健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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IF第5話 練習の成果と魔物

あれから数日、俺とパネトーネさんとダルキアンさんとでの紋章術の練習は続いていた。

「では、渉殿」
「はい………閃!」

ブリオッシュさんに促され、俺は神剣を振る。
次の瞬間、轟音と共に光に包まれる。
そして、それが薄れ周辺の状況が見えてきた。

「やっと地形が変わらなくなってきたでございますな。さすがは渉殿でござるよ」
「………それはどうも」

完全に嫌味だろと思いながら、お礼をいう事にした。
特訓をするごとに、周辺の地形を大きく変えてしまったため、パネトーネさんの言葉に反論できない。
だが今回は、周辺の地面は多少抉れているが、それほどひどくはない。

「うむ。これも進歩でござるよ」
「ありがとうございます。師匠」

特訓の間だけ、俺はダルキアンさんの事を師匠と呼んでいた。
何故かはわからないが、彼女にはそれほどの威厳のようなものがあるのだ。
それを知ったパネトーネさんも、何故か教えると言い張ったのは、また別の話だ。
その為、僕は彼女たちに教えてもらった紋章術は、少しずつマスターできていた。

「それでは、行くでござる」
「はい! お館さま」

ダルキアンさんの声に、俺達は彼女の後をついて行くのであった。










旅を始めて早7回目の朝を迎えた。
目的地であるビスコッティ共和国までは、まだかなり遠いらしい。
そして、彼女たちの旅の目的。
なぜ彼女たちは旅をするのか。
それが分からなかったが、ようやくそのことが分かる時が訪れた。

「「「ッ!?」」」

”それ”を感じたのは、俺達全員だった。
体中を続々と震え上がらせる負の気配。
それが俺の感じたものだった。

「お館さま」
「うむ………渉殿どうやら魔物の類がこの周辺にいるようでござる」
「なるほど………やっぱりこの気配はそうか」

ダルキアンさんの言葉から、やはり魔物だったようで、俺はそう呟いた。

「渉殿のは、この魔物の気配が分かるのでござるか!?」
「……? 何かおかしいか?」

俺の言葉に慌てた用に聞いてくるパネトーネさんに、俺は首を傾げて聞き返す。

「い、いや。おかしくないでござるよ」
「渉殿、力を貸してくれるでござるか?」

ダルキアンさんが、いつになく真剣な様子で俺に聞いてくる。
だが、俺の答えなど既に決まっていた。

「当然だ。色んな恩が二人にはあるからな。この小野 渉、微力ではあるが、助太刀する」
「うむ、感謝するでござる。では、ユキカゼ、渉殿行くでござるよ!」

そして、俺達は魔物がいるであろう方向に向けて駆けだした。










「これは驚いたでござる」
「ああ、まさか広範囲に散布して生息しているとは」

崖の上から、魔物がいるであろう下の方を見ると、そこには四方八方に魔物がうろついている様子を感じた。
下は森林部、その姿を見ることはできないが、いることは間違いない。

「手分けした方がいいでござるな」
「だったら、こっから半分は俺一人でやる。残りの半分は二人で」

ダルキアンさんの呟きに、俺は神剣を使って位置を示した。

「そ、そんな!?」
「渉殿一人では危険すぎる! ユキカゼと二人で――「馬鹿にしないでください。あんな小物程度に敗れるほど、俺は弱くはありません。それは二人がよく知っていると思いますが」――……分かったでござるよ」
「お館さま!?」

俺の言葉を聞いたダルキアンさんが、俺の提案を認めるとパネトーネさんが驚いた様子でダルさんの名を呼ぶ。

「そのかわり、絶対に生きて合流するでござるよ?」
「分かってるさ。それじゃ、行ってくる」

ダルキアンさんの言葉にそう答え、俺は森林部に飛び降りようとする。

「渉殿!」
「何、ダルキアンさん?」

俺を呼びとめたダルキアンさんの方を見ると、何故か視線を泳がせていた。

「その……気を付けて」
「どうも」

頬を染めながらのその一言に、俺は首を傾げながらも、崖を飛び下りたのであった。
とうとう、俺の最初の戦いが幕を開けようとしていた。

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IF第4話 旅と練習

色々なハプニングがあったが、俺達は何とか出発することが出来た。

「それでは、行くでござるよ」
「はい、お館さまっ」

ダルキアンさんの掛け声に、パネトーネさんは返事をすると、歩き出した。俺はその後ろについて行く。

「それにしても、男手があって助かるでござるよ」
「そうでござる。実はその荷物は微妙に重くて困っていたのでざる」

ダルキアンさんとパネトーネさんの言葉に、俺は『それほどでもないです』と答えた。
俺が背負っているのは、何やら重要なものが入った箱のようなものだ。
確かに、これは二人にしてみれば微妙に重い。
だが男の俺に掛かれば、これは軽い方に入るであろう。
まあ、世界の意志だからだろと言われれば否定はできないが。

