健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第18話 衝突

あれから数日間、ティアナは相変わらずオーバーワーキングを続けていた。
さらにはスバルまで参加するほどだ。

「なあ、本当にいいのかよ?」
「………」

上空から二人の朝練を見ている俺の横にいた健司が俺に問いかけてくる。

「あの二人のやろうとしていることは、完全になのはの教えに反しているぞ」
「それが、二人が考えた結果であれば俺はそれを尊重する。それに一度ばかして大きくぶつかった方がいいんだ。その方が手っ取り早い」

俺の中では、ティアナ達となのはをわざと衝突させて話し合いでの解決に持っていこうと考えていたのだ。
俺の様な第三者が言うよりは彼女の方がより説得力があると考えたからだ。

「ま、お前がそう言うんなら何も言わないが………」

この時、俺は気付いてなかった。
この俺の選択が後に、最悪な事態を招くことになるとは。















それはある日の午前中の訓練の時の事。

「さーて、それじゃあ午前中のまとめ、2on1の模擬戦やるよ! まずはスターズからやろうか? バリアジャケット、準備して!」
「「はい!」」

なのはの指示にティアナとスバルは、返事をする。

「エリオとキャロはあたしと見学だ」
「「はい」」

ヴィータはエリオとキャロを連れて戦闘区域外の、近くの廃ビルの屋上へ向かった。
その間にティアナとスバルは、バリアジャケットを展開して戦闘準備をする。

「やるわよ! スバル!」
「うん!!」

ティアナの言葉に、スバルは元気に返す。
俺はそんな二人の様子を冷ややかな目で見ていた。

「真人、早く行くぞ」
「ああ」

健司の促す声に、俺はそっけなく返事をすると、三人が向かった屋上の方へと向かった。










廃ビルの屋上へたどり着き扉を開けると、そこにはヴィータ、エリオ、キャロがいた。
そして模擬戦が始まってからしばらくした後で、フェイトがやってきた。

「あぁ、もう模擬戦始まっちゃってる?」
「フェイトさん!」

ビルの屋上に着いたフェイトに挨拶をするエリオ。

「私も手伝おうと思ってたんだけど」
「今はスターズの番」

ヴィータはフェイトを見て、現在の進捗状況を伝えた。

「……ホントはスターズの模擬戦も引き受けようと思ったんだけどね」

フェイトはそう言うと上空にいるなのはを心配そうに見上げた。

「ああ。なのはもここ最近は訓練密度が濃いからな。……少し休ませねーと」

ヴィータもなのはの最近のオーバーワークを心配しているようだ。
かくいう俺もだが。
何せ、あの事故の時もなのはは過労状態だったのだから。

「なのは、部屋に戻ってからもずっとモニタに向かいっぱなしなんだよ。訓練メニュー作ったり、ビデオでみんなの陣形チェックしたり」
「なのはさん……訓練中も、いつも僕達のこと見ていてくれているんですよね……」

フェイトの言葉を聞いたエリオは感慨深げに語る。

「ほんとに……ずっと……」

キャロもエリオに賛同するように嬉しそうになのはを見ている。

「おっ、クロスシフトだな」

ヴィータが下にいるティアナを見てつぶやいた。
ティアナの周囲に10個程の魔法弾を展開している。

「クロスファイアー……シュート!」

ティアナは魔法弾をなのは向けて放つ。
だが、その魔法弾はかなりスピードが遅い。

「……? なんかキレがねーな」

ヴィータはティアナのクロスファイアーに、いつもの勢いが無いことに首を傾げていた。

「コントロールはいいみたいだけど……」
「いや、それにしたって……」

そんなヴィータにフェイトは正確なコントロールの点を指摘するが、それでもヴィータは釈然としていない。

(速度を落として、命中率を上げたのか? だとしてもあれだと避けられやすくなるのが落ちだ。と言うことは)

俺は一人で考察していきついたのは、”次の手への布石”と言う事だった。
にしてもあんなやり方じゃ、なのはには……
そしてクロスファイアーは、飛んで回避するなのはの後ろを追尾し続ける。
すると、なのはの前にスバルのウィングロードが展開する。
なのははとっさに魔法弾を数発展開させる。
そしてなのはは迫り来るスバルを確認する。

