「夜天の書の破壊!?」
「どうして!? 防御プログラムはもう破壊したはずじゃ」
話を聞き終わったなのはとフェイトさんは、ハラオウンさんとユーノを問い詰めていた。
「闇の書……夜天の書の管制プログラムからの進言だ」
「管制プログラムって、なのは達が戦っていた?」
「ああ」
アルフさんの言葉に、クロノが頷く。
「防御プログラムは無事破壊できたけど、夜天の書本体がすぐにプログラムを再生しちゃうんだって。今度ははやてちゃんも侵食される可能性が高い……夜天の書が存在する限り、どうしても危険は消えないんだ」
「だから闇の書は、防御プログラムが消えている今の内に、自らを破壊するよう申し出た」
「そんな……」
「でも、それじゃシグナム達も…」
「いや、私達は残る」
フェイトさんが席を立って身を乗り出した時、シグナムの声がした。
「シグナム!?」
「……防御プログラムと共に我々守護騎士プログラムも、本体から開放したそうだ」
「それで、リインフォースからなのはちゃん達にお願いがあるって……」
「お願い?」
そして俺達はシャマルさんからリインフォースさんの頼みを聞いた。
それから少しして海鳴市のとある丘を、俺と健司になのは、フェイトさんの4人で歩いていた。
「……ああ、来てくれたか」
丘の頂上には、魔導書を手にしたリインフォースが居た。
「リインフォース……さん」
「そう呼んで……くれるのだな」
「………」
「貴女を空に還すの私達でいいの?」
「お前達だから頼みたい。お前達のお陰で私は主はやての言葉を聞く事ができた。主はやてを食い殺さずに済み騎士たちも生かす事ができた……感謝している。だから最後は、お前達に私を閉じてほしい」
リインフォースさんにお願いされたのは、夜天の書を俺達の手で消滅させることだった。
「はやてちゃんと……お別れしなくていいんですか?」
「主はやてを悲しませたくないんだ……」
「リインフォース……」
リインフォースさんの答えに、フェイトさんが悲しげに名前を呟く。
「でもそんなの……何だか悲しいよ」
「お前達にもいずれ解る……海より深く愛し、その幸福を護りたいと思える者と出会えればな」
リインフォースさんはそう言いながら、優しく笑った。
すると後ろから誰かがくる気配がした。
おそらく守護騎士のみんなだろう。
「そろそろ始めようか……夜天の魔導書の……終焉だ」
「……覚悟を決めているんですね。リインフォースさん」
俺は今までの会話を聞いて、リインフォースさんにそう声をかけた。
「……ああ、色々と世話になったな。小さな勇者よ」
リインフォースさんは俺ににっこりと微笑んだ。
その笑顔は、とても美しいはずだったのにとても悲しげではかないものだった。
そして、儀式が始まった。
そして儀式が終盤へと進んだ時だった。
「リインフォース!! みんなー!!」
突然響き渡る声に俺達は、驚いて声のした方を見ると、そこには車椅子に乗ったはやてが、息を切らしてこちらに来ていた
「はぁ! はぁ! はぁ!」
「はやてちゃん……」
なのはとフェイトさんは、はやてが現れたことに驚いていた。
「はやて!」
ヴィータは、はやての元に駆け寄ろうとする。
「動くな!! 動かないでくれ、儀式が止まる」
リインフォースさんに一喝され、全員がその場にとどまった。
「あかん! やめて!! リインフォース止めて!! 破壊なんかせんでええ!! 私がちゃんと抑える!! 大丈夫や! こんなんせんでええ!!」
「……主はやて、良いのですよ」
はやての悲痛な叫びに、リインフォースさんは優しく語りかける。
「いいことない!! いいことなんか、何もあらへん!!」
「随分と永い時を生きてきましたが、最後の最後で私は貴女に綺麗な名前と心を頂きました。騎士達も貴女の傍に居ます。何も心配はありません」
「心配とかそんな……」
「ですから、私は笑って逝けます」
「……ッ!! 話し聞かん子は嫌いや! マスターは私や! 話し聞いて!! 私がきっと何とかする! 暴走なんかさせへんって約束したやんか!」
「……その約束は、もう立派に守っていただきました」
「リインフォース!!」
はやての悲痛な声が俺にはつらかった。
「主の危険を払い、主を護るのが魔導の器の勤め……貴女を護る為の最も優れたやり方を、私に選ばせて下さい」
はやての叫びでも、リインフォースさんの決意は覆らないようだ。
「せやけど……ずっと悲しい思いしてきて、やっと……やっと……救われたんやないか……」
はやてはとうとう泣き始めた。
「私の遺志は貴女の魔導と、騎士達の魂に残ります……私はいつも貴女の傍にいます」
「そんなんちゃう!! そんなんちゃうやろ! リインフォース!!」
「……駄々っ子はご友人に嫌われます……聞き分けを、我が主」
「リインフォース!」
はやてが、リインフォースさんの所にさらに近づこうと、車椅子を勢いよく運転する。
「きゃ!?」
何かに車輪が取られたのか、車いすが転倒しはやては車椅子から放り出された。
「あ……!?」
なのはと俺は思わず駆け寄ろうとしたが、さっきリインフォースさんに言われたのでその場に留まった。
「ひっく……なんで……これから……やっと私が……これから、うんと幸せにしてあげなあかんのに!!」
「大丈夫です、私はもう世界で1番、幸福な魔導書ですから」
「……リインフォース」
すると、リインフォースさんははやてのそばまで歩み寄ると、屈んではやてと目線を合わせた。
「主はやて、1つお願いが。私は消えて小さく無力な欠片へと変わります。もしよければ、私の名はその欠片ではなく貴女がいずれ手にするであろう新たな魔導の器に贈ってあげて頂けますか? 祝福の風、リインフォース……私の魂はきっとその子に宿ります」
「……リイン……フォース」
「はい、我が主」
リインフォースさんは、はやての呼び掛けに優しく微笑みながら応えるとはやてに背を向けて、再び魔法陣に戻った。
そして魔法陣がさらに輝きを増した。
「主はやて、守護騎士達、それから小さな勇者達……ありがとう。そして……さよなら」
「ッ!!」
そしてリインフォースさんの姿は、光の粒子となり消えていった。
「あ……」
上空から何か光る物が落ちて来て、はやてさんがそれを受け取った。
「う……」
こうして、闇の書事件は解決した。
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