健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第27話 サヨウナラ

「………意外に早かったな」
「お、おい! 一体どうなってんだよ!!」

杏子が俺に問いただしてくる。
俺は彼女たちに背を向けたまま、口を開いた。

「悪いことをしたから、強制的に帰還させられるのさ」
「そんな! 渉は何も悪いことなんてしてないじゃない!!」

俺の言葉にさやかが反論した。
俺に若干内心で嬉しく思いながら答える。

「したさ。本来死すべき運命の者を何の対価もなしに、生き返らせてしまったのだからな」
「それは――――」

俺はマミさんの言葉を遮った。

「奇跡を起こすのはそれ相応の対価が必要になる。それをしなければ世界のバランスが崩れるからだ。そして俺は世界のバランスを崩してしまった。それはどう言い繕うと変わらない事だ」
「あなたは一体、この後どうなるの?」

暁美さんが静かに問いかけてくる。
それに俺は答えた。

「そうだな……一度元の世界に戻ってそこで処罰が決まるだろう。まあ、決して生易しい処罰ではないことぐらい予想は出来るが」

そうでなければ、強制帰還はされないはずだ。
そうこうしているうちに、俺の体の感覚が消えかかっている。
これが体が消えるという感覚らしい。

「まあ、このことに懲りたら無用な奇跡は望まないことだ。奇跡と言うのは何かしらかの代償があるのだからな」

俺は今後の事を考え、そう忠告することにした。

「良かったな暁美さんよ。まどかを救うことが出来て」
「………ありがとう」

俺の言葉に、暁美さんの感謝の言葉が返ってきた。

(こりゃ、明日は雨かな?)

「お礼などいいさ。俺がやりたいからやったまでだ」

内心ではそう言いながら、そう言い返す。
その後、誰も何も言いださなかった。
気まずい雰囲気が漂う。

「さて、いつまでも死者を見てないで、明日の方向を見ろ」
「渉君は死んでなんかないよ!!」
「死んでるんだよ。世界の意志になった時点で俺は一度死んで、再び蘇った」

まどかの叫びに俺は反論する。

「行こう、まどか」
「ッ!! さやかちゃん?!」

俺の気持ちをくんでくれたのか、さやかはそう言ってまどかの手を掴んだ。

「この世界で、俺は色々な事を学んだ。非常に有意義な時間だった」

全員が去っていく背中に向けて俺は静かに呟く。
俺の脳裏によみがえるのは、今までの生活だった。
それは、普通の人間と同じような物であった。
そんな暮らしが出来たことのおかげで、俺の未練はもうない。

「だから、心置きなく帰れるよ」

体の感覚がほとんど消えているさなか、俺は最後に口を開く。

「この人間界では、別れの言葉はさようなら、らしいな。だったら、ありがとう……そしてさようなら」

その瞬間、俺の体の感覚は完全に消えた。

「渉君!!!」

誰かが俺を呼ぶ声を聞きながら。

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第26話 最後の戦い

俺は終焉の魔女に向けて大剣で切り付ける。

「はぁ!!」

しかし、魔女には傷一つもない。

「なら!! 全てを滅す……断罪!」

俺は剣に霊力を乗せて、力の限り魔女を切りつける。
そのあまりに高い威力に、煙が立ち込めた。

(これでどうだ!!)

「………」

しかし、煙が晴れそこにあったのは傷一つない魔女の姿だった。
その魔女はさっきから攻撃をしない。
それがさらに不気味さを増していた。
何か目的があって隠しているのか、それとも攻撃できる手段がないのか。
おそらくは後者だろう。
だが、あまり悠長にはしていられない。
世界が崩壊するまで時間がないのだ。
残り時間は10分。
それまでに片を付けなければいけない。
しかも、このままでは俺の方が自滅をすることにもなりかねない。

(もっと高威力の大技……決めてみるか)

俺はそう考えると、大技を使うために詠唱を試みた。

「我は槍。すべてを貫く強固なる力。その力の前にすべては無力に等しくある」
俺の詠唱に合わせて剣の形が姿を変え、弓の形になった。
そして霊力で生成された矢を引く。

「全てを滅せ! 暴食の竜よ!」

そして俺は、矢を射た。
俺から放たれた矢はまっすぐ終焉の魔女へと向かって行く。
やがて、けたたましい音と光が俺達を襲った。
そのあまりにもすごい音に、俺は目を閉じる。

(やつにはちゃんと当たった。あの技を食らったものは二度とその姿を維持することが出来ないと言う、神界で恐れられている大技だ。これで終わったな)

俺の勝利の決意はさることながら、光が晴れたのを感じた俺はゆっくりと目を開ける。
しかしそこにあったのは、少々傷がついた魔女の姿だった。

「そんな……馬鹿な」

それを見た瞬間、俺の目の前の景色は一気に暗くなった。

(これだけ頑張ったんだ。もう、諦めても良いよな?)

