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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第4話 開店/訪れし審査員?

とうとう訪れた開店日。
お客さんもたくさん来て、僕たちは大忙し………のはずだったのだが。

「来ないね。お客さん」
「言うな……神楽」

お客さんが誰もいない。
朝からずっとこうだ。
何がいけないのだろうか?
まさか、立地条件!?
もしくは、誰かの陰謀か!?
僕は必死に頭をひねる。

(……あ)

そして、一つの推測が頭をよぎった。

「神楽、ここを守るための結界レベルは、いくつになっている?」
「4よ」

神楽の答えですべてが氷解した。

「神楽、すぐに1まで下げろ」
「でも、そんな事をしたら脅威から守られなく――「さ・げ・ろ!」――わ、分かったわ」

僕は、強引に神楽に結界レベルを引かせた。
この結界レベル、4までされるとほとんどの人が中に入ることが出来なくなってしまうのだ。
拠点地を守るために掛けた結界が、お客が来ない要因になっていたとは………
僕は、ショックのあまり、少しだけかたまっていた。
そんな時……

「うわー、お客さん誰もいない」
「さっちん先輩、大きな声で言うのは失礼っすよ」

お店にやってきた第一号のお客の姿が、そこにはあった。


★ ★ ★ ★ ★ ★


「これで、キラフェスのケーキバイキングの出店のお願いは出せたかな」

流星町の商店街で、栗色の髪をした女顔の男子、咲良 シンとその横を歩くピンク色の髪をした女子の夕霧 ナナカ、そしてそのすぐ後ろを歩く銀色の髪をした女子のロロット・ローゼンクロイツの三人はスイーツ同好会のメンバー二人を引き連れて、資料を手に歩いていた。

「そだねー、でもちょっと早く終わったからどこかで休憩でもしない?」
「えっと……いいのかな、生徒会の活動中に」

ナナカの提案に、シンは不安げに聞く。
そう、この二人は流星学園の生徒会のメンバーなのだ。
ちなみにシンが生徒会長で、横を歩くナナカが会計、そしてすぐ後ろのロロットが書記である。

「いいのいいの、少しぐらい休んでもばちは当たらないって」

そう言う彼女の本心は、シンと少しでも一緒にいたいというのも少しではあるが含まれていたりする。

「あれー? ナナちゃん、こんなところに喫茶店が出来てるよ?」

そんな時、先行していた高橋サチホ……通称さっちんが、一点のお店に目を止めた。

「どれどれ……確かに見たことがないね『喫茶ムーントラフト』っていうお店は」
「新しくオープンしたのかな?」

そこは、浩介が経営しているお店であった。

「ねえねえ、ここに入ってみようよ」
「どうせここの『レアチーズケーキ』が目当てでしょ」

積極的に中に入ろうとさせるさっちんに、ナナカがため息交じりに呟くと、彼女はあからさまに固まった。
どうやら図星の様だ。

「おぉー! ハンバーグ定食があります~! これは入らずにはいられませんね!」
「分かったからロロちゃん少し落ち着こうね」

ハンバーグ定食を見て嬉しそうにはしゃぐろろっとを、ナナカは苦笑いを浮かべながら落ち着かせた。
そして、彼女たちは喫茶店の中に足を踏み入れた。


★ ★ ★ ★ ★ ★


そのお客はさっちんと呼ばれた少女に、その奥にピンク色の髪をした少女、その横には銀色の長髪の少女、そして栗色の髪をした女顔の男子が立っていた。
服装からして、全員流星学園の生徒だろう。

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

いつの間にかフロントに出ていた神楽が接客をしていた。

「あ、えっと……」
「5人です」

良い忍んでいる男子に代わってピンク色の髪をした少女が答えた。

「それでは、こちらへどうぞ」

神楽はそう言うと、彼女たちをカウンター席へと案内した。

「うわぁ、結構本格的なんだねぇ」

ピンク色の髪をした少女が、感心したようにつぶやいた。

「ご注文がお決まりでしたら、何なりとお申し付けください」
「はいはいはーい! ハンバーグ定食を下さい!」

僕がそう言うのと同時に、銀色の髪をした少女がものすごい勢いでオーダーをしてきた。

「ロ、ロロちゃん、そんなにあわてなくても分かってるって」
「あはは……ハンバーグ定食ですね。かしこまりました」

僕は苦笑いを浮かべながら、ハンバーグ定食の準備をする。
下ごしらえを済ませたお肉を、フライパンで焼く。
そして、しっかりと焼き色が付いたらお皿に盛りつけ、特性のソースをハンバーグに掛ける。
お膳の上にハンバーグの乗ったお皿を置き、さらにお吸い物やお漬物、ライスを置いて行く。
そしてハンバーグ定食は出来上がった。

「はい、お待たせしました。ハンバーグ定食です」
「おぉ~!」

ハンバーグ定食を見た瞬間、銀色の髪の少女が感嘆の声を上げた。

「頂きます~! あむ……おいしいです~、この味は一度覚えると病みつきになります!!」
「あはは、気に入って頂けて光栄です」

まるで子供のように喜ぶ少女に、僕は苦笑いを浮かべながら、しかし嬉しさをかみしめながら答えた。

(彼女………間違いなく天使族だな)

そんな事を考えながら。

「あ、私達はレアチーズケーキで」
「ぼ、僕お金持ってないよ!?」

ピンク色の髪をした少女の注文に、栗色の髪の男子が慌てた。

(無銭飲食か?)

