俺は、近くで感知された巨大な魔力がある場所に向かっていた。
「ここが一番魔力の高い場所か」
俺は周りを見回してみたが、そこには何もいなかった。
「………一体どこにいるんだ?」
俺はエイミィさん達の勘違いかと思い始めた時だった。
「ッ!!?」
周囲の雰囲気が変わるのを、俺は肌身で感じた。
どうやら魔力反応の主が現れたようだった。
そう思い俺は、気配のする場所に視線を移した。
そこにいたのは……
「お、お前は――――ッ!?」
黒い羽根を生やした、リインフォース……いや、闇の書の意志であった。
「我は再び呼び起されてしまった」
そんな闇の書の意志は、俺に気付くことなく言葉を続けた。
「我を呼び起こしたのは、お前か?」
「え?!」
突然声をかけられ、俺が口に出来たのはそんな言葉だった。
「お前が我を呼び起こしたのか?」
「分からない」
再度問いかけられた俺は、そう答えた。
「そうか……我は闇の書、だが我を織りなす部品がまるで足りない………防衛システムや転生能力も」
「それは、すべてが壊されたからだ」
俺は闇の書の意志にそう告げた。
「そしてそれを望んだのはほかでもない、あなた自身だ」
「我が望んだ? それはありえない、我はただ破壊するだけの魔導書だ」
俺の言葉に闇の書の意志が悲しげな表情を浮かべて呟いた。
「違う!! お前は破壊をするだけの魔導書ではない! 今の主が、無限の悲しみを終わらせたんだ!!」
「そんなことはありえない。我らを労わってくれる主などいるはずがない」
俺の言葉を否定する闇の書の意志。
(やっぱり話し合いでは無理か)
俺は内心でそう思っていた。
そして少し前の事を思い出した。
それは執行人と俺と真人とのやり取りだった。
『お前に出来る事?』
『ああ、そうだ。俺には何か出来る事はあのかなって………』
俺の言葉に、執行人はすかさず答えた。
『ない』
『……それは、なぜです?』
俺は執行人に尋ねた。
『お前の力は空っぽだ。味も何もないな』
『そ、それはちょっと言い過ぎなような気が』
執行人の言葉に、真人が軽くフォローを入れた。
『言い過ぎでもない。お前のその力には何の意味がある? お前は何が為にその剣を振るう?』
『………』
『それに答えられないようでは、ここにいることもできないだろう』
執行人の言葉は、的を得ていた。
だから、その時俺は満足に反論も出来なかった。
だが、今は答えることが出来る。
「お前の悲しい物語は、この俺の手で終わらせる!!」
だから、俺は戦う。
俺が、この力を振るう目的を確実にするために。
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