「負けた……のですね」
星光の殲滅者が静かに呟いた。
「それじゃ、聞かせてくれるか? この結界の目的を」
「良いでしょう」
俺の言葉に、星光の殲滅者はそう頷くと、目的を語りだした。
「私の目的は、『砕けえぬ闇』の復活です」
「砕けえぬ闇?」
星光の殲滅者の言う『砕けえぬ闇』の意味がよく分からなかった。
ただ、あまりいいものではない事だけはよく分かった。
「ええ、残念ですが『砕けえぬ闇』の復活は、他の構築体(マテリアル)に任せましょう」
「何!?」
俺は思わず声を上げてしまった。
彼女の言葉を信じるのであれば、まだまだマテリアルがいることになる。
そんな時、まるでテレビのノイズのような音がしたかと思うと、星光の殲滅者は粒子となって消えようとしていた。
「お、おい! マテリアルはほかに何人いるんだ!!」
「……また見えることがありましたら、次は私が勝たせていただき――――」
星光の殲滅者はそう言い残し、消えて行った。
「まずいな、こりゃ」
俺は静かに呟く。
星光の殲滅者の言う『砕けえぬ闇』が何を指すのかが分からず、さらにはマテリアルの人数も不明とまで来た。
これでは、満足に戦う事も出来ない。
まだ俺達はスタートラインにも立ってないのだ。
そんな、状況が俺をさらに苛立たせる。
「真人君、落ち着こう?」
「………そうだな」
なのはの提案に、俺は頭を冷やすべく頷いた。
「執行人はどう思う?」
「そこで僕に振るのかい……そうだな」
執行人は顎に手を当てて考え込む。
「僕からは何とも言えんな。判断するには情報が少なすぎる」
執行人から返ってきたのはそんな答えだった。
『真人、聞こえるか!』
そんな中、健司から通信が入った。
「ああ、聞こえてる。そっちの方は大丈夫か?」
『こっちは楽勝だった。それより、奴らの目的分かったぞ』
健司の言葉に、俺は思わず息をのんだ。
「それは本当なのか!?」
『ああ、奴らの目的は、闇の書の闇を復活させることだ!』
そして、健司の口から、目的が語られた。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「さて、お前の目的は何だ?」
「僕のもいく敵は、お前たちが勝ってに破壊した、闇の書の呪いを集めて、この身の内に決して砕けえぬ闇の書の闇を再びよみがえらせ、決して砕けえぬ力を手に入れ、真の王となるためにっっ!!」
雷刃の襲撃者から、目的が語られた。
「このあたりに出来ている結界。これもお前の仕業か」
「僕だけじゃない。他にもいる。魔導師や守護騎士達の思いや妄執を形になって君達を襲う!!」
(つまり、関係者の記憶をもとに形成された偽物と言うことか)
雷刃の襲撃者の言葉をまとめて、俺はそう解釈した。
「い!!? なんてこった、ここまでか!?」
突然雷刃の襲撃者が驚いた様な表情を浮かべながら言った。
「え、ええと……や、闇は何度でも蘇るぞ! 僕も王への道を諦めたわけじゃない!」
驚いたかと言えば、まるで悪役が逃げるようなセリフを言う雷刃の襲撃者。
「いずれ、またきっと! それから、えーと、えーと………あー!?」
それを言い残して雷刃の襲撃者は、まるでガラスのように消えて行った。
「………」
そのあまりにも突然の光景に、俺は固まった。
「やっぱりあいつは馬鹿だ」
俺はそう決断しながら、真人に通信をつなげた。
「真人、聞こえるか!」
『ああ、聞こえてる。そっちの方は大丈夫か?』
俺の言葉に、返事が来たので、俺は一安心した。
「こっちは楽勝だった。それより、奴らの目的分かったぞ」
『それは本当なのか!?』
俺の言葉に、真人が食いついてきた。
やはり向こうは情報を得られなかったようだ。
「ああ、奴らの目的は、闇の書の闇を復活させることだ!」
そして俺は、真人に今まで聞いたことをまとめて話した。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「つまりは、闇の書の防衛プログラムのかけらが、闇の書を復活させようとして起こした事件と言うわけか?」
『そのようだ』
俺の言葉に、健司が頷くように答えた。
「だが、防衛プログラムは、俺達が完膚なきまでに消滅させたはずだから、こんなことになるはずはないんだけど」
『確かに』
「それについては、僕が答えよう」
俺と健司が疑問に頭を抱えていると、突然執行人が話し出した。
「これはあくまで憶測の域を出ない。それでもいいのなら……だけど」
「もちろんだ。話してくれ」
『俺からも』
俺と健司の言葉に、執行人はしばらく目を閉じると、静かに語り始めた。
「真人のあの大技、
プリマテリアライズ・
オーバードライブは確かに、全てを消滅させた。だが、それまでに防衛プログラムの因子がばらまかれてないと断定することはできない。おそらくその因子が集合したために、このようなことが起こっているのであろう」
「なるほど………それなら確かにありえそうだ」
俺と健司は執行人の推測に賛同した。
「あの~できれば私にも、分かりやすく説明してほしいな」
『「あー」』
俺はなのはがいるのを忘れて話し込んでしまっていたようだ。
「つまりだな――――」
こうして俺達は、一からわかりやすく説明することになった。
「なるほど」
「さて、これからどうするかだけど――――」
俺がそう呟いた時だった。
『健司君、真人君! それぞれのいる場所の近くに、巨大な魔力反応があるが!』
「『ッ!!?』」
俺と健司は思わず固まった。
「エイミィさん、俺が対処します」
『俺もです!』
俺の言葉に続くように、健司もエイミィさんに告げた。
しかし、健司はさっきから通信の回線を、つなげたままなことに気付いているのだろうか?
『分かった。二人ともお願い。それぞれかなり大きな魔力を持っているの。気を付けてね!』
『「了解!」』
俺と健司は同時に答えて、ついでにつながっていた通信も遮断した。
「真人君、私も――――」
「大丈夫だ。なのはは小さな結界の方を叩いてほしい」
なのはの、一緒に行くと言う言葉を遮って、俺はそう指示を出した。
今この場で俺のするべきことなのはのするべきことは、既に決まっていた。
「うん、わかった。気を付けてね」
「それじゃなのは、行ってくる」
そして、俺は大きな魔力反応の場所へと進むのであった。
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