そんな事を考えながらも、僕は、あらかじめ作っておいたレアチーズケーキをお皿に乗せて4人の前に出した。

「はい、レアチーズケーキです」
「いただきます」
「「「いただきます」」」」

ピンク色の髪の少女は礼儀正しくケーキを食べていく。

「こ、浩ちゃん」

小声で神楽が慌てた様子で表の方を見ながら声をかけてきた。
何だと思いながらその方向を見ると、視線が集まっていた。
僕達ではなく、今ケーキを食べているピンク色の髪の少女に。

「御馳走様でした」

そんな時、食べ終えたのか、ピンク色の髪をした少女は礼儀正しく呟いた。

「ねー、ナナちゃん。おいしかったねー。何点ぐらいかなー?」

すると、橙色の髪をした少女が唐突にピンク色の髪をした少女に囁いた。

「……69点」
「へ?」
「なッ!?」

突然告げられた言葉に僕は固まり、神楽は目を見開いた。
今、彼女点数を言ったような……素人なのに、本格派だなーと感心していると……

「ちょっとあなた! ど素人のくせに料理に点数をつけるなんて何様のつもりよ!!」

神楽がピンク色の髪の少女に向かって声を荒げた。

「料理の”り”の字も知らない小娘風嬢が、偉そうに――「うるさい」――ペプシ!?」

僕はとりあえず、大声で罵声を浴びせる神楽をメニュー表を振り下ろして黙せた。

「店の者が多大なるご無礼をおかけしました。本当に申し訳ございません」
「あ、いえ。その本当の事ですから」

何度も何度も深々と頭を下げる僕に、少女は優しく許してくれた。

「彼女は、ちょっとばかし気性が荒いことがありましてね、時たまこうなるんです。皆様も申し訳ありませんでした」
「び、びっくりしたよー」
「これがいわゆる、鬼に金づちですね」

僕の謝罪に、橙色の髪の少女は肩を落としながら呟いた。
どうやら本当に驚いたらしい。
それにしても、銀色の髪の少女の慣用句、微妙に間違ってないか?

「ところで、どうして69点なのか……説明していただいてもよろしいでしょうか? 今後の参考にしたいので」
「えっと………レアチーズケーキのチーズに混ぜてある牛乳が、チーズの甘みをうまく出しています。ですが、少々後味が悪く感じます」

少女の言葉は意外にも非常に役に立った。

「なるほど………おそらくはチーズケーキの甘みをうまく引き出す牛乳の量が多すぎたんですね。今度は量を減らしてみますね。ご意見ありがとうございます」

僕は、もう一度少女にお礼を言った。

「ところで、あなた方は生徒会の方ですか?」
「え!? どうして分かったんですか!?」

僕の問いかけに、男子が驚いた様子で聴いてきた。

「勘です」

本当は、銀色の髪の少女の情報を調べたからとは言えない。

「その生徒会のメンバーは、何人でしょうか?」
「えっと………5人です」
「そうですか………ちょっと待っててくださいね」

僕は、そう告げると、フライパンで牛肉を焼く。
その牛肉をお持ち帰り用の使い捨て容器に入っているご飯の上に盛り付ける。
そして、レアチーズケーキを取り出して牛丼と一緒に袋に入れると、また使い捨て容器に入っているご飯の上に牛肉を盛り付ける。
それを何度も繰り返して、大きな袋の中に15個分のそれを入れると、彼女たちの前に差し出した。

「あの、これは?」
「これは当店自慢のスペシャル定食のお持ち帰り用です。これを生徒会の皆様と、ご両親の方と食べてください」

栗色の髪の男子の問いかけに、僕は丁寧に答えた

「でも、これは頼んでいませんが………」
「あ、それは先ほどのお詫びとご意見のお礼のしるしです。なので、料金は結構です」

僕の言葉に、5人が驚いた様子で僕を見てきた。

「ですが、それ以外のご注文に関しては料金は支払っていただきますので」
「あ、はい。えっと………」

男子は、何故か戸惑った様子で言葉を詰まらせた。

「あ、申し遅れました。私、当店ムーントラフトのマスターの、大森 浩介と申します。そして、そこに転がっているのはウェイトレスの西田さんです。今後もどうかご贔屓に」
「咲良シンです」
「夕霧ナナカです」
「ロロット・ローゼンクロイツです」

僕が名前を名乗ると、男子…咲良君とピンク色の髪の少女、夕霧さん、そして銀色の髪の少女のローゼストイツさんが名前を名乗った。
ちなみに、他の二人はすでに外に出ていた。

「「「ありがとうございます」」」
「いえいえ、こちらこそ」

そして、彼女たちはお店から去って行った。

「何とも異色な奴らだな」

僕はボソッと呟いた。


★ ★ ★ ★ ★ ★


「お、おいしい!」
「うん、とてもまろやか~」
「わーい、牛丼だ―!!」

おいしそうにシンたちが持ってきた牛丼を食べている副会長である、金色の髪の少女、聖沙・ブリジッタ・クリステレスと、生徒会相談係で青色の髪をしている少女、九浄 リア、そして魔族のサリーちゃんの三人を見ているシンたちの姿があったとかなかったとか。
そして、このスペシャルランチが、浩介達の運命を大きく変えることになることに、まだ誰も気づいてなかった。


★ ★ ★ ★ ★ ★


開店から翌日。
今僕達は、非常にあせっていた。
なぜならば……

「お客さんがたくさん来てるよ!?」
「しかも、来ている人全員レアチーズケーキを頼んでいるし?!」

お店にお客さんがたくさん来るようになったからだ。
しかも、今お店は満席状態だ。

(一体何が起こったというんだ?)

僕は、恐ろしいまでの代わり様に、混乱しながら料理を作って行くのであった。

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