健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第45話 旅行

シンクが地球に戻ってからしばらく経ったある日の昼下がり、俺は姫君がいる場所へと来ていた。

「次元転送?」
「はい、そうです。私が保有する特殊なルートを利用することに言って色々な世界に行くことが出来る技術です。これが実用化できれば、このシンクと毎日好きな時に会うことが出来ます」

俺の説明に、姫君は分かっているような分かっていないような様子だった。
そんな彼女を無視しつつ、俺はある提案をすることにした。

「これからその実験がてら、シンクがいる世界に行くんですが、一緒に行きますか?」
「え? いいんですか?」

俺の提案に、姫君は明るい表情で聞いてきた。

「ええ、もちろんです。姫君がよろしければ私は一向に構いません」
「でも……」
「ああ、秘書の方たちの件なら大丈夫です。今は昼休み。あと20分39秒はここには来ません」

表情を曇らす姫君に、俺は心当たりがある問題点を口にした。
そう、怖い秘書の人がいつ来るかもしれない状況で行くのは問題が多い。
だが、この時間帯は余程の事がない限り来ることがないことは、すでに実証済みだ。

「でしたら、ちょっとだけ」
「では、これから準備をしますので、準備が出来るまでシンクに手紙でも書いたらどうです?」

俺はそう提案すると、彼女に背を向けて神剣を取り出すと、何もない場所を切り裂いた。
すると、次元空間への入り口が開かれた。

「姫君、準備は良いですね?」
「はい」
「それでは、シンクの元に出発!」

そして、俺達は次元空間へと身を投げるのであった。










揺られること数十秒。
僕達が降り立ったのは、どこかの森のような場所だった。

「ここが、シンクの住んでいる世界なんですね」
「そうでしょうね」

目を輝かせて周りを見る姫君にそう答えると、俺はシンクのいる場所を探す。
シンクがいる世界の、シンクがいる場所の近くを目的地にしていたのだ。
だから、この辺りにいるはずだ。

「あ、シンクだ」
「え?!」

俺の視線の先には、木の棒を回しているシンクの姿があった。
どうやら練習をしているようだ。

「それじゃ、行きますか」

俺はシンクの元に歩き出すが、どうもおかしいと思い振り向くと、木の陰に隠れている姫君の姿があった。

「どうしたんです?」
「あ、あのこれをシンクに渡してください」

そう言って一通の手紙を手渡してくる姫君。

「どうしてです? 会えばいいでしょうに」
「その、ちょっと恥ずかしくて」

そんな姫君の回答に、俺はため息をつきそうになるのを必死堪え、そこにいるように告げてシンクの元へと向かった。

「勇者シンク」
「ふぇ!? って、渉!!」

俺が声をかけると、驚いた様子で俺を見ると駆け寄ってきた。

「どうしたの? というよりフロニャルドにいたんじゃ?」
「ふん、この俺にそんな常識は通じない。世界を渡ってきただけだ」

シンクの疑問にそう答えると、俺は姫君に渡された手紙を差し出す。

「えっと、これは?」
「姫君からの手紙だ」
「姫様からのッ!?」

俺の言葉に、驚いた様子のシンクに背を向けた。

「あれ、もう帰るの? お茶ぐらい飲んで行けばいいのに」
「お前の様子を見るのと、この手紙を渡すために来たようなもんだ。俺も休みを返上してきてるのでな」

そう言いながら手をひらひらとさせて、シンクの前から去って行く。
どうやら記憶取り戻したようだ。

「さて、帰りましょうか? 姫君」
「はい。渉さん」

次元空間を開こうとする俺に、姫君が声をかけてきた。

「ありがとうございます」
「……どういたしまして」

姫君からのお礼の言葉に、俺はこういうのも悪くないなと思いつつ返事をすると、次元空間に入るのであった。










「っと、到ちゃ………」
「渉さん、どうされまし……た」

姫君の部屋へと戻った俺達を待ち構えていたのは、こめかみを震わせている秘書の人と全身から怒りのオーラを漂わせて腕を組む親衛隊長だった。

「ちょっと私達と一緒に」
「来いっ!」
「………どうやら、今日の俺は厄日の様だ」

秘書の人と、エクレに肩を掴まれて連れて行かれる中、俺はそう呟いた。
それから先は只々地獄としか言いようがなかった。
その地獄から解放されたのは朝日が覗きだした頃であった。