「行き先はどこですか?」
「うむ、ビスコッティに戻り、渉殿がここに来た理由を確かめるのでござるよ」
「詳しく言いますと、知り合いの人に事情を聴くだけでありますが」

俺の問いかけに、ダルキアンさんとパネトーネさんが答えた。
そして、俺達は永遠と山道を歩いて行く。










しばらく歩くと、少しだけ開けた場所にたどり着いた。

「少しばかり休憩するでござる」
「お茶を入れますね」

ダルキアンさんの言葉に、パネトーネさんは手際よく俺達にお茶が入った紙コップを差し出した。

「どうも」

俺はお茶を一口啜ると、少しばかり落ち着いたような気がした。

「そういえば」

そんな時、ダルキアンさんが唐突に何かを切り出した。

「渉殿が前に魔物を退治するときに使っていたのは、紋章砲でござるか?」
「いや、違うけど……紋章砲とは?」

ダルキアンさんの問いかけに、俺は効きなれない単語を耳にしたため、それを聞いてみた。

「そうでござったな。良い機会でござるゆえ、紋章砲について教えるでござるよ」

なぜか突然”紋章砲”と言うものについて教わることになった俺は、紙コップを横に置くと立ち上がっているダルキアンさんの横に立つ。

「紋章砲の放ち方は、まず紋章を発動させる」
「えっと……こうですか?」

俺はダルキアンさんのやったように、見よう見まねで手の甲に紋章を浮かべる。
とはいっても、この紋章は俺がいつも使う円陣だが。

「そしてそれを、全身に力を込めるようにして強化する」

ダルキアンさんの後ろに大きな紋章が現れた。
それに倣い、俺も紋章もどきを強化して背後に展開する。

「そして、紋章術の力の源、フロニャ力と自分の命を混ぜながら、それを輝力に変えて武器から一気に解き放つ!」

そう言いながら、ダルキアンさんが剣を振るった瞬間、紫色の閃光が放たれ木をなぎ倒した。

「なるほど、こういう風にですね………閃!」

俺もさっきダルキアンさんがやったように、神剣を振る。
次の瞬間、轟音と共に俺は光に包まれた。

「………」
「………」
「………」

光が薄れていくと、目の前の光景に俺達は何も言葉が出なかった。
なぜならば……

「あ、辺りのものすべてを薙ぎ払うとは……」
「す、すごいでござるよ……渉殿」

顔をひきつらせながらダルキアンさんとパネトーネさんが口を開いた。
俺が立っている場所から、半径50mの範囲にあったものすべてが無くなっていたのだ。

「……改善の余地があるようだ」

俺の呟きに、二人は無言で頷いた。










この後、威力を下げるべく毎晩ダルキアンさん達の特訓されることになった。
そして、その特訓ごとに当たりの地形は大きく変わってしまったのは、言うまでもないであろう。
こうして、俺とダルキアンさん達の旅は続いて行くのであった。

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IF第3話 ハプニング

事故と言う形でフロニャルドと言う世界にやってきた俺は、野宿をすることとなった。
俺は、太陽の光に目を覚ました。

「………何でさ」

俺は思わずそう呟いてしまった。
なぜならば、俺の両肩にはパネトーネさんやダルキアンさんの顔があるのだから。
それは、言うなれば俺が二人に寄り掛かられているようだ。
どうやら、俺が寝た後に、移動したのだろう。

「………」

二人の寝顔が可愛いなと思いつつ、俺は一気に場所をずれた。
寄りかかる場所が無くなったことで、二人は自然に地面へと引き寄せられていくのは当然の事であり、それすなわち……

