(また、夢か?)
俺が立っていたのは、再びフロニャルド王国のどこか。
(なッ!?)
俺は、目の前の光景に思わず息をのんだ。
その光景は、血を流して倒れる姫君と、シンク、そしてエクレ達の姿。
(一体何が………ッ!?)
俺は突然上空から鋭い殺気を感じた。
武士の勘で、俺はすぐにその場を離れた。
その瞬間、まるで地面が抉れるような轟音を立てて、何かが着弾した。
「こ、これって……神剣正宗」
クレーターのように陥没している所に突き刺さっていたのは、俺が使う神剣正宗だった。
「でも、どうしてこんなものが上空から――――ッ!?」
再び殺気を感じた俺は、素早く移動する。
その瞬間再び轟音と共に地面が抉れた。
(これは夢なんだろ? なんで俺を襲ってくる? と言うより……)
「どうして、俺は話せるんだ?」
夢であれば、俺は声を出すこともできない。
なのに、俺は口から言葉を発していた。
そして、俺は上空を見た。
そこにいたのは
「なッ!?」
真っ黒な礼装を身にまとい、黒い翼を広げた”俺”だった。
だが、その異様な姿はそれを俺だと思わせない。
「■■■■■■■■■■■■!!!!」
理解できない雄たけびを上げたそれは、俺の方向に陣を展開する。
その形は……
「あれは、闇属性!?」
光に対抗する属性の闇だった。
そしてそれは一気にこっちへと向かってきた。
「ッく、霊言の盾」
俺はそれに対して光属性の壁を形成する。
着弾と同時に、とてつもない重圧が襲ってきたが、なんとか耐えきれた。
「■■■■!」
次は炎属性の神術を放ってくる。
それを、前と同じように盾で防ぐ。
(こりゃ、攻撃しないとまずいな)
「一撃で決める! 最終審判……レクリエム!!」
俺は両手に持つ神剣を上空に振り上げる。
すると、一本の強大な光となり、”俺”へと向かう
この技は、どんな穢れたものでさえも一気に浄化することが出来る優れものだ。
出来ないのは、俺自身とバイパスをつなげた場合だけだ。
「■■■■■■■■!!」
”俺”は雄叫びを上げると再び円陣を展開した。
その属性に、俺は言葉を失った。
「あれは……無属性の反射特化属性とも言われる風属性!!」
無属性は、炎や雷と言った三元属性や光と闇と言った極限属性とは別の物だ。
これには反射特化型の属性である”風”や、回復に特化した”土”の二種類がある。
そして、俺の放った技は、最強の威力を誇るレクリエム。
だとすれば、この後どうなるかは想像できる。
レクリエムが”俺”に着弾した瞬間、それは一旦消滅し俺に向けて放たれた。
これが、風属性の恐ろしさだ。
俺も使おうとしたが、この属性は使うことが出来なかった。
(ここまでか)
俺はあきらめていた。
それは、この技の威力が分かっていたからだ。
どんなに素早く逃げたところで、射程圏内から逃れることは不可能だ。
そして、俺は白く眩い光に飲み込まれた。
「――――です!! 早く起きてください!!」
「わぁあああ!!?」
突然耳に聞こえてきた少女の声に、俺は思わず飛び起きた。
(はぁ………夢……だったのか?)
それにしては納得が出来ない。
「渉さん!! 大変でありますよ!!」
「な、何!?!」
思考に耽っていると、リコッタの叫び声に引き戻された。
その後、リコッタから伝えられたことをまとめると次のようになる。
まず、突然レオ閣下が、ビスコッティに宣戦布告をした。
そしてそれの懸賞をガレットの宝剣、『魔戦斧グランベール』と『神剣エクスマキナ』が賭けられたとのこと。
しかも、それにはこっちもそれに見合うものをかけなければいけなくなり、それは宝剣であると言うこと。
「話は分かった。とりあえず、着替えたいから外で待っててくれる? 2分で終わらせる」
「リ、了解であります!」
俺はリコッタが出て行ったのを確認すると、一息ついた。
「今回の、宣戦布告が、あの夢と関係がなければいいんだが」
俺は不安だった。
俺が視た一連の夢。
それは”予知夢”だ。
俺の場合、視ることはかなり少ない。
しかも見たら俺の場合は必ず現実のものとなってしまう。
つまり、俺はこの手でエクレやシンク達を殺すことになると言うのだ。
「………ついに、選択の時が来たか」
俺は再びため息をつくと、着替え始めた。
そして、着替えが終わった俺はテーブルの上に置いてあったあるものを手に持つと、部屋を後にした。
(最悪な事態だけは回避しないと)
そんな、俺の小さな決意と共に。
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