「ぶっち抜けぇ!!!」
『Protection,extra!!』
「っぐぅ!!」
ヴィータの突撃に、俺はクリエイトの緊急結界で防ぐがとてつもない圧力に突き破られそうになるのを、必死に堪える。
「はぁぁ!!!」
「あたるかよ!!」
俺に気を取られている隙に、背後から健司が切りつけると言う作戦だったが、失敗したようだ。
「クソッ!!」
健司が地団駄を踏む。
もう作戦は数回も失敗しているのだ。
その数10回。
【次はどうする?】
【”あれ”をやってみてくれるか?】
健司の念話での問いかけに、俺はそう答えた。
すると、健司は顔をしかめた。
【あれは、命中率が低いが……それでもいいなら】
俺は健司の念話に無言で頷いた。
「それじゃ、手筈通りに」
俺は健司にそう告げると、一直線にヴィータの方へと向かった。
「せいや―!!!」
「同じ手に食うかよ!バーカ」
俺の単調な一戦攻撃を躱すと挑発してきたが、乗らないようにする。
何せ、このこれは本気でもなんでもないのだ。
だから徴発されても全く気にもならない。
「そう言ってられんのも、今のうち」
俺ははそう告げると、クリエイトを弓形態にして、ヴィータに向けて構えた。
「行くぞ!!ファィアー!」
弓が数本に分裂して、ヴィータへと襲いかかる。
「ちぃ!!」
俺は矢をコントロールする。
そしてヴィータがすべての矢を躱し切った時だった。
「なっ!!?」
ヴィータの両手両足にバインドが展開されたのだ。
「かかったな」
「くそ!!これが目的かよ」
俺の表情に、ヴィータが気付いたのか、悔しげに唇をかみしめた。
簡単に言うとこうだ。
俺の単調の攻撃で、ヴィータに油断をさせたところで、コントロール可能の矢を数本放ちこっそりと設置したトラップ型のバインドのある位置まで誘導する。
後は見ての通りだ。
「あ、ちなみにそのバインドは対物理、魔力タイプだから、魔法とか身体能力を強化しても無駄だ」
その点も抜かりはない。
だが、これが破られるのも時間の問題だ。
だからこそ、今のうちにやってしまうのだ。
「行くぞ!健司!!」
「おう!」
その手に弓を構えた健司が俺の合図に答えた。
「I am the bone of my sword」
「全てを薙ぎ払うは白銀の光」
俺と健司は必殺技を使う準備を進める。
「偽・螺旋剣!!」
「ディザスト・ブレイカー!!」
健司の必殺技と俺の必殺技は、一つの光の傍流となり果て、バインドで身動きの取れないヴィータを飲み込んだ。
こうして、決着はついた。
「終わりだ。聞かせてもらう、なぜ突然俺達を――――――――」
健司がヴィーを問い詰めようとした時だった。
「うわあああああああ!!!」
「ヴィータ!?」
突然断末魔の様な叫び声をあげたかと思うと、ヴィータはまるで砂のように消えて行った。
『………』
何がなんなのかが分からない俺達は、その場で呆然としていた。
【二人とも!! 大丈夫!?】
そんな時、俺達が耳にしたのは、女性……エイミィさんの通信だった。
「あの、これって一体……」
【それは僕から説明しよう】
「クロノ!?」
俺の問いかけに突然聞こえてきたクロノ(本人曰くそう呼べとのこと)の声に、思わず驚いてしまった。
【実は、闇の書の残滓による結界が確認されている。どうも、蒐集されたもののデータをもとに現れているようだ】
「と言うことは、もしかしてあのヴィータも」
【ああ、偽物だ】
健司の仮定をクロノは肯定した。
【なのは達も対処に向かっているのだが。出来れば君たちも対処に向かって欲しい】
「了解だ(です)」
俺と健司は即答でクロノに答えた。
【悪い。今その近くで巨大な魔力反応を感知した。それと今なのはが大きな魔力を持った人物と交戦中だ。出来ればそっちにも援護に行って貰いたい】
「分かった」
【頼んだ】
クロノはそう告げると、通信を切った。
「闇の残滓による偽物か」
「分かっていても、何だか複雑だ」
俺と健司はそう呟いていた。
いくら偽物だとわかっていても、自分の仲間を攻撃すると言うのは心が痛む。
「それにしても、二か所か」
「二手に分かれて行った方がいいな」
俺と健司はクロノから聞いた情報を整理した。
「俺はなのはの方に行くから、健司はこの近くにいる大きな魔力反応がある場所に向かって貰っていいか?」
俺はしばらく考えたのちに、健司に尋ねた。
それは健司の能力の高さを考えたものだった。
「分かった。しっかりとやれよ真人」
「そっちもな」
俺と健司は互いに軽口をたたきながら、それぞれの場所へと向かっていく。
俺はなのはと交戦中の、大きな魔力反応がある場所へ、健司はこの近くにある大きな魔力反応があった場所へ。
こうして、事件は幕を開けた。
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