「ッ!?」
「痛ッ!?」

二人は、地面に倒れた衝撃で目を覚ました。
そして俺の姿を見るなり頬を膨らませた。

「酷いではないか、渉殿」
「そうでござるよ! 拙者が気持ちよく眠っていたでござるのに!」

二人は俺を非難する。

「悪いね。だが、あいにく俺は二人の枕でもないからな」
「むぅー」

俺の言葉に、パネトーネさんが頬を膨らませるが、気にしないようにしておこう。

「まあ、よいでござる。朝ごはんにするでござる」
「分かったでござるよ」

その後、二人は手際よく朝食を用意した。
とはいっても大きなおにぎりが4つだったが。

「渉殿は2個でござる」
「あ、俺は1個でいい。小食派だから」

俺はパネトーネさんの心遣いを断った。
俺だけ2個食べて、他の二人が1個ずつと言うのは、気が進まなかったからだ。
まあ、実際問題俺の場合は霊力が十分にあれば生きていけるから、特に問題はないのだ。

「………ありがとうでござる」

俺の心境が分かったのかわからないのか、パネトーネさんは静かにお礼を言う。
それを見計らって、ダルキアンさんが声を上げる。

「それでは……」
「「「頂きます」」」

そして、俺達は朝食を摂るのであった。
ちなみにあまりの1個のおにぎりだが、二人で仲良く半分にして食べていた。










「ふぅ………」

朝食を終えた俺は、一人でぶらりと歩いていた。

(これからどうするか)

俺の脳裏によぎる考え事はそれだった。
今は、ビスコッティに戻ることが先決だ。
だが、それから先どうするのかが問題だ。
このまま天界に戻るというのも手だ。
だが、せっかくこのような世界に来れたのだ。
ここで過ごしたいと思っても、ばちは当たらないだろう。
だが、体が物質化するのに伴って拒絶反応を起こす場合がある。
その場合は天界に戻らなければいけなくなる。
とはいっても、戻る方法は今の所ないが。

(ま、今考えても仕方がないか)

俺はそう割り切ると、二人と合流するために元来た道を戻った。










「あれ、どこにもいない」

元の場所に戻った俺だったが、そこには誰もいなかった。

「どっかに行ったのかな?」

俺は二人を探すため、草むらの中に入った。
そして、しばらく歩いた時だった。

「あ………」

少しだけ開けた場所に彼女たちはいた。
これで問題は解決した。
今目の前にある非常に重大な問題を除けば……であるが。

「その……なんと言えばいいのでござるか」
「渉殿、その……見られると恥ずかしいでござる」

そう二人は、何も身に纏っていない姿だったのだ。

「わ、悪い!!?」

顔を赤らめながらの二人の言葉に、固まっていた時間が動き出したように、俺は慌てて左方向に駆けだした。

「あ、渉殿! そっちは――――」

パネトーネさんの声の途中で、地面が無くなった。
嫌な予感がした俺は、下を恐る恐る見た。

「おわぁ!?」

下には木々が広がっていた。
どうやら、ここは崖だったようだ。
そんな事を感じながら、俺は落下する。

「吉宗!」

俺はとっさに神剣の吉宗を崖に向けて投げる。
それはうまく突き刺さったようだ。
だが、いつ外れるかもわからない。
なので、俺が取った行動は

「はああああああ!!!」

吉宗をばねにして思いっきり飛ぶことだった。
これは吉宗に霊力の糸を付けておけば出来る事だ。
そして、あっという間に崖を飛び越えた俺は、朝食を摂った場所に着地した。

「渉殿~! 大丈夫でござるか~!?」
「大丈夫だ!! 元の場所に戻ったから心配しないで!!」

大きな声で心配そうに声をかけてくれる二人に、俺も大きな声で答えた。

(全く、今日は悪運の日か?)

俺は心の中で、愚痴を吐く。
ちなみに、あの時に見たことは全力で忘れることにした。

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IF第2話 事情説明と旅の始まり

あの後、俺が目覚めた場所に移動して、パネトーネさんと、ダルキアンさんの二人に話を聞いた。
それによると、俺が戦っていた怪物は、魔物と言うらしい。
そして、彼女たちはその魔物を狩る狩人のようなものらしい。

「あなた方の事はよく分かりました。俺は、どうしてここに?」
「それでじゃな、たまたまここに戻っていたら、渉殿が倒れていたのでござる」
「あの辺りは魔物の類が出やすい土地……だから、私たちがここまで運んで守っていたでござるよ」

