健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第22話 騒動の終わり

ガジェットたちを破壊しつくした俺達は、六課へと戻った。
ヘリポートにはシャーリーが立っていた。

「ええ!?」
「ご、ごめんなさい!」

なのはは呆れたような声をあげた。
そんななのはに、シャーリーは両の手の平を合わせ、謝る。
なんでこんなことになっているのかと言うと……

「ダメだよ、シャーリー。人の過去勝手にバラしちゃ」

そう、なんとシャーリーは僕となのはの過去を勝手に話したのだ。
僕といても、8年前のは特に厳重に消し去っておいてほしい物なのだが。
………本当に

「ダメだぜ、口の軽い女はよ」

なのはに続いてヴァイスも窘める。

「その……なんかこう……見てられなくって」
「ま、どうせばれることだしな」
「………そうだね」

腕を組みながら発したヴィータの言葉に、俺は頷いた。

「シャーリー、ティアナ今どこにいるかな?」

なのはは心配そうな表情で、シャーリーに尋ねた。

「えっと、たぶん……海岸の方だと」
「なのは、しっかりと話し合い、して来いよ」

俺に出来たのは、そう言うだけだった。
こんな時、非常に俺は弱いのだと感じる。

「……うん」

俺の言葉に頷いたなのはは、そのまま歩き出す。
それを見送って、俺も自分の部屋へと戻った。










部屋にいると、突然ドアをノックする音がした。

「誰?」
「ティアナ・ランスターです」

その声に少しばかり固まってしまった。
だが、すぐに気を取り直すと、入るように告げた。

「失礼します」

そう言って中に入るティアナ。
目が赤いことから泣いたことは分かった。

「……なのはとは話し合った?」
「はい。……その、真人さん」
「ん? 何かな?」

俺は、ティアナに用件を聞く。

「えっと、前にひどいことを言ってすみませんでした。私、まさか真人さんがあんな体験をしてるだなんて――――」

俺は頭を下げながら必死に謝罪するティアナの頭に手をのせて、止めさせた。

「気にしなくていいよ。逆にこっちが謝る方だ、俺も色々と酷いことを言ったんだから」
「い、いえ! 私が悪いです」
「いや、こっちが悪いんだよ!」

俺の言葉に、反論するティアナと、それを否定する俺と言うある意味すごいループが出来てしまった。

「「………ぷ! あははは!!」」

そして、何時しかそんな事がおかしくなって吹き出してしまった。

「ティアナ、これはまじめな話だけど、自主練するなとは言わない。でも、するにしても程々にすること。あとは人に頼ること。ティアナの周りには心強い仲間がいるんだから」
「……はい!」

