「よ、迎えに来たぞ」
「………」
なのはが上がってしばらくして、時を見計らったかのように執行人がやってきた。
「何だ何だ? その様子だと話せなかったのか?」
「………実は」
俺は事の顛末を話した。
「へぇ、告白までしたか。で、返事は?」
「………」
俺は首を横に振って執行人の質問に答えた。
「そうか……嫌な事を聞いたな、すまない」
「大丈夫だ」
何だか執行人が変な方向に勘違いしている。
まあ、放っておこう。
告白はしたが、俺はなのはから返事を聞いていないのだ。
「隣良いか?」
「………ああ」
俺は執行人の声色から何かを感じ、頷いた。
「お前の体の後遺症だが」
「分かってる。俺の体の中に駆け巡っているAMFもどきの影響……だろ」
俺は執行人のセリフを遮って告げた。
俺の後遺症は、執行人曰く魔力結合を無効化するAMFに似た何かが、体中に張り巡らされているからだという事だ。
つまり、力を入れようとしても入れられずに正常な行動が出来ない。
だから目が見えなくなったり、足が動かなくなったりするのだ。
俺の持っているステッキは、それを無効化する効果があるのだ。
「知ってるなら話が早い。それをやった首謀者はおそらく、転生者だ」
「………そうか」
執行人の言葉に、俺はそう答えた。
転生者。
不正な方法で違う世界に強制的に割り込んでくるイレギュラー。
その存在だけで世界に負荷をかける一種のウイルスだ。
俺の役割は、この転生者を排除すること。
その為に、俺は転生者の能力の高さに合わせて強くなっていったりするのだ。
あの事故の後に魔法の力がさらに高まったのは、その為だろう。
「俺がメインならそれ自体を無効化できる。だが、お前の場合はあの杖がなければ無効化できない」
「分かってるさ。これを解消する方法が神化するか、解毒剤を作ってもらうしかないことくらい」
神として格上げする”神化”は、俺の切り札だ。
これをやれば、俺は最強の強さと身体能力を手にすることが出来る。
但し、問題がある
「神化すれば、もう元の人間には戻れなくなり、お前は神として長い時を生きることになる」
執行人の言うとおりだった。
神化すれば、俺の寿命は引き伸ばされる。
だがそれは知っている人たちを次々に失うことを意味していた。
だからこそ俺はその方法に打って出れなかったのだ。
「まあ、じっくりと考えると良い。そうすれば、他に何か名案が思いつくだろうよ」
「……そうだな」
なのはへの告白の返事に重ねて転生者の事と、考えることがたくさんだ。
だが、一つずつこなさなければいけないというのも確かであった。
その後、お風呂から上がった俺達を待っていたのは、ロストロギアの反応を知らせる物であった。
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