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IF第9話 戦

ブリオッシュさんの問いかけからしばらくして、それは起きた。

「何だ? この地面を駆けるような音は」

突然聞こえた駆けるような音に、俺は首を傾げながら辺りを見回す。

「おそらくは、セルクルと言う動物が走る音でござるよ」
「セルクル……(馬のようなものか?)」

ブリオッシュさんの口から出てきた単語に、首を傾げつつもそう納得することにした。
音のする方を見ると、明かりのようなものが見えた。
そして、セルクルと言う動物は俺達が立つ場所を通り過て行く
その背中には、人の姿もあった。
それを、俺達は崖の上から眺めていた。

「お館さまー! 渉殿ー!」
「ん?」

そんな時、後ろから聞こえてきたユキカゼさんの声に、俺達は振り返った。
そこには、手を振りながら俺達のいる場所に駆け寄るユキカゼさんと、キツネがいた。
どうでもいいこと(ではないかもしれないが)だがブリオッシュさんは犬、ユキカゼさんは狐を同伴させている。
名前は忘れたが。

「何か面白いものでもございましたか~?」
「おぉ、ユキカゼ。どうやら、戦のようでござるよ」

ユキカゼさんの問いかけに、ブリオッシュさんが答えるが、ここでまた一つ新たな単語が出てきた。

「戦?」
「あ、渉殿は知らなかったですよね」
「ちょうどいい機会ゆえ、見晴らしのいい場所に向かいながら戦について説明するでござるよ」

そう告げると、ブリオッシュさんは見晴らしのいい場所へと移動を始めた。
その道中、俺は戦についての説明を受ける。
その説明を聞いた俺の感想は……

「それって、何と言うアトラクションなんだ?」

だった。
俺のイメージしている戦とは大違いだったことに、驚きを隠せなかった。










見晴らしのいい場所に移動した俺は、さらに驚くことになった。
少し離れた森の方から、まるで花火のように放たれる砲撃。
その轟音や、怒号はまさに戦場でのものだ。
だが、これで死人が出ないのだからすごい物だ。

「これはすごい、暗がりゆえ、誰が誰だか分らぬが若い騎士達が頑張っているでござる」

地面に座っているブリオッシュさんは楽しげに言うと、遠くのものを見るための道具をユキカゼさんに渡す。
俺とユキカゼさんは、立ってその光景を見ていた。

「ですがお館さま。ビスコッティとガレットの戦のようですから、我々も加勢をするべきなのでは?」
「若い者同士、楽しく戦をしているのでござろう。いい大人が邪魔をするのは無粋でござるよ」

それを受け取りながら心配そうに聞くユキカゼさんに、ブリオッシュさんはそう告げると、荷物の中から何かの飲み物を取り出し、盃にそれを注ぐ。

「拙者は、のんびり見物をさせてもらうでござる」

そう言い切ると、ブリオッシュさんは盃に注いだ液体を飲んだ。

(大人……ねえ?)

俺は、すでに180度変わった彼女たちの印象のため、ブリオッシュさんの”大人”という言葉に内心で首を傾げた。

「渉殿、どうしたでござる?」
「何でもない」

俺の心を読んだのか、問いかけてくるユキカゼさんをごまかしつつ、こういう時も腕に抱き着いてくる彼女によくやるよなと思う、俺なのであった。
だが、この時俺達がこの戦と大きくかかわりを持つことになろうとは……まだ知る由もなかった。

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IF第8話 時は流れ

あの魔物の退治から数か月の月日が経った。
あの日から、俺の周りでちょっとした変化があった。
まず一つが……

「さあ、行くでござるよ渉殿!」
「あの……ユキカゼさん?」
「何でござるか? 渉殿」

俺の言葉に、答えるパネトーネさん……ユキカゼさん。
呼び方を変えられた。
パネトーネではなく、ユキカゼと呼ぶように言われたのだ。
断ろうとしたら涙目になられたので”ユキカゼさん”で妥協してもらった。
ちなみに、それに便乗して『だったら拙者もダルキアンさんではなく、ブリオッシュと呼ぶでござるよ』などと言ってきた。
俺は投げやりになっており、ブリオッシュさんと呼ぶことにした。
そして、もう一つが……

「どうして二人は俺に抱き着いている?」
「どうしてって……」
「この方が落ち着くからでござる」

歩いている最中、俺の腕に二人は常に抱きつく様になった。
いや、それが嫌なわけではない。
ただ歩きづらいだけだ。
まあ、戦いのときや食事の時、後は寝る時まではしないが。
まあ、寝ている間に両腕にしがみつかれていたことはあるが。