俺の言葉に、ティアナははっきりと返事をする。
その時の顔色は、今までよりも輝いていた。

「さ、もう遅いし部屋に戻って休みな」
「はい。………その、ありがとうございます」

ティアナは最後にそう言い残して、部屋を後にした。

「………」

再び部屋が静寂で包まれた。

「………ありがとう……か」

俺はティアナに言われた言葉を復唱した。
俺はこの時、ある決心をしていたのだ。

「………寝よう」

その決心を忘れないようにしながら、眠りにつくのであった。

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第16話 ホテル・アグスタ

俺達は今警備任務のために、ホテル・アグスタに来ている。
中ではやてとなのはと共に見回りをしているのだが……。

「二人とも、ちょっといいか?」
「な、何かな?」

なのはがよそよそしく答えた。
ちなみになのはのこの様子は出張任務が終わってからずっとだと言う事を書いておこう。

「仮装大会か? ここは」

二人の姿は六課での制服ではなくドレスだったのだ。
俺と健司は黒のスーツを着せられた。

「そんなんやないって、こうしとけば管理局だとは思われへんやろ?」
「確かに、そうだな」

俺ははやての説明に納得した。

「それじゃ、俺は念のために外の方に行ってくる」
「うん了解や。こっちはうちらに任せてな」

俺ははやてにそう告げると、その場を去ろうとした。

「似合ってるよ、なのは」

その前に、俺はなのはの耳元でそうささやいた。

「ッ!?」
「ど、どうしたんや? 顔が真っ赤やで?」

俺の言葉が相当効いたのか、どうやらなのはは顔を赤くしたようだ。
俺は、後ろを振り返らなかったから見れなかったが。










【前線各員へ。状況は広域防御戦です。ロングアーチ01の総合管制と合わせて私、シャマルが現場指揮を行います】

それからしばらくすると、突然伝えられてきたシャマルの通信。

「どうやら、外の方にガジェットが出現したようだ」

執行人の言葉を聞いて、俺はシャマルに念話を飛ばす。

【シャマル、俺と執行人も外に出ます】
【分かりました。ガジェットのデータをそっちに送ります!】

シャマルから送られてきたデータによると、森の部分に集中している。

「執行人、俺は出入り口のあたりから遠距離攻撃をする」
「OK、僕はお前の補佐だな」

俺と執行人はクリエイトを手にしながら表に出る。

「ブレイクイヤー・マルチショット」

そして表に出ざまに遠距離用に10本の矢を具現化させて構える。

「ターゲットロックオン。ファイアー!」

そしてガジェットに照準を合わせて遠距離攻撃を行った。

(この調子でいけばいいんだけど)

そう思いながら先にある森の方に移動した。
防衛ラインには新人たちがいるはずだ。
だとすれば俺は、前に出て後ろに敵陣がいかないようにしなければいけない。
そして森に入ってしばらくした時だった。

「ッと、出てきたな。これは噂のⅢ型か?」

そう呟いた瞬間、ガジェットがこちらに向けて光線のようなものを出して攻撃してきた。

「ブレイク・イヤー!!」

俺はそれを避けつつ、矢を射る。
だが……

「弾かれた!?」
「これは………気を付けろ! こいつは有人操作だ」

驚く俺に、執行人が注意を飛ばす。

(だったら!)

俺は高速でガジェットの目前まで移動する。

「悪魔断拳!!」

そしてガジェットに向けて3回連続で殴りつけると後方にジャンプして回避する。
その瞬間、ガジェットは大きな爆音を上げながら爆発した。

「真人、後ろに行くぞ。このままだと防衛ラインを越えられる」
「了解!」

俺は執行人の警告に頷き、急いで後ろに引き返した。


★ ★ ★ ★ ★ ★


「はあああ!!」

俺はガジェットの一機を剣で切り付ける。
すると、ガジェットは爆音を立てて爆発した。
だが、俺の周りにはガジェットが大量にあった。
つまり、俺は囲まれていたのだ。

(クソッ! こうしてる間にもティアナの野郎がやらかすのに!!)

俺は心の中で舌打ちを打つ。
この先の展開を知っているからこそ、俺は慌てているのだ。
そして俺は、再びガジェットを討伐するのであった。


★ ★ ★ ★ ★ ★


俺は、上空を飛びながら防衛ラインへと向かっていた。

(あれは、スバルのウイングロードか?)

しばらくすると、目の前に青い何かが見えてきた。
それを俺は、瞬間的にウイングロードだと認識できた。
その上を走るスバルに青い光線が放たれる。

【強力な魔力反応だ。これはティアナの様だな】
「ティアなのか?」

俺は嫌な予感を感じた。
なので、俺はさらに速度を上げる。
そしてその予感は的中してしまった。
俺が見たのは、スバルに迫る一発の魔法弾。
それは、ティアナのクロスファイアーだった。
咄嗟だった。
俺はスバルの前方に出ると紫色の杖を掲げる。

「神性典・第2章、無を促す光の環!」

その言葉と同時に、前方に広がった黄緑色の円陣にティアナのクロスファイアーが当たった瞬間、それはまるで最初からなかったかのように消えた。

(出来たの………か?)

