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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第8話 お約束の

召喚台からお城の方まで戻ると、辺りは暗くなっていた。

「姫様のコンサートに汗臭い姿でこられても困る。コンサート前に風呂を使って来い」
「風呂ってどこで?」

エクレールの指示にシンクがお風呂の場所を尋ねる。

「案内図もありますし、中の人間に聞けばわかるでございますよ」

リコッタの説明に、俺達は納得した。
そして俺達はお風呂場へと向かったのだが……










「誰もいないんだけど」
「………」

お城の中には誰もいなかった。
案内図らしきものもあることにはあったが、字が読めない。

「ねえ、渉。みんなコンサートの準備で忙しいのかな?」
「さぁな。というより、風呂場ってどこにあるんだ?」

シンクの疑問に、俺は適当に答えると風呂場を探す。
あれからかれこれ数十分はお風呂場を探し回っている。

(あ、そう言えば異国の字を読めるようになる術があるんだった)

俺はいまさらな事を思い出した。
異世界に行くときに字が読めないのは、非常に危険だ。
よって字が読めるようにする神術があるのだ。
それを俺は忘れていた。

(………掛けておこ)

俺は気を取り直して神術をかけた。
これでこの世界の文字は俺の知る言語になるはずだ。

「ん? あれかな?」

そんな中、シンクが立ち止まりどこかを見ていた。。
そこにはなにやら大きな建物がある。

「とりあえず行ってみるか」
「そうだね」

舗装された道を小走りで進むと沿道が俺達の動きに合わせて光っていった。
本当にここの文化レベルがわからない。
すごいんだか、そうでないんだか……。
なかは明るく解放的な空間になっていた
奥の方は敷居で遮ってあり、その向こうにも何かがありそうだった。

「あ、ロッカー。イエス! 大正解!」

テンション高めに喜ぶシンクをよそに、俺は服を脱いでいく。
そして神術で創造したタオルを腰に巻くと、浴場の入り口の張り紙に目を通した。

そこにはこう書かれていた。

『Open spa. This time for ladies only』

(なんで英語なんだよ)

どうやら翻訳の指示を間違えていたらしい。
直訳すると『大浴場。この時間は女性専用』と記されていた。

(下の方にも何か書いてある)

張り紙の様な紙に誰かの絵が描かれていて、再び英語が書かれていた。

『In miruhiore now』

(ミルヒオレが中にいます……どういう意味だ)

「どうしたの難しそうな顔をして。早く入ろうよ」

俺は首傾げていると突然シンクに手を取られた。

「え、あ、おい!!」
「ひゃっほぉー!」

俺は突然の事になすすべもなく大浴場へと強制的に連れていかれた。
もう嫌な予感しかしない










「うわーすごいやー。露天だ―」

確かに中はすごかった。
横には数本の柱が立っていて、中世のヨーロッパに来たような印象を受けた。
そんな中、俺とシンクは階段を下りて行く。
すると、シャワーの音がした。

「あれ? 先客さんかな? って、どうして渉は後ろを向くの?」
「………」

突然後ろを向いた俺にシンクが聞いてくるが、俺は何も答えない。
俺はシンクを浴場から連れ出そうとするが、シンクは音のした方に近寄って行く。
そして……

「勇者様?」
「「………」」

一瞬静かになった。
俺は振り向かないとばかりに出口の方を見続ける。
そしてその静寂は桶が地面に落ちる音で一気に消え去った。

「きゃぁ!」
「うわぁ! 見てません! 何も見てません!!」

慌てた様子で騒ぐシンク。
俺はため息も出なかった。
って、そう言えば俺もここにいるんだからシンクの共犯!?

「すみません。勇者さまの前でこんなはしたない」

(あんたが謝るのかい!!)

俺は心の中で突っ込む。

「え、いやあの僕、まさか人がいるだなんて……まさか姫様がいるなどと思わなくて、本当にすみません」

シンクはそう言いながら俺の横まで移動すると、地面に落ちた桶に足を取られた。

「うわぁ!?」

そして俺を巻き込んでお湯の中に落ちた。
俺はすぐに後ろ向きで浮かび上がった。

「ごめんなさい、私普段はこの大浴場には入れない物ですから、こういう時ぐらいはって」
「えっと、こっちも色々とすみません」

俺は出鼻をくじかれながらもなんとか謝れた。
諸悪の根源のシンクはお湯の中に沈んでいた。

「あ、あの私もう上がりますので、勇者さまたちはどうぞごゆっくり!!」

そう言ってその人は去って行った。

「ぷは!!」

沈んでいたシンクは思いっきり立ち上がった。

「シンク!!」
「あ、あの、勇者さま」

俺が怒り心頭に叫ぶのと同時に声がした。

「は、はい!」

声のした方を見ると、そこにはバスタオルを巻いた桃色の髪をした少女の姿があった。
この時、俺は初めて少女の姿を見たのだ。

「召喚の事とか、これからの事とか。勇者さまたちにお話ししたいこととかいっぱいあるんです。ですから、コンサートが終わったら少しお時間頂けますか?」
「は、はい! それはもちろん」
「ありがとうございます。また後程」

そして少女は去って行った。

「はぁ」
「シンク、貴様」

俺はシンクを睨みつける。

「な、何かな?」
「明日鍛錬に付き合え!! 徹底的にしごいてくれる!!」

俺の機嫌も最悪な状態だ。

「そ、そう言えば、ここ女湯じゃ……ないよね?」
「それはな――――」

俺が答えようとした時だった。

「きゃああ!!」

突然何かが割れるような音と共に、少女の悲鳴が響き渡った。

「姫様!」
「ッ!?」

俺とシンクはほぼ同時に浴場を出る。
そして素早く礼装に身を包むと、外に飛び出した。
外に出ると人の気配がした。
そこは……

「上か!!」

大きな声でそう叫びながら、上を見ると屋根の部分に三人の人影があった。

「われら、ガレット獅子団領!」
「ガウ様直属秘密諜報部隊!」
「「「ジェノワーズ!!」」」

色付きの煙を出し、派手な登場をしたのはガレット軍の奴らのようだ。

「姫様!」
「ビスコッティの勇者二人殿。あなたたちの大事な姫様は我々が攫わせていただきます」

黒い髪をした少女が淡々と告げた。
俺まで勇者にされているのはあれだが。
そして少女が手に抱きかかえているのが姫様なのだろう。
その姫様はさっきまで大浴場にいた少女だったが。

(と言うより、俺と姫様とは初対面なんだが?)

「うちらはミオン砦で待ってるからなあ」
「姫様がコンサートで歌われる時間まであと一刻半。無事助けにこられますか?」

そんな事を突っ込む間もなく、どんどんと話を進めていく三人。

「つまり大陸協定に基づいて要人誘拐奪還作戦を開始させていただきたいと思います。こちらの兵力は200。ガウル様直下の精鋭部隊」
「で、ガウル様は勇者様のどちらかとの一騎打ちをご所望です」
「勇者さんが断ったら、姫様がどうなるか」

(どいつもこいつも……)

俺の中で何かが切れて何かが目覚めた。

「受けてたつに決まってる! 僕は姫様に呼んでもらったビスコッティの勇者シンクだ! どこの誰とだって、戦ってやる!!」
「上等だ!! 貴様ら諸共、この小野 渉が灰にしてくれる!!!」

なのでそう叫んでしまった。
こうして、姫様奪回戦は幕を開けてしまったのである。

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