健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第3話 意外な策

「それじゃあ、お願いします」
『はい!』

僕の前にいるのはリフォーム業者だ。
これからリフォームするのは、あのテナント募集中という張り紙のしてあった場所だ。

「ねえ、浩ちゃん」
「何だ? 神楽」

工事を始めた業者を見ている僕に、震えた声色で声をかけてきたのは、神楽だった。
見れば表情が引きつっていた。

「どうしてここをリフォームしようとしてるの?」
「それはな、ここに飲食店を開くためさ」

神楽の問いかけに、僕は普通に答えた。
そう、僕は飲食店を開こうとしていたのだ。

「どうして飲食店になるの!? 確かに溶け込めるだろうけど、お客さんが来るのかどうかも分からないし、しかも店の名前やメニューだってないのに!」

そんな僕の答えに、神楽が一気にまくしたてた。
どうやら、限界だったようだ。

「お客は来ればラッキー程度だ。採算度返しでやっているんだから。それに店の名前もメニューだって決まっているし、レシピもある」
「………」

神楽の言葉に反論した僕の言葉に、神楽は固まっていた。

「僕に常識何て二文字、あてはめようとする時点で間違いだ」
「それ、胸を張って言える事じゃないよね?」

当然だ。
元々僕は自由奔放だ。
常識では考えられないことを平然とやる。
それが僕の悪いところでもあり、いいところでもある。

「取りあえず、奥に居住スペースがあるから今日はそこの清掃だな。手伝ってくれるか?」
「分かったわ。任せて!」

こうして僕たちは、居住スペースの掃除を始めた。










その日の夜。

「それでは、いただきます」
「頂きます!」

僕達は居間で、引っ越しそばを食べていた。

「うん、おいしい! これ何処で買ったの?」
「夕霧庵と言う蕎麦屋」

買った場所の名前を答えながら、僕もおそばに舌鼓を打つ。
そのそばは、コシがあってとてもおいしかった。
ただ気になったのは、そのお店の店主と思われる男性が魔族であるということぐらいだが。

(まあ、いいか。これほどおいしいそばを打てるんだから、魔族だろうが天使だろうが関係ないか)

そう考えて、僕は再びそばを啜った。

「ところで、あのお店いつ完成するの?」
「業者の話では19日らしい。開店は20日の予定だからそれまでに、お店のメニュー表や調理器具と、服を用意しておこう」

かなり大規模な工事なので、これでも早い方なのだとか。

「それじゃ、そろそろいきます?」
「ああ」

僕と神楽は、ほぼ同時に立ち上がると、おそばの容器を洗って食器かごに置き、水を切る。
この容器は返却する必要があるので、明日返しに行く予定だ。
そして、僕たちは工事中のお店を通り抜けて、表に出た。
時間は午後7時。
まだ、開いているお店もちらほらと見える。

「それじゃ、今から4時間後にここに戻ろう。神楽は向こう側を、僕はこっち側を調べる」
「うん、気を付けて」

役割を分担した僕たちは、反対方向に向かって歩き出す。
これからやるのは、地脈調査。
その土地に変な魔法陣や仕掛けが、施されてはいないかを調べるものだ。
方法は簡単で、小さくした神剣に糸を通してそれ掴んで歩くだけだ。
剣が反応すれば何らかの仕掛けがあるということであり、その場合は僕が精密調査をする。
神楽の場合は、舞扇子を使って調べるらしい。










歩き始めてからかなり経った。

「ここも問題なしだな」

終着点に到着した僕は息をゆっくりと吐いた。
そして神楽が来るのを待った。
程なくして神楽はやってきた。

「神楽、どうだった?」
「うん、ざっと調べたけれど特に問題はなかったよ」

神楽の方も問題はなかったようだ。

「だとすれば、残すところは一つ」
「だよね」

僕と神楽は同時に横にある建物を見た。
そこの立札にはこう記されていた。

『私立流星学園』

そこは、昼間僕達が逃げ出した場所だ。
入ることはできるが、またあんな目に合うのはごめんだ。

「どうにかして、ここに侵入できる方法はないかな?」
「さあな……こればかしは祈るしかないよ」

そう呟いて、長居すると怪しまれるため、その場から逃げるようにして立ち去った。
程なくして拠点地に到着した僕たちは、お風呂に入ることにした。

「浩ちゃん、一緒に入ろう!」
「消し炭にされたいか?」

予想はしていたが、とんでもないことをの束った神楽に、僕は殺気を放ちながら答えた。

「ひ、一人で入ります~」

その殺気に神楽はゆっくりと交代すると、お風呂場に向かって行った。
その後、お風呂をあがった神楽に続いて俺もお風呂に入ると、別々にしておいた寝室で眠りにつくのであった。