「………フェイクじゃない? 本物!?」

なのはは即座に魔法弾を、前方のスバルに向けて放つ。
だがスバルは飛んでくる魔法弾をシールドで防御はするが突進をやめる気配はない。
何個かの魔法弾は、スバルのシールドを突破し、スバルの体をかすっていく。
そして、全ての魔法弾を捌ききると、スバルはなのは目掛けてリボルバーナックルを振りかぶった。

「うおりゃあぁぁぁッ!!」

なのはは咄嗟にレイジングハートでシールドを展開し、スバルの攻撃を防御する。
一方のスバルは力押しで、なのはのシールドを破ろうとしているのか、回避するそぶりを見せない。
勿論だが、今の様な戦い方はなのははおろか、俺も教えていない。
なのははスバルの無茶な突進に顔を顰める。
そしてなのははレイジングハートを振り、スバルを弾き飛ばす。

「きゃあぁぁぁッ!?」

弾き飛ばされたスバルは、なんとかウィングロードの上に着地する。

「こらスバル! ダメだよ、そんな危ない軌道!」

なのははスバルを叱りながらも、ティアナのクロスファイアーを避け続ける。

「すみません! でも、ちゃんと防ぎますから!!」

スバルの言葉に、なのはは怪訝な顔をする。

(防ぐとはどういう意味だ? それに、ティアナの奴はどこに行った?)

俺はティアナの姿が見当たらないことに気付き、慌てて見渡す。
すると廃ビルの屋上から光が発せられた。
そこには、ティアナが砲撃準備し、なのはをロックしている姿があった。

「砲撃?! ティアナが!?」

その様子にフェイトは驚いている。
俺の記憶の範囲内では、そのような物を教えていた記憶はない。
元から持っていたと言う可能性もあることにはあるが。

「おう!!」

スバルが答えるのと同時にリボルバーナックルのカートリッジをロードし、マッハキャリバーがうねりを上げると、マッハキャリバーの突進力で一気になのはとの距離を詰めた。
スバルは、リボルバーナックルを振り上げ、なのは目掛けて体ごと突撃する。
対するなのはは魔法弾を展開するが、スバルはそれ等を全て避け、拳の届く距離まで近づき、リボルバーナックルを振りかぶった。
だが、なのはもレイジングハートでシールドを展開しリボルバーナックルの攻撃を防ぐ。
両者の魔法がぶつかり合い、火花を散らせる。
なのははスバルの攻撃を防御しつつ、ティアナの方を見る。
すると、砲撃準備をしていたティアナは、その場から消えてしまった。
つまりは、幻影と言う事だ。

「あっちのティアさんは、幻影!?」
「本物は!?」

キャロとエリオが慌てて周りを見回す。
俺も辺りを見回してティアナの姿を探す。
だが、彼女の姿はすぐに見つかった。
そう、なのは達の頭上に展開されたウイングロードを走るティアナの姿が……

(なるほど、そういう事か)

俺はようやく想像が出来た。
おそらくは頭上からの接近戦をしようとしていると。
ティアナ達の早朝特訓は、近距離戦を想定している。
そんな俺の予想を肯定するように、ティアナの持つクロスミラージュの銃口部分から魔力の刃が現れた。
そして、その刃をなのはに向けて飛び込む。

「一撃必殺! でえぇぇぇいっ!!」

次の瞬間、三人のいる場所から爆煙が上がった。

「なのは!?」

爆風で俺達は目をかばっていた。
フェイトはなのはの心配をしていた。

爆煙が晴れると、そこには片手でリボルバーナックルを受け止め、もう片方の手ではクロスミラージュの魔力刃を素手で掴んでいるなのはの姿があった。
何かを言っているようだが、俺には聞こえなかった。
するとティアナは、クロスミラージュの魔力刃を解除し、なのはから離れた所にあるウイングロードに飛び退いた。
そして、体制を立て直し、クロスミラージュをツーハンドで構え、カートリッジをロードすると、ティアナの前に魔法陣が展開し、砲撃準備をしていた。

「私は! もう……誰も傷つけたくないから!! 無くしたくないから!!」

ティアナは涙を流しながら、なのはに自分の思いをぶつける。

「だから! 強くなりたいんです!!」

ティアナのその独白に、俺は頭を殴られたような衝撃が走る。
俺はようやく気付いた。

(何をやってるんだよ。俺は)