俺は自分が使った技の感傷に浸っていた。

「山本……副隊長?」

それは聞こえてきたティアナの声によって遮られた。

「何をしてるんだ? お前たち」
「ッ!?」

俺の静かな声に、ティアナは息をのむ。
俺は今まで一度も大声でどなり散らしたことはない。

「あ、あの。これはコンビネーションの一環で」
「コンビネーション? なるほどね、だがいくらコンビネーションだとしても容認は出来ないな」
「お、おい何やってんだよ!」

そんな時、ヴィータがやってきた。

「ヴィータ副隊長。この二人の配置を裏にしてください」
「な、何があったんだよ!」

俺の要求にヴィータが聞いてくる
裏に配置を変えると言うことは、事実上の戦力外通知になる。

「詳しい事情は後で説明しますが、危険行為を確認しました。こうしている間にも事態はひっ迫して行きます。早急に対処を」
「……二人とも、山本の言うとおりに裏の方に移動しろ」

二人は、ヴィータの指示を素直に聞いて裏の方に歩いて行った。

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第18話 衝突

あれから数日間、ティアナは相変わらずオーバーワーキングを続けていた。
さらにはスバルまで参加するほどだ。

「なあ、本当にいいのかよ?」
「………」

上空から二人の朝練を見ている俺の横にいた健司が俺に問いかけてくる。

「あの二人のやろうとしていることは、完全になのはの教えに反しているぞ」
「それが、二人が考えた結果であれば俺はそれを尊重する。それに一度ばかして大きくぶつかった方がいいんだ。その方が手っ取り早い」

俺の中では、ティアナ達となのはをわざと衝突させて話し合いでの解決に持っていこうと考えていたのだ。
俺の様な第三者が言うよりは彼女の方がより説得力があると考えたからだ。

「ま、お前がそう言うんなら何も言わないが………」

この時、俺は気付いてなかった。
この俺の選択が後に、最悪な事態を招くことになるとは。















それはある日の午前中の訓練の時の事。

「さーて、それじゃあ午前中のまとめ、2on1の模擬戦やるよ! まずはスターズからやろうか? バリアジャケット、準備して!」
「「はい!」」

なのはの指示にティアナとスバルは、返事をする。

「エリオとキャロはあたしと見学だ」
「「はい」」

ヴィータはエリオとキャロを連れて戦闘区域外の、近くの廃ビルの屋上へ向かった。
その間にティアナとスバルは、バリアジャケットを展開して戦闘準備をする。

「やるわよ! スバル!」
「うん!!」

ティアナの言葉に、スバルは元気に返す。
俺はそんな二人の様子を冷ややかな目で見ていた。

「真人、早く行くぞ」
「ああ」

健司の促す声に、俺はそっけなく返事をすると、三人が向かった屋上の方へと向かった。










廃ビルの屋上へたどり着き扉を開けると、そこにはヴィータ、エリオ、キャロがいた。
そして模擬戦が始まってからしばらくした後で、フェイトがやってきた。

「あぁ、もう模擬戦始まっちゃってる?」
「フェイトさん!」

ビルの屋上に着いたフェイトに挨拶をするエリオ。

「私も手伝おうと思ってたんだけど」
「今はスターズの番」

ヴィータはフェイトを見て、現在の進捗状況を伝えた。

「……ホントはスターズの模擬戦も引き受けようと思ったんだけどね」

フェイトはそう言うと上空にいるなのはを心配そうに見上げた。

「ああ。なのはもここ最近は訓練密度が濃いからな。……少し休ませねーと」

ヴィータもなのはの最近のオーバーワークを心配しているようだ。
かくいう俺もだが。
何せ、あの事故の時もなのはは過労状態だったのだから。

「なのは、部屋に戻ってからもずっとモニタに向かいっぱなしなんだよ。訓練メニュー作ったり、ビデオでみんなの陣形チェックしたり」
「なのはさん……訓練中も、いつも僕達のこと見ていてくれているんですよね……」