それからお店が出来るまでの13日間は、調理器具をかったり服をこしらえたりメニュー表を作成したりと、準備を着実に済ませて行った。
そして、19日の夜。

「いよいよ明日が開店日だ」
「ようやく来たんだね」

お店の内装も工事が終わって、ほぼ完ぺきになった。

「ところで、お店の名前を教えてくれてもいいんじゃない?」
「では教えてやろう。お店の名前は」
「名前は?」

そして、僕はその名前を口にした。

「喫茶、ムーントラフトだ!」
「………それって、問題でしょ。商標的な意味で」

神楽が何を言いたいのかはよく分かった。
このお店の名前、実は別の世界ではあるが使われているのだ。

「とは言え、考案者は僕だから問題はない。それにここはあそこの世界ではない。ということで問題なし。こうしてメニュー表やレシピもあるわけだし」
「これって………彩香さんのレシピ帳じゃない!? 一体どうしたのこれ!!」

神楽が声を荒げた。

「言っておくけど盗んではいない。ただ前に渡してくれたんだよ。”必要になったら使いなさい”って言われてね」
「………だったらいいんだけど」

神楽は、とりあえず信じてみることにしたようだ。
後はこのレシピ通りに、僕がどれだけうまくできるかだ。
いくらレシピが完璧でも、作り手によって味は大きく変わってしまうものだ。

(趣味で作っているレベルの僕が、どこまで行けるか………やってみようじゃないか)

それは自分の挑戦だった。
こうして、夜が明けていく。
そして、とうとう開店日10月20日を迎えた。

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第2話 最初の戦いと、一歩

「浩ちゃん、あそこはどう?」
「ん? お、あそこなら人通りもないな」

神楽が指さした方を見ると、そこは人通りの少ない場所だった。
まさに僕の求めている絶好の場所だった。

「よし、あそこに降りるぞ」
「了解だよ」

神楽に一言告げた僕たちは、ゆっくりと下降していく。

「ッと、到着」
「うん、お疲れ様だよ~」

なんとか地面に落ちることが出来たことに、僕はほっと胸を撫で下ろした。

「それにしても、ここはどこだ?」

僕は周りを見回す。
まず前に見えるのは青い屋根に木造のアパートのような場所。
庭と思われる場所には色々な草が生えていた。

「浩ちゃん、ここの家の人とか居たりするのかな?」
「ちょっと待ってて」

神楽の不安そうに聞いてくる声に、僕は目を閉じて前方の建物の中の生体反応を調べた。
だが、反応は感じなかった。

「大丈夫だ。誰もいないようだ」
「そう、よかった」

僕の結果に、神楽は肩の力を抜いた。

「さてと、まずやらなければいけないのは――――」

僕が、今後の事について話そうとして時だった。

「ねえ、浩ちゃん。あれは何?」
「あれとは……うわッ!?」

神楽が見ている方に視線を向けると、そこには黒くてまん丸で、一応手足のようなものが付いている生物だった。
他にも鳥のような姿をしていたり、力持ちだと分かるような姿をしていたりする生物3体が、草を食べていた。