俺が心の中でそう思いかけていた時だった。

『おはようございます』
『まどかおそーい』

俺の頭の中に、いつの日かのさやか達との会話が聞こえてきた。

『ほぅ? だったら渉にでも書いて貰ったら?』
『え、えぇ!?』

(あの時は、まさかこんなことになるなんて、思いもよらなかったよな)

俺は心の中で、そう呟く。
そんな時、俺の頭に新たな声が響き渡る。

『頑張って渉君!』
『負けんじゃないよ!』
『頑張れ~』

まどかや杏子達の応援が聞こえる。
それは前に聞いたものではない。
今、実際(リアル)に言われている言葉なのだ。

(全く、俺も変わった奴と仲間になったもんだ)

俺は心の中で笑いながら呟くと、目の前が明るくなった。










気づけば、俺は地面に倒れていた。

「立って! 渉~!!」
「立ちなさい! 出ないと許さないわよ!」

そして聞こえてきたのは、全員の言葉。

(そうだよ、俺はまだ……)

「負けてない!!」

俺の言葉に、反動するように剣が光り輝いた。

「我は歌おう。この世にあるものをすべて滅する歌を」

自然と口から出てくる言葉。
だが、その言葉に呼応して霊力が剣に集中する。

「さあ、奏でよう。全てを滅するレクリエムを!!」

そして、俺は魔女に肉厚すると、思いっきり切りつけた。
その瞬間、爆音を響かせながら、魔女は消滅していった。
それは実にあっけない終りであった。

「やった!! 勝ったよ!」
「さ、さすがね」
「ホントに無敵なんだな、神って」

まどかの喜ぶ声に、若干声が引きつっているマミさんに半分呆れている杏子の声が聞こえた。

「………そうだ。みんな一緒にホールに行かない?さやかちゃんもお母さんが心配してたから」
「そ、そうだね」

さやかが頷くと、それぞれが魔女のいた場所を去ろうとする。

「………」
「どうしたの渉君?」

いつまでも動こうとしない俺を不審に思ってか、まどかが俺に声をかけてきた。
だが、俺には彼女の言葉に答えることはできなかった。
なぜなら……。

「え?」

誰の物かもわからない声が聞こえた。

「あ、あなた……体が」
「す、透けてるぞ!?」

俺は、もう終わったのだから。

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第25話 終焉の魔女

ワルプルギスの夜を倒した俺は、空を見上げていた。

「………」
「怖い顔してどうしたの? 渉君」
「そうだよせっかくワルプルギスの夜を倒せたのにさ」

そんな俺に気付いたのか、まどかとさやかが声をかけてきた。

「………何でもない。それよりも、そこにいる大馬鹿者の処置をする」
「………」

俺の言葉に、大馬鹿者と呼ばれた暁美さんは視線を逸らした。

「ったく、神殺しは大罪だぞ………コンタクト」

俺は暁美さんに文句を言いながら因果律操作を開始した。
それはものの数分で完了する。

「はい、これで終わり。お前たちの運命はこの先も続くだろう」
「小野 渉」
「なんだ?」

突然フルネームで暁美さんに呼ばれ、俺は振り返りながら問いかけた。

「その………あり――――」

暁美さんが何かを言おうとした瞬間だった。
突然俺は体中が硬直するような感覚が襲った。

「渉、見てあれ!!」

さやかが指さす方向、そこには………巨大な魔女がいた。
その魔女は巨大な魔人のような姿をしていた。

「なんなの……これ」

全員がその魔女に混乱していた。

「やはりな……出るとは思ってはいたが本当に出たか」
「ちょっと、渉君どういう事なのか説明してちょうだい!」

俺の呟きに、マミさんがいつもとは似つかわしくないほど激しい口調で俺を問いただす。

「あれは、この世界そのものの魔女だ」
「どういう意味だよ?」

俺の説明に、杏子は理解できないのか首を傾げていた。

「俺は、この世界で色々な死すべき者を無代償で助け出してしまった。そのことにより、世界は不安定となってしまったのだろう」
「つまり、こうなったのは私たちのせい?」

悲しげなまどかの言葉に、俺は無言で首を横に振って答えた。

「俺のせいだ。お前たちを助けると判断したのはこの俺なんだから。それにあいつは、この世界を安定させようとしている防衛プログラムのような存在だ」
「っていう事は、あれは放っておいても大丈夫ってこと?」
「いや、大丈夫でもない」

