グラン砦が見え始めた時、それは突然起こった。
「ッ!?」
「どうしたの? 渉」
突然息をのんだ俺に、シンクが訪ねてきた。
「式神とのリンクが消滅……消滅時の情報から矢での奇襲を受けたらしい。護衛対象は矢が直撃したが無事とのことだ」
どうやら式神では耐えられない威力だったらしい。
そんな矢を射れるのは一人しかいない。
そして、こっちでも式神の情報通り、物騒な武器をこちらに向けてきた。
「うぇええ!? 銃!? 大砲!?」
「勇者、この間教えた紋章術、間違いなく出せるな?」
敵の武器を見て驚くシンクに、エクレが淡々と聞いた。
「こ、こないだって、槍の奴?盾の奴?」
「盾だ! 貴様が防げ! 私と渉が切り込む!」
「あいよ、了解!」
今さりげなく俺を混ぜたよな!?
しかもシンクは前に出て行くし。
そして浴びせられるのは数多もの銃撃。
シンクは紋章術で展開した盾で、
「神術・第1章、全ての災厄は今取り除かれた」
俺は神術でそれを防いでいく。
「シンク、放たれた大砲を俺がいる上空に弾き飛ばして」
「了解!」
俺は守りっぱなしは嫌なので、シンクに指示を出した。
それと同時に大砲は放たれ、俺は所定の位置に着く。
「だぁぁぁりゃあああ!!!」
『な、なにぃぃぃ!? 勇者シンク、追尾弾をもう一人の勇者殿に弾き飛ばした!!』
シンクは砲撃弾をしっかりと俺のいる場所へと飛ばした。
「ホールド」
俺はそれを手でキャッチすると、爆発しないように固定させた。
「目には目を、歯には歯を!!」
そして、それを思いっきり撃った者達がいる方へと投げ飛ばす。
『もう一人の勇者、素手で追尾弾を投げ返しました!!』
「エクレ!」
「閃空、大一文字!!」
エクレの紋章剣が炸裂した。
さらには俺が打ち返した追尾弾もある。
「ホールド、解除♪」
そしての次の瞬間、追尾弾は大爆発し、守っていた敵陣をほとんど倒した。
だが、俺が気がかりだったのは……
「空に雲が……」
突然空に浮かび上がった薄黒い雲だった。
どこかしらかマイナスエネルギーの値が増えてきたような気もする。
そんな状態をよそに、俺達は砦内に侵入した。
砦内にある階段を登り切り、ドアを開く。
そこはやや広い場所だった。
『全く待ちくたびれたぞ』
レオ閣下の声とともに目の前にあった楕円形にレオ閣下の顔が映った。
『そこにおるのはたれ耳と勇者に、渉殿じゃな。儂は今この砦の最上部、天空武道台におる。ここまでこれた褒美にわしとの一騎打ちのチャンスをくれてやろう』
映像の前まで移動した俺達は映像を見続ける。
シンクは姫君をかばっていた。
『グランベールも、エクスマキナもここにある。これを奪えばポイント的に貴様らの勝利で確定だろうな。無論一人ずつでは叶うまい。仲良く二人で掛かるがよかろう』
それは、完全な挑発であった。
『儂は貴様らを倒しパラディオンを奪った後、ミルヒの陣をぶちのめしに向かう!』
レオ閣下の言葉に、姫君がさらに怯えた。
『さあ、上がってくるがよい!』
それを最後に映像は消えた。
3人称Side
「はぁ……」
「レオ様」
天空武道台では挑戦状をたたきつけたレオが一息ついていた。
その様子を、心配そうに見つめるガレットのメイド長のルージュ。
「なに、問題ない。待っておれば何も知らない勇者とたれ耳が、パラディオンを運んで来よう。それだけでも星が変わるやもしれん」
「はい……」
そう、彼女の計画では、ここにやってくるのはシンクとエクレールの二人であると踏んでいたのだ。
そして、レオは雷が鳴り響く空を見る。
「それにしても、国をかけての大戦じゃと言うのに、何と言う空模様じゃ」
空模様を見て呟いた時、天空武道台に来る唯一の移動手段であるものが到着を告げた。
そして、そこにいる者二人がドアの方へと視線を向ける。
ドアが開いた時、そこに立っていたのは……
「お邪魔致します。レオンミシェリ閣下」
「ッ!?」
大きな剣を持っているミルヒ姫と、その横で不敵の笑みを浮かべ、神剣を構える渉だった。
それは、少し前に星詠みで視たものと、ほとんど同じ構成となっていることを示した。
こうして、続々と悲劇は迫って来ていた。
Side out
覚醒まで残り、1時間26分
[0回]
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