「ねえ、あれって野菜よね?」
「ん? よく見てみるとそうだよな。ということは………」

僕と神楽の答えは一つだった。

「「野菜泥棒だ!!」」

一斉に声を出したため、予想以上に大きな声となってしまったようだ。
その為……

「イーッ!!」
「イーッ!」
「イーッ!!」

三体の生物に見つかってしまった。

「『イーッ』って、何を言っているかわかる?」
「どんな内容の事を言ってるかは大体は分かるけど、事細かには分からない」

神楽に僕は目を細めながら答えた。
僕は今、かなり警戒している。
なぜならば、さっきの生物たちの声を翻訳すると

『見つかった!!』
『どうするの!』
『やっつけよう!!』

といった感じだからだ。
つまり、こちらが油断すれば大けがをする可能性がある。

「君たち、今やっていることはしてはいけない悪いことなんだ! でも、ここで素直に帰ってくれれば僕たちは何もしない!! だから素直に消えてくれ」
「浩ちゃん、言葉が通じる訳が――「イーッ!!」――通じた!?」

どうやら僕の言葉が分かるようだ。
それを知った神楽が驚きのあまりにツッコみ口調になっていた。
だが、帰ってきた答えは……

「神楽!」
「え? きゃ!?」

鳥のような姿をした生物による炎の球の攻撃だった。
神楽は、間一髪のところで避けることが出来た。

「この私に不意打ちをするとは………浩ちゃん」
「分かってる」

どうやら今ので神楽にスイッチが入ってしまったようだ。
こっちも向こうの敵対行動を確認した。
つまりは、戦うことが出来る。

「「武装、展開!」」

僕達の言葉が合図となり、一瞬にしてここに来たときに来ていた礼装へと姿を変える。
そして僕の両手に具現化したのは神剣正宗と吉宗だった。
人を切ることはできない正宗と、絶大な攻撃力を誇る吉宗の日本で一本の剣だ。
対する神楽の手には、華やかな舞扇子(まいせんす)が握られていた。
ただのセンスと思う無かれ。
これで本気で叩かれた時の衝撃は、ハンマーと同じほどなのだ。
だが、本人はそういった使い方はしないとのこと。

「僕達の恐ろしさ」
「その身をもって知ると良いわ!!」

そして、この地に降り立って最初の戦いが幕を開けた。

「イー!!」

大きなガタイをした生物が、雷の矢を放ってきた。

「ッと、リューイング・ゼルケーション!!」

それを僕の白銀の光で相殺する。

「イーッ!!」
「甘いわ!」

その隙を狙って放たれた水流を、舞扇子で打ち消した。

「助かった!」
「イー! ――「させないわ! 舞部流・序、闇知らぬ鋼鉄の檻!」――」
神楽の攻撃霊術である、舞部流の効果によって、攻撃をしようとしたまん丸の生物や、その他の二体の生物がまとめて白銀の光を発するゲージに拘束される。

「イーッ!?」
「イー!!」
「イーッ!」

三体がそれぞれ外に出ようと暴れるが、あれはちょっとやそっとで壊れるような強度ではない。

「皆を助ける為の踊り、神楽の舞!」

神楽はその隙を狙って特殊能力である、神楽の舞を発動させる。
どうやら今回は、僕の能力強化の様だ

「行くぞ! その存在を無に還す!! プリマテリアライズ・オーバードライブ!!」

光の傍流が生物を飲み込む。
そして、光が晴れると先ほどの生物は、どこにもいなかった。

「やった! 私たちの大勝利ね!!」

喜ぶ神楽をしり目に、僕は冷静に口を開いた。

「いや、少なくともあの生物たちは消えてはいない。僕の必殺技が直撃する寸前に逃げ出した」
「嘘!?」

そのことに、神楽は驚きを隠せないようだ。

「直撃すると思い気を抜いて、制御を疎かにした瞬間に、突き破って逃げた様だ」
「う゛ッ!?――「油断大敵と、前に言ったはずだ」――はい」

僕の言葉に、神楽の存在感がどんどんと小さくなっていくような気がした。
………何だかいじめているような気がしてきた。

「まあ、こっちの勝利条件はあの生物を追い払う事だから、こっちの勝利には変わりはないけどね」

フォローにもなっていない様なフォローをしつつ、僕はあたりを見回した。

「それよりも、まずはこの惨状を何とかしなければいけないね」
「そうだね」

辺りの光景を見た神楽が引きつったような様子で答える。
その惨状と言うのは……生物の攻撃のせいか、カチカチに凍った草、そして建物への焦げ跡。
さらにそれに追い打ちをかけるように、周りの地面が抉れていた。
おそらくは僕の必殺技の影響だろう。