さやかの言葉に俺は否定した。

「どうしてかしら?」
「あれは世界を安定させようとしている。つまり、お前たちを殺そうとしているんだ」
『ッ!!?』

俺の言葉に、全員が息をのんだ。
世界の不安定が彼女たちによるものであるのならば、彼女たちを消去(デリート)するはずだ。
これが世界を安定させる力なのだ。

「ど、どうすればいいのよ?!」
「せっかくここまでこれたのに……そんな結末なんていやよッ」

さやかは俺に問いただし、暁美さんは涙を流す。

(覚悟を決めるか)

俺は、そう自分に言い聞かせた。
そして口を開こうとした瞬間だった。

「な、何!?」
「じ、地震!?」

突然の揺れが俺達を襲った。

「これは……原初物質化(プリマテリアライズ)暴走(オーバードライブ)か!? まずいな」
「な、何なの? その原初何とかって」

俺の呟きが聞こえたのかさやか達が聞いてくる。

「プリマテリアライズ・オーバードライブ。この世界を形成する根源が暴走を起こして崩壊させようとする現象の事だ」
「それって、起きたらどうなるんだ?」
「………この世界が滅びる」

俺は杏子の問いかけに、言うか言わないかを悩んだ末いう事にした。

「そ、そんなッ!」

まどかが声を上げた。

「大丈夫だ。まだ本格的には始動していない。まだ時間はある」
「よ、よかったぁ」

俺の言葉に、全員が安堵の表情を浮かべる。

「だが、あと2,30分で発動してこの世界は崩壊する」
「だったら、それまでにあたし達が倒しちゃえばいいんだよね?」
「ああもちろんだ。まあ、お前たちが戦えればの話だがな」

さやかの言葉に、俺は賛同しながらそう告げた。

「戦えるよ。だってあたしたちは魔法少女………あれ?」

さやかは魔法少女の姿になろうとしたが、なることはできなかった。
他のみんなも試しているが、全員がさやかと同じ結果だった。

「これは、どいう事なんだよ!!」
「前に言わなかったか? お前たちに与えた魔法少女の力は、魔力が無くなれば終わりだと言う事を」

俺は杏子達にそう答えた。

「まさか……」
「そう、そのまさかだ。お前たちは魔力をすべて使い果たしたんだ。その手にある武器を飛ばすことも使う事も出来ない。まどかは一回限り、暁美さんに限っては力を与えてもいない」

つまりは全員が戦う事は出来なくなったのだ。

「そんな……」
「これまで……なの?」
「おいおい、忘れてないか? お前たち」

絶望に浸る全員に、俺はそう言い放った。

「まだ、戦えることのできる奴が一人いるだろ?」
「あ!?」

俺の言葉に、全員が声を上げて俺を見た。
と言うより、本当に忘れてたのかよ……

「渉君なら、戦える」
「しかも、世界の何とかと言う神様だから、強いはず」

全員の顔に希望が蘇った。
その変わり身の早さに苦笑いを浮かべながら、俺は言葉を紡ぐ。

「そう、この俺ならばなんとか戦うことが出来る。そのために、みんなに協力してほしいことがある」
「何かな?」
「あたしたちに出来る事なら、何でも協力するよ」

俺にそう言ってくれるみんなの優しさに感謝しつつ、俺は続けた。

「お前たちの持つ、武器を渡してほしい」
「武器…を?」

全員が意味が分からないと言った表情をしていた。

「お前たちの武器と、この神剣を合わせて能力値を上げて戦うんだ」
「そ、そんなことが出来るの?」

まどかの問いかけに、俺は頷いて答えた。
それぞれの手には武器が握られていた。

「だったら、私は渉君を信じる」
「あたしも!」
「私もよ!」
「あたしもだ」

全員がそう言いながら俺に武器を手渡してくれた。
そして、最後に残ったのが、暁美さんになった。

「あなたなら、絶対に勝てるのね?」
「絶対とは言わないが誓おう。この神剣にかけて」

俺の答えに、暁美さんは盾のようなものを俺の手に置いた。
それは、エールのようなものであると俺には感じた。

「それじゃ………」

俺は深呼吸を一回した。

「全てを司りし武器よ、我が神剣と合わさりその力を示したまえ!」

俺の言葉に、従うように全員の武器が神剣と合わさって行き、そして光を放った。
その光に俺は思わず目を閉じた。
やがて、光が晴れるとそこにあったのは、大きな紅い剣だった。

