ある休日の一面が砂漠の世界にて。
「はぁぁ!!」
「甘い!」
俺の前で健司と執行人が模擬戦を行っていた。
なぜこうなったのか。
それは今から数時間ほど遡る。
「魔法を教えてほしい!?」
突然家に訪れた健司の一言がすべての始まりだった。
「ああ、俺は今思えば魔法に対する覚悟がなかったんだ。だから真人にそれを含めたすべてを教えてもらいたい!!」
そう言い切ると、健司は俺の前で土下座をした。
「お、おい。よしてくれよ!?」
「この通りだ!!」
俺の制止も聞かずに、健司は土下座を続ける。
「なるほど。覚悟は決まったようだな」
そんな中口を開いたのは、ベッドに腰掛けて本を読んでいる執行人だった。
「ああ」
「そうか。では、この僕が直接教えるとしよう」
執行人はそう告げるとゆっくりと立ち上がった。
「言っておくが真人はまだまだ半人前だ。教えを乞うのであれば俺の方が最適だ」
「お願いします!!」
執行人の若干のトゲのある言葉に、俺は執行人の事を睨みつけるが執行人はそんな俺を気にせずに、片手を地面に向けて掲げた。
「クロッキング・ブレザード」
執行人の呟きと同時に周りの空間から色が抜けた。
いわばそれはモノクロと呼ぶらしい。
「何をしたんだ?」
「時間を止める魔法だ。かなり高度な魔法なために、多用は出来ない」
今更だが、本当に何でもアリだよな、魔法って。
そして今に至る。
「よし、今日はここまでだ」
「あ、ありがとう……ございました」
時間にして約2時間にも及ぶ練習と模擬戦は、健司にとってかなりハードな物だったのか、息を切らしていた。
「この程度で息を切らしていては、まだまだ先は長いぞ」
「は、はい」
「もしかして、これから毎日続ける気か?」
俺は若干嫌な予感がしたため、執行人に聞いた。
「当り前だ。一日で良くなるものなどおらん」
「………」
どうやらこの数日間は、俺は平穏な暮らしが出来ないようだ。
なぜなら、いつの日にかは俺と健司との模擬戦があるだろう。
「心配するな。時間は今回のように止める。真人が怒られることはない」
執行人は別の事だと思ったのか、そう笑顔で言ってきた。
確かにそれも困った。
この間両親に長時間も起こられたのだから。
まあ、毎晩夜遅くに無断で出歩いていれば、それも当然だが。
「さあ、戻ろうか」
「了解」
こうして、健司の特訓は幕を開けたのであった。
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