に浮かび上がれ。その剣は敗北を知らぬ勝利へと導く剣」

俺は上空に大量の白い剣を召喚した。

「なっ!!」
「降り注げ! レインソード!!」

俺は少女に向けて片腕を振り下ろした。
それが合図となり上空に浮かび上がる剣が、一気に少女へと降り注ぐ。

「その必要はないわ」

そんな時、暁美さんの声がしたかと思うと、降り注ぐ剣の動きが止まった。
まるで時間が止まっているみたいに。

(これが、あいつの魔法か!?)

俺は暁美さんの魔法に一瞬ぞっとした。
だが、そのような魔法は、俺には一切効果がなかった。
次の瞬間、ものすごい轟音と共に、誰もいない地面に剣が突き刺さった。
俺はそれを慌てて止めた。

「ほむらちゃん……?」
「なっ!?」

突然のことに、少女は驚きを隠せなかった。
少女は俺よりもかなり離された場所に移動されてたのだ。

「何しやがったテメェ!……なっ!?」

少女は暁美さんの立っていた方へと、槍の先端を向けるが時間を止めて彼女の背後に移動していた。

「そうか、アンタが噂のイレギュラーってやつか。妙な技を使いやがる」

どうやら少女は彼女の事を知っているようだった。

「くっ! 邪魔するな!」

いつの間にか俺の結界をうち破っていたさやかが、少女に向けて走り出すが、これまた時間を止めて移動してきた暁美さんの手刀で気絶させられた。

「さやかちゃん!?」

その瞬間、俺とまどかを隔てていた壁が消えて、まどかがさやかの元に駆けよる。

「大丈夫、気絶しているだけだ」
「早く行きなさい。佐倉杏子」
「な……どこかで会ったか?」

佐倉杏子と言う名前に目の前の少女が反応した。
どうやら、それが彼女の名前らしい。

「さあ、どうかしら」
「手札がまるで見えないとあっちゃね。今日のところは降りさせてもらうよ」

しばらくにらみ合いが続いたかと思うと佐倉杏子はそう告げた。

「賢明ね」

そして佐倉杏子は壁伝いに飛んで行った。

「終わった……の?」
「一体何度忠告させるの。どこまで貴女は愚かなの。貴女は関わり合いを持つべきじゃないと、もう散々言って聞かせたわよね?」

初めて暁美さんがまどかに向けて怒りをぶつけた。

「私は……」
「愚か者が相手なら、私は手段を選ばない」

暁美さんはそう言って俺達の前から去って行こうとするが、俺は彼女のやや前方に向かって、上空に浮かんでいる残り数本の剣を放った。

「愚か者はお前だ。俺達はただ、友人を助けたにすぎん。それともお前は友を見殺しにでもしろと言うのか?」
「……別にそうでもないわ。ただやるのならあなただけにして。彼女を巻き込まないで」

暁美さんはそう答えた。
俺に背を向けているので、その表情をうかがい知ることはできない。

「それ、次言ったら今度こそただでは済まさない。俺とまどかは大事な友達を見捨てる何て真似はできないんでな」
「………」

暁美さんは何も答えずに、去って行った。











「ふぅ……」

俺は自宅のリビングにあるソファーで一息つく。

「お疲れのようね」
「ああ疲れてる。馬鹿を相手にするのもかなり気がめいるし体力を使う」

テーブルに紅茶を置きながら、話しかけてきた人物に、俺は皮肉を込めてそう返す。

「……それは私への嫌味かしら?」
「もちろんですよ。馬鹿2号」

俺はその人物のジト目を気にせずに頷いて答えた。

「2号って……それじゃ、1号は誰かしら?」
「俺だよ」

馬鹿2号の問いかけにそう答えた。

「………その考え、変える気は――ない――即答なのね」

苦笑いを浮かべながら言うが、こればかりは仕方がない。
俺こそが真の愚か者にして偽善者だ。
だからこそ……

「絶対に俺のような愚か者や偽善者とかは出しませんよ」
「渉君……」

その人物―――落ち着いた雰囲気を醸し出し、金色の髪で両サイドを髪止めで括り、毛先はパーマをかけているかのように、くるくると渦巻いている少女―――は悲しげな表情で俺を見た。

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