フェイトの言葉を聞いたエリオは感慨深げに語る。

「ほんとに……ずっと……」

キャロもエリオに賛同するように嬉しそうになのはを見ている。

「おっ、クロスシフトだな」

ヴィータが下にいるティアナを見てつぶやいた。
ティアナの周囲に10個程の魔法弾を展開している。

「クロスファイアー……シュート!」

ティアナは魔法弾をなのは向けて放つ。
だが、その魔法弾はかなりスピードが遅い。

「……? なんかキレがねーな」

ヴィータはティアナのクロスファイアーに、いつもの勢いが無いことに首を傾げていた。

「コントロールはいいみたいだけど……」
「いや、それにしたって……」

そんなヴィータにフェイトは正確なコントロールの点を指摘するが、それでもヴィータは釈然としていない。

(速度を落として、命中率を上げたのか? だとしてもあれだと避けられやすくなるのが落ちだ。と言うことは)

俺は一人で考察していきついたのは、”次の手への布石”と言う事だった。
にしてもあんなやり方じゃ、なのはには……
そしてクロスファイアーは、飛んで回避するなのはの後ろを追尾し続ける。
すると、なのはの前にスバルのウィングロードが展開する。
なのははとっさに魔法弾を数発展開させる。
そしてなのはは迫り来るスバルを確認する。

「………フェイクじゃない? 本物!?」

なのはは即座に魔法弾を、前方のスバルに向けて放つ。
だがスバルは飛んでくる魔法弾をシールドで防御はするが突進をやめる気配はない。
何個かの魔法弾は、スバルのシールドを突破し、スバルの体をかすっていく。
そして、全ての魔法弾を捌ききると、スバルはなのは目掛けてリボルバーナックルを振りかぶった。

「うおりゃあぁぁぁッ!!」

なのはは咄嗟にレイジングハートでシールドを展開し、スバルの攻撃を防御する。
一方のスバルは力押しで、なのはのシールドを破ろうとしているのか、回避するそぶりを見せない。
勿論だが、今の様な戦い方はなのははおろか、俺も教えていない。
なのははスバルの無茶な突進に顔を顰める。
そしてなのははレイジングハートを振り、スバルを弾き飛ばす。

「きゃあぁぁぁッ!?」

弾き飛ばされたスバルは、なんとかウィングロードの上に着地する。

「こらスバル! ダメだよ、そんな危ない軌道!」

なのははスバルを叱りながらも、ティアナのクロスファイアーを避け続ける。

「すみません! でも、ちゃんと防ぎますから!!」

スバルの言葉に、なのはは怪訝な顔をする。

(防ぐとはどういう意味だ? それに、ティアナの奴はどこに行った?)

俺はティアナの姿が見当たらないことに気付き、慌てて見渡す。
すると廃ビルの屋上から光が発せられた。
そこには、ティアナが砲撃準備し、なのはをロックしている姿があった。

「砲撃?! ティアナが!?」

その様子にフェイトは驚いている。
俺の記憶の範囲内では、そのような物を教えていた記憶はない。
元から持っていたと言う可能性もあることにはあるが。

「おう!!」

スバルが答えるのと同時にリボルバーナックルのカートリッジをロードし、マッハキャリバーがうねりを上げると、マッハキャリバーの突進力で一気になのはとの距離を詰めた。
スバルは、リボルバーナックルを振り上げ、なのは目掛けて体ごと突撃する。
対するなのはは魔法弾を展開するが、スバルはそれ等を全て避け、拳の届く距離まで近づき、リボルバーナックルを振りかぶった。
だが、なのはもレイジングハートでシールドを展開しリボルバーナックルの攻撃を防ぐ。
両者の魔法がぶつかり合い、火花を散らせる。
なのははスバルの攻撃を防御しつつ、ティアナの方を見る。
すると、砲撃準備をしていたティアナは、その場から消えてしまった。
つまりは、幻影と言う事だ。

