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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第6話 急転直下の展開

10月25日

朝僕はいつものように料理を作る。
九条家に料理人として来てから三日、少しは慣れてきたようにも感じた。

「お、もう出来上がってるな。さすがは元シェフと言う事か」
「ありがとうございます」

突然背後に現れた倉松さんにお礼を言いつつ、料理をトレーに乗せていく。
今度はそれを台車で運ばなければならない。
運ぶのは下っ端である僕の役目だ。
さすがは九条家、食材の質が違う。
殆どが高級食材だ。
………今度普通の食材を買おう。

「それでは、行ってまいります」
「頼んだぞ」

そして僕は、料理の配膳をしに行くのであった。










「お待たせしました。どうぞ」

アンティーク調の家具がある、大食堂についた僕は、早速料理を配膳する。
九条家の旦那様と奥様、そして娘のヘレナさんにその妹のリアさんの前に料理を配る。

「それでは、ごゆっくりと」
「待ちなさい」

一礼してから、台車を押して厨房へと向かおうとする僕を止めたのは、旦那様だった。

「ここに来てから三日は経つが、なかなか板についてきたようだな。これからも頑張ってくれたまえ」
「ありがとうございます。それでは」

旦那様のお褒めの言葉に、僕はお礼を言うと今度こそ大食堂を後にした。










その後、僕達も食事を済ませ、旦那様方の食べた食器を片付け終えた時だった。

「浩ちゃ……浩介さん、お電話です」
「僕に? ………すみません熊松さん。少し抜けます」

突然厨房にやってきたメイド服を着る神楽の呼び出しに、僕は後ろにいた倉松さんに声をかけた。

「おう、行って来い!」

倉松さんの許可を得た所で、僕は神楽と共に厨房を後にした。

「どう? そっちの状況は」
「こっちは順調だ」

しばらく歩いたところで、横を歩く神楽が聞いてくる。
それに対してそう答えると、神楽はため息をこぼした。

「良いな~、浩ちゃんは。私なんてメイド長の人に毎日怒られてるんだよ? 『敬語を話しなさい』って」
「いや、簡単なこと………でもなかったな、お前には」

神楽の性格を考えると、かなり難しいだろう。
神楽は縛り付けられるようなことは苦手なのだ。
いや、嫌いと言うべきかもしれないな。
だからこそ、今のこの場所は彼女にとってはここは苦痛なのかもしれない。

「はい到着。それじゃあね」
「頑張れよ」

足早に去って行く神楽の背中に声をかけると、受話器を手にする。

「はい、お電話変わりました大森でございます」
『あ、浩介ちゃん。これからちょっと理事長室に来てもらえないかしら?』

電話に出るなり、唐突にそう言ってくるのはヘレナさんだった。

「理事長室ってどこですか?」
『そうよね………分かったわ、今案内する人を向かわせたわ。その人に案内してもらいなさい』
「………了解」

さすがヘレナさんだ。
拒否権をさりげなく奪ってきている。

『それでは、健闘を祈る』

そう告げて電話は切られた。

「はぁ……」

もはや僕には溜息しか出なかった。










倉松さんに事情を説明して、出掛ける許可を貰い僕は、九条家の前に立っていた。

「大森 浩介さんですね?」

僕に掛けられた声、その声を僕は前に二回ほど聞いていた。
声のする方を見れば、やはりそこには紫色の髪に修道服のようなものを着ていて、その手には分厚い本があった。

「あ、はい。そうです」
「理事長であるヘレナから、あなたを理事長室まで連れてくるようにと言われてきました。メリロットです」

目の前の女性……メリロットさんは、事情を説明した。

「高月 浩介です。一応ここの料理人をやっています」
「ええ、存じ上げておりますよ。それでは行きましょうか」

そう告げると、メリロットさんはゆっくりと歩き出した。
そして辿り着いたのは、流星学園の校舎内にある場所だった。

「ヘレナ、連れてきましたよ」
「うむ、出かしたぞ」

ノックもなしに理事長室のドアを開ける彼女は、やはりヘレナさんの親友の様だ。
それにしても、時代劇風な事をちらちらと混ぜるのは、一体なんなんだ?

「よく来てくれたわね。さっそく本題に入らせてもらうわ」

ヘレナさんは、唐突にそう告げると、話を切りだした。

「実は、プリエ……ああ、よく言う食堂の事ね。そこの厨房で欠員が出たのよ」
「まさか……」

僕は、そこまでの説明で、今後告げられるであろう言葉を予想した。

「私が何を言いたいのかが分かるなんて、さすが浩介ちゃんね。そうよ。君にはプリエの厨房のシェフの役目を任命する」
「ちなみに拒否権は―「そんなものはない」―ですよね」

もう分かり切っていたことだ。
この人に常識は通じない。
良い人には違いないのだが、やってることが時々無茶苦茶になる。

「一つだけ質問を良いですか?」
「どうぞ」

僕は、聞きたかった疑問をぶつけることにした。

「何の目的で、私たちをここ九条家に呼んだのですか?」
「………あなた達が、九条家に来ることがふさわしいと思ったからよ」

僕は、何となくではあるがそれは建前であるような気がした。
そうでなければ、わざわざ店を潰す必要はない。
九条家ほどの力をもってすれば、潰すことが可能なのだと、この三日間で僕は思い知ることになった。
だからこその、考えだ。

「分かりました。では、あと一つだけ」

僕は、納得しておくことにした。
時が満ちればすべてが分かるからだ。

「あなたは、私達の敵ですか? それとも味方ですか?」
「………それはあなた次第よ」

僕の問いかけに、ヘレナさんは真剣な表情で答えた。
この時、僕は二人が味方であると微かに期待していた。

「プリエの厨房のシェフの件ですが、ありがたく拝命します」
「そう……それじゃ、よろしくね」
「失礼しました」

話もまとまり、僕は理事長室を後にしたのだった。

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