シンクが送還された次の日の朝。
フィリアンノ城はいつも以上に静かだった。
「静かな場所が好きだとは言え、これはな………」
静かすぎると悩んでいた時だった。
「あ、渉さん!!」
「リコッタ。大声出して一体どうしたんだ? しかもこんな朝っぱらから」
一人考え事をしていると、大きな声で俺の名前を呼びながら駆け寄ってくるリコッタの姿があった。
「大変………大変なのでありますよ!」
「もしかして敵襲か!?」
リコッタの慌てぶりから想像して、聞いた。
「ち……違うで…あります」
「あー、とりあえず息を整えて」
俺は、何があったのかを聞きたい気持ちを抑えて、リコッタの息が整うのを待った。
「それで、何があったんだ?」
それからしばらくして息を整えたリコッタに、俺はもう一度訪ねた。
「勇者さまの再召喚が、可能になるのであります!!」
「何!?」
リコッタが嬉しそうに飛び跳ねながら言われた言葉に、俺は驚きを隠せなかった。
「詳しく聞かせてくれ!」
「実はですね――――」
そして、リコッタは経緯を話してくれた。
送還の儀をした勇者をもう一度再召喚する方法が記された手紙が見つかったらしい。
その手紙には、勇者の再召喚の条件が記されていた。
それが最初の帰還から再召喚までは、91日以上の時間を空ける事。
次に召喚主以外の3名の者に、もう一度ここに来ることの制約をして勇者が身に着けていた品を預けておくこと。
そして最後に、召喚主に対して、制約の品と書を手渡しておくことの3つを満たさなければいけないらしいが、シンクはこれを全部満たしていたらしいのだ。
「これって奇跡か? 何だかうまくいきすぎているような気が」
「た、たぶん奇跡であると思いますよ」
俺の疑問に、リコッタは苦笑いを浮かべながら答えた。
と言うより、奇跡としたらすごい確率だぞ。
「それでですね、姫様が勇者さまにパラディオンを送るらしいです」
「あ、だったら………」
俺は、どこからともなく紙とペンを取り出すと、さらさらとフロニャルドの文字で文を書いていく。
「これも同封して貰うように、姫君に頼んでもらっていいかな?」
「勿論であります!」
リコッタは、お辞儀をして二つに折りたたんだ紙を持って去って行った。
(何ともまあ、運のいい奴だこと)
俺は、心の中で苦笑いを浮かべるのであった。
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