俺は闇の書の意志に苦戦していた。
「っく!!」
原因は、放たれる赤い槍のような攻撃……『ブラッディダガー』によるものだ。
これはとにかく早い。
回避するだけでも精一杯だ。
時々同時に5,6個の槍が扇形に放たれたりもするので、かなり苦しい。
「ブラッディダガ―」
「そこだ!」
俺はブラッディダガ―を放った際に出来る一瞬のすきを狙い、一気に闇の書の意志へと迫る。
だが……
「ナイトメア」
「ッ!!」
突如として放たれた漆黒の砲撃に、俺はとっさに体をひねる。
それが幸いしたのか、若干かすった程度でダメージを受けずに済んだ。
「ブラッディダガ―」
「ちぃ!」
再び放たれる赤い槍に、俺は距離を取るしかなかった。
(強い力を持っても、これじゃ全く駄目だ)
俺は現実を思い知った。
だが、それを知ったところで何も変わらない。
なんとしてでも勝たなければいけないのだ。
友人の期待を裏切らないために。
そして自分自身の為に。
(もしかして)
その時、俺は気付いた。
真人(あいつ)にはあって、俺にはない物を。
それは、俺の力に対する覚悟だったんだ。
今までは、ただがむしゃらに力を使っていた。
転生したから、チートな能力を手にしたから。
でも、それだけでは駄目だったんだ。
「これが使えれば……」
俺がポケットから取り出したのは、バンドのようなもの。
ここに来る前に神から「中身を取り戻したら使え」と言われて渡されたものだ。
最初は意味が分からなかったが、もしかしたらこれで行けるはずだ。
しかし、それを使う前にやるべきことがあった。
(あいつの攻撃を受けても大丈夫な風にしないと)
おそらくだが、これを使っている間は無防備になる。
さっきの収束砲を当てられたら後が無くなる。
「
熾天覆う七つの円環!」
よって俺は、前に宝具を展開した。
これで、少しはしのげるはずだ。
そして俺はバンドに手をのせて、動けと念じる。
『汝は、その力に何を求める?』
「俺は友人を、そして自分自身を守ることを求める」
突然発せられた声に、俺はゆっくりと覚悟を口にする。
『汝は、強敵と戦う時逃げぬと誓えるか?』
「この剣にかけて誓う」
『汝が望むことは何だ?』
「俺が望むのは、人に認められること。そしていずれか来る強敵との戦いで共に戦うものの足を、引っ張らないようにすることだ」
俺は自分でも驚いていた。
今までの俺なら絶対に言おうとしない言葉を、俺は口にしていた。
だが、横目で見ると、七枚中三枚が砕かれていた。
まだ平気だが、早いに越したことはない。
『合格だ。我は汝をマスターと認め、汝と共に戦うことを誓おう』
その瞬間、光が走ったかと思うと、そこにあったのは銀色の杖がだった。
『わが名はヴェントス。準備はできている』
「了解。それじゃ行くぞ!!」
『フラインド・レイ』
ヴェントスの自動詠唱によって、俺は一気に飛翔した。
(やっぱり動きが違う)
今までの速度よりも格段に早くなっていた。
若干ではあるが、俺の方が追い付いていない。
「攻撃手段はあるか?」
『これくらいが今のマスターでは最適だ』
そう言って俺の頭の中に情報が流れ込んでくる。
相手を巧みにトレースするシューティング・レイ。
相手へ一直線に砲撃を放つ、ブレイク・レーザー。
この二つのみだった。
おそらく、今の俺のレベルが低いためだろう。
(このデバイスについては後であいつらに聞いてみよう)
俺はそう考え、高速で飛び続ける。
「シューティング・レイ!」
そして俺は三発の誘導弾を放った。
相手は、それをよけようとするが、誘導弾は闇の書の意志を追尾する。
「ナイトメア」
それを収束砲で相殺する。
だが、こっちは次の手があった。
「ブレイク・レーザー!」
ヴェントスからけたたましい収束砲が放たれる。
ものすごく消費魔力が高いが、魔力量で言えばチートレベルなので、問題はない。
(ここで一気に決めよう)
俺はそう考え、必殺技を使うことにした。
「I am the bone of my sword.Steel is my body,and fire is my blood」
一言一言の詠唱のたびに、とてつもない魔力量を消費していく。
「I have created over a thousand blades.Unknown to Death.Nor known to Life.Have withstood pain to create many weapons」
かの英雄が使っていた者と同じ術を使おうとしているのだ。
「Yet,those hands will never hold anything.So as I pray,"unlimited blade works"」
その瞬間、世界が変わった。
その景色は、ただの白い世界。
かの英雄が使っていた
無限の剣製は、己の心象風景を現す固有結界のはずだ。
つまり、俺は空っぽと言う事だろう。
若干ではあるが地面に黒の模様が描かれているだけしか、変わりはない。
「行くぞ!」
俺は近くの剣を手にして、相手に肉厚する。
そして、俺はひたすらに切り続けた。
剣が壊れれば別の剣を手にして切りつける。
それから後の事は、何一つも覚えていない。
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