俺の問いかけに、パネトーネさんとダルキアンさんの二人が答えた。
どうやら、あの後気を失った俺が辿り着いたのが、あそこだったようだ。
それにしても、よく魔物が出てこなかったよな。
眠っている間に襲われて強制帰還だ、なんてことになったら世界の意志として恥ずかしい。

「そうか……二人ともありがとう」

なので、俺は二人にお礼を言った。
”ありがとう”その5文字の言葉は、生前に何度も使っていた。
だが、この時ほど心がこもっていたのは初めてだろう。

「気にしなくていいでござるよ」
「して、渉殿の方も事情を聴かせて貰いたい」

俺のお礼に応えるパネトーネさんに続いて、ダルキアンさんが話を切りだした。

「分かりました」

そして、俺は困らない程度で事情を説明した。
色々な世界を旅する者で、その移動中に変な陣に飲み込まれて気づいたらここにいた。
これが、俺の二人にした説明だった。

「そうであったか」
「おそらくは、渉殿の話が間違いでなければそれは、勇者召喚用の紋章のようじゃな」
「勇者召喚?」

聞きなれない単語に、俺は思わず聞き返してしまった。

「ああ、そうだったでござるな。勇者召喚と言うのは、所謂助っ人のようなものの事でござる。それを呼ぶためのもの儀式が勇者召喚でござるよ」

そんな俺に、パネトーネさんが説明してくれた。
何の助っ人なのかはよく分からないが、まあ今はそれで納得しておくのが良いだろう。

「その紋章じゃが、どのようなものであったか覚えてはおらぬでござるか?」
「えっと………ちょっと待ってください」

ダルキアンさんの問いかけに、俺は近くにあった焚火に使っていた木の枝を取ると、それを浸かって地面にあの時に見た紋章を描く。

「これでどうです?」
「見事じゃ」
「まるで本物そっくりでござるよ!」

出来上がった絵を見た二人が、口々に賞賛する。
そして、真剣な面持ちで紋章を見た。

「ようこそフロニャルド、おいでませビスコッティ」
「注意、これは勇者召喚です。召喚されると帰れません」

どうやら紋章に書かれている文字なのだろうか、二人が読み始めた。

「拒否する場合はこの紋章を踏まないで下さい」

意味のほうはさっぱりわからないが、帰れない事だけは分かった。

「すまぬが、この紋章はビスコッティのものと見て間違いがないでござる」
「ビスコッティには知り合いが何人もいるでござるから、任せてほしいでござるよ」

二人の説明はよく分からないが、どうやらその”ビスコッティ”という国のせいらしい。

「この世界を出るには、ビスコッティに行くのが先決でござる。拙者らもそこに向かってる故、もしよければ一緒に行かぬか?」
「駄目でござるか?」

ダルキアンさんの申し出は非常にありがたい。
こんな右も左も分からない世界で、一人になったら永遠に迷子になる。
だがしかし、パネトーネさんや、そんな捨て犬(捨て狐?)のような目で俺の事を見ないでくれ。

「お願いします」
「うむ、こちらこそでござる」
「あー! お館さま! 拙者も渉殿と握手をするでござる!」

俺とダルキアンさんさんが握手をしているのを見たパネトーネさんが、ジャンプしながら抗議していた。
何だろう……今パネトーネさんの精神年齢が、5,6歳ぐらい下がったように見えたのは。
その後、俺とパネトーネさんも(強制的に)握手をした。

「渉殿は、一緒に寝ないでござるか?」
「自分はここで結構です」

ダルキアンさんの言葉に、俺はそう答えた。
樹に寄り掛かるダルキアンさんとパネトーネさんそして、俺はそこから少し離れた場所で胡坐をかいていた。

「膝枕でもしてあげようと思ったのでござるが、どうでござる?」
「結構です」

どことなく何かを企んでいるような笑みを浮かべるダルキアンさんの提案を、俺はバッサリと切り捨てた。

「むぅ……」

そんな俺に、ダルキアンさんは頬を膨らませてこっちをじっと見てくる。
その視線にも、俺は微動だにしない。
すると、諦めたのか眠ったようだ。

(俺も寝るか)