「神楽は草や建物の焦げ跡を、僕はこの地面を修繕する」
「了解……」

僕の指示を聞いた神楽は修繕作業を始めた。
僕もそれにならい修繕作業をする。
修繕作業とは、霊術によって破損した箇所を元通りにすることだ。
これが、神族である僕たちの義務であった
ちなみに、この修繕作業は僕の一番苦手とすることだったりもする。










それから約1時間後、ようやく修繕作業を終えた僕たちは建物の前に立っていた。

「さて、霊力の残量は?」
「私は99%」
「僕もだ。特に異常もないようだな」

ここに降り立ち、さらにすぐの戦闘で時々体に異変が生じることがある。
それがないかの確認だった。

「神楽、能力の封印を」
「了解」

とりあえず僕は、霊力や魔力、身体能力などを引き下げた。
これをすることで、ほとんどの人には僕達が普通の人間に見えるようになる。

「さて、これからどうするか……だが」
「その天使を探し出すって言うのはどう? 目の色を見れば一目瞭然でしょ?」

僕の言葉に、神楽が意見を言う。

「確かにそれも一手だ。だが、カラコンをして目の色をごまかしたりする者もいれば、逆に普通の人間がカラコンで水色にするという可能性もある」
「そうよね……でも、監視するにも変装をしてもまた今日のように見つかるし、片に警戒されたら尻尾を出さなくなっちゃうよ」

僕の反論に、神楽はそう言い返す。
確かに神楽の意見も尤もだ。
探し出すにも、ほとんど不可能に近く監視しようにも変装したりして歩き回れば不審に思われて、あらぬ誤解を受けかねない。
あの学園も然り、こういった場所も然り。

「そうだ! だったらこの町に溶け込めばいいんだよ」
「溶け込むって……まさか!?」

僕の言葉の意味が分かった神楽が目を見開いて僕を見る。

「根源物質露出」

僕の呟きに、前方に青色の球体が現れた。
これが、この世界の根源が記された世界の根幹だ。
これをめちゃくちゃにいじれば、この世界を狂わすことが出来る。
だからこそ、これの扱いは慎重にしなければいけないのだ。

「浩ちゃん駄目だよ!! あれだけは!」
「これ以外に方法はないんだ、許せ。世界の変革開始。変革要素、根源物質への人物存在追加」

僕の言葉に次々と根源物質が変わって行く。
この世界の在り方や、行く末などには一切手を付けず、僕達の席を作り出す。
簡単に言えば、一つの家の面積は変えずに、部屋を増やすということだ。
なのであまり危険な工程ではない。
とは言え、この世界の根幹をいじくるのだ。
それが神楽の反対する理由だった。

「………終了。これでこの世界のこの国、この町に僕達の戸籍が出来た」
「もう………」

神楽はため息をつきながら批判的な目で僕を見るが、それほど怒っているのではないようだ。
いや、もしかしたら諦めかけているのかも。

「あ、戸籍の方だけど僕の方は”大森(おおもり) 浩介(こうすけ)”、神楽の方は”西田(にしだ) 神楽(かぐら)”という名前になっているから、一応気を付けといて」
「分かった」

これで、戸籍の問題は解消された。
次は、住まいだ。

「町に出るよ」
「町? 住宅街じゃなくて?」

神楽が僕の言葉に、疑問を投げかけた。
確かに、その疑問は正しい。

「いや、より良いこの街への溶け込む方法があるんだよ」
「それってどういう……あ、ちょっと待ってよー!!」

神楽が、慌てた様子で僕を追いかけてくる
僕はそのままスタスタと足を進めるのであった。









先ほど根源物質を見たところ、今日は10月6日であることが分かった。
さらに、この町の名前は『流星町』だという事らしい。
まあ、それ以上の情報は見ていないから何とも言えないが。
そして来たのは商店街だ。
ちなみに僕は青色のジーパンに黒い長そでのシャツ着て、神楽は青色のスカートにオレンジ色のシャツの上に水色のジャケットを羽織るという私服姿に服装を変えている。
そこに入って一軒一軒探すこと数分。

