――天界
そこは、青い空と白一色の地面だけで構成される世界。
その世界にいる物は清い心の持ち主らしい。
そんな世界の最上階級だけが立ち入ることが出来る場所が存在する。
そこにいるのは………
「むむ~浩介! 待ってくれ」
「待ちはなしと前にも言った」
チェスを楽しむ銀色の髪をした青年と同じく銀色の髪をした初老の男性がいた。
「浩ちゃん強~い!」
そして彼らの横で大騒ぎをしている銀色の髪に青い目をした女性。
この三人こそ、天界の最高階級の神である。
★★★★★★
一通りチェスを終えた僕こと、高月(たかつき) 浩介(こうすけ)は、一息つく。
「浩ちゃん、今日で159連勝だね」
「お前は律儀だな」
律儀にも僕の勝利記録を数えている青い目に銀色の髪をしている顔立ちが整っている女性は神楽(かぐら)だ。
姓がないのは、元々なので気にしていない。
彼女は、世界を脅かす脅威がいないかを監視し、いた場合は排除する”裁きの神”だ。
「くう! 160連敗は避けたいのぅ」
そして、全身で悔しさを表現している初老の男はノヴァだ。
彼は、世界を創りだす”創造の神”である。
僕?
僕は、世界の”流れ”でもある因果律を監視し、おかしな流れなどがあった場合はそれを修正したりして、世界の存在を守る”世界の意志”だ。
「ところで、だ。仕事の話だ」
「「ッ!?」」
ノヴァの一言に、今までの和やかな雰囲気は一気に緊迫したものに変わった。
「世界No.19708にて、神族階級低の天使族の中に世界を破滅をさせようとしている者がいるとの、情報が入った」
「おいおい……よりにもよって同胞が世界を滅ぼそうとするって……」
「身の程を知った方がいいわね」
ノヴァの説明に、僕は驚きながら、神楽は呆れながら感想を言った。
神楽の辛口な言葉は、いつもの事なので、放っておいていいだろう。
「その天使は、すでに人間界に降り立っている。そこで、その天使を探し出し天界に戻しこれを阻止してもらいたい」
「天使か……見分けられると言えばできるけど、向こうはそんな分かりやすいことはしないだろうし……」
天使や神族の特徴は、銀髪あるいは、青い目だ。
だが、相手はもしかしたらカラーコンタクトをしていたりする可能性がある。
さらに掘り下げれば天界を抜け出しただけで破滅には関係ないかもしれない。
上げればきりがない。
「尚、今回の任務は神楽も同行してもらう」
「やた♪」
ノヴァの言葉を聞いた瞬間、神楽が笑顔で腕に抱き着いてきた。
「神楽は浩介のサポートをするように」
「了解です~」
神楽が答えたことで、説明は終わりとばかりに話を区切った。
「では、さっそく向かってくれ」
「了解しました。それでは……」
僕の言葉に、ノヴァは「そうだったそうだった」とつぶやいた。
「世界の意志、高月浩介と裁きの神、神楽の能力解放許可および現地介入レベル3発令承認」
ノヴァの権利宣言により、僕たちの体に青白い光が灯ったかと思えば、それはすぐに消えてしまった。
僕は背後に展開された円陣の方に歩み寄った。
これが問題の世界への入り口となっているのだ。
「それでは、行ってまいります」
「健闘を祈る」
そして僕たちは円陣に足を踏み入れた。
その次の瞬間、僕の周りは”真っ白”になった。
音もしない場所で僕は目を閉じるのであった。
これが、僕にとってすべての始まりであった。
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