それを確認した俺も、寝ることにした。
明日から来るであろう、長い旅を予想しながら。

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IF第1話 出会い

「ん……」

俺が目を覚ますと、そこは全く知らない森の中だった。
近くには焚火があった事から、俺以外にも人がいた事は確かだろう。

「取りあえず、ここから離れるか」

どうしてここにいるのかはさっぱりわからないが、偶然ここにいたのかもしれなければ、何者かが俺を連れ去ったと考えられる。
そして俺は、その場を離れるのであった。










左右には雑草のようなものが生えている、森の道をしばらく歩いた時だった。

「ッ!?」

何者かの鋭い視線を感じた。
これは、殺気!!
それを理解した瞬間、草を踏みしめる音がしたため、俺はその場を飛びのいた。
そして180度回って後ろの方を見た。
そこにいたのは……

「グオオオオオオ」

雄たけびを上げる、月明かりに照らされた黒っぽい怪物だった。
目が赤く輝いているのが、恐ろしさに醸し出していた。
しかも、数は軽く10を超えていた。

「この怪物……忌わしい気があるな」

怪物から感じ取った邪気に、俺は即座に気付いた。

(どう見ても敵対行動だし、邪気を放っているのであれば浄化をすることが出来るな)

ノヴァから、敵対行動と邪気を放っていない場合の、必殺級の魔法行使は禁止されているのだ。

「それでは始めますか。吉宗、正宗!」

俺は、自分の持つ武器を呼び出す。
相手の攻撃を防ぐ楯の役割の”吉宗”、相手に攻撃を仕掛ける矛の役割の”正宗”の二本ので一本という不思議な剣だ。

「グオオ!!」

その剣を見た瞬間、怪物が一斉に飛び掛かってくる。
俺はそれを横に移動して回避する。

「我と共に奏でよう。レクリエム!!」

そして一気に怪物達に向けて、白く光り輝く剣を振り下ろす。
その瞬間、俺の視界は”白”一色に包まれた。
聞こえるのは、怪物たちの断末魔だった。
やがて光が晴れると、そこに怪物たちの姿がなかった。

「ふぅ……どうやら、終わったようだな」

それを確認した俺は一息つきながら呟いた。
剣はしばらく出しておこう。
そして、もう一度歩き出そうとした時だった。

「そこにいる方~!!」
「待ってほしいでござる!!」

俺の背後から掛けられた声に、俺は振り返った。
そこには、片手を振って向かってきている金髪の少女に、紫色の髪をした女性がいた。
いや、それは問題ではない。
一番の問題は……

(あれって……耳だよな?)

二人の頭には動物の耳のようなものがついていたのだ。
最近はやりのコスプレか?

「はぁ……はぁ」
「ようやく、見つけたでござる」

俺の前にたどり着いた二人は軽く息をきらせていた。
そんな時、俺は気付いた。
二人の背後に俺が相手にした怪物が忍び寄っていることに。

「ッ!! 二人とも、伏せろ!!」
「「っ!?」」

俺の叫び声に驚きつつも、二人は頭を伏せた。

「グオオオオオ!!!」

その次の瞬間、まるで親の仇のように俺に飛びかかってきた。

(今の状況で縦振りのレクリエムは出来ない。ならば)

俺は即座に判断をすると、吉宗と正宗を重ね合わせる。
神剣は、一瞬光を発すると、その姿を弓矢に変える。

「貫け、光矢!」

怪物に照準を合わせ、さらに霊力を込め俺は白銀の光が纏った矢を射た。

「グオオオオオオオ!!??」

まるで断末魔のごとく、貫かれた怪物は消滅した。

「ふん、さっきので浄化されてれば苦しまなかったものを」
「お見事でござる」

静かに呟く俺に賭けられた声は、称賛のものだった。

「二人ともお怪我は?」
「拙者はないでござる」
「私もでござるよ」

紫色の犬耳が生えた女性に続いて、金色のキツネ耳が生えている少女が答えに、俺はほっと胸を撫で下ろした。

「それはよかった。美人な女性に怪我でもさせたら、大変だからな」

そう言ったのは、ノヴァから”美人な女子に怪我をさせたらそのものは死刑物じゃ”と言われていたからだ。

「「び、美人///」」

しかし、二人はなぜか頬を赤らめていた。

「ところで……だ」
「な、何でござるか?」

未だに頬が赤い女性は俺の言葉に、聞いてきた。

「俺は、小野 渉。あなた達は?」
「あ……」

二人とも、自己紹介がまだだった事に気付いたのか、はっとした様子で顔を見合わせていた。

「これは失礼した。拙者はブリオッシュ・ダルキアンと申す」
「私は、ユキカゼ・パネトーネと申します」

これが、今後俺の人生に大きな変化をもたらす人物たちとの出会いだった。

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