「見つけた」

僕は、とある建物の前で歩くのをやめた。

「ねえ、いい加減教えてくれないかな? 住宅街では無くここに来た理由を」
「それはね、ここだよ。ここ」

僕は神楽の問いかけに、目の前の建物を指し示した。

「ここって……『テナント募集』………まさか浩ちゃん!?」
「さぁて、役場に行くぞ」

神楽の予想を肯定するように、僕は役場の方へと足を進めた。

「ま、待ってよ! 浩ちゃん!!」

そして、神楽は、慌てて僕を追いかけてくるのであった。















■おまけ■

神「ハッピーバレンタイン~」
浩「ハッピーバレンタイン~って、今は何日だと思ってるんだ? というよりそもそもお前はバレンタインデーがなんなのかを知ってるのか?」
神「別にいつだっていいじゃない~。それに知ってるよ。愛する人にチョコレートを渡すんでしょ?」
浩「……」
神「ということで、私のチョコレートをどうぞ」
浩「いらない」
神「えぇ~!? なんでよ!!」
浩「僕には心に決めた人がいる。だから神楽の愛の結晶は受け取れない」
神「うぅ~、失敗」
浩「でも、せっかくくれるチョコだ。ありがたく受け取っておこう」
神「ありがとう、浩ちゃん」
浩「どういたしまして」

??「あの二人は道の真ん中で何をやっているのかな?」
??「きっとお芝居の練習なのですね!」
??「あぁ……なんて素敵な光景なのかしら」

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第1話 逃走

「ふぅ……」

真っ白な光が無くなると、そこは見たこともない場所だった。

「ここが人間界か」

隣に立っていた神楽は、物珍しそうに周りを見渡していた。
僕達が立っているのは、どこかの高台の様だ。
前を見れば、色々な建物が立っているのが見える。

「あそこに人がいるな」
「え? どこどこ?」

僕の呟きに、神楽は必死に人の姿を探そうとする。

「ここからかなり離れた場所だから、普通じゃわからないよ」

僕はそう言いながら双眼鏡を取り出すと、人の気配がする方向に向けて構えながら覗き込んだ。
そこには、肩の部分が赤でそれ以外の場所が薄ピンクの色合いをしたワンピースタイプの服を着ている女子がいた。
しかもそこらじゅうに。
その中に上着が赤色でズボンが黒の男子もいた。

「どうだった?」

神楽の問いかけに応えず、僕は自分と神楽の服装を確かめた。
僕の服装は黒一色のまるで喪服のようなものだった。
神楽の場合は巫女服の感じがした。
どう見ても、不自然だ。
もしこのまま下の方に行けば変な目で見られる。

「神楽、服装を同化させる」
「そうだよね。この服装はおかしいよね」

僕の言わんとすることが分かったのか、神楽は苦笑いをしながら僕の方に手を差し伸べる。
同化は手をつないだりすれば簡単にできる
何せ、僕の中にあるイメージを神楽の中に送り込んで、それを服装に反映させるだけなのだから。
そして、僕は目を閉じて先ほど見た共通の服装をイメージする。
その瞬間、体全体に僕は熱を感じた。
それはすぐになくなり、僕は目を開けた。

「………」

そして僕は言葉を失った。
服を変えれば印象も変わると言うが、本当の事だと今分かった。
先ほど見た女子の服装と同じ服を着ている神楽が、見知らぬ誰かだと勘違いするほど輝いていた。

「どうかな? 浩ちゃん」
「ああ、似合ってる」

神楽の問いかけに、僕はそう答えるのがやっとだった。

「ありがと~浩ちゃん」

そして僕に抱き着いて喜びをあらわにする。

「さてと、下の方に向かうぞ」
「了解」

誤魔化すように言った僕を、神楽は笑顔で見ていた。
そして、僕たちは人がいるであろう場所に向かった。









しばらく歩いた時だろうか。
周りはきれいな芝生が広がっているグラウンドのような場所に来ていた。

「そこのあなた達」
「へ?」
「え?」

突然女性の声に呼び止められた僕達は、慌てて振り向いた。
そこには紫色の髪に赤い目をして、修道服のようなものを着ている女性が立っていた。
その手には事典サイズの本が抱えられている。

