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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第3話 意外な策

「それじゃあ、お願いします」
『はい!』

僕の前にいるのはリフォーム業者だ。
これからリフォームするのは、あのテナント募集中という張り紙のしてあった場所だ。

「ねえ、浩ちゃん」
「何だ? 神楽」

工事を始めた業者を見ている僕に、震えた声色で声をかけてきたのは、神楽だった。
見れば表情が引きつっていた。

「どうしてここをリフォームしようとしてるの?」
「それはな、ここに飲食店を開くためさ」

神楽の問いかけに、僕は普通に答えた。
そう、僕は飲食店を開こうとしていたのだ。

「どうして飲食店になるの!? 確かに溶け込めるだろうけど、お客さんが来るのかどうかも分からないし、しかも店の名前やメニューだってないのに!」

そんな僕の答えに、神楽が一気にまくしたてた。
どうやら、限界だったようだ。

「お客は来ればラッキー程度だ。採算度返しでやっているんだから。それに店の名前もメニューだって決まっているし、レシピもある」
「………」

神楽の言葉に反論した僕の言葉に、神楽は固まっていた。

「僕に常識何て二文字、あてはめようとする時点で間違いだ」
「それ、胸を張って言える事じゃないよね?」

当然だ。
元々僕は自由奔放だ。
常識では考えられないことを平然とやる。
それが僕の悪いところでもあり、いいところでもある。

「取りあえず、奥に居住スペースがあるから今日はそこの清掃だな。手伝ってくれるか?」
「分かったわ。任せて!」

こうして僕たちは、居住スペースの掃除を始めた。










その日の夜。

「それでは、いただきます」
「頂きます!」

僕達は居間で、引っ越しそばを食べていた。

「うん、おいしい! これ何処で買ったの?」
「夕霧庵と言う蕎麦屋」

買った場所の名前を答えながら、僕もおそばに舌鼓を打つ。
そのそばは、コシがあってとてもおいしかった。
ただ気になったのは、そのお店の店主と思われる男性が魔族であるということぐらいだが。

(まあ、いいか。これほどおいしいそばを打てるんだから、魔族だろうが天使だろうが関係ないか)

そう考えて、僕は再びそばを啜った。

「ところで、あのお店いつ完成するの?」
「業者の話では19日らしい。開店は20日の予定だからそれまでに、お店のメニュー表や調理器具と、服を用意しておこう」

かなり大規模な工事なので、これでも早い方なのだとか。

「それじゃ、そろそろいきます?」
「ああ」

僕と神楽は、ほぼ同時に立ち上がると、おそばの容器を洗って食器かごに置き、水を切る。
この容器は返却する必要があるので、明日返しに行く予定だ。
そして、僕たちは工事中のお店を通り抜けて、表に出た。
時間は午後7時。
まだ、開いているお店もちらほらと見える。

「それじゃ、今から4時間後にここに戻ろう。神楽は向こう側を、僕はこっち側を調べる」
「うん、気を付けて」

役割を分担した僕たちは、反対方向に向かって歩き出す。
これからやるのは、地脈調査。
その土地に変な魔法陣や仕掛けが、施されてはいないかを調べるものだ。
方法は簡単で、小さくした神剣に糸を通してそれ掴んで歩くだけだ。
剣が反応すれば何らかの仕掛けがあるということであり、その場合は僕が精密調査をする。
神楽の場合は、舞扇子を使って調べるらしい。










歩き始めてからかなり経った。

「ここも問題なしだな」

終着点に到着した僕は息をゆっくりと吐いた。
そして神楽が来るのを待った。
程なくして神楽はやってきた。

「神楽、どうだった?」
「うん、ざっと調べたけれど特に問題はなかったよ」

神楽の方も問題はなかったようだ。

「だとすれば、残すところは一つ」
「だよね」

僕と神楽は同時に横にある建物を見た。
そこの立札にはこう記されていた。

『私立流星学園』

そこは、昼間僕達が逃げ出した場所だ。
入ることはできるが、またあんな目に合うのはごめんだ。

「どうにかして、ここに侵入できる方法はないかな?」
「さあな……こればかしは祈るしかないよ」

そう呟いて、長居すると怪しまれるため、その場から逃げるようにして立ち去った。
程なくして拠点地に到着した僕たちは、お風呂に入ることにした。

「浩ちゃん、一緒に入ろう!」
「消し炭にされたいか?」

予想はしていたが、とんでもないことをの束った神楽に、僕は殺気を放ちながら答えた。

「ひ、一人で入ります~」

その殺気に神楽はゆっくりと交代すると、お風呂場に向かって行った。
その後、お風呂をあがった神楽に続いて俺もお風呂に入ると、別々にしておいた寝室で眠りにつくのであった。










それからお店が出来るまでの13日間は、調理器具をかったり服をこしらえたりメニュー表を作成したりと、準備を着実に済ませて行った。
そして、19日の夜。

「いよいよ明日が開店日だ」
「ようやく来たんだね」

お店の内装も工事が終わって、ほぼ完ぺきになった。

「ところで、お店の名前を教えてくれてもいいんじゃない?」
「では教えてやろう。お店の名前は」
「名前は?」

そして、僕はその名前を口にした。

「喫茶、ムーントラフトだ!」
「………それって、問題でしょ。商標的な意味で」

神楽が何を言いたいのかはよく分かった。
このお店の名前、実は別の世界ではあるが使われているのだ。

「とは言え、考案者は僕だから問題はない。それにここはあそこの世界ではない。ということで問題なし。こうしてメニュー表やレシピもあるわけだし」
「これって………彩香さんのレシピ帳じゃない!? 一体どうしたのこれ!!」

神楽が声を荒げた。

「言っておくけど盗んではいない。ただ前に渡してくれたんだよ。”必要になったら使いなさい”って言われてね」
「………だったらいいんだけど」

神楽は、とりあえず信じてみることにしたようだ。
後はこのレシピ通りに、僕がどれだけうまくできるかだ。
いくらレシピが完璧でも、作り手によって味は大きく変わってしまうものだ。

(趣味で作っているレベルの僕が、どこまで行けるか………やってみようじゃないか)

それは自分の挑戦だった。
こうして、夜が明けていく。
そして、とうとう開店日10月20日を迎えた。

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