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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第21話 星詠み~最悪な未来~

あの後、ダルキアン卿のいた家のような場所からお城に戻ったシンクは、メイド長に半ば強引にどこかに連れていかれた。
俺は、いやな予感がしたためシンクを見捨てて屋根に飛び乗って隠れた。
人間自分が一番大事だ。
まあ俺は人ではないし、人としては最悪な部類に入るが。

「シンクは姫君と密会か」

シンクから伝えられた言葉を呟いた。

「俺はとことん姫の階級を持つものとは縁がないみたいだ」

俺は苦笑いを浮かべながら呟いた。
まあ、昔は姫と言う階級はなかったからそれも当然だろうけど。

「それにしても、星がきれいだ」

俺は隠れるつもりで登っていた屋根から降りることも忘れて、星空を見ていた。

(それにしてもあの夢、本当に夢か?)

俺は考えた。
あの内容が夢と言えるものであるのかを。
夢と片づけるにはかなり無理がある。
それほどきつい内容だったのだ。
しかもリアリティもあった。

(まさかとは思いたくないが、まさか……)

俺には一つだけ心当たりがあった。
ダルキアン卿から聞かされた星詠みでの未来を視るのと同じ効果を持つそれを。
そして、それの恐ろしさを。

「………俺がやるべきことはここの世界の人を守ることじゃない」

俺は自分に言い聞かせるようにつぶやく。
世界の人を全員救うなど不可能だ。
何かしらかの代償(ぎせい)が必要なのだ。

「俺に出来るのは、最悪の事態を避けること。ただ、それだけだ」

そんな俺の小さな決意は、風によってかき消された。










3人称Side

ガレット獅子団領
その中のある部屋から何かが割れる音が響いた。
部屋の中では、レオ閣下が悔しさと苛立つ表情で立っていた。

「くそ、またか!」

レオ閣下はいら立ちをあらわにしながら呟く。

「戦を済ませて帰っても、やはり何も変わらん。いや、かえって悪くなった!」

レオ閣下はそう言いながら悔しそうな表情で上を見た。
その拳は、固く握られていたことから、その悔しさ、苛立ちがどれほどの物であるかが分かる。

「さして強くもないはずの儂の星詠み、なのになぜ、こうまではっきりと未来が見える!」

レオ閣下のやっていたこと、それは星詠みであった。
そしてレオ閣下の前にある映像版に映し出されていた物は、血を流して地面に倒れている勇者シンクと、ミルヒオーレ姫だった。

「ミルヒだけでもなく勇者も、この世界の者も死ぬ」

映像版の下に文字が書かれていた。

『「エクセリード」の主ミルヒオーレ姫と「パラディオン」の主勇者シンク、およびフロニャルド王国にいる者、30日以内に確実に死亡。この映像の未来はいかなることがあっても動かない』

そこには、最悪な未来が記されていた。

「なぜだ、なぜ渉がこの世界の者を……あの二人を殺すのだ!!」

映像には倒れる二人の他に二人のそばに立つ、不気味なほどに無表情の渉が映し出されていた。
その姿は背中に黒く染まった翼があり、髪の毛は黒から銀色に変わっていた。
さらには渉の周りからオーラのようなものが溢れだし、その手には神剣正宗と短剣を持っていた。

「星の定めた未来か知らぬが、かような出来事、起こしてなるものか!」

レオ閣下はそう啖呵を切ると部屋の一角へと向かう。

「貴様を出すぞ、グランヴェール! 天だろうが星だろうが、貴様とならば動かせる!」

レオ閣下の視線の先にあるもの、それは……言葉では言い表しようのないオーラを纏っている一本の斧だった。
そして、それが起こるのは翌日の事であった。

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