「す、すごい……」
「きれい」

後ろからそんな声が聞こえるが、俺はそれを無視し剣を握ると目の前にいる終焉の魔女を見る。
不気味なことに、そいつは一歩も動くそぶりもしない。
だが、そんなことは関係はない。
原初物質化暴走まで残り時間は15分。
なんとしてでも倒さなければいけない。
例え刺し違いになっても。

「行くぞ!!」

そして、俺は目の前の魔女に飛び込んでいった。

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第24話 ワルプルギスの夜

契約作業中、周りが白一色に覆われる所で、俺とまどかは話をしていた。

「にしても、本当にすごいことを願うものだ」
「だ、ダメだったかな?」

まどかが上目づかいに聞いてくる。

「ダメではないさ、逆に愉快なだけだよ。普通は金銀財宝不老不死なんて言う不埒な願いをする奴が多いからな」

もちろんそう言った願いをする奴は、代償をかなり多めに取っておくが。
何も努力せずに楽をしようとするのは、あまり許せるものではない。

「あ、あははは」

まどかは俺の言葉に苦笑いを浮かべた。

「まじめな話だけど、一つだけ忠告」

俺は真剣な面持ちでまどかに話し掛けた。

「強大な力は自らを滅ぼすものとなる。特に、まどかの願いは世界の書き換えに値し、それは創造の神の役割に抵触する。やりすぎると、世界から排除されることになるだろう」

俺はまどかの力の膨大さを危険視していた。
なぜなら、まどかの力はやろうと思えば世界自体をなかったことに出来るほどだ。
それほどの強大な力ならば世界の防衛能力が発動してまどかを排除しようとする。
それから守るのが俺の役割だ。

「だから、使うのであれば気を付けて使うんだぞ」
「う、うん」

俺の言葉に、真剣な面持ちで頷くまどか。

「どうして渉君は、ここまで私に優しくしてくれるの?」
「そうだな……」

まどかの問いかけに俺は、しばらく考え込んだ。
やっぱり答えと言えばあれしかない。

「神様と言うのは、利口な奴の願い事ならば聞いてくれるものさ」
「…??」

俺の言葉に納得できないのか、まどかは首を傾げていた。

「さあ、始まりだ。少々頭痛がすると思うが、それは因果をまどかに収束させるためのものだから、つらいだろうが辛抱してくれ。では、健闘を祈る」

そして、俺は空間から脱出をした。










「よっと」
「まどかは!?」

空間を出ると、さやかがものすごい勢いで訪ねてきた。

「契約は成功だ。あと数分で完了する」

俺はさやかにそう答えた。
俺とさやかは光の柱を見る。
今、因果は少しずつ収束を始めている。
数分もすれば因果が収束され、その力を振るうだろう。

「私は、あなたを許さないわ」
「ん?」

冷たい声に、俺は振り返ると、暁美さんがものすごい形相で睨みつけていた。

「まどかを魔法少女にすればどうなるかを知っていたのに、まどかを魔法少女にするなんて……あなたこそ、殺人者よ!!」
「殺人者か………それを否定する気ではないが、俺は世界のためにまどかの命を犠牲にさせるようなことはしないさ」

暁美さんの言葉に、俺はそう答えた。

「俺はただ、彼女の命を借りているだけ。事が済み次第、彼女に返還する」
「一体何をする気?」
「そうだな………まどかに集まっている変な因果を消去して、世界の状態を元に戻して世界を安定化させる………それが俺の最終目標だ」

俺の言葉に、暁美さんは目を見開いてこっちを見据える。

「さあ、見るがいい。世界と化した少女が繰り出す一撃を!」

俺の言葉が言い終えた瞬間、光の柱は一気にはじけると、そこには白いドレスのような恰好をしたまどかの姿があった。
その手には上側に花のようなものがついた、弓があった。
そして目は金色となっていた。