「ところで、ビスコッティ共和国まであとどのくらいで到着するんだ?」
「そうじゃな……もう2,3日で到着するでござるよ。あそこの方に見える、建物がある場所がビスコッティ共和国でござる」

ブリオッシュさんの指し示す場所には、確かに薄らとではあるが、建物のようなものが見えた。

(ということは、あと少しと言う事か)

「思えば長かったでござるよ」
「約半年ほど経ったよな。俺がここに来てから」

そう、あと少しで俺がここに降り立って、半年という月日が流れたことになる。

「さあ、行くでござるよ。渉殿」
「だから、いい加減腕に抱き着くのはやめ……るわけないか」

俺は内心ため息をついた。
最初見た時は、少し大人な女性という印象を二人から受けたが、今ではその印象は180度変わっている。
それがどういう事なのかは、言わぬが仏だろう。















そして、二日ほど経った日の夜。

「ビスコッティまであと少し、ここでしばらく休憩をするとしよう」
「はい!」

周りが岩に囲まれた場所に到着した俺達は、ブリオッシュさんの提案で休憩を取ることになった。
俺は、周りの景色を見るために、道なりに歩く。
少し歩いた先はかなり開けておりいい景色が広がっていた。
絶景は夜もまたいいというのは、ここに来てからの発見でもあった。

「渉殿か、どうしたでござる?」
「いや、ただ景色を眺めに来ただけ」

先に来ていたブリオッシュさんに、そう答えると、俺は彼女の隣に立った。

「そう言えば、隠密部隊とは一体何をするんだ?」

俺は、今まで気になってた疑問をぶつけることにした。

「特にこれと言って決まったことはないでござるが、拙者たちは魔物を封じて回ることが主な役割ゆえ、これと言って特に何をするという決まりはないでござる」
「なるほど」

ブリオッシュさんの答えに、俺はそう返す。
どういう役割をしているかは分からなかったが、彼女たちの役割は分かった。
やはりと言うべきなのか、魔物の封印が彼女たちの役割なのだろう。

「それに引き替え渉殿は、拙者たちより魔物封じの才があるようにも見受けられる」
「そんな、俺はお二人方に比べれば、まだまだ未熟」

ブリオッシュさんの評価を、俺は首を横に振ってこたえた。
実際問題、俺でも時より危ういことがある。

「確かに魔物”封じ”であるのならば、それは言えるが、魔物を封じるのではなく”浄化”することが出来る渉殿は拙者以上でござるよ」
「………」

ブリオッシュさんの言葉には、妙な引っ掛かりを覚えた。
ちなみに、俺は封じているのではなく浄化をしているのだということが、ブリオッシュさんの言葉だ。
浄化は封じるのより難しいらしい。
しかし、俺にはそのような感覚はない。
人で無くなった時から、俺にはその力が宿っているのだ。
もうとっくにこの感覚が普通になってしまった。

「ちょっとした好奇心で聞くでござるが、渉殿は土地神の類の存在でござるか?」
「………似たような存在です」

ブリオッシュさんの、いつになく真剣な声色に俺はなぜかほぼ正直に答えてしまった。
本来はむやみやたらに、自分の正体を口にしてはいけないのだ。
もとより俺達の存在すら知られてはならいほどだ。
理由はよく分からないが。

「そうでござるか……」

ブリオッシュさんは、静かにそう呟いた。
今の問いかけは何だったのか、それは俺にもよく分からなかった。

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IF第7話 駆けし者、戦いし者

3人称Side

渉が、魔物たちを順調に倒している一方、ダルキアン達は苦戦を強いられていた。

「烈空一文字!!」

居合と共に放たれたダルキアンの紋章剣が、前方を弧状に切り裂く。
それによって、前方にいた魔物を倒すことはできた。
だが……

「グオオオオ!!!」
「閃華烈風!」

ダルキアンの背後から現れた魔物を、ユキカゼがエネルギー状の手裏剣を放って倒して行く。

「魔物自体は、それほど大したことはないでござるが」
「数が多い!」

二人の言葉が、まさに現状を物語っていた。
ダルキアン達に割り振った場所は、魔物の根暗のある場所だったらしく、次から次に魔物が出てきていたのだ。
それは、渉が予想だにもしなかった誤算だった。
それでも二人はそう簡単にやられない。
現れる魔物たちを、次々に倒して行く。
だが、それも少しずつ限界を迎え始めていた。
そして、そんなころを見計らうかのように表れたのが……

