シンクとリコッタ、そしてユキカゼと合流して、外に出た。
すると、一部が騒々しかった。
そして時たま聞こえてくる少女の声。
「あの子、もしかして……」
シンクも気づいたのか、そう呟いた時、ユキカゼが突然その場所へ向かった
「エミリオ、どうしたでござるか?」
「パネトーネ筆頭! いえ、ガレットからの密偵が騎士団に化けて」
青色の短髪の青年……エミリオがユキカゼの問いかけに答えた。
「密偵ちゃうって」
そこにいたのはガレットの隠密部隊のクラフティだった。
「うちはさるお方から、勇者シンクと傭兵の渉宛ての秘密のメッセージを持ってきただけや!」
俺とシンクの姿を見るや否や指を指してそう告げてきた。
「僕宛ての、メッセージ?」
シンクは真剣な表情で、そう呟いた。
俺とシンクはクラフティと共にある場所へと向かっていた。
それは、彼女が持ってきたメッセージに話があるので来るようにといった内容の事が書かれていたからである。
ちなみに、俺以外の二人はセルクルに乗っている。
「あ……」
そしてフィリアンノ城を出て少し歩いた森に、黒いセルクルに乗ったガウルがいた。
「シンク、それに渉。突然呼び出して悪かったな」
「それで、どうしたの急に?」
「決まってるだろ。今回の戦の事さ」
シンクの問いかけに、ガウルは即答した。
「今回の戦は、ゴドウィンも反対なんだ。どうにも納得がいかねえことも多い」
「こっちでも、ガレットは本気でここを侵略する気なんじゃないかって」
確かに、道中すれ違う人たちは全員不安げだったのを覚えている。
「いくら姉上でもそれはねえ。ガレットとビスコッティは友好国として、何代も前から支え合ってきた。それをいまさら侵略なんぞ、道義もたたなければ意味もねえ」
確かにそうだ。
なぜ侵略するのか。
それにはそれなりの理由があるはずだ。
俺には、レオ閣下が恨みつらみで侵略をする暴君には思えなかった。
だが、その理由は思い当たらない
(いや、もしかしたら……)
俺は推測ではあるが、理由が分かった。
(確か、星詠みは未来を視ることもできるんだったよな? もしレオ閣下が星詠みをして、未来を視ていたとすれば)
しかも、その未来が残酷な物であったならば、レオ閣下はそれを避けたいはずだ。
もちろんこれは推測だから間違っている可能性はある。
だが、見当がつくのと着かないのとでは大きな違いがある。
気が付けば、二人の話は終わり、ガウルはこの場を去っていた。
「シンク、悪い。一人で戻っててくれ」
「あ、渉!?」
俺はシンクに一言告げて、答えを聞かずにガウルの後を追った。
「ガウル!」
俺はガウルに追いつくと声をかけた。
「何だ、渉? まだ話があるのか?」
「ああ、渡しておきたいものがある」
いつになく真剣な様子のガウルに五つの腕輪を渡した。
「何だ、これ?」
「それは俺が作ったお守りだ。念じるだけで3回分の防御か、1回分の完全回復をすることが出来る。これをレオ閣下やジェノワーズに渡してくれるか?」
「別にいいけど、どうしてだ?」
俺の頼みに頷くと、ガウルは俺に理由を聞いてきた。
俺は、一瞬誤魔化そうとも思ったが、正直にいう事にした。
「今回の戦で大量の犠牲者が出る可能性がある」
「何!?」
俺の言葉に、ガウルは驚きを隠せなかったようだ。
「どういう経緯かは分からない。だから、万が一の時にこれを使ってそんな事態を食い止めてほしい。俺は戦えないから」
「それって、どういう――――」
「俺の話はそれだけだ。後それは万が一のとき以外使うなと言っておいて」
俺はガウルの言葉を遮ってそう伝えると、そのまま二人に背を向けて歩き出した。
(絶対に食い止めてやる。その為ならば、この命、力。すべてをかけてやる)
俺は再び強く決心しながら、フィリアンノ城へと戻った。
道中、花火が打ちあがったことから、ビスコッティは、今回の宣戦布告を受けるようだった。
[0回]
PR