色々なハプニングがあったが、俺達は何とか出発することが出来た。
「それでは、行くでござるよ」
「はい、お館さまっ」
ダルキアンさんの掛け声に、パネトーネさんは返事をすると、歩き出した。俺はその後ろについて行く。
「それにしても、男手があって助かるでござるよ」
「そうでござる。実はその荷物は微妙に重くて困っていたのでざる」
ダルキアンさんとパネトーネさんの言葉に、俺は『それほどでもないです』と答えた。
俺が背負っているのは、何やら重要なものが入った箱のようなものだ。
確かに、これは二人にしてみれば微妙に重い。
だが男の俺に掛かれば、これは軽い方に入るであろう。
まあ、世界の意志だからだろと言われれば否定はできないが。
「行き先はどこですか?」
「うむ、ビスコッティに戻り、渉殿がここに来た理由を確かめるのでござるよ」
「詳しく言いますと、知り合いの人に事情を聴くだけでありますが」
俺の問いかけに、ダルキアンさんとパネトーネさんが答えた。
そして、俺達は永遠と山道を歩いて行く。
しばらく歩くと、少しだけ開けた場所にたどり着いた。
「少しばかり休憩するでござる」
「お茶を入れますね」
ダルキアンさんの言葉に、パネトーネさんは手際よく俺達にお茶が入った紙コップを差し出した。
「どうも」
俺はお茶を一口啜ると、少しばかり落ち着いたような気がした。
「そういえば」
そんな時、ダルキアンさんが唐突に何かを切り出した。
「渉殿が前に魔物を退治するときに使っていたのは、紋章砲でござるか?」
「いや、違うけど……紋章砲とは?」
ダルキアンさんの問いかけに、俺は効きなれない単語を耳にしたため、それを聞いてみた。
「そうでござったな。良い機会でござるゆえ、紋章砲について教えるでござるよ」
なぜか突然”紋章砲”と言うものについて教わることになった俺は、紙コップを横に置くと立ち上がっているダルキアンさんの横に立つ。
「紋章砲の放ち方は、まず紋章を発動させる」
「えっと……こうですか?」
俺はダルキアンさんのやったように、見よう見まねで手の甲に紋章を浮かべる。
とはいっても、この紋章は俺がいつも使う円陣だが。
「そしてそれを、全身に力を込めるようにして強化する」
ダルキアンさんの後ろに大きな紋章が現れた。
それに倣い、俺も紋章もどきを強化して背後に展開する。
「そして、紋章術の力の源、フロニャ力と自分の命を混ぜながら、それを輝力に変えて武器から一気に解き放つ!」
そう言いながら、ダルキアンさんが剣を振るった瞬間、紫色の閃光が放たれ木をなぎ倒した。
「なるほど、こういう風にですね………閃!」
俺もさっきダルキアンさんがやったように、神剣を振る。
次の瞬間、轟音と共に俺は光に包まれた。
「………」
「………」
「………」
光が薄れていくと、目の前の光景に俺達は何も言葉が出なかった。
なぜならば……
「あ、辺りのものすべてを薙ぎ払うとは……」
「す、すごいでござるよ……渉殿」
顔をひきつらせながらダルキアンさんとパネトーネさんが口を開いた。
俺が立っている場所から、半径50mの範囲にあったものすべてが無くなっていたのだ。
「……改善の余地があるようだ」
俺の呟きに、二人は無言で頷いた。
この後、威力を下げるべく毎晩ダルキアンさん達の特訓されることになった。
そして、その特訓ごとに当たりの地形は大きく変わってしまったのは、言うまでもないであろう。
こうして、俺とダルキアンさん達の旅は続いて行くのであった。
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