「あっちのティアさんは、幻影!?」
「本物は!?」

キャロとエリオが慌てて周りを見回す。
俺も辺りを見回してティアナの姿を探す。
だが、彼女の姿はすぐに見つかった。
そう、なのは達の頭上に展開されたウイングロードを走るティアナの姿が……

(なるほど、そういう事か)

俺はようやく想像が出来た。
おそらくは頭上からの接近戦をしようとしていると。
ティアナ達の早朝特訓は、近距離戦を想定している。
そんな俺の予想を肯定するように、ティアナの持つクロスミラージュの銃口部分から魔力の刃が現れた。
そして、その刃をなのはに向けて飛び込む。

「一撃必殺! でえぇぇぇいっ!!」

次の瞬間、三人のいる場所から爆煙が上がった。

「なのは!?」

爆風で俺達は目をかばっていた。
フェイトはなのはの心配をしていた。

爆煙が晴れると、そこには片手でリボルバーナックルを受け止め、もう片方の手ではクロスミラージュの魔力刃を素手で掴んでいるなのはの姿があった。
何かを言っているようだが、俺には聞こえなかった。
するとティアナは、クロスミラージュの魔力刃を解除し、なのはから離れた所にあるウイングロードに飛び退いた。
そして、体制を立て直し、クロスミラージュをツーハンドで構え、カートリッジをロードすると、ティアナの前に魔法陣が展開し、砲撃準備をしていた。

「私は! もう……誰も傷つけたくないから!! 無くしたくないから!!」

ティアナは涙を流しながら、なのはに自分の思いをぶつける。

「だから! 強くなりたいんです!!」

ティアナのその独白に、俺は頭を殴られたような衝撃が走る。
俺はようやく気付いた。

(何をやってるんだよ。俺は)

俺のやっていることは、愚かな事であったと言う事に。
俺は、彼女の思いを理解もせずに、ただ兄が役立たずと言われたことを気にして強くなろうと思っていると決めつけていた。

「うあああぁぁぁ!! ファントムブレ――――」

ティアナが砲撃魔法を言い終わる前に、なのはは魔法弾(おそらくクロスファイアー)をティアナに向けて放った。
そして、それはティアナに命中し、爆発した。

「ティア……!? ――――!?」

スバルはティアナの所へ駆け寄ろうとしたが、その体にはバインドがかけられていた。
スバルはなのはを見るが、なのははティアナから視線を離さない。

爆煙が晴れかけると、そこにはフラフラ状態となっているティアナの姿があった。
その様子は、今にも倒れそうであった。

「健司、頼むぞ」
「ああ」

俺は健司にそれだけ伝えると、急いでティアナの前まで向かった。
そんな時、なのはは無情にも二発目の魔法弾をティアナに放とうとしている。

「なのはさん!!」

スバルの悲痛な叫びも空しく、なのはの指先から魔法弾が発射された。

(間に合え!!)

そして、俺は間一髪でティアナの前にたどり着くが、シールドを展開するような余裕はなかった。

「はぁぁ!!」

俺は右手に魔力を込めて魔法弾を跳ね飛ばす。

「ぐぅぅ!!?」

同時に右手に痛みが走る。
それも当然だ。
いくら魔力を込めて補強したと言っても、生身の体同然だ。

「一体なんの真似かな? 真人君」

なのはがこっちを睨みつけながら問いただす。
その眼には光がなく、まるで魔王を彷彿とさせるような姿だった。
俺は右手の痛みをこらえながら俺はなのはを見据える。

「何の真似って、これ以上の暴行は認められないからな」
「これは暴行じゃないよ? 頭を冷やすための教導だよ」

俺の言葉に、なのははそう切り返してくる。

「教導? 俺には教導には見えない。ティアナのやった危険行為に対してならあの一発で十分だ。二発はやりすぎだ」
「何が言いたいの?」

俺の言葉に、なのはが眉を顰めながら聞いてくる。

「つまり、お前のやっていることは自分の言うとおりにしてくれないから暴力で言う事を聞かせる子供だっていう事だ」
「そんな言い方、いくら真人君でも許せないよ。この二人は私の教えに背いたんだよ?」
「だったら、お前はちゃんと伝えたのか? この教導の意味を」