「今は授業時間中です。それなのにこのような場所でサボりですか?」

女性の視線が鋭く、射抜くような目で僕たちを見る。
今の言葉で、ここが学園であることは分かった。

「あの、実は私たち道に迷ってしまいまして」

僕は、何とかこの場を切り抜けようと、言い訳をした。
これならば不審に思われることはないだろう。

「おかしいですね。始業式が始まり、半年もたったのに、まだ学園の構造が分からないのでしょうか? それにあなた達の制服は3年生の物ですよ」
「う゛!?」

僕は女性の指摘に、返す言葉が無くなった。
今の時期が大体10月ごろであることは分かった。
しかし、この制服が3年生を示しているとは……僕のミスだ。

「方向音痴だという可能性は考えられないのでしょうか?」
「ええ、確かにそれもあり得ますね。ですから……」
「え?」

神楽の問いかけに、女性は肯定すると、僕たちに手を差し出した。

「学生証を提示してください」
「すみません、忘れてしまいました」
女性の問いかけに、僕はすぐさま答えた。

「でしたらお名前を教えてください。あなた達が学生であるのなら、学園の方に名前があるはずです」

女性の切り返しに、とうとう僕たちは逃げ道が無くなった。

【神楽、こうなったら】
【うん、浩ちゃん】

僕と神楽は念話でやり取りをした。
そしてすぐに行動に移した。

「どうしましたか? 貴方達が学生であるのであれば、言えるはず――――」
「「ジェットステップ、GO!!」」

僕達が取った行動は逃げる事だった。

「待ちなさい!」

そして、女性も追いかけてきたようだ。
だが、マテと言われて待つような性格はしていない。
僕達は次なる手を考えていた。

「1,2の3で大ジャンプするよ!」
「オーケー!」
「1,2の」
「「3!!」」

僕は足に力を込めると、地面をけった。
次の瞬間、僕たちは空高く飛びあがっていた。
これもひとえに高い身体能力のおかげだ。
そのまま僕は、体中に霊力を巡らせ、空中を飛びながら人がいない場所を探し始めるのだった。

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主人公設定&用語説明(ネタバレ注意)

【名前】 高月 浩介

【年齢】 18歳(人間の推定年齢)

【性別】 男

【容姿】 短めな銀色の髪(能力を封印している時は、黒)が特徴で、青い目が印象的。       (真名解放時は黄色に変わる)

【性格】 興味のあることには集中してやるが、ないことに関しては無関心。
     敵対行動をとると無条件で攻撃をする(相手が女性でも関係ない)
     無類のチーズケーキ好き
     戦闘時は人が変わったかのように冷酷になることがある。
     浩介いわく、命がけでない戦いは優雅に華やかに楽しむのがツウだとのこと。
     自由奔放で、他人から束縛されることは嫌う。
     最低限の常識はもっているが、時よりそれすらを疑うような言動を取ることがある。
     ノヴァ曰く『浩介は神としての風格を感じない』とのこと。
     本人いわく『姿は見てないが、上級神から教えてもらった通りにしている』と反論しているため、ノヴァの悩みの種となっている。
     横文字の名前(主にファミリーネーム)の記憶力がかなり低く、高確率で間違える。
     そのため、名前にさん付けで呼ぶようにしている。
     また、上級神から教わったのかそれとも元々使えたのか、催眠術を行使して戦闘時においては大きな混乱をもたらす。

【属性】 攻撃属性は神(偽っている際は闇)属性+火、水、雷属性
      属性レベルは全開時で8、封印時は5
      守護属性は神属性
【武器】

・クリエイト(属性を偽っている際の物)

水晶形態:近接用の武器。
       用途はただ投げつけるだけ。
剣形態:剣に魔力を通すことで、さまざまな技を使うことができる、近中距離型の武器。
杖形態:遠距離型の武器。
     長距離の射程範囲を持つ高出力、高威力の魔法や霊術が行使可能。


