闇の書事件が解決した次の日。
「遅いわよ! 真人!!」
「わ、悪い」
俺は終業式の後、なのはからすずかの家に来るように言われたのだ。
だが、家に戻ったら待っていたのは両親の説教だった。
無断外泊が主な理由だった。
そのため約束の時間に遅れてしまったのだ。
約束の時間に遅れること数十分。
ちなみに、そこにはアリサやすずかはもちろんのこと、健司やはやてとなのは、フェイトさんもいた。
「それで、なんでこんなに来るのが遅いのよ」
俺が座ったのを見計らってアリサが俺に聞いてきた。
「いや、昨日の無断外泊の事でみっちり絞られてたんだよ」
「それじゃ仕方ないわね」
理由を聞いてアリサ達から同情のまなざしが浴びせられた。
「と、ところで、なんで俺は呼ばれたんだ?」
「そうだった、大事な話ってなんなの?」
俺の問いかけに、アリサは思い出したようになのは達に問いかけた。
「うん、昨日の事なんだけど―――」
「あのね、実は私達―――――」
フェイトさんとなのはが話し始めたのは、二人が魔導師であること。
そして二人の出会いだった。
「なるほど」
「魔法なんて漫画の世界だけだと思ってたわ」
話を聞き終えたすずかとアリサが感慨深そうに口にした。
俺としては、信じている二人の方がすごい。
「大体わかったんだけどさ、一ついい?」
「何かな?」
突然聞いてきたアリサに、小娘が質問を促す。
「真人はどうやってその……魔導師とかになったのよ?」
「えっと……それは」
アリサの鋭い質問に、俺は答えられなかった。
【執行人。話してもいいか?】
俺は念のために、執行人に念話で確認した。
【お前自身で決めろ。その者達が信用に足るものであれば、話すといい】
俺の問いかけに、執行人はそう言い放つと一方的に念話を切った。
「真人?」
「あ、ああ。すまない。実はな――――」
そして俺は、魔導師になった経緯を話した。
「何ともまあ、あんたもすごい体験してるわね」
呆れたようなまなざしで俺を見るアリサと、呆然としているすずかの姿があった。
「ヴィータが乱暴してごめんな後で叱っとくさかい、堪忍してや」
はやての目に投資が見えたような気がしたので、俺はあえて触れないようにした。
その後、軽く雑談をしてすずかの家を後にした。
「なあ、真人」
「何?健司」
家が同じ方向なため、一緒に帰っていると、健司が突然口を開いた。
「これからも、お前のそばで、魔法の勉強をして貰ってもいいか?」
「え、でもお前は―――――――」
健司は俺の”転生者だから大丈夫なんじゃ”と言う言葉を遮って健司は話を続けた。
「俺のはただのごり押しだ。でも、真人の方は違う。だから俺も一緒に魔法の事を勉強させてほしい」
「ようやくその気になったか少年よ」
健司が頭を下げると、どこからともなく執行人が姿を現した。
「最後に聞くぞ。僕の訓練はとてもつらいものだ。それでも最後までやりとおせるのだな?」
「ああ」
執行人の問いかけに、健司は執行人の目をまっすぐ見て頷いた。
「よろしい。では、少ししたらお前の方も魔法の稽古をつけてやろう」
「ところで、だ」
俺は一つだけ気になっていることを聞くことにした。
「何だ?真人よ」
「なんで、俺達に見えてるんだ?」
俺の言葉の意味を理解したのか、執行人が答えた。
「お前の力が上がったことで、僕は姿を見せたりすることが出来るようになったんだ」
「なるほど」
「他にも単独での攻撃魔法の行使や、ユニゾンが出来るようになった」
執行人がさらに伝えてくるが、一つだけ気になった単語があった。
「ユニゾンってなんだ?」
「融合のようなものだ。融合することによって戦闘能力などを上げることが出来る。ただし失敗したらただでは済まないがな」
所謂もろ刃の剣と言うものか。
「やり方は?」
「体の一部分を合わせて”ユニゾン・イン”と唱えるだけでいい。あとは行動権を持った方が体を動かす」
執行人は最後に、”まあ、そうそうやる機会はないだろうが”とつぶやいた。
俺としてはかなり残念だが。
そんな時だった。
「ッ!!?これは」
「結界!!?」
突然俺達の周囲に結界が展開されたのか、周囲の風景が変わった。
俺はこの感覚を知っている。
最初のころにヴィータと遭遇するきっかけになった閉じ込めの封鎖領域だ。
「見つけたぞ!」
「なッ!!?」
突然の声に、俺は上空を見上げると、そこには橙色のゴスロリ風のバリアジャケットに身を包んだヴィータの姿だった。
「お前らの魔力、貰っていく!!」
ヴィータはそう言ってツッコんでくる。
「無駄だ!! 熾天覆う七つの円環(ろー・あいあす)!!」
健司が前方に出て片手を前方に掲げ唱えた瞬間、目の前に七枚の花びらが現れヴィータのグラーフアイゼンの攻撃を防ぐ。
「一体何のつもりだ!!」
「うっせぇ!! とっとと倒れろ!!」
健司の言葉に、ヴィータは聞く耳を持たない。
「ああくそ! 真人!! 行くぞ!!」
「了解!!」
そして俺達の戦いは幕を開けたのであった。
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