俺はなのはに問いただす。

「………」
「その沈黙は伝えていないと取るぞ」

俺はなのはにそう告げると、言葉を続けた。

「どんな優秀な人間でも、会話もしないで相手の本心を理解できるなんてことは出来ない。だからこそ、話し合いって必要なんじゃないのか?」
「……い」
「それをしないで思いが伝わるだなんてことは、絶対にない!! それはお前が一番知っているはずだ」
「うるさい!!!」

俺の言葉になのはは大きな声で叫ぶ。

「真人君も、頭冷そっか」

そう言って俺にレイジングハートを突き付けてきた。
本人はやる気だ。

「愚かだ」

俺は口を継いで出てきた。

「何がかな?」
「話し合いもせずに、自分の理想が伝わると思い込んでいるお前がだ」

俺の言葉を聞いたなのは野視線がさらにきつくなる。

「まあ、その条件を当てはめるのであれば、俺も十分愚か者だけど」

相手の気持ちを考えずに人任せにした俺は、偽善者と言っても過言ではない。
だからこそ

「俺は全力を持ってお前を止める!!!」

そして、俺はクリエイトを取り出す。
姿はいつもの青いシャツに銀色のジャケットのバリアジャケットではなく、転生者の狩人である黒一色のマントだ。
そして、俺となのはの戦いがいま幕を開けた。

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第14話 狩り人

ロストロギアの反応を察知した俺達機動六課メンバーはその対処に向かったのだが

【真人、転生者の反応ありだ】

執行人からの通達に、俺はこっそりと現場を離れた。
全ては毒を排除するために。


★ ★ ★ ★ ★ ★


やあ! 愚民ども!!
俺様の名前は阿久津(あくつ) 正(ただし)様だ!!
俺様はくそが身に間違えて殺されて、そのお詫びをかねて転生されたんだ。
まあ当然だな、この俺様を殺すだけでも罪深いのだ。
それはそうとリリカルなのはだぜ!!
いやっほぅ!!
ハーレムを築いてモテモテ背簡素ライフの始まりだ!!
ッと、俺様のかっこいい容姿を説明してやろう。
女顔で、赤い長めの髪に赤い眼SA!
貴様ら愚民には到底たどり着けないよな。
ん? なんだ? 愚民と言うな?
本当のことを言って何が悪いのさ!
俺は今この世界最強だ。
確かStrikersの世界だったな。
男は全員消してハーレムを築くか!!
そう言えば、転生者を狩る不届きな野郎がいるって言ってたな。
ま、この俺様に掛かれば火を見るより明らかだがな
ふははははは!!
そんな時だ。

「そこで、気味の悪い妄想に浸っている変態」
「ん?」

畏れ多くも俺様を変態と言ってきた野郎は黒一色のマントに白い仮面をかぶっている野郎だった。


★ ★ ★ ★ ★ ★


俺は今、転生者の姿を確認した。

(うわぁ~)

【これはまた強烈だな】

しかし、感じたのは嫌悪感だけだった。
外見ではなく、中身からにじり出てくる穢れが俺の気分を悪くして吐き気を催させる。

(とっとと終わらせよう!)