俺のやっていることは、愚かな事であったと言う事に。
俺は、彼女の思いを理解もせずに、ただ兄が役立たずと言われたことを気にして強くなろうと思っていると決めつけていた。

「うあああぁぁぁ!! ファントムブレ――――」

ティアナが砲撃魔法を言い終わる前に、なのはは魔法弾(おそらくクロスファイアー)をティアナに向けて放った。
そして、それはティアナに命中し、爆発した。

「ティア……!? ――――!?」

スバルはティアナの所へ駆け寄ろうとしたが、その体にはバインドがかけられていた。
スバルはなのはを見るが、なのははティアナから視線を離さない。

爆煙が晴れかけると、そこにはフラフラ状態となっているティアナの姿があった。
その様子は、今にも倒れそうであった。

「健司、頼むぞ」
「ああ」

俺は健司にそれだけ伝えると、急いでティアナの前まで向かった。
そんな時、なのはは無情にも二発目の魔法弾をティアナに放とうとしている。

「なのはさん!!」

スバルの悲痛な叫びも空しく、なのはの指先から魔法弾が発射された。

(間に合え!!)

そして、俺は間一髪でティアナの前にたどり着くが、シールドを展開するような余裕はなかった。

「はぁぁ!!」

俺は右手に魔力を込めて魔法弾を跳ね飛ばす。

「ぐぅぅ!!?」

同時に右手に痛みが走る。
それも当然だ。
いくら魔力を込めて補強したと言っても、生身の体同然だ。

「一体なんの真似かな? 真人君」

なのはがこっちを睨みつけながら問いただす。
その眼には光がなく、まるで魔王を彷彿とさせるような姿だった。
俺は右手の痛みをこらえながら俺はなのはを見据える。

「何の真似って、これ以上の暴行は認められないからな」
「これは暴行じゃないよ? 頭を冷やすための教導だよ」

俺の言葉に、なのははそう切り返してくる。

「教導? 俺には教導には見えない。ティアナのやった危険行為に対してならあの一発で十分だ。二発はやりすぎだ」
「何が言いたいの?」

俺の言葉に、なのはが眉を顰めながら聞いてくる。

「つまり、お前のやっていることは自分の言うとおりにしてくれないから暴力で言う事を聞かせる子供だっていう事だ」
「そんな言い方、いくら真人君でも許せないよ。この二人は私の教えに背いたんだよ?」
「だったら、お前はちゃんと伝えたのか? この教導の意味を」

俺はなのはに問いただす。

「………」
「その沈黙は伝えていないと取るぞ」

俺はなのはにそう告げると、言葉を続けた。

「どんな優秀な人間でも、会話もしないで相手の本心を理解できるなんてことは出来ない。だからこそ、話し合いって必要なんじゃないのか?」
「……い」
「それをしないで思いが伝わるだなんてことは、絶対にない!! それはお前が一番知っているはずだ」
「うるさい!!!」

俺の言葉になのはは大きな声で叫ぶ。

「真人君も、頭冷そっか」

そう言って俺にレイジングハートを突き付けてきた。
本人はやる気だ。

「愚かだ」

俺は口を継いで出てきた。

「何がかな?」
「話し合いもせずに、自分の理想が伝わると思い込んでいるお前がだ」

俺の言葉を聞いたなのは野視線がさらにきつくなる。

「まあ、その条件を当てはめるのであれば、俺も十分愚か者だけど」

相手の気持ちを考えずに人任せにした俺は、偽善者と言っても過言ではない。
だからこそ

「俺は全力を持ってお前を止める!!!」

そして、俺はクリエイトを取り出す。
姿はいつもの青いシャツに銀色のジャケットのバリアジャケットではなく、転生者の狩人である黒一色のマントだ。
そして、俺となのはの戦いがいま幕を開けた。

拍手[0回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カウンター

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

最新CM

[03/25 イヴァ]
[01/14 イヴァ]
[10/07 NONAME]
[10/06 ペンネーム不詳。場合によっては明かします。]
[08/28 TR]

ブログ内検索

バーコード

コガネモチ

P R