「今までの魔物より、若干大きくなってるでござるな」
「は、はい……」

やや大きい魔物だった。
だが、その大きさはせいぜいユキカゼと同じか少しそれを上回るかの境目だ。

「行くでござるよ! ユキカゼ」
「はい! お館さま」

そして二人は一気に動き出した。
魔物が動き出すよりも早く、魔物の背後をとったのだ。

「本来はこういった使い方はしないでござるが。花嵐!!」

近距離から放たれたエネルギーを纏い、金色に光り輝く矢は魔物に命中する。

「グオオオオ!!!」

だが、その一撃は魔物の体勢を崩すだけしかできなかった。
しかし、彼女の表情に焦りはなかった。
なぜなら、本命は別にあるからだ。

「烈空一文字!!」
「グオオオオ!!!?」

ユキカゼがその場を離れたのと同時に、ダルキアンが放った紋章剣が、魔物を切り裂く。
それによって、やや大きい魔物は消えてなくなった。

「これで、全部でござるね」
「そのようでござる。渉殿の方が心配でござるから、助太刀に―――――」

やや大きな魔物を倒したことに安心していた二人は、途中で言葉を詰まらせた。
そして、慌てて後ろを振りむく。
そこにいたのは、彼女たちが対峙していたやや大きめの魔物よりも、一回りほどでかい魔物であった。
彼女たちが気付いた時には、すでに前足を振り上げている所だった。
その足の先端にある鋭い爪ならば、太い木でも一瞬で切り刻めるだろう。

「「ッ!」」

二人は、来るであろう痛みに耐えるように目を閉じた。
だが、二人の耳に聞こえたのは、堅い者同士がぶつかり合う金属音だった。

「ッ!? わ、渉殿!?」

目を開いた二人は、驚きをあらわにする。
なぜならば、そこにいたのが二本の神剣を交差させて振り下ろされる爪とせめぎ合う渉の姿があったからだった。

Side out





「二人の気配は、この方向からのはず!」

俺は、二人の気配を頼りに、走っていた。

「急がないと……リミットブレイク・ブート1!!」

俺は、自分に掛かっている能力封印を1段階解除して、さらに速度を上げた。

(さっき見たのが現実でなければ、それに越したことはない!)

その一心で俺は掛けていた。

(見つけたって、あれはッ!?)

俺の目に飛び込んできたのは、二人を切り裂かんとばかりに振り上げられた前足、そしてそれを見て硬直する二人の姿だった。
それは、前に俺が視た光景とほぼ同じだった。
このままなら、あの二人は……

「させてたまるかぁ!!」

俺は、右足に力を込めると数百mあった距離を一気に駆け抜け、二人の前方に移動した。
間にあった事を喜ぶよりも前に、俺は神剣をもう一本具現化すると、それを交差させて振り下ろされた前足を受け止めた。

「ッ!? わ、渉殿!?」

ダルキアンさんが、驚いた様子で俺の名前を呼ぶ。

「すみません、遅れました。こいつの事は俺に任せて……」

後ろにいる二人に声を掛けながら、俺は両腕に力を込める。
そして……

「下さい!!!」

一気に大きな魔物を押し返した。

「グオオ!?」

あまりの事に魔物が混乱する中、俺は止めを刺す。

「天高く舞い上がれ」

言葉を紡ぎながら、神剣正宗で3,4回ほど斬りつける。
さらにその場から素早く反対側へと移動する。

「点に轟く一筋の光は!」

再び、言葉を切り刻みながら正宗で4,5回切り刻む。
その直後、もう一度反対側も回り込んで正面に立つ。

「絶望の闇を打ち消す光となる!!」

そして、俺は神剣二本を頭上で合わせる。
次の瞬間、二本だった神剣は一本の大きな剣に姿を変えた。

「紋章術、終焉の幻想郷!」

白銀色に光り輝くその剣を俺は、一気に魔物に向けて振り下ろした。

「グオオオオオ!?!?―――――」

それは、魔物を切り裂くだけでは飽き足らず、周辺を白銀の光が覆い尽くした。
しばらくして光が薄らぐと、そこは何も変わらない森林だった。

(倒せた……ようだな)