「さて、まどか。気分はどうだ?」
「ちょっと頭が痛いけど、大丈夫!」

様子を見ても顔色はよさそうなので一応は大丈夫と言った所か。

「すまないな本当であれば、戦い方を手取り足取り教えようと思ったのだが、時間の関係上一発勝負になる」
「大丈夫。なんとかなりそうな予感がするの」

俺はまどかの言葉を聞いて思わず笑いそうになったが、必死に抑えた。

「まどか、最後に確認だ。お前の力は強大過ぎる、そのため魔法は1回のみだ。これ以上はまどかの生存にかかわるため、俺の方で使えないようにしてある」
「つまり、実質一回のチャンスだね」

俺は無言で頷いた。

「まずは、俺があいつを弱らす。そしたらその後にまどかの”想い”を乗せて魔法を使うんだ。分かったな?」
「うん!」

俺はまどかが頷いたのを確認して、全員に聞こえるくらいの声を上げた。

「みんな、そこまでだ! 安全地帯まで撤退!!」

俺の声が聞こえたのか、全員が暁美さんの近くまで下がった。

「まどか、そこでじっとしていて」
「う、うん!」

俺はまどかに告げると一歩前に出て片手を前に掲げた。

「リミットブレイク・真名解放!」

俺の言葉と同時に、俺の体中に力が満ち溢れる。

「わ、渉……君?」
「これはまた……」
「まるで天使みたいだ」

俺の真の姿を見た全員がそう感想を述べる。
だが、どうにも恥ずかしい。

「さて、この毒を排除するのに反対する人は?」
「いません」

さやかが全員の言葉を代弁して、答えた。
俺は毒でもある、キュウベぇを上空に浮かべた。

「な、何を――――――」
「貴様をこの世界の毒とみなし、排除する。因果情報、削除」

俺はこの世界から、キュウベぇの因果情報を文字通り消した。
この世界の因果情報には、人々が存在を保つための情報がある。
それが因果情報だ。
これをいじれば、この世界に存在する物を関連するのを含めてすべて消し去ってしまうのだ。
そして消えたものは、絶対に元には戻らない。

「さて、キュウベぇの消去が終わったところで、こいつをどうにかするか」

俺はワルプルギスの夜を見る。
未だに、不気味に浮かび上がっていた。

「神剣の吉宗、正宗に次ぐ新たなる姿」

俺は二本の神剣を頭上で重ねた。
その次の瞬間、俺の手には白い弓があった。
それを俺は構えてワルプルギスの夜に向ける。

「布石を打たせて貰おう。その因果、喰らい尽くす! 秘奥、因縁食い!!」

霊力で生成した矢はまっすぐ魔女まで飛んでいくと命中した。

「因果律90%まで減少………まどか、やれ!」

そして俺は、まどかに指示を出した。

「うん!」

まどかは大きく頷くと、弓を上空に向けて構えた。
それと同時に、まどかの頭上に円型の陣が形成される。
それには見向きもせず、まどかは魔力で生成された矢を放った。
その矢は灰色の空を一気に青空に変えると、分割したのか無数の矢が色々な場所に向かって行った。

「因果律減少……70,50,30!」

俺は情報を伝えながら、そのあまりの力に驚きを隠せなかった。

(この力、世界の意志の俺に匹敵するほどだ)

そして、しばらくするとワルプルギスの夜は、断末魔を上げながら消滅した。
その際、数人の魔法少女の姿が見えたような気がした。
それはともかく、こうして最大の脅威でもある”ワルプルギスの夜”は幕を閉じたと思っていた。

この後、さらなる脅威が俺達を襲うことになるとも知らずに。

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第23話 契約

「まどか……そんな」

まどかの言葉に暁美さんが絶望の淵にとされたような表情をする。

「私、やっと分かったの。叶えたい願いごと見つけたの。だからそのために、この命を使うね」
「やめて! それじゃ……それじゃ私は、何のために」

暁美さんはとうとう泣き出してしまった。

(何だか俺が泣かせたような気分がする)

「ごめん。ホントにごめん。これまでずっと、ずっとずっと、ほむらちゃんに守られて、望まれてきたから、今の私があるんだと思う。ホントにごめん」

まどかは優しく暁美さんを抱きしめた。

「そんな私が、やっと見つけ出した答えなの。信じて」
「まどか……」
「絶対に、今日までのほむらちゃんを無駄にしたりしないから」

まどかはそう言って立ち上がった。

(さて、そろそろかな)

「キュウベぇ、契約の前に少し時間をもらってもいいか?」
「………なるべく早く終わらせてもらいたいな」

キュウベぇは、ようやくこぎつけた契約を、速く遂行しようとしている感じが伝わってきた。

(お前の思い通りには絶対にさせない。)

「契約の前に、まどかに会わせたい奴がいるんだ」
「え!?」

俺の言葉に、まどかは驚いた様子でこっちを見た。

「これが、俺が起こした奇跡の結果だ。さあみんな! 出番だ!!」

俺は大きな声でそう叫んだ。
その次の瞬間だった。

「やっとこのこそこそとした生活も終わりね」
「全くだぜ。やっぱりあたしはこういうのが似合ってる」
「でも、こういう登場って、ヒーローものみたいでかっこいいじゃん」

俺達の前に姿を現したのは、魔法少女の姿であるマミさん、杏子そしてさやかの三人だった。

「マミさん、杏子ちゃん。それにさやかちゃん?」

その光景をまどかは……いや暁美さんも信じられない様子で見ていた。

「ごめんねまどかさん。あなたを危険なことに巻き込もうとして」
「待たせたな。と言うよりまた会えてうれしいよ」
「この間はごめんねまどか」

三者三様にまどかに声をかけていく。

「良かった……よかった」

そんな中、まどかは涙を流して喜んでいた。

「君は一体……一体何者なんだい? 魔女化したものを元に戻したり、死んだはずの人間を蘇らせるなんてこと、普通は出来ない」
「はぁ……本当はお前のような下郎に教えてやる義理はないのだが、特別に教えてやろう」

キュウベぇの問いかけに、俺はそう答えて一回深呼吸をした。

「俺はこの世界を統括する三神の一人。世界の運命や人々の因果を操作・閲覧する、世界の意志だ!」
「渉君って………神様だったの?」
「ああ、そうだ」

いつの間にかそばにいたまどかの問いかけに、俺は頷いて答えた。

「えぇぇ!!?」

その事実に、まどかは大きな声を出して驚いていた。

「別にそこまで驚かなくてもいいよ」
「だって――――」
「だからと言ってそこの三人の俺に対する対応も問題だがな」

まどかの言葉を遮って、俺はそう言うと三人を睨んだ。

「マミさんは着替えが欲しいから服を持ってきてと言うし、挙句の果てには中身を見られたくないとのことでクローゼットごと持ってこいと言う始末だし、杏子は杏子でお菓子を買って来いだと着替えを買って来いだの言うし、さやかに至っては何度も何度も脱走しようとするんだから」

俺の苦労はそこだった。

「渉君が外に出るなって言うからじゃない」

マミさんがそう言ってくるが、本当にこの数日間俺は、彼女たちに振り回されていたのだ。

「そりゃ確かに、軟禁状態にしたのは俺だが、物には限度と言うものがあるだろ?」
「あ、あはは……」

俺の言葉に、まどかは苦笑いを浮かべるだけだった。

「さて、みんな。あとは手筈通りに」
「「「了解!」」」

俺の言葉に、三人は答えるとマミさんと杏子の二人はワルプルギスの夜へ、さやかは暁美さんの方へ行き、治癒魔法をかけた。

「今、あれは二人が抑えている。とっとと契約の儀を始めよう」
「………うん!」

俺はまどかが頷いたのを確認して、契約の儀を始めた。

「願いを叶えし神よ、かの者の願いを叶えたまえその願いを憑代に彼女に力を与えたまえ。その代償は彼女の因果………さあ、汝、鹿目まどか。貴殿は何を願う」
「私……はぁ……ふぅ」

俺の問いかけに、まどかは一旦深呼吸をする。

「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で」
「っ!?」

果たして息をのんだのは俺とキュウベぇのどちらなのか。
おそらくは両方だろう。

「その祈りは――そんな祈りが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない! 因果律そのものに対する反逆だ! ――まさか君は、本当に神になるつもりかい?」

キュウベぇが慌てた口調でまどかに話し掛ける。

「神様でも何でもいい。今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、私は泣かせたくない。最後まで笑顔でいてほしい。それを邪魔するルールなんて、壊してみせる、変えてみせる。これが私の祈り、私の願い」

まどかはそこでいったん区切ると、俺の方を力強く見てきた。

「さあ! 叶えてよ、渉君!!」
「ホントに最高だ………世界の意志小野 渉、汝の願いを聞き入れ力を授ける。ディジュレ!」

その瞬間俺達は、ピンク色の光に飲み込まれた。

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