シンクを出迎えに言った俺は会う事もなく、フィリアンノ城まで来ていた。
そこで、エクレを探してシンクの居場所を聞いたのだが……
「はい!? エクレ、もう一回」
「だから、へっぽこ勇者はもう出たと言っている!!」
そんな答えが返ってきたのだ。
俺は慌てて元来た道を引き返す。
「あ、おい!!」
エクレの制止も聞かずに。
「………」
引き返したのはいいが、俺はさらに困った状況に立たされていた。
「ここどこ?」
そう、道に迷ったのだ。
どうやらどこかで曲がる場所を間違えたようだ。
戻ろうにも、来た道も忘れてしまった。
つまりは、完全に迷子状態だ。
「……歩くか」
俺はそう自分に言い聞かせると、ただひたすらに歩いた。
「ん?」
しばらく歩いた俺は、ある音を聞いた。
そっちの方向に走った。
「川だ!!」
そう、そこにあったのは川だった。
そして俺は思い出した。
ダルキアン卿と釣りをした場所が川であった事を。
「ここを辿って行けば、目的地に到着する!!」
俺はそう思い川岸に降りると、上流に向かって駆けた。
「なんで、こうなる」
しばらく進むと、川岸はなくなっていたのだ。
しかも上に行こうにも崖のようになっていて上がれない。
身体能力を駆使すれば行ける高さだが、今の状態ではあまりそう言うのを使いたくはないので、俺はしょうがなく川の中に入って進むことにした。
………とても冷たい。
そうしてさらに進んだ時だった。
「グオオオオオオ!!!」
「うわぁ!?」
突然川から飛び上がったのは、ものすごい大きさの変な魚みたいな生き物だった。
しかもそいつは俺をまるで飲み込まんとする迫力で口を広げていた。
「吉宗!!」
「グオオオオオオ!!!」
俺は吉宗を右飛んで避けながら魚に向けて投げつけた。
それは見事魚の腹部分に命中した。
そして俺は……
「わぷ!?」
全身ずぶ濡れになった。
一応吉宗は魚や木などを切ることはできないので、一応大丈夫だ。
それにもしかしたら食材になるかもしれないと思い、吉宗に俺が生成したロープをくくりつけて、引きずるように運ぶ。
それに伴って俺の足取りもさらに重くなった。
そして、俺は上流に向けて進むのであった。
3人称Side
場所は変わってダルキアンが釣りをしている場所。
そこには、シンクとダルキアンの二人の姿があった。
「え!? 渉がこっちに言ったんですか?!」
「うむ、そうでござるのだが、勇者殿は会ってはいないようでござるな」
シンクの驚きようからそう捉えたダルキアンが顎に手を当てて考え込んだ。
「もしや渉殿は裏道を通られたでござるか?」
「裏道?」
ダルキアンの言葉に、シンクが首を傾げた。
「うむ、勇者殿が来られた道が主流でござるが、途中の分かれ道を来られた方とは逆に行くと裏道につながるのでござる。おそらく渉殿はそっちを通られたのかと」
「た、大変! すぐに探さないと!!」
シンクは慌てて立ち上がる。
そう、手にしていた釣り道具を手放して。
「痛っ!? 誰だ!! こんなものを落とした奴は!!」
「この声は……」
突然聞こえた声に驚いた二人は、あわてて声のした方向に向くがそこには誰もいない。
何せ地面がない崖なのだ。
宙に浮かんでいない限り、そこに誰もいないのは当然のことだ。
「こっちだ、こっち!」
「渉!!?」
再度発せられた声に、二人は下に流れる川を覗き込んだ。
そこには、川の中で覗き込む二人を睨みつけている、渉の姿があった。
Side out
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