・神剣、正宗・吉宗

正宗:木材は切れても人や生物は斬れず、逆に敵の攻撃を防ぐことに特化されている
不思議な特性を持つ
吉宗:普通の剣と同じ特製。
    ただし、霊術の効果を増幅させる効果を持つ

【ステータス】()内の数字は右側を最大数、左がその人物の数値を表しています。

攻撃力(10/10)
防御力(1/10)
素早さ(3/10)
詠唱(6/10)
サポート(?/10)
チーズ好き(10/10)

【戦闘傾向】
基本的には攻撃を優先。
ただし、時と場合に応じては相手の反応を楽しむべく手加減をしたり、じわじわと痛みを与えるなどの残忍さを持つ。
防御力や素早さが低いが、膨大な攻撃力を鑑みれば、ハンディキャップという表現も妥当。
サポートは、本人が心の底から仲間と認めない限りは”0”に等しい。

【EX】
・儀流魔法(魔族時のみ):浩介が持つ超特殊能力、様々な効果を持つ技を発動させ敵を不利な状態に追い込んだり、味方を支援したりする。
                第1~9幕、特幕の二つがある

根源物質プリマテリアライズ暴走オーバードライブ:世界を破滅に導くとされる暴走を、小規模だが故意に発生させる。
         効果は相手の体力を6~9割削り、高確率で行動不能状態にさせる。

・反逆への誘い:催眠術を行使して、一定時間敵だった人物を味方にさせる。
とある上級神に教わった催眠術を応用したもの。

・リバース・シチュエーション:すべては反転する。
                  発動のタイミングで生じた事象をすべて反転させる。
                  例えば、攻撃を受けた際は、そのダメージ自体が無効化され、ダメージ分が回復する。
                  敵にかけることも可能で、その場合は相手が体力を回復した場合は、回復自体を無効化され、回復分がダメージとなる。

・ランダマイザ―:すべては運しだい。
         様々な効果からランダムに選ばれる。
         主な効果は次の通り。

   ―――晒しの始まり:敵のHPを大量に回復させる。
             その代わり、敵は大きく後ろのほうに押し下げられるため、場合によってはフルボッコになる可能性もある。
  ――――豚足:敵の待機時間を2倍にさせる。
  ――――癒しと毒の湖:自分のHPを現在地の倍にするが、相手のHPを半分にする(小数点は切り捨て)



常時は神としての能力を封じ、魔族に偽っている。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【名前】 神楽

【年齢】 18歳(人間の推定年齢)

【性別】 女

【容姿】 銀色の長髪が特徴で、青い目をしている。(真明解放時は黄色に変わる)

【性格】 ほんわかとした性格。
     人当たりはいいが、発言が過激かつ辛口。
     趣味は舞で、その踊りを見た者は最後まで見ずにはいられなくなる

【武器】

・ルミナス:銀色の杖で遠距離型のため、後方支援や中遠距離攻撃に向いている。


・舞扇子(まいせんす):一見するとただの扇子だが、本気で振り下ろすとハンマーのよ               うな打撃武器となる。
               ただ、武器には向かないため攻撃には利用しない。
               また霊術の効果を増幅させる効果もある。

【属性】 攻撃属性は神(偽っている際には光)属性+火、水、雷属性
      属性レベルは全開時で6、封印時で3
      守護属性は神属性

【ステータス】()内の数字は右側を最大数、左がその人物の数値を表しています。

攻撃力(1/10)
防御力(8/10)
素早さ(10/10)
詠唱(4/10)
サポート(9/10)
浩介好き(10/10)

【戦闘傾向】
基本サポート重視。
攻撃というよりはサポート関連に力を注いでいるため、攻撃力は微々たるもの。
ただし、侮るなかれ。
サポートに分類される技には相手を魅了させる物も含んでいる。
なので雑魚魔族ならば容易に倒せ、七大魔将レベルでも十分な時間稼ぎが可能。
決定打に欠けるのが玉に傷。

【EX】

・神楽ノ舞:美しく優雅に踊る。
       その踊りは仲間さえも魅了する美しさを持つ。
       効果は味方の能力補強や、敵を魅了して行動不能状態にすることで隙を作り出したりすることが出来る。
       攻撃力は皆無。

・鏡花水月:それは水の鏡に映る花と月。
        効果は敵の持つEX技をコピーする。
        コピーした技は一度のみ使用できる。

・????


