事故と言う形でフロニャルドと言う世界にやってきた俺は、野宿をすることとなった。
俺は、太陽の光に目を覚ました。
「………何でさ」
俺は思わずそう呟いてしまった。
なぜならば、俺の両肩にはパネトーネさんやダルキアンさんの顔があるのだから。
それは、言うなれば俺が二人に寄り掛かられているようだ。
どうやら、俺が寝た後に、移動したのだろう。
「………」
二人の寝顔が可愛いなと思いつつ、俺は一気に場所をずれた。
寄りかかる場所が無くなったことで、二人は自然に地面へと引き寄せられていくのは当然の事であり、それすなわち……
「ッ!?」
「痛ッ!?」
二人は、地面に倒れた衝撃で目を覚ました。
そして俺の姿を見るなり頬を膨らませた。
「酷いではないか、渉殿」
「そうでござるよ! 拙者が気持ちよく眠っていたでござるのに!」
二人は俺を非難する。
「悪いね。だが、あいにく俺は二人の枕でもないからな」
「むぅー」
俺の言葉に、パネトーネさんが頬を膨らませるが、気にしないようにしておこう。
「まあ、よいでござる。朝ごはんにするでござる」
「分かったでござるよ」
その後、二人は手際よく朝食を用意した。
とはいっても大きなおにぎりが4つだったが。
「渉殿は2個でござる」
「あ、俺は1個でいい。小食派だから」
俺はパネトーネさんの心遣いを断った。
俺だけ2個食べて、他の二人が1個ずつと言うのは、気が進まなかったからだ。
まあ、実際問題俺の場合は霊力が十分にあれば生きていけるから、特に問題はないのだ。
「………ありがとうでござる」
俺の心境が分かったのかわからないのか、パネトーネさんは静かにお礼を言う。
それを見計らって、ダルキアンさんが声を上げる。
「それでは……」
「「「頂きます」」」
そして、俺達は朝食を摂るのであった。
ちなみにあまりの1個のおにぎりだが、二人で仲良く半分にして食べていた。
「ふぅ………」
朝食を終えた俺は、一人でぶらりと歩いていた。
(これからどうするか)
俺の脳裏によぎる考え事はそれだった。
今は、ビスコッティに戻ることが先決だ。
だが、それから先どうするのかが問題だ。
このまま天界に戻るというのも手だ。
だが、せっかくこのような世界に来れたのだ。
ここで過ごしたいと思っても、ばちは当たらないだろう。
だが、体が物質化するのに伴って拒絶反応を起こす場合がある。
その場合は天界に戻らなければいけなくなる。
とはいっても、戻る方法は今の所ないが。
(ま、今考えても仕方がないか)
俺はそう割り切ると、二人と合流するために元来た道を戻った。
「あれ、どこにもいない」
元の場所に戻った俺だったが、そこには誰もいなかった。
「どっかに行ったのかな?」
俺は二人を探すため、草むらの中に入った。
そして、しばらく歩いた時だった。
「あ………」
少しだけ開けた場所に彼女たちはいた。
これで問題は解決した。
今目の前にある非常に重大な問題を除けば……であるが。
「その……なんと言えばいいのでござるか」
「渉殿、その……見られると恥ずかしいでござる」
そう二人は、何も身に纏っていない姿だったのだ。
「わ、悪い!!?」
顔を赤らめながらの二人の言葉に、固まっていた時間が動き出したように、俺は慌てて左方向に駆けだした。
「あ、渉殿! そっちは――――」
パネトーネさんの声の途中で、地面が無くなった。
嫌な予感がした俺は、下を恐る恐る見た。
「おわぁ!?」
下には木々が広がっていた。
どうやら、ここは崖だったようだ。
そんな事を感じながら、俺は落下する。
「吉宗!」
俺はとっさに神剣の吉宗を崖に向けて投げる。
それはうまく突き刺さったようだ。
だが、いつ外れるかもわからない。
なので、俺が取った行動は
「はああああああ!!!」
吉宗をばねにして思いっきり飛ぶことだった。
これは吉宗に霊力の糸を付けておけば出来る事だ。
そして、あっという間に崖を飛び越えた俺は、朝食を摂った場所に着地した。
「渉殿~! 大丈夫でござるか~!?」
「大丈夫だ!! 元の場所に戻ったから心配しないで!!」
大きな声で心配そうに声をかけてくれる二人に、俺も大きな声で答えた。
(全く、今日は悪運の日か?)
俺は心の中で、愚痴を吐く。
ちなみに、あの時に見たことは全力で忘れることにした。
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