クラフティが大きな斧をこちらに向けて振りかざす。
「はあ!!」
「炎天の輝きよ、我らを守りたまえ」
俺はそれを目の前に防御壁を展開させるだけで受け止める。
「なッ!?」
「っふ!」
驚く彼女に神剣を振りかぶる。
だが、感触がない。
どうやら避けたようだ。
しかしこちらは一人ではない!
「エクレール!! 今だ!!」
「分かって――――」
エクレールの前方には、複数のナイフを手にしたヴィノカカオの姿があった。
彼女もそれを認識している。
そして、それは一斉に放たれた。
俺の方は壁によって守られているため大丈夫だが、エクレールの方が心配だ。
「ベール」
「はーい」
ヴィノカカオの呼びかけに、ファーブルトンが矢を射る。
「させるかぁ!!」
「な!?」
俺は即座に展開した防御壁で防ごうとするが、中々の威力で押しつぶされそうになる。
なので、それを上空の方にベクトルを動かすことで、なんとか直撃は回避し俺達は体勢を整えた。
(三人の連携はほぼ完ぺき。これを崩さない限り勝利は難しい。それにここは大技を出したりすれば周りにけが人を出す可能性もある)
状況は悪いの一言だ。
今やるべきことは、この三人の連携を崩すことだ。
(崩すは無理だが隔離は出来るか)
俺はある術を思い出した。
それは本来、閉じ込めるための物だが、隔離するには十分の物だ。
「エクレール、これから俺が連続攻撃を仕掛けその後に二人を隔離させる。それまでのフォロー、頼めるか?」
「そんなこと、できる訳が………まあいい、渉の作戦にかけてみよう」
エクレールは渋々と言った様子で、俺の提案をのんでくれた。
「さぁて、お三方よ、防御と命乞いでもしておけ! 世界よ、我が言葉に耳を傾けよ」
俺は詠唱を始める。
「この場に剣の雨を降らしたまえ。行け、レインソード」
「ッ!?」
俺の一言共に放たれた無数の剣は、三人に容赦なく襲いかかる。
「すごいけど」
「無駄」
「ですわよ!」
三人はそれぞれの武器でその剣を防いでいく。
だが、それは俺にとっては一種のジャブだった。
「世界よ、我が言葉を聞きたまえ。我がいる場所の者達二名を、隔離したまえ」
「なッ!?」
「うそ!?」
俺がやったのは空間隔離。
要するに、三人を隔離したのだ。
俺の前にはクラフティとファーブルトンの二名、エクレールの前にはヴィノカカオがいる。
「引っかかったな。三人は最強だけど、分断されれば大したことはなくなる。ちなみにその壁はどんなに強い攻撃をしても壊すことは不可能だ」
「なるほど、やりますね」
俺の作戦に、そう言ってくる。
はっきし言って卑怯な手ではあるが、手段は選んでいられないのだ。
「では、始めましょうか。その幸せ、奪います。ロストハピネス!」
俺は今いる空間に宿るフロニャ力の力を吸収した。
それを使い、俺の防御力をさらに高め、二人の防御力を低くしたのだ。
「おりゃああああ!!」
「よっと」
「隙だらけですよ」
「ほいっと!」
二人の攻撃を、俺は余裕に躱していく。
躱すだけなら絶対に問題はない。
だが……
「躱してるだけじゃうちらは倒れへんで」
「だろうな。だからここで切り札を使わせてもらう」
クラフティの言葉に、俺はそう答えると集中した。
使うのは紋章術。
(俺は使ったことがない。だが、気合と根性と運でやってやるさ!)
俺はそう意気込むと、いつもと同じ感覚で自分の手に霊力を集める。
すると、俺の背後に明かりが見えた。
「行きます」
成功したと推測して、俺は次のステップに行く。
銀色に光り輝く二本の神剣を動かしてエネルギーをためる。
そしてエネルギーが最高レベルになったのと同時に、二本の神剣を構える。
「裂空……」
そして俺はそれを一気に、二人に向けて振りかぶった。
「一文字!!!」
「え!?」
その技はブリオッシュの使っていた技だ。
俺はそれを一目見てコピーしたのだ。
とはいっても使い方が知らないので、不完全ではあるが……
(名前を付けるのならジョーカーか?)
そんな事を思いながら、土煙の上がった方向を注意深く見る。
やがて、土煙が晴れるとそこには、フラフラと立っているのもやっとの様子の二人の姿があった。
「あの大技を受けても立っていられるなんてさすがだな」
あの一瞬で防御をするところを見ると、本当に強いということが分かる。
「でも、それもここまで!!」
俺は神速で一気に二人の懐に潜り込み止めを刺そうとした時だった。
突然扉が乱暴に開く音がした。
その方向を見ると、そこにはレオ閣下の姿があった。
[0回]
PR