「渉殿!!」
「うわぁ!?」

突然二人が立っている方向に向いた瞬間に抱き着いてきたパネトーネさんに、俺は思わず声を上げてしまった。

「怖かった……グスッ、本当に怖かったでござるよぅ!!」

涙声で、話すパネトーネさん。
どうやら、いくつもの修羅場を潜り抜けた彼女でも、あの時の恐怖は耐えられなかったようだ。

「大丈夫。もう大丈夫」

俺は、パネトーネさんの背中を泣きやむまで優しくさするのであった。

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IF第6話 魔物との戦い

「っと!」

俺は崖から飛び降りて、静かに着地した。
そして、立ち上がりながら辺りを見る。

「グオオオオオ……」
「おいおい……とんだお出迎えだな」

俺を囲うようにして、犬のような魔物たちが唸り声をあげていた。

「まあ、そうじゃないと張り合いがない」

俺は、こんな絶対的に不利な状況でも、笑っていられた。
何故か……それは、おそらく俺が勝つことはもう疑うべくもなかったからなのか、それとも別の何かがあったのか。
どちらにしろ、俺は神剣を構える。

「華麗に、優雅に朽ち果てろ!」
「グオオオオ!!!」

俺の言葉に反応して、魔物達が一斉に飛び掛かってくる。

「よっと」

それを俺は軽やかなステップで避けると、魔物たちの囲っている輪から抜け出した。

「グオオオ!!!」
「ッと、こっちにもいたか」

抜け出した先には、どっかに身をひそめていた魔物が飛び出してきた。

「行くぞ……紋章術」

俺は、この時のために練習していた、紋章術もどきを使う。

「閃!」

神剣二本を横に振りかぶる。
次の瞬間、轟音と閃光が走った。
それらは、少ししてゆっくり薄らいでいき、やがて元の薄暗い森の光景に戻った。

「魔物たちにはちゃんと聞いているようだ。しかも地形が変わってない」

俺は、その結果にまあまあだなと思いながら、頷く。

「グオオオオ!!!」
「まあ、唯一の欠点は、殲滅しきれない事だが、なっ!」

俺は背後から襲いかかってくる魔物を前方に移動することで躱す。
背後には、先ほど撃ち漏らした魔物がぞろぞろと俺の方に来ていた。

「奏でよう、この歌を」

神剣を二本とも大きく振り上げる。
散らばっている魔物を効率よく殲滅できる位置を探し出す。

(今だ!)

そして、俺はその瞬間を見つけて、一気に動く。

「レクリエム!!」

一気に剣を振り下ろす。
その瞬間、神剣から放たれた白銀の光によって、俺の視界は遮られた。
その光も、時間が経つにつれて徐々に薄くなっていく。
そして、目の前にあったのは、魔物の姿もいた形跡さえもない、ただの森林部だった。

「よし、上出来だ。周囲に魔物は……っと」

俺は慌てて周囲にいるマイナスの気配を探す。
だが、周囲にはそのような気配は感じられなかった。
おそらく、今ので最後だったのだろう。

「ん? これは弓か?」

そんな時、俺が見つけたのは一つの弓だった。
念のために、それを精査すると案の定、邪気が染みついていた。

「ここに放置していたら、また変なのが出てくるよな。仕方ない………レクリエム!」

俺は、もう一度必殺級の神術を行使して、弓を浄化することにした。

「よし、これでどうだろうか……」

俺は、もう一度弓を調べた。
だが、今度は変な気配はしなかった。

「よし、これは戦利品として持って行ってダルキアンさん達と合流を―――っ!?」

弓を手にした瞬間、俺の頭の中に情報が流れ込んでくる。
ゆっくりとだが、人影が見える。
それは、ダルキアンさんとパネトーネさんのように見えた。
二人は、魔物たちと戦っている。
少しばかり大きな魔物を倒した二人の背後から、別の魔物が現れ、そして………

――――魔物に切り刻まれる二人。





「はッ!?」

気が付くと、俺は弓を片手にしゃがみ込んでいた。

「はぁ……はぁ……はぁ」

息切れするほど動いてもいないのにもかかわらず、俺は息を切らしていた。

(今のは、一体)

俺はさっき見た映像のような物に混乱を隠せなかった。
もしかしたらただの夢か、ジョークのようなものかもしれない。
だが、俺の中に微かに嫌な予感として募っていた。

「行ってみるか」

俺は、ゆっくりと立ち上がり、弓を異空間にしまう。
そして俺は、二人の担当区域の方へと駆け出した。
さっきの映像が、単なるジョークのようなものであることを願って。

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