常時は神としての能力を封じ、魔族に偽っている

――――――――――――――――――――――――――――――――

【用語説明】

・現地介入レベル:人間界での介入に対する度合いを示したもの。
            レベル1が、主要人物との接触のみ可能なもの、2は1にプラスして            住居への居住が可能、3は1,2にプラスして土地の契約や、戸籍の            作成等、生活するために必要なほとんどの事が許可される。

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プロローグ 天界にて

――天界
そこは、青い空と白一色の地面だけで構成される世界。
その世界にいる物は清い心の持ち主らしい。
そんな世界の最上階級だけが立ち入ることが出来る場所が存在する。
そこにいるのは………

「むむ~浩介! 待ってくれ」
「待ちはなしと前にも言った」

チェスを楽しむ銀色の髪をした青年と同じく銀色の髪をした初老の男性がいた。

「浩ちゃん強~い!」

そして彼らの横で大騒ぎをしている銀色の髪に青い目をした女性。
この三人こそ、天界の最高階級の神である。


★★★★★★


一通りチェスを終えた僕こと、高月(たかつき) 浩介(こうすけ)は、一息つく。

「浩ちゃん、今日で159連勝だね」
「お前は律儀だな」

律儀にも僕の勝利記録を数えている青い目に銀色の髪をしている顔立ちが整っている女性は神楽(かぐら)だ。
姓がないのは、元々なので気にしていない。
彼女は、世界を脅かす脅威がいないかを監視し、いた場合は排除する”裁きの神”だ。

「くう! 160連敗は避けたいのぅ」

そして、全身で悔しさを表現している初老の男はノヴァだ。
彼は、世界を創りだす”創造の神”である。
僕?
僕は、世界の”流れ”でもある因果律を監視し、おかしな流れなどがあった場合はそれを修正したりして、世界の存在を守る”世界の意志”だ。

「ところで、だ。仕事の話だ」
「「ッ!?」」

ノヴァの一言に、今までの和やかな雰囲気は一気に緊迫したものに変わった。

「世界No.19708にて、神族階級低の天使族の中に世界を破滅をさせようとしている者がいるとの、情報が入った」
「おいおい……よりにもよって同胞が世界を滅ぼそうとするって……」
「身の程を知った方がいいわね」

ノヴァの説明に、僕は驚きながら、神楽は呆れながら感想を言った。
神楽の辛口な言葉は、いつもの事なので、放っておいていいだろう。

「その天使は、すでに人間界に降り立っている。そこで、その天使を探し出し天界に戻しこれを阻止してもらいたい」
「天使か……見分けられると言えばできるけど、向こうはそんな分かりやすいことはしないだろうし……」

天使や神族の特徴は、銀髪あるいは、青い目だ。
だが、相手はもしかしたらカラーコンタクトをしていたりする可能性がある。
さらに掘り下げれば天界を抜け出しただけで破滅には関係ないかもしれない。
上げればきりがない。

「尚、今回の任務は神楽も同行してもらう」
「やた♪」

ノヴァの言葉を聞いた瞬間、神楽が笑顔で腕に抱き着いてきた。

「神楽は浩介のサポートをするように」
「了解です~」

神楽が答えたことで、説明は終わりとばかりに話を区切った。

「では、さっそく向かってくれ」
「了解しました。それでは……」

僕の言葉に、ノヴァは「そうだったそうだった」とつぶやいた。

「世界の意志、高月浩介と裁きの神、神楽の能力解放許可および現地介入レベル3発令承認」

ノヴァの権利宣言により、僕たちの体に青白い光が灯ったかと思えば、それはすぐに消えてしまった。
僕は背後に展開された円陣の方に歩み寄った。
これが問題の世界への入り口となっているのだ。

「それでは、行ってまいります」
「健闘を祈る」

そして僕たちは円陣に足を踏み入れた。
その次の瞬間、僕の周りは”真っ白”になった。
音もしない場所で僕は目を閉じるのであった。






これが、僕にとってすべての始まりであった。

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