そう言って俺は前に踏み出た。

「そこで、気味の悪い妄想に浸っている変態」
「ん?」

俺の声に反応した男がこっちを見た。

「無礼者!! この誇り高き俺様に変態とは、死刑物だ!!」
「………それは失礼。では、一つお尋ねしましょうか?」

俺ははらわたが煮えくり返りながらそう言った。

「まあ、愚民どもの問いかけに答えてやろう。何たって、俺様は世界最強なのだからな! ふははははは!!!」
「お前は転生者か?」

気持ち悪い妄想ごとを言いながら笑う男に、俺は疑問をぶつけた。

「ああそうさ! 俺様はなくそ神に殺されて、ここに転生された、阿久津正様だ」

(いっそそのまま地獄にでも送ればいいものを)

俺は内心でため息をつく。
だが、気を取り直して、右手に剣状のクリエイトを具現化する。

「では、阿久津正、貴殿をこの世界の害と認定し排除する」
「はははは!! そうか、お前が転生者を狩る不届きな野郎か。最強の俺様に勝てるとでも思ってるのか?」

男が大きな声で笑う。
俺の事を知っているあたり、良いのか悪いのかは複雑だ。

「では、俺様の力、見せてやるぜ!!」

男はグローブのような物を手に付けながら、大きな声で叫んだ。
あれはいったい何なのだろうか?

「行くぜ! ゴールデンゴッドハンドぉ!!!」

そう叫びながら、俺に殴りかかってくる阿久津。
だが、その勢いは完全に遅い。
それ故俺の場所まで届かない。
なので、俺はそれを横に移動することで交わした。

「俺様のパンチを防ぐとはなかなかだ。だが、これで終わりだ!!」
『Full Drive!!』

阿久津が宣言した瞬間、阿久津の体を覇気のようなものが覆い尽くす。
何が起こるのかと警戒を強める。
すると、突然男の手に一本の剣のようなものが現れた。

「行くぜ! 俺様の必殺技! ゴッドブレイド!!!」

大層病気的な技名をつける物だと思いながら、俺は剣を見つめる。
大振りで狙いがつけられていない。
しかも剣の握り方から避けられたら隙が出ることは間違いない。
俺の取った行動は……

「なッ!?」

あえて突進して、阿久津が作り出してしまった開き空間に入り込みクリエイトを振りかぶる。

「一刀両断!」
「ガフ!?」

その一撃によって、阿久津の変身は解け、後方に大きく吹っ飛ばされた。

「な、なぜだ!! なぜこの最強の俺様の攻撃が!!」
「確かに、お前の持つ”力”は最強だ。だが、所詮そこまでだ。当然だよね、何もしていない素人が、最強になれるわけがないのだから。それなのに最強だとか言えるお前の馬鹿さ加減に笑えてくる」

俺の言葉に、阿久津が睨みつけてくる。

(まだそんな余裕があるんだ? まあ、その方が俺もやりがいがある)

「黙れ!! なのはやフェイトは俺様のものだ!!!」
「貴様こそ黙れ。あいつらはお前だけの物ではない」
「勝った気になるな!! 俺様はまだ負けて――――」

俺は立ち上がろうとする阿久津の両腕を切り落とした。

「がああああああああ!! 腕が! 腕がああああ!!?」
「そうだ、叫べのた打ち回れ」

俺は阿久津の悲鳴に酔いしれていた。

「貴様……何者……だ!」
「お前らの様なウイルスを排除する存在さ。お前が強ければ強いだけ、俺の能力も高くなる。まあ、お前と違うのは10年もの間戦闘経験を積んだぐらいだが」

俺は見下すように答えた。
戦ったこともない素人に、俺が負けるなどそれこそありえないのだ。

「いい機会だから教える。戦いでは能力もそうだが、経験値や知能も非常に左右する。今までロクに戦ったことのないやつが、能力だけで最強の座に君臨できると思い込んでいる屑が、お前たち転生者さ」
「く……そ」

俺の蔑む言葉に、阿久津が毒を吐く。

「こんなことやっていいって言うのか!! お前のやってることは殺人だ!!」
「殺人? 違うね、貴様のような転生者に人権はない。よって俺は人殺しではない」

未だにそんな事を言える阿久津に呆れながら、俺はクリエイトを構える。

「さて、それでは消えてくれ」

俺はそう告げると、クリエイトに魔力を流し込む。

「輪廻転生が普通の人の100倍長くなっちゃうけど、まあ天罰だと思っておきな」
「や、やめろ。なんでもする、お前の奴隷になる。だから――――」

俺は阿久津の命乞いの言葉を無視する。

「それじゃ、死んで」
「やめ―――」

俺はためらいなく阿久津に向けて剣を振り下ろす。
斬れるような音がするとともに、阿久津の姿はどこにもない。

「転生者反応消去。任務完了だ。お疲れ様」
「サンキュ」

俺は労いの言葉をかける執行人にそう言いながら、仮面とマントをしまう。
これで100人目だ。
転生者がここにやってくるのはきりがない。
その主な理由がハーレムを作ろうというものだ。
能力の高さもさることながら、理由や動機性格が世界に対して害にもなる。
俺が始末した100人の転生者だが、その99%は自分の能力に飲み込まれたり、扱えなかったりと言うのがほとんどだ。
まあ、中には戦争体験者がいたりして色々と苦労したこともあったが。

(転生者は、全員消してやる)

俺はロストロギアの封印との通達を聞きながら、再び決心するのであった。

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第13話 彼のやるべき事と敵

「よ、迎えに来たぞ」
「………」

なのはが上がってしばらくして、時を見計らったかのように執行人がやってきた。

「何だ何だ? その様子だと話せなかったのか?」
「………実は」

俺は事の顛末を話した。

「へぇ、告白までしたか。で、返事は?」
「………」

俺は首を横に振って執行人の質問に答えた。

「そうか……嫌な事を聞いたな、すまない」
「大丈夫だ」

何だか執行人が変な方向に勘違いしている。
まあ、放っておこう。
告白はしたが、俺はなのはから返事を聞いていないのだ。

「隣良いか?」
「………ああ」

俺は執行人の声色から何かを感じ、頷いた。

「お前の体の後遺症だが」
「分かってる。俺の体の中に駆け巡っているAMFもどきの影響……だろ」

俺は執行人のセリフを遮って告げた。
俺の後遺症は、執行人曰く魔力結合を無効化するAMFに似た何かが、体中に張り巡らされているからだという事だ。
つまり、力を入れようとしても入れられずに正常な行動が出来ない。
だから目が見えなくなったり、足が動かなくなったりするのだ。
俺の持っているステッキは、それを無効化する効果があるのだ。

「知ってるなら話が早い。それをやった首謀者はおそらく、転生者だ」
「………そうか」

執行人の言葉に、俺はそう答えた。
転生者。
不正な方法で違う世界に強制的に割り込んでくるイレギュラー。
その存在だけで世界に負荷をかける一種のウイルスだ。
俺の役割は、この転生者を排除すること。
その為に、俺は転生者の能力の高さに合わせて強くなっていったりするのだ。
あの事故の後に魔法の力がさらに高まったのは、その為だろう。

「俺がメインならそれ自体を無効化できる。だが、お前の場合はあの杖がなければ無効化できない」
「分かってるさ。これを解消する方法が神化するか、解毒剤を作ってもらうしかないことくらい」

神として格上げする”神化”は、俺の切り札だ。
これをやれば、俺は最強の強さと身体能力を手にすることが出来る。
但し、問題がある

「神化すれば、もう元の人間には戻れなくなり、お前は神として長い時を生きることになる」

執行人の言うとおりだった。
神化すれば、俺の寿命は引き伸ばされる。
だがそれは知っている人たちを次々に失うことを意味していた。
だからこそ俺はその方法に打って出れなかったのだ。

「まあ、じっくりと考えると良い。そうすれば、他に何か名案が思いつくだろうよ」
「……そうだな」

なのはへの告白の返事に重ねて転生者の事と、考えることがたくさんだ。
だが、一つずつこなさなければいけないというのも確かであった。










その後、お風呂から上がった俺達を待っていたのは、ロストロギアの反応を知らせる物であった。

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