杏子Side
そいつを最初見た時は、ちょっとだけ恐ろしいやつに見えた。
二度目に会ったときは………事実を隠していたことに怒りを覚えた。
三回目に会ったときは、そいつに恐怖を抱いた。
あたしのような存在がまるで小さな米粒のような……狩られる立場であるような錯覚を感じた。
そして今あたしの目の前にいるあいつは………今までのあいつとは違った。
姿遺体が変わっていたのだ。
それは制服のような服装から白い袴のような姿に変わり、手には真剣とやらが握られていた。
髪の色も黒から銀色に変わり、そいつから醸し出されるオーラは、まるで………天使のようなものだった。
Side out
俺は第3段階の封印を解除した。
そのため、今の俺の姿はかなり変わっている。
おそらくだが、今の姿は俺の本当の姿の一歩手前状態だろう。
(さて、どういうプランで行くか)
俺は必死に考えた。
今目の前にいる人魚のような魔女からさやかの魂を取り戻さなければいけない。
だとすれば、出来る事は一つだ。
(あの魔女から魂を抜き取る……しかないか)
言葉でいうのは簡単だが、実際にやると、かなりきつい。
何せやり方が問題なのだ。
相手の魂がある場所を突き止め、そこを的確に腕でつかんで分離する。
魂の場所を突き止めるのはそれほど難しくはないが、相手の攻撃をかわしながら探すのは骨が折れる。
(まあ、やるっきゃないか)
「来い! このくそ野郎!!」
俺は吉宗と正宗を構えて、魔女を挑発する。
「■■■!!」
すると、それに反応したのか、魔女は再び車輪のようなものを出してきた。
「盾よ、我らを守れ」
俺はそう呟き神剣を、目の前で交差させるようにして構える。
そして、一斉に放たれた車輪は俺へと放たれ命中するが、俺と佐倉杏子へのダメージはなかった。
(力の封印を解いただけでもまったく違う。これなら負ける気がしない)
俺はようやく取り戻した本来の力に感動していた。
まだまだ75%だが、それでもたいていの魔女は俺の敵ではない。
「さぁ、さっきの仕返し、だ!!」
俺は二本の剣を魔女に向けて投げつける。
「■■■!!」
二本の剣は魔女の横に突き刺さり、魔女はその動きを止めた。
これは簡単に言えば影止めにあたる。
相手の動きを少しの間だけ止めることが可能だ。
「行くぞ」
俺は魔女の背後へと回り込み、魔女に向けて手を掲げる。
今からやるのは、魂のある場所を探し出す工程だ。
これは数十秒あれば事足りる。
意識を集中する中、俺は小さな青い光を感じた。
(見つけた!!)
それが魔女の……さやかの魂であることはすぐに分かった。
「貫い、て!!」
俺は魔女の魂がある部分に手を突っ込んだ。
今魂は露出状態にあるため、俺のような存在であれば、誰でも魂に触れることが出来る。
「掴まえた!!」
そして俺はそれを一気に抜き取ると、手の中にはさやかの魂があった。
それを俺はビンの中に入れるとふたをして、茫然としている佐倉杏子に投げつけた。
「うわっと!?」
「それを持っていてくれ!何かとがさばるから」
「わ、分かった」
俺の言葉に、彼女はそう答えると、大切そうにビンを持った。
「さて……」
「■■■■!!!!」
影止めの効果が消えたのか、目の前の魔女の抜け殻が叫ぶ。
「もう魂は抜いたから、攻撃は出来ないがいて貰っても困るしな」
俺はそう言いながら、神剣を自分の元へと呼び戻す。
「だから、とっとと消えろ」
俺は後ろを見る。
「おい、僕のそばに来い。じゃないと死ぬぞ」
「わ、分かった」
俺の言葉に、佐倉杏子は慌てながら頷くと走って俺のそばまで来た。
俺はそれを確認して、初めての大技を使うことにした。
「大地侵しし愚か者へ捧げる裁きの言葉………」
俺の言葉に呼応して、神剣に光がともる。
それは純粋な力、エネルギーだ。
「愚か者に捧げる救いの手は無し………未来永劫の地獄へと落ちろ」
そして俺は神剣を地面に振り下ろした。
「最終審判、レクリエム!!」
その瞬間、膨大なエネルギーは一気に牙を向け魔女諸共、結界内で大爆発した。
その数秒後、魔女がいなくなったためか、はたまた結界を破壊したからかは分からないが、結界は消滅し、俺達